有価証券報告書-第148期(2023/04/01-2024/03/31)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当社は、2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和.Prosperity2023」に掲げる「売上高1兆円」、「営業
利益率8%以上」を2022年度において1年前倒しで達成しました。2023年度は当社創立100周年の年であり、更な
る成長に向けて、パワエレ事業、パワー半導体事業の拡大を中核とする「成長戦略の推進」、グローバルでのもの
つくり力強化による「収益力の更なる強化」、及び、ESG(環境、社会、ガバナンス)を中心とした「経営基盤の
継続的な強化」を引き続き推し進めるとともに、外部環境変化への適応力を一層強化し、売上・利益の拡大を目指
しました。
当期における当社を取り巻く市場環境は、脱炭素化やデジタル化に向けた投資の拡大を背景に、自動車の電動
化、省エネ、デジタルインフラ等の継続したニーズの高まりにより、製造業やデータセンター等の設備投資が堅調
に推移しました。その一方で、中国経済の低迷継続等を背景に工作機械関連等の需要は低調に推移しました。
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ9.3%増収の1兆1,032億14百万円となりました。部門別には、「エネルギー」、「インダストリー」、「半導体」、「食品流通」全ての部門が前連結会計年度を上回りました。国内売上高は、前連結会計年度に比べ7.4%増収の7,707億90百万円となりました。また、海外売上高は、前連結会計年度に比べ13.8%増収の3,324億23百万円となりました。なお、売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度に比べ1.2ポイント増加して30.1%となりました。
売上原価は、前連結会計年度に比べ9.2%増加し7,999億25百万円となりました。売上高に対する売上原価の比率は、前連結会計年度に比べ0.1ポイント減少して72.5%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ4.9%増加し1,972億22百万円となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、前連結会計年度に比べ0.7ポイント減少して17.9%となりました。
営業利益は、原材料価格及び動力費の高騰影響や、生産能力増強に係る費用の増加があったものの、物量の増加
に加え、製品販売価格の値上げや原価低減の推進、為替影響等により、前連結会計年度に比べ171億84百万円増加し、1,060億66百万円となりました。売上高に対する営業利益の比率は、前連結会計年度に比べ0.8ポイント増加して9.6%となっております。
営業外収益(費用)は、前連結会計年度の10億70百万円の費用(純額)から、17億56百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比べ28億26百万円の収益(純額)の増加となりました。これは、債務保証損失を6億60百万円計上した一方、前連結会計年度において11億48百万円であった為替差損が当連結会計年度は24億19百万円の差益に転じたことなどによるものであります。
これらの結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ200億11百万円増加し、1,078億22百万円となりました。
特別利益は、固定資産売却益及び投資有価証券売却益を計上し、85億54百万円となりました。なお、主に投資有価証券売却益の計上額が減少したことにより、前連結会計年度に比べ26億円減少しております。
特別損失は、固定資産処分損及び投資有価証券評価損、投資有価証券売却損を計上し、23億44百万円となりました。なお、固定資産処分損が増加した一方、投資有価証券評価損の計上額が減少したこと、前連結会計年度に関係会社整理損失引当金繰入額を計上したことにより、前連結会計年度に比べ8億76百万円の減少となりました。
以上により、税金等調整前当期純利益は1,140億32百万円となり、前連結会計年度に比べ182億86百万円の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税等の税金費用319億61百万円を税金等調整前当期純利益から控除し、更に、非支配株主に帰属する当期純利益67億17百万円を控除した結果、753億53百万円となり、前連結会計年度に比べ140億5百万円の増加となりました。
セグメント別の内容は、次のとおりであります。
■エネルギー部門
売上高:3,427億60百万円(前期比 2.8%増加) 営業損益:301億46百万円(前期比 15億85百万円増加)
発電プラント分野及び器具分野の需要減少等があったものの、エネルギーマネジメント分野における大口案件の増
加及び施設・電源システム分野の需要拡大により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・発電プラント分野は、前期の再生可能エネルギー大口案件の影響等により、売上高は前期を下回りました。営業
損益は、売上高の減少及び大口案件の費用増により、前期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、太陽光発電向け大口案件の減少があったものの、産業向け変電機器及び電源機
器の大口案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、データセンター及び半導体メーカ向け案件の増加により、売上高、営業損益ともに
前期を上回りました。
・器具分野は、機械セットメーカ及び半導体製造装置関連の需要減少等により、売上高、営業損益ともに前期を下
回りました。
なお、当連結会計年度の受注高は2,320億円(富士電機㈱のエネルギー部門単独ベース)となっております。
■インダストリー部門
売上高:4,199億11百万円(前期比13.5%増加) 営業損益:342億64百万円(前期比 75億9百万円増加)
オートメーション分野、社会ソリューション分野及び設備工事分野の需要増加等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・オートメーション分野は、ファクトリーオートメーションにおけるコンポーネントの生産増を主因に、売上高、
営業損益ともに前期を上回りました。
・社会ソリューション分野は、原子力関連機器案件や放射線機器案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前
期を上回りました。
・設備工事分野は、空調設備工事の大口案件等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・ITソリューション分野は、大口案件等の増加により、売上高は前期を上回りましたが、営業損益は案件差等によ
り前期と同水準となりました。
なお、当連結会計年度の受注高は1,976億円(富士電機㈱のインダストリー部門単独ベース)となっておりま
す。
■半導体部門
売上高:2,280億37百万円(前期比 10.6%増加) 営業損益:361億64百万円(前期比 39億78百万円増加)
・半導体分野は、第4四半期において部材調達影響による生産減及び売上減があったものの、電動車(xEV)向け
パワー半導体の需要拡大により、売上高は前期を上回りました。営業損益は、パワー半導体の生産能力増強に係
る費用の増加、原材料価格の高騰があったものの、売上高の増加により、前期を上回りました。
なお、当連結会計年度の受注高は1,873億円(富士電機㈱の半導体部門単独ベース)となっております。
■食品流通部門
売上高:1,072億87百万円(前期比 12.6%増加) 営業損益:88億3百万円(前期比 44億53百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りまし
た。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器の改装需要拡大に加え、カウンター機材の大口案件増
加により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
なお、当連結会計年度の受注高は1,019億円(富士電機㈱の食品流通部門単独ベース)となっております。
■その他部門
売上高:631億54百万円(前期比 5.6%増加) 営業損益:43億11百万円(前期比 5億62百万円増加)
(注)当連結会計年度より、組織構造の変更に伴い、報告セグメントを従来の「パワエレ エネルギー」、「パワエレ インダストリー」、「半導体」、「発電プラント」及び「食品流通」から、「エネルギー」、「インダストリー」、「半導体」及び「食品流通」に変更しております。なお、各セグメントの前期比につきましては、前期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えたうえで算出しております。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
富士電機の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額又は数量で示すことはしておりません。
② 受注実績
富士電機の生産・販売品目も広範囲かつ多種多様にわたっており、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。このため受注実績については、「(1) 経営成績」におけるセグメント別の内容に関連付けて示しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産額は1兆2,711億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ896億22百万円増加しました。
流動資産は7,630億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ495億19百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売掛金が209億10百万円、契約資産が195億99百万円、棚卸資産が274億44百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定資産は5,080億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ401億18百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は3,369億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ289億73百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,711億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ111億44百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、99億67百万円増加したことなどによるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は6,097億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億18百万円増加しました。
流動負債は4,753億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ285億16百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ1年内償還予定の社債が150億円減少した一方で、コマーシャル・ペーパーが360億円増加したことなどによるものであります。
固定負債は1,343億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ282億98百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が135億円、リース債務が181億84百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は1,629億6百万円となり、前連結会計年度末に比べ203億67百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は12.8%となり、前連結会計年度末に比べ2.7ポイント減少しました。
当連結会計年度末の純資産合計は6,614億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ894億3百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が582億13百万円、為替換算調整勘定が155億50百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は47.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.6ポイント増加しました。
セグメント別の内容は、次のとおりであります。
■エネルギー部門
当連結会計年度末のセグメント資産は3,280億24百万円となり、売掛金、契約資産、前渡金の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ244億95百万円増加しました。
■インダストリー部門
当連結会計年度末のセグメント資産は3,791億63百万円となり、売掛金、契約資産、棚卸資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ393億91百万円増加しました。
■半導体部門
当連結会計年度末のセグメント資産は3,554億3百万円となり、棚卸資産、有形固定資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ406億99百万円増加しました。
■食品流通部門
当連結会計年度末のセグメント資産は644億94百万円となり、棚卸資産の減少を主因として、前連結会計年度末に比べ89億76百万円減少しました。
■その他部門
当連結会計年度末のセグメント資産は364億23百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億70百万円増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、224億39百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加(前連結会計年度は666億65百万円の増加)となり、前連結会計年度に対しては、442億26百万円の資金流入額の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は848億58百万円(前連結会計年度は1,161億63百万円の増加)となりました。これは、売上債権及び契約資産、棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前当期純利益の計上などによるものであります。
前連結会計年度に対しては、313億5百万円の資金流入額の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は624億18百万円(前連結会計年度は494億98百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前連結会計年度に対しては、129億20百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の減少は458億67百万円(前連結会計年度は771億93百万円の減少)となりました。これは、主として、コマーシャル・ペーパーが増加した一方で、長期借入金並びにリース債務の返済などによるものであります。
前連結会計年度に対しては、313億26百万円の資金流出額の減少となりました。
当連結会計年度における資本の財源は営業活動によるキャッシュ・フローであり、その主な内訳は、税金等調整前当期純利益1,140億32百万円、減価償却費518億75百万円、契約負債の増加によるもの43億57百万円、売上債権及び契約資産の増加によるもの△356億99百万円、法人税等の支払額△314億81百万円、棚卸資産の増加によるもの△213億60百万円、投資有価証券売却損益△68億55百万円、などとなっております。
なお、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、設備投資に係る資金については、基本的に、社債及び長期借入金より調達することとしております。
これらの結果、当連結会計年度末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末に比べ186億21百万円(22.1%)減少し、655億43百万円となりました。
(4)経営上の目標の達成状況(連結)
当社は、創立100周年に当たる2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画において、目標に定めた売上高1兆円・営業利益率8%以上を1年前倒しで達成しました。
2023年度連結実績は、次のとおりとなっております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表を作成するにあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりであります。連結財務諸表の作成には、資産、負債、収益及び費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社が連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであると考えております。
①履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益について
当社グループは、個別受注生産による製品の販売及び工事契約による請負、役務の提供(以下、工事契約等)については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識する方法(履行義務の充足に係る進捗度の見積りはコストに基づくインプット法)を適用しております。履行義務の充足に係る進捗度は案件の原価総額の見積りに対する連結会計年度末までの発生原価の割合に基づき算定しております。当該見積りについて将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する収益及び費用の金額に影響を与える可能性があります。
②固定資産(のれんを含む)の減損判定
当社グループは、保有する固定資産(のれんを含む)について減損の兆候がある場合は、当該資産又は資産グループについて減損損失を認識するかどうかの判定を行い、減損が必要と判定された場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に用いられる当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの見積り及び仮定等について将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
③投資有価証券の減損判定
当社グループは、上場株式は相場価格を用いて時価を算定しております。期末における当該時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合は減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。また、非上場株式等の市場価格のない株式等については、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合は、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振等、現在の見積り及び仮定に反映されていない事象が発生した場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において評価損が発生する可能性があります。
④繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を認識しております。将来の課税所得の見積りについて、将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
⑤退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務は、数理計算上の仮定を用いて算定しており、当該数理計算上の仮定には、割引率、退職率、昇給率等の様々な計算基礎があります。当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表における退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付に係る調整累計額の金額に影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載しているとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当社は、2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和.Prosperity2023」に掲げる「売上高1兆円」、「営業
利益率8%以上」を2022年度において1年前倒しで達成しました。2023年度は当社創立100周年の年であり、更な
る成長に向けて、パワエレ事業、パワー半導体事業の拡大を中核とする「成長戦略の推進」、グローバルでのもの
つくり力強化による「収益力の更なる強化」、及び、ESG(環境、社会、ガバナンス)を中心とした「経営基盤の
継続的な強化」を引き続き推し進めるとともに、外部環境変化への適応力を一層強化し、売上・利益の拡大を目指
しました。
当期における当社を取り巻く市場環境は、脱炭素化やデジタル化に向けた投資の拡大を背景に、自動車の電動
化、省エネ、デジタルインフラ等の継続したニーズの高まりにより、製造業やデータセンター等の設備投資が堅調
に推移しました。その一方で、中国経済の低迷継続等を背景に工作機械関連等の需要は低調に推移しました。
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ9.3%増収の1兆1,032億14百万円となりました。部門別には、「エネルギー」、「インダストリー」、「半導体」、「食品流通」全ての部門が前連結会計年度を上回りました。国内売上高は、前連結会計年度に比べ7.4%増収の7,707億90百万円となりました。また、海外売上高は、前連結会計年度に比べ13.8%増収の3,324億23百万円となりました。なお、売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度に比べ1.2ポイント増加して30.1%となりました。
売上原価は、前連結会計年度に比べ9.2%増加し7,999億25百万円となりました。売上高に対する売上原価の比率は、前連結会計年度に比べ0.1ポイント減少して72.5%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ4.9%増加し1,972億22百万円となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、前連結会計年度に比べ0.7ポイント減少して17.9%となりました。
営業利益は、原材料価格及び動力費の高騰影響や、生産能力増強に係る費用の増加があったものの、物量の増加
に加え、製品販売価格の値上げや原価低減の推進、為替影響等により、前連結会計年度に比べ171億84百万円増加し、1,060億66百万円となりました。売上高に対する営業利益の比率は、前連結会計年度に比べ0.8ポイント増加して9.6%となっております。
営業外収益(費用)は、前連結会計年度の10億70百万円の費用(純額)から、17億56百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比べ28億26百万円の収益(純額)の増加となりました。これは、債務保証損失を6億60百万円計上した一方、前連結会計年度において11億48百万円であった為替差損が当連結会計年度は24億19百万円の差益に転じたことなどによるものであります。
これらの結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ200億11百万円増加し、1,078億22百万円となりました。
特別利益は、固定資産売却益及び投資有価証券売却益を計上し、85億54百万円となりました。なお、主に投資有価証券売却益の計上額が減少したことにより、前連結会計年度に比べ26億円減少しております。
特別損失は、固定資産処分損及び投資有価証券評価損、投資有価証券売却損を計上し、23億44百万円となりました。なお、固定資産処分損が増加した一方、投資有価証券評価損の計上額が減少したこと、前連結会計年度に関係会社整理損失引当金繰入額を計上したことにより、前連結会計年度に比べ8億76百万円の減少となりました。
以上により、税金等調整前当期純利益は1,140億32百万円となり、前連結会計年度に比べ182億86百万円の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税等の税金費用319億61百万円を税金等調整前当期純利益から控除し、更に、非支配株主に帰属する当期純利益67億17百万円を控除した結果、753億53百万円となり、前連結会計年度に比べ140億5百万円の増加となりました。
セグメント別の内容は、次のとおりであります。
■エネルギー部門
売上高:3,427億60百万円(前期比 2.8%増加) 営業損益:301億46百万円(前期比 15億85百万円増加)
発電プラント分野及び器具分野の需要減少等があったものの、エネルギーマネジメント分野における大口案件の増
加及び施設・電源システム分野の需要拡大により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・発電プラント分野は、前期の再生可能エネルギー大口案件の影響等により、売上高は前期を下回りました。営業
損益は、売上高の減少及び大口案件の費用増により、前期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、太陽光発電向け大口案件の減少があったものの、産業向け変電機器及び電源機
器の大口案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、データセンター及び半導体メーカ向け案件の増加により、売上高、営業損益ともに
前期を上回りました。
・器具分野は、機械セットメーカ及び半導体製造装置関連の需要減少等により、売上高、営業損益ともに前期を下
回りました。
なお、当連結会計年度の受注高は2,320億円(富士電機㈱のエネルギー部門単独ベース)となっております。
■インダストリー部門
売上高:4,199億11百万円(前期比13.5%増加) 営業損益:342億64百万円(前期比 75億9百万円増加)
オートメーション分野、社会ソリューション分野及び設備工事分野の需要増加等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・オートメーション分野は、ファクトリーオートメーションにおけるコンポーネントの生産増を主因に、売上高、
営業損益ともに前期を上回りました。
・社会ソリューション分野は、原子力関連機器案件や放射線機器案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前
期を上回りました。
・設備工事分野は、空調設備工事の大口案件等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
・ITソリューション分野は、大口案件等の増加により、売上高は前期を上回りましたが、営業損益は案件差等によ
り前期と同水準となりました。
なお、当連結会計年度の受注高は1,976億円(富士電機㈱のインダストリー部門単独ベース)となっておりま
す。
■半導体部門
売上高:2,280億37百万円(前期比 10.6%増加) 営業損益:361億64百万円(前期比 39億78百万円増加)
・半導体分野は、第4四半期において部材調達影響による生産減及び売上減があったものの、電動車(xEV)向け
パワー半導体の需要拡大により、売上高は前期を上回りました。営業損益は、パワー半導体の生産能力増強に係
る費用の増加、原材料価格の高騰があったものの、売上高の増加により、前期を上回りました。
なお、当連結会計年度の受注高は1,873億円(富士電機㈱の半導体部門単独ベース)となっております。
■食品流通部門
売上高:1,072億87百万円(前期比 12.6%増加) 営業損益:88億3百万円(前期比 44億53百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りまし
た。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器の改装需要拡大に加え、カウンター機材の大口案件増
加により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。
なお、当連結会計年度の受注高は1,019億円(富士電機㈱の食品流通部門単独ベース)となっております。
■その他部門
売上高:631億54百万円(前期比 5.6%増加) 営業損益:43億11百万円(前期比 5億62百万円増加)
(注)当連結会計年度より、組織構造の変更に伴い、報告セグメントを従来の「パワエレ エネルギー」、「パワエレ インダストリー」、「半導体」、「発電プラント」及び「食品流通」から、「エネルギー」、「インダストリー」、「半導体」及び「食品流通」に変更しております。なお、各セグメントの前期比につきましては、前期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えたうえで算出しております。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
富士電機の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額又は数量で示すことはしておりません。
② 受注実績
富士電機の生産・販売品目も広範囲かつ多種多様にわたっており、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。このため受注実績については、「(1) 経営成績」におけるセグメント別の内容に関連付けて示しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
エネルギー | 342,760 | 102.8 |
インダストリー | 419,911 | 113.5 |
半導体 | 228,037 | 110.6 |
食品流通 | 107,287 | 112.6 |
その他 | 63,154 | 105.6 |
消去 | △57,936 | - |
合計 | 1,103,214 | 109.3 |
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産額は1兆2,711億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ896億22百万円増加しました。
流動資産は7,630億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ495億19百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売掛金が209億10百万円、契約資産が195億99百万円、棚卸資産が274億44百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
固定資産は5,080億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ401億18百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は3,369億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ289億73百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,711億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ111億44百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ投資有価証券が、その他有価証券の時価評価差額相当分の増加を主因として、99億67百万円増加したことなどによるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は6,097億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億18百万円増加しました。
流動負債は4,753億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ285億16百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ1年内償還予定の社債が150億円減少した一方で、コマーシャル・ペーパーが360億円増加したことなどによるものであります。
固定負債は1,343億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ282億98百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が135億円、リース債務が181億84百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は1,629億6百万円となり、前連結会計年度末に比べ203億67百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は12.8%となり、前連結会計年度末に比べ2.7ポイント減少しました。
当連結会計年度末の純資産合計は6,614億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ894億3百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が582億13百万円、為替換算調整勘定が155億50百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は47.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.6ポイント増加しました。
セグメント別の内容は、次のとおりであります。
■エネルギー部門
当連結会計年度末のセグメント資産は3,280億24百万円となり、売掛金、契約資産、前渡金の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ244億95百万円増加しました。
■インダストリー部門
当連結会計年度末のセグメント資産は3,791億63百万円となり、売掛金、契約資産、棚卸資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ393億91百万円増加しました。
■半導体部門
当連結会計年度末のセグメント資産は3,554億3百万円となり、棚卸資産、有形固定資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ406億99百万円増加しました。
■食品流通部門
当連結会計年度末のセグメント資産は644億94百万円となり、棚卸資産の減少を主因として、前連結会計年度末に比べ89億76百万円減少しました。
■その他部門
当連結会計年度末のセグメント資産は364億23百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億70百万円増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、224億39百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加(前連結会計年度は666億65百万円の増加)となり、前連結会計年度に対しては、442億26百万円の資金流入額の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は848億58百万円(前連結会計年度は1,161億63百万円の増加)となりました。これは、売上債権及び契約資産、棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前当期純利益の計上などによるものであります。
前連結会計年度に対しては、313億5百万円の資金流入額の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は624億18百万円(前連結会計年度は494億98百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前連結会計年度に対しては、129億20百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の減少は458億67百万円(前連結会計年度は771億93百万円の減少)となりました。これは、主として、コマーシャル・ペーパーが増加した一方で、長期借入金並びにリース債務の返済などによるものであります。
前連結会計年度に対しては、313億26百万円の資金流出額の減少となりました。
当連結会計年度における資本の財源は営業活動によるキャッシュ・フローであり、その主な内訳は、税金等調整前当期純利益1,140億32百万円、減価償却費518億75百万円、契約負債の増加によるもの43億57百万円、売上債権及び契約資産の増加によるもの△356億99百万円、法人税等の支払額△314億81百万円、棚卸資産の増加によるもの△213億60百万円、投資有価証券売却損益△68億55百万円、などとなっております。
なお、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、設備投資に係る資金については、基本的に、社債及び長期借入金より調達することとしております。
これらの結果、当連結会計年度末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末に比べ186億21百万円(22.1%)減少し、655億43百万円となりました。
(4)経営上の目標の達成状況(連結)
当社は、創立100周年に当たる2023年度を最終年度とする5ヵ年中期経営計画において、目標に定めた売上高1兆円・営業利益率8%以上を1年前倒しで達成しました。
2023年度連結実績は、次のとおりとなっております。
2023年度 中期経営計画 | 2023年度 実績 | 増減 | |
売上高 | 10,000億円 | 11,032億円 | +1,032億円 |
営業利益 | 800億円 | 1,061億円 | +261億円 |
営業利益率 | 8.0% | 9.6% | +1.6pt |
親会社株主に 帰属する当期純利益 | 550億円 | 754億円 | +204億円 |
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表を作成するにあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりであります。連結財務諸表の作成には、資産、負債、収益及び費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。
当社が連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであると考えております。
①履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益について
当社グループは、個別受注生産による製品の販売及び工事契約による請負、役務の提供(以下、工事契約等)については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識する方法(履行義務の充足に係る進捗度の見積りはコストに基づくインプット法)を適用しております。履行義務の充足に係る進捗度は案件の原価総額の見積りに対する連結会計年度末までの発生原価の割合に基づき算定しております。当該見積りについて将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する収益及び費用の金額に影響を与える可能性があります。
②固定資産(のれんを含む)の減損判定
当社グループは、保有する固定資産(のれんを含む)について減損の兆候がある場合は、当該資産又は資産グループについて減損損失を認識するかどうかの判定を行い、減損が必要と判定された場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に用いられる当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの見積り及び仮定等について将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
③投資有価証券の減損判定
当社グループは、上場株式は相場価格を用いて時価を算定しております。期末における当該時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合は減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。また、非上場株式等の市場価格のない株式等については、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合は、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振等、現在の見積り及び仮定に反映されていない事象が発生した場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において評価損が発生する可能性があります。
④繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を認識しております。将来の課税所得の見積りについて、将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
⑤退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務は、数理計算上の仮定を用いて算定しており、当該数理計算上の仮定には、割引率、退職率、昇給率等の様々な計算基礎があります。当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表における退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付に係る調整累計額の金額に影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載しているとおりであります。