四半期報告書-第147期第2四半期(令和4年7月1日-令和4年9月30日)
(1)経営成績
2022年度は、2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和.Prosperity2023」の達成に向けた重要な1年となります。2023年度売上高目標1兆円の達成、営業利益率については、2021年度の8.2%を更に向上させるため、パワエレ事業、パワー半導体事業の拡大を中核とする「成長戦略の推進」、グローバルでのものつくり力強化による「収益力の更なる強化」、及び、ESG(環境、人財、ガバナンス)を中心とした「経営基盤の継続的な強化」を推し進めています。
当第2四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、脱炭素化に向けた世界各国の取り組みやデジタル化の加速を背景に、自動車の電動化、省エネ、デジタルインフラ等のニーズが高まり、製造業やデータセンター等の設備投資が高水準で推移しました。その一方で、中国においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う上海市のロックダウンが解除され、物流網の混乱等による顧客への製品出荷影響は改善の傾向が見られたものの、本格的な回復には至らない状況でした。また、円安の急激な加速を背景としたエネルギー価格の上昇や素材価格の高騰の他、資材不足等、世界のサプライチェーンにおいて、先行きが不透明な状況が継続しました。
このような環境のもと、当社は、旺盛な需要に対応したパワー半導体生産能力増強に加え、部材調達難に対する設計変更による代替部材対応や複数サプライヤー化等のサプライチェーン最適化の取り組みを継続して実施しました。
当第2四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、部品供給不足による生産制約の影響が一部の部門にみられたものの、全ての部門が増加し、前年同期に比べ494億53百万円増加の4,471億38百万円となりました。
損益面では、素材価格高騰の影響を受けたものの、物量の増加に加え、製品販売価格の値上げや工場の体質強化を中心とした原価低減の推進、為替影響等により、営業損益は前年同期に比べ104億28百万円増加の267億19百万円となりました。経常損益は前年同期に比べ119億87百万円増加の288億79百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ62億79百万円増加の202億58百万円となり、営業損益、経常損益、親会社株主に帰属する四半期純損益いずれも、過去最高を更新しました。
<セグメント別状況>■パワエレ エネルギー部門
売上高:1,156億42百万円(前年同期比 17.1%増加) 営業損益:95億76百万円(前年同期比 53億71百万円増加)
施設・電源システム分野及び器具分野の需要拡大を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、前年同期の産業向け変電機器の大口案件影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減の推進等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、国内外のデータセンター及び半導体メーカ向け案件の需要が大幅に拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする国内の機械セットメーカの需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■パワエレ インダストリー部門
売上高:1,501億54百万円(前年同期比 7.4%増加) 営業損益:11億24百万円(前年同期比 12億51百万円減少)
為替影響やITソリューション分野の需要増加により、売上高は前年同期を上回りましたが、営業損益は、素材価格の高騰や部材調達難による生産減等の影響により、前年同期を下回りました。
・オートメーション分野は、中国ロックダウンの影響を受けたものの、為替影響等により、売上高は前年同期を上回りました。一方、低圧インバータを中心とした、部材調達難による生産影響や素材価格の高騰等により、営業損益は前年同期を下回りました。
・社会ソリューション分野は、船舶向けの案件が減少し、売上高は前年同期を下回ったものの、固定費の削減等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・設備工事分野は、前年同期の空調設備工事の大口案件影響により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・ITソリューション分野は、文教及び民需分野の大口案件等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■半導体部門
売上高:970億21百万円(前年同期比 14.1%増加) 営業損益:149億48百万円(前年同期比 31億36百万円増加)
・半導体分野は、ディスク媒体事業からの撤退影響があったものの、電動車(xEV)向け及び産業分野向けのパワー半導体の需要拡大及び為替影響により、売上高は前年同期を上回りました。その結果、パワー半導体の生産能力増強に係る費用の増加や素材価格及び動力費の高騰影響があったものの、高操業の維持により、営業損益も前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:347億87百万円(前年同期比 30.7%増加) 営業損益:△4億89百万円(前年同期比 6億44百万円増加)
・発電プラント分野は、再生可能エネルギーの大口案件等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■食品流通部門
売上高:447億95百万円(前年同期比 1.1%増加) 営業損益:32億29百万円(前年同期比 23億77百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・店舗流通分野は、前年同期の金銭機器の大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、営業損益は原価低減の推進等により、前年同期と同水準となりました。
■その他部門
売上高:286億5百万円(前年同期比 12.1%増加) 営業損益:15億34百万円(前年同期比 5億13百万円増加)
(注)第1四半期連結会計期間より、組織構造の変更に伴い、「パワエレ エネルギー」及び「パワエレ インダストリー」の各報告セグメントにおいて、集約する事業セグメントを変更しております。
なお、前第2四半期連結累計期間の報告セグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。
(2)財政状態
当第2四半期連結会計期間末の総資産額は1兆1,256億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ85億72百万円増加しました。
流動資産は6,946億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ126億24百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売掛金が554億30百万円減少した一方で、現金及び預金が185億22百万円、棚卸資産が305億86百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定資産は4,310億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ40億40百万円減少しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,701億97百万円となり、前連結会計年度末に比べ140億17百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,608億20百万円となり、前連結会計年度末に比べ180億58百万円減少しました。これは、主に投資有価証券が、売却及びその他有価証券の時価評価差額相当分の減少を主因として、227億31百万円減少したことによるものであります。
当第2四半期連結会計期間末の負債合計は5,850億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ83億75百万円減少しました。
流動負債は4,272億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ402億58百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ短期借入金が227億32百万円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定負債は1,577億79百万円となり、前連結会計年度末に比べ486億34百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ社債が150億円、長期借入金が368億64百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
なお、当第2四半期連結会計期間末の有利子負債残高は1,971億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ112億28百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は17.5%となり、前連結会計年度末に比べ1.2ポイント減少しました。
当第2四半期連結会計期間末の純資産合計は5,406億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ169億48百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が112億40百万円減少した一方で、利益剰余金が124億2百万円、為替換算調整勘定が156億60百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は43.5%となり、前連結会計年度末に比べ1.2ポイント増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、492億18百万円の資金の増加(前年同期は399億94百万円の増加)となり、前年同期に対して92億24百万円の資金流入額の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は、598億71百万円(前年同期は398億33百万円の増加)となりました。これは、棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前四半期純利益の計上並びに売上債権及び契約資産が減少したことなどを主因とするものであります。
前年同期に対しては、200億38百万円の資金流入額の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において投資活動による資金の減少は、106億53百万円(前年同期は1億60百万円の増加)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、108億13百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において財務活動による資金の減少は、357億13百万円(前年同期は192億4百万円の減少)となりました。これは主として、長期借入金並びにリース債務の返済によるものであります。
これらの結果、当第2四半期連結会計期間末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末残高に比べ195億68百万円(21.4%)増加し、1,109億18百万円となりました。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8)研究開発活動
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当第2四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は166億86百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第2四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,305件です。
■パワエレ エネルギー部門
受配電設備の保全計画立案から設備の監視、さらに設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」における遠隔監視サービスメニューに、IoTカメラによるメータ読み取り機能と、火災予兆検知機能を追加しました。メータ読み取り機能は、カメラで撮影したメータ画像をAIにより数値に変換し保存することで、巡視点検作業の省人化を図るとともにトレンド表示や帳票作成を容易にします。火災予兆検知機能は、超高感度煙センサを用いた火災予兆検知システムとの連携により、早い段階で電気火災につながる異常を警備員などに知らせることで火災の未然防止に貢献します。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は32億77百万円です。
■パワエレ インダストリー部門
スマートファクトリーの実現に向け、システム製品のマザー工場である東京工場で自営の第5世代移動通信システム(以下、ローカル5G)の実証実験を2021年5月に開始し、遮蔽物やノイズの多い機械加工ラインにおける電波の伝搬状況の調査や、工作機械の稼働データの見える化などの実証に取り組んできました。この結果を踏まえ、無線局商用免許(使用周波数:4.8GHz)を2022年1月に取得し、機械加工ラインでの生産活動にローカル5Gの適用を開始しました。今後は、無線機の設置環境などの実績・知見を活かしながら、異常による工作機械の稼働停止時間の短縮や次工程への不良品流出の防止を目指し、自社工場での適用範囲を広げるとともに、ローカル5Gの特長を活かした製品やエンジニアリング、サービス等のソリューションを創出します。ローカル5Gの適用成果は、日経クロステック10月号に掲載され、計測展2022 OSAKAで展示しました。
FAコンポーネント分野では、アナリティクス・AI(MSPC)による異常診断機能を搭載した「SPH5000EC系 診断機能付きCPUモジュール」を開発し発売しました。設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼動中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。また、モーション制御と異常診断は1台のCPUモジュール上で個別に実行するので、モーション制御の速度や精度などに影響を与えることなく機械・装置の異常診断が可能です。
FAシステム分野では、電動車の開発効率向上に貢献する「EV駆動部品性能試験機」を開発しました。EVモータは従来のエンジンと比べて回転数が高いため、高速回転時に振動の小さい試験機が必要となります。新たに開発した試験機は、20,000min-1の高速回転に対応した自社製ダイナモメータの採用と、振動シミュレーションに基づく構造設計により、高速回転時でも振動の小さい安定した試験が可能です。
情報制御システム分野では、AIを活用した先進的な地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS:Community Energy Management System)を開発しました。本システムでは、地域内にある医療施設、商業施設、ホテル、マンションなどの各施設のエネルギー需要を統計的機械学習手法を用いて高精度に予測し、その予測に基づいてエネルギー供給側と需要側の両方を自動調整することにより、地域全体のエネルギー利用効率の最大化を実現します。また、EMSパッケージとして販売しているEnergyGATEの省エネ最適化支援機能を拡張しました。AIを用いてエネルギーロスの真因を探索する新機能により最適制御パラメータや改善案の事例を提示することで、顧客のエネルギーコスト削減を支援します。
船舶・港湾分野では、船舶の燃料油に含まれる硫黄分を排気ガスから除去するSOxスクラバの大容量XLサイズを開発し、ラインアップしました。24MWまでのエンジン出力に対応し、大型原油タンカー等の大型船舶の環境規制対応に貢献します。また、SOxスクラバの排水を浄化してスクラバの給水に再利用する排水再生循環システムを開発しました。これを従来の船舶排ガス浄化システムと組み合わせることにより、スクラバからの排水が規制されている一部の沿岸海域でもスクラバによる排ガス浄化を行いながら航行することが可能になります。
放射線機器・システム分野では、環境放射線量を測定する新型モニタリングポストを開発し発売しました。放射線測定器及び計測部の一体化により、従来に比べ部品点数を削減して信頼性を向上することで住民の安全・安心に貢献します。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は49億64百万円です。
■半導体部門
産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄や再生可能エネルギー分野における市場要求に対応するために、第7世代「Xシリーズ」チップを搭載した大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)の系列として1,700V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。さらに、同じパッケージに第2世代「SiCトレンチゲートMOSFET」チップを搭載して低損失・高効率化を実現した2,300V、3,300V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減したパッケージの開発により、従来に比べて低損失化と小型・軽量化を実現します。
また、駆動機能や保護機能を備えた第7世代IGBT-IPM(Intelligent Power Module)の系列化を完了しました。これまでに製品化しているFA、工作機械、空調機器用途向け650V、1,200V耐圧の中容量製品に加えて、大容量製品として650V/200~450A、1,200V/100~300Aを製品化しました。
車載モジュールでは、xEV(電動車)向け製品の系列拡大として、従来に比べて低損失化した新RC-IGBTチップ及び第4世代冷却器を搭載し小型化を実現した直接水冷型パワーモジュール750V/800A品を開発し量産を開始しました。車載向け製品として600A、800A、1,200A品をラインアップしたことで、様々なモータ出力の電動車に幅広く対応できます。さらに2024年以降のxEVモデル向けに、次世代IGBT及びSiC技術を開発しています。これらの製品を通じて、xEVのさらなる小型軽量化や高効率化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、小型UPS、太陽光PCS、EV充電器などの電源のさらなる省エネに向けて最新の第7世代IGBT技術を適用したディスクリートIGBT「XSシリーズ」としてサブエミッタ端子を有するTO-247-4パッケージの1,200V/75A品を開発し系列に加えました。エミッタの配線インダクタンスにより生じる逆起電力を抑制し、ゲート電圧への影響を抑えることでスイッチング損失が低減し、電源機器の損失低減、高効率化を実現します。
感光体分野では、プロダクションプリンタ向けのワイドフォーマット(A0サイズ)有機感光体を開発し、量産を開始しました。アルミニウム基体の高精度加工技術によりワイドフォーマットに対応すると同時に、摩耗耐性に優れた樹脂を採用し膜厚を最適化することで、長期間にわたり色ムラの無い高品位な画像品質を達成しました。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は56億36百万円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制技術や長寿命化技術を開発しています。また、マイクログリッドや風力発電サイト向けの蓄電池システムで要求される停電時の自立運転機能を付加した、大容量の蓄電池型PCS(Power Conditioning System)を開発しています。
火力発電分野では、既設のプラント向けメンテナンスサービス技術として、診断時間や現地での補修時間を短縮する技術を開発しています。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は11億93百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、限られたスペースで多くの冷凍食品を販売できる大容量の冷凍自動販売機「FROZEN STATION」の性能を向上させるための開発を進めています。商品の補充作業がさらに容易になるように、商品収納部の内部構造を工夫するとともに、販売時の商品の破損や詰まりをさらに起こりにくくするために、商品挙動のシミュレーションを用いた搬送経路の最適化を進めています。
中国・東南アジア向けに、国内で流通していない長身のペットボトル商品を販売するため、新たな販売機構を搭載した自販機を開発し発売しました。この販売機構は、商品の補充しやすさの向上、収容数の増加などの顧客の要望にも対応しています。また、東南アジアの特定顧客向けに、21インチ液晶ディスプレーを搭載し、スマートフォンによりキャッシュレスでQRコード決済ができる大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。利便性だけでなく、国内で販売している自動販売機の技術を活用し、商品温度の均一性や自動販売機本体の信頼性も向上させています。
店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しています。この冷凍機を内蔵したショーケースのラインアップを拡大しています。また、循環型社会の推進に貢献するため、従来の使い捨てカップ専用コーヒー自販機をマイボトルでも販売できるように改良した自販機を用いて、顧客事務所でのマイボトルの利用促進に関する実証実験に参加しました。本実証実験で得られた知見は製品開発に反映させ、廃棄物削減に取り組んでまいります。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は15億99百万円です。
■新技術・基盤技術部門
製造現場から様々なデータを収集し、クラウドシステムで製品の品質診断や設備の異常兆候検知などを行うIoT(Internet of Things)の活用が進展しています。IoT活用の更なる拡大を図るため、現場に設置するエッジデバイスとクラウドシステム間の通信量の削減や応答の高速化を狙い、エッジデバイス側で最適制御やAIなどの複雑なデータ処理を実行するための要素技術を開発しています。高速化したエッジデバイスの設計と試作を完了し、性能検証を進めています。
脱炭素化に向けて、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの導入が拡大しています。再生可能エネルギーのように、出力が変動する発電システムが大量導入されると、電力系統の電圧や周波数が不安定になる恐れがあります。この問題を解消するため、再生可能エネルギー用PCSに付加して系統を安定化させるための電圧・周波数調整などの機能(スマートインバータ機能)、及びPCSが多数台接続された電力系統を高速に監視制御する技術を開発しています。
環境負荷を低減するため、地球温暖化係数が大きいSF6ガスを使用しないガス絶縁開閉装置(GIS)の実現に向けた開発に取り組んでいます。絶縁性能が優れたSF6ガスを使用せずに代替ガスで同一の遮断性能を得るためには装置寸法が大きくなります。そこで、絶縁上重要な絶縁スペーサの誘電率分布を最適に制御して系全体の絶縁性能を高めることで装置を小型化する誘電率傾斜技術を開発しています。
SiCデバイスの性能を向上させるため、デバイス特性を劣化させる欠陥の発生や抑制メカニズム解明に取り組んでいます。窒化ガスプロセスの大規模な分子動力学計算(2千~1万原子)を実現し、現在、その成果を半導体製造プロセスで使うガス熱処理の現象解明に適用しています。今後、スーパーコンピュータ「富岳」を活用して10万~100万原子の大規模プロセス計算を予定しています。
カーボンニュートラルの実現に向けて、工場のコージェネレーションシステムや船舶エンジンなどに適用できる小規模なCO2分離回収が求められています。現在、膜分離方式によるCO2分離回収技術とともに、CO2を効率良く分離するために排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)などの介在物を除去する前処理技術の開発に取り組んでいます。
■その他部門
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は14百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。
2022年度は、2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和.Prosperity2023」の達成に向けた重要な1年となります。2023年度売上高目標1兆円の達成、営業利益率については、2021年度の8.2%を更に向上させるため、パワエレ事業、パワー半導体事業の拡大を中核とする「成長戦略の推進」、グローバルでのものつくり力強化による「収益力の更なる強化」、及び、ESG(環境、人財、ガバナンス)を中心とした「経営基盤の継続的な強化」を推し進めています。
当第2四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、脱炭素化に向けた世界各国の取り組みやデジタル化の加速を背景に、自動車の電動化、省エネ、デジタルインフラ等のニーズが高まり、製造業やデータセンター等の設備投資が高水準で推移しました。その一方で、中国においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う上海市のロックダウンが解除され、物流網の混乱等による顧客への製品出荷影響は改善の傾向が見られたものの、本格的な回復には至らない状況でした。また、円安の急激な加速を背景としたエネルギー価格の上昇や素材価格の高騰の他、資材不足等、世界のサプライチェーンにおいて、先行きが不透明な状況が継続しました。
このような環境のもと、当社は、旺盛な需要に対応したパワー半導体生産能力増強に加え、部材調達難に対する設計変更による代替部材対応や複数サプライヤー化等のサプライチェーン最適化の取り組みを継続して実施しました。
当第2四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、部品供給不足による生産制約の影響が一部の部門にみられたものの、全ての部門が増加し、前年同期に比べ494億53百万円増加の4,471億38百万円となりました。
損益面では、素材価格高騰の影響を受けたものの、物量の増加に加え、製品販売価格の値上げや工場の体質強化を中心とした原価低減の推進、為替影響等により、営業損益は前年同期に比べ104億28百万円増加の267億19百万円となりました。経常損益は前年同期に比べ119億87百万円増加の288億79百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ62億79百万円増加の202億58百万円となり、営業損益、経常損益、親会社株主に帰属する四半期純損益いずれも、過去最高を更新しました。
<セグメント別状況>■パワエレ エネルギー部門
売上高:1,156億42百万円(前年同期比 17.1%増加) 営業損益:95億76百万円(前年同期比 53億71百万円増加)
施設・電源システム分野及び器具分野の需要拡大を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、前年同期の産業向け変電機器の大口案件影響等により、売上高は前年同期を下回りましたが、原価低減の推進等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、国内外のデータセンター及び半導体メーカ向け案件の需要が大幅に拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・器具分野は、工作機械をはじめとする国内の機械セットメーカの需要が拡大し、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■パワエレ インダストリー部門
売上高:1,501億54百万円(前年同期比 7.4%増加) 営業損益:11億24百万円(前年同期比 12億51百万円減少)
為替影響やITソリューション分野の需要増加により、売上高は前年同期を上回りましたが、営業損益は、素材価格の高騰や部材調達難による生産減等の影響により、前年同期を下回りました。
・オートメーション分野は、中国ロックダウンの影響を受けたものの、為替影響等により、売上高は前年同期を上回りました。一方、低圧インバータを中心とした、部材調達難による生産影響や素材価格の高騰等により、営業損益は前年同期を下回りました。
・社会ソリューション分野は、船舶向けの案件が減少し、売上高は前年同期を下回ったものの、固定費の削減等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・設備工事分野は、前年同期の空調設備工事の大口案件影響により、売上高、営業損益ともに前年同期を下回りました。
・ITソリューション分野は、文教及び民需分野の大口案件等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■半導体部門
売上高:970億21百万円(前年同期比 14.1%増加) 営業損益:149億48百万円(前年同期比 31億36百万円増加)
・半導体分野は、ディスク媒体事業からの撤退影響があったものの、電動車(xEV)向け及び産業分野向けのパワー半導体の需要拡大及び為替影響により、売上高は前年同期を上回りました。その結果、パワー半導体の生産能力増強に係る費用の増加や素材価格及び動力費の高騰影響があったものの、高操業の維持により、営業損益も前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:347億87百万円(前年同期比 30.7%増加) 営業損益:△4億89百万円(前年同期比 6億44百万円増加)
・発電プラント分野は、再生可能エネルギーの大口案件等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■食品流通部門
売上高:447億95百万円(前年同期比 1.1%増加) 営業損益:32億29百万円(前年同期比 23億77百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・店舗流通分野は、前年同期の金銭機器の大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、営業損益は原価低減の推進等により、前年同期と同水準となりました。
■その他部門
売上高:286億5百万円(前年同期比 12.1%増加) 営業損益:15億34百万円(前年同期比 5億13百万円増加)
(注)第1四半期連結会計期間より、組織構造の変更に伴い、「パワエレ エネルギー」及び「パワエレ インダストリー」の各報告セグメントにおいて、集約する事業セグメントを変更しております。
なお、前第2四半期連結累計期間の報告セグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。
(2)財政状態
当第2四半期連結会計期間末の総資産額は1兆1,256億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ85億72百万円増加しました。
流動資産は6,946億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ126億24百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売掛金が554億30百万円減少した一方で、現金及び預金が185億22百万円、棚卸資産が305億86百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定資産は4,310億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ40億40百万円減少しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は2,701億97百万円となり、前連結会計年度末に比べ140億17百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,608億20百万円となり、前連結会計年度末に比べ180億58百万円減少しました。これは、主に投資有価証券が、売却及びその他有価証券の時価評価差額相当分の減少を主因として、227億31百万円減少したことによるものであります。
当第2四半期連結会計期間末の負債合計は5,850億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ83億75百万円減少しました。
流動負債は4,272億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ402億58百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ短期借入金が227億32百万円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定負債は1,577億79百万円となり、前連結会計年度末に比べ486億34百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ社債が150億円、長期借入金が368億64百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
なお、当第2四半期連結会計期間末の有利子負債残高は1,971億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ112億28百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は17.5%となり、前連結会計年度末に比べ1.2ポイント減少しました。
当第2四半期連結会計期間末の純資産合計は5,406億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ169億48百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が112億40百万円減少した一方で、利益剰余金が124億2百万円、為替換算調整勘定が156億60百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は43.5%となり、前連結会計年度末に比べ1.2ポイント増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、492億18百万円の資金の増加(前年同期は399億94百万円の増加)となり、前年同期に対して92億24百万円の資金流入額の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は、598億71百万円(前年同期は398億33百万円の増加)となりました。これは、棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前四半期純利益の計上並びに売上債権及び契約資産が減少したことなどを主因とするものであります。
前年同期に対しては、200億38百万円の資金流入額の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において投資活動による資金の減少は、106億53百万円(前年同期は1億60百万円の増加)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、108億13百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において財務活動による資金の減少は、357億13百万円(前年同期は192億4百万円の減少)となりました。これは主として、長期借入金並びにリース債務の返済によるものであります。
これらの結果、当第2四半期連結会計期間末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末残高に比べ195億68百万円(21.4%)増加し、1,109億18百万円となりました。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8)研究開発活動
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当第2四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は166億86百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第2四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,305件です。
■パワエレ エネルギー部門
受配電設備の保全計画立案から設備の監視、さらに設備更新計画の立案までを支援する「まるごとスマート保安サービス」における遠隔監視サービスメニューに、IoTカメラによるメータ読み取り機能と、火災予兆検知機能を追加しました。メータ読み取り機能は、カメラで撮影したメータ画像をAIにより数値に変換し保存することで、巡視点検作業の省人化を図るとともにトレンド表示や帳票作成を容易にします。火災予兆検知機能は、超高感度煙センサを用いた火災予兆検知システムとの連携により、早い段階で電気火災につながる異常を警備員などに知らせることで火災の未然防止に貢献します。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は32億77百万円です。
■パワエレ インダストリー部門
スマートファクトリーの実現に向け、システム製品のマザー工場である東京工場で自営の第5世代移動通信システム(以下、ローカル5G)の実証実験を2021年5月に開始し、遮蔽物やノイズの多い機械加工ラインにおける電波の伝搬状況の調査や、工作機械の稼働データの見える化などの実証に取り組んできました。この結果を踏まえ、無線局商用免許(使用周波数:4.8GHz)を2022年1月に取得し、機械加工ラインでの生産活動にローカル5Gの適用を開始しました。今後は、無線機の設置環境などの実績・知見を活かしながら、異常による工作機械の稼働停止時間の短縮や次工程への不良品流出の防止を目指し、自社工場での適用範囲を広げるとともに、ローカル5Gの特長を活かした製品やエンジニアリング、サービス等のソリューションを創出します。ローカル5Gの適用成果は、日経クロステック10月号に掲載され、計測展2022 OSAKAで展示しました。
FAコンポーネント分野では、アナリティクス・AI(MSPC)による異常診断機能を搭載した「SPH5000EC系 診断機能付きCPUモジュール」を開発し発売しました。設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼動中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。また、モーション制御と異常診断は1台のCPUモジュール上で個別に実行するので、モーション制御の速度や精度などに影響を与えることなく機械・装置の異常診断が可能です。
FAシステム分野では、電動車の開発効率向上に貢献する「EV駆動部品性能試験機」を開発しました。EVモータは従来のエンジンと比べて回転数が高いため、高速回転時に振動の小さい試験機が必要となります。新たに開発した試験機は、20,000min-1の高速回転に対応した自社製ダイナモメータの採用と、振動シミュレーションに基づく構造設計により、高速回転時でも振動の小さい安定した試験が可能です。
情報制御システム分野では、AIを活用した先進的な地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS:Community Energy Management System)を開発しました。本システムでは、地域内にある医療施設、商業施設、ホテル、マンションなどの各施設のエネルギー需要を統計的機械学習手法を用いて高精度に予測し、その予測に基づいてエネルギー供給側と需要側の両方を自動調整することにより、地域全体のエネルギー利用効率の最大化を実現します。また、EMSパッケージとして販売しているEnergyGATEの省エネ最適化支援機能を拡張しました。AIを用いてエネルギーロスの真因を探索する新機能により最適制御パラメータや改善案の事例を提示することで、顧客のエネルギーコスト削減を支援します。
船舶・港湾分野では、船舶の燃料油に含まれる硫黄分を排気ガスから除去するSOxスクラバの大容量XLサイズを開発し、ラインアップしました。24MWまでのエンジン出力に対応し、大型原油タンカー等の大型船舶の環境規制対応に貢献します。また、SOxスクラバの排水を浄化してスクラバの給水に再利用する排水再生循環システムを開発しました。これを従来の船舶排ガス浄化システムと組み合わせることにより、スクラバからの排水が規制されている一部の沿岸海域でもスクラバによる排ガス浄化を行いながら航行することが可能になります。
放射線機器・システム分野では、環境放射線量を測定する新型モニタリングポストを開発し発売しました。放射線測定器及び計測部の一体化により、従来に比べ部品点数を削減して信頼性を向上することで住民の安全・安心に貢献します。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は49億64百万円です。
■半導体部門
産業用モジュールでは、低損失で高温動作を保証した最新の第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。電鉄や再生可能エネルギー分野における市場要求に対応するために、第7世代「Xシリーズ」チップを搭載した大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)の系列として1,700V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。さらに、同じパッケージに第2世代「SiCトレンチゲートMOSFET」チップを搭載して低損失・高効率化を実現した2,300V、3,300V耐圧品を開発し、サンプル展開を開始しました。高速スイッチングの妨げとなる内部インダクタンスを低減したパッケージの開発により、従来に比べて低損失化と小型・軽量化を実現します。
また、駆動機能や保護機能を備えた第7世代IGBT-IPM(Intelligent Power Module)の系列化を完了しました。これまでに製品化しているFA、工作機械、空調機器用途向け650V、1,200V耐圧の中容量製品に加えて、大容量製品として650V/200~450A、1,200V/100~300Aを製品化しました。
車載モジュールでは、xEV(電動車)向け製品の系列拡大として、従来に比べて低損失化した新RC-IGBTチップ及び第4世代冷却器を搭載し小型化を実現した直接水冷型パワーモジュール750V/800A品を開発し量産を開始しました。車載向け製品として600A、800A、1,200A品をラインアップしたことで、様々なモータ出力の電動車に幅広く対応できます。さらに2024年以降のxEVモデル向けに、次世代IGBT及びSiC技術を開発しています。これらの製品を通じて、xEVのさらなる小型軽量化や高効率化に貢献します。
産業用ディスクリート製品では、小型UPS、太陽光PCS、EV充電器などの電源のさらなる省エネに向けて最新の第7世代IGBT技術を適用したディスクリートIGBT「XSシリーズ」としてサブエミッタ端子を有するTO-247-4パッケージの1,200V/75A品を開発し系列に加えました。エミッタの配線インダクタンスにより生じる逆起電力を抑制し、ゲート電圧への影響を抑えることでスイッチング損失が低減し、電源機器の損失低減、高効率化を実現します。
感光体分野では、プロダクションプリンタ向けのワイドフォーマット(A0サイズ)有機感光体を開発し、量産を開始しました。アルミニウム基体の高精度加工技術によりワイドフォーマットに対応すると同時に、摩耗耐性に優れた樹脂を採用し膜厚を最適化することで、長期間にわたり色ムラの無い高品位な画像品質を達成しました。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は56億36百万円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電の蒸気タービンの汚損抑制技術や長寿命化技術を開発しています。また、マイクログリッドや風力発電サイト向けの蓄電池システムで要求される停電時の自立運転機能を付加した、大容量の蓄電池型PCS(Power Conditioning System)を開発しています。
火力発電分野では、既設のプラント向けメンテナンスサービス技術として、診断時間や現地での補修時間を短縮する技術を開発しています。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は11億93百万円です。
■食品流通部門
自販機分野では、限られたスペースで多くの冷凍食品を販売できる大容量の冷凍自動販売機「FROZEN STATION」の性能を向上させるための開発を進めています。商品の補充作業がさらに容易になるように、商品収納部の内部構造を工夫するとともに、販売時の商品の破損や詰まりをさらに起こりにくくするために、商品挙動のシミュレーションを用いた搬送経路の最適化を進めています。
中国・東南アジア向けに、国内で流通していない長身のペットボトル商品を販売するため、新たな販売機構を搭載した自販機を開発し発売しました。この販売機構は、商品の補充しやすさの向上、収容数の増加などの顧客の要望にも対応しています。また、東南アジアの特定顧客向けに、21インチ液晶ディスプレーを搭載し、スマートフォンによりキャッシュレスでQRコード決済ができる大型グラスフロント自販機を開発し発売しました。利便性だけでなく、国内で販売している自動販売機の技術を活用し、商品温度の均一性や自動販売機本体の信頼性も向上させています。
店舗分野では、地球温暖化係数の低い冷媒の採用により環境負荷を低減しながら、省エネルギー性を向上した冷凍機を開発しています。この冷凍機を内蔵したショーケースのラインアップを拡大しています。また、循環型社会の推進に貢献するため、従来の使い捨てカップ専用コーヒー自販機をマイボトルでも販売できるように改良した自販機を用いて、顧客事務所でのマイボトルの利用促進に関する実証実験に参加しました。本実証実験で得られた知見は製品開発に反映させ、廃棄物削減に取り組んでまいります。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は15億99百万円です。
■新技術・基盤技術部門
製造現場から様々なデータを収集し、クラウドシステムで製品の品質診断や設備の異常兆候検知などを行うIoT(Internet of Things)の活用が進展しています。IoT活用の更なる拡大を図るため、現場に設置するエッジデバイスとクラウドシステム間の通信量の削減や応答の高速化を狙い、エッジデバイス側で最適制御やAIなどの複雑なデータ処理を実行するための要素技術を開発しています。高速化したエッジデバイスの設計と試作を完了し、性能検証を進めています。
脱炭素化に向けて、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの導入が拡大しています。再生可能エネルギーのように、出力が変動する発電システムが大量導入されると、電力系統の電圧や周波数が不安定になる恐れがあります。この問題を解消するため、再生可能エネルギー用PCSに付加して系統を安定化させるための電圧・周波数調整などの機能(スマートインバータ機能)、及びPCSが多数台接続された電力系統を高速に監視制御する技術を開発しています。
環境負荷を低減するため、地球温暖化係数が大きいSF6ガスを使用しないガス絶縁開閉装置(GIS)の実現に向けた開発に取り組んでいます。絶縁性能が優れたSF6ガスを使用せずに代替ガスで同一の遮断性能を得るためには装置寸法が大きくなります。そこで、絶縁上重要な絶縁スペーサの誘電率分布を最適に制御して系全体の絶縁性能を高めることで装置を小型化する誘電率傾斜技術を開発しています。
SiCデバイスの性能を向上させるため、デバイス特性を劣化させる欠陥の発生や抑制メカニズム解明に取り組んでいます。窒化ガスプロセスの大規模な分子動力学計算(2千~1万原子)を実現し、現在、その成果を半導体製造プロセスで使うガス熱処理の現象解明に適用しています。今後、スーパーコンピュータ「富岳」を活用して10万~100万原子の大規模プロセス計算を予定しています。
カーボンニュートラルの実現に向けて、工場のコージェネレーションシステムや船舶エンジンなどに適用できる小規模なCO2分離回収が求められています。現在、膜分離方式によるCO2分離回収技術とともに、CO2を効率良く分離するために排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)などの介在物を除去する前処理技術の開発に取り組んでいます。
■その他部門
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は14百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。