四半期報告書-第148期第2四半期(2023/07/01-2023/09/30)
(1)経営成績
当社は、2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和.Prosperity2023」に掲げる「売上高1兆円」、「営業
利益率8%以上」を2022年度において1年前倒しで達成しました。2023年度は当社創立100周年の年であり、更な
る成長に向けて、パワエレ事業、パワー半導体事業の拡大を中核とする「成長戦略の推進」、グローバルでのもの
つくり力強化による「収益力の更なる強化」、及び、ESG(環境、人財、ガバナンス)を中心とした「経営基盤の
継続的な強化」を引き続き推し進めるとともに、外部環境変化への適応力を一層強化し、売上・利益の拡大を目指
しています。
当第2四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、カーボンニュートラルやデジタル化に向けた投
資の拡大を背景に、自動車の電動化、省エネ、デジタルインフラ等の継続したニーズの高まりにより、製造業やデ
ータセンター等の設備投資が堅調に推移しました。その一方で、中国における設備投資は引き続き低調に推移した
他、世界的な金融引締め等により、先行きが不透明な状況が継続しました。
このような環境のもと、当社は、拡大する需要に対応したパワー半導体の生産能力増強や、顧客需要に対応した
生産体制の最適化、部材調達における地政学リスクやサプライチェーンの混乱影響の極小化に向けた取り組みを継
続して実施しました。
当第2四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、「発電プラント」を除く4部門で増加し、前年同期に比べ
445億54百万円増加(10.0%増加)の4,916億92百万円となりました。
損益面では、原材料価格及び動力費の高騰影響や、研究開発費、生産能力増強に係る費用の増加があったもの
の、物量の増加に加え、製品販売価格の値上げや原価低減の推進、為替影響等により、営業損益は前年同期に比べ
82億75百万円増加の349億94百万円となりました。経常損益は前年同期に比べ57億40百万円増加の346億19百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ40億85百万円増加の243億43百万円となり、売上高、営業損益、経常損益、親会社株主に帰属する四半期純損益いずれも、過去最高を更新しました。
<セグメント別状況>■パワエレ エネルギー部門
売上高:1,227億94百万円(前年同期比 6.2%増加) 営業損益:86億99百万円(同 8億77百万円減少)
施設・電源システム分野の需要拡大を主因に、売上高は前年同期を上回りましたが、営業損益は器具分野の需要
減少等により前年同期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、産業向け変電機器及び電源機器の大口案件の増加等により、売上高は前年同
期を上回りましたが、営業損益は案件差等により、前年同期を下回りました。
・施設・電源システム分野は、国外のデータセンター及び半導体メーカ向け案件の増加により、売上高、営業損
益ともに前年同期を上回りました。
・器具分野は、セットメーカ及び半導体製造装置関連の需要減少等により、売上高、営業損益ともに前年同期を
下回りました。
■パワエレ インダストリー部門
売上高:1,712億47百万円(前年同期比 14.0%増加) 営業損益:50億22百万円(同 38億98百万円増加)
オートメーション分野、設備工事分野及びITソリューション分野の需要増加等により、売上高、営業損益ともに
前年同期を上回りました。
・オートメーション分野は、ファクトリーオートメーションにおけるコンポーネントの生産増を主因に、売上
高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・社会ソリューション分野は、放射線機器案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りまし
た。
・設備工事分野は、空調設備工事の大口案件等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・ITソリューション分野は、公共及び文教分野の大口案件等の需要増により、売上高、営業損益ともに前年同期
を上回りました。
■半導体部門
売上高:1,085億39百万円(前年同期比 11.9%増加) 営業損益:167億97百万円(同 18億49百万円増加)
・半導体分野は、電動車(xEV)向けパワー半導体の需要拡大により、売上高は前年同期を上回りました。営業
損益は、パワー半導体の生産能力増強に係る費用の増加、原材料価格の高騰があったものの、売上高の増加に
より、前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:325億27百万円(前年同期比 6.5%減少) 営業損益:1億1百万円(同 5億90百万円増加)
・発電プラント分野は、前期の再生可能エネルギーの大口案件の影響により、売上高は前年同期を下回ったもの
の、営業損益は案件差及び原価低減の推進等により、前年同期を上回りました。
■食品流通部門
売上高:531億81百万円(前年同期比 18.7%増加) 営業損益:54億17百万円(同 21億88百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回り
ました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器の改装需要拡大に加え、カウンター機材案件の増加
により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:312億65百万円(前年同期比 9.3%増加) 営業損益:20億51百万円(同 5億17百万円増加)
(2)財政状態
当第2四半期連結会計期間末の総資産額は1兆1,729億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ86億19百万円減少しました。
流動資産は7,020億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ115億1百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ契約資産が236億13百万円、棚卸資産が361億6百万円、それぞれ増加した一方で、現金及び預金が245億56百万円、売掛金が520億68百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定資産は4,708億37百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億91百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は3,183億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ104億13百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,524億78百万円となり、前連結会計年度末に比べ75億23百万円減少しました。これは、主に投資有価証券が、売却及びその他有価証券の時価評価差額相当分の減少を主因として、108億52百万円減少したことによるものであります。
当第2四半期連結会計期間末の負債合計は5,771億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ323億9百万円減少しました。
流動負債は4,345億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ122億74百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べコマーシャル・ペーパーが220億円増加した一方で、仕入債務が120億24百万円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定負債は1,426億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ200億36百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が130億円減少したことなどによるものであります。
なお、当第2四半期連結会計期間末の有利子負債残高は1,569億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ262億93百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は13.4%となり、前連結会計年度末に比べ2.1ポイント減少しました。
当第2四半期連結会計期間末の純資産合計は5,957億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ236億91百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が157億73百万円、為替換算調整勘定が131億15百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は46.1%となり、前連結会計年度末に比べ2.3ポイント増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、132億43百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加(前年同期は492億18百万円の増加)となり、前年同期に対して359億75百万円の資金流入額の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において営業活動による資金の増加は、348億28百万円(前年同期は598億71百万円の増加)となりました。これは、棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前四半期純利益の計上並びに売上債権及び契約資産が減少したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、250億43百万円の資金流入額の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において投資活動による資金の減少は、215億85百万円(前年同期は106億53百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、109億32百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において財務活動による資金の減少は、418億63百万円(前年同期は357億13百万円の減少)となりました。これは主として、長期借入金の返済並びに社債の償還などによるものであります。
これらの結果、当第2四半期連結会計期間末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末残高に比べ245億83百万円(29.2%)減少し、595億82百万円となりました。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8)研究開発活動
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当第2四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は169億2百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第2四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,171件です。
■パワエレ エネルギー部門
エネルギーマネジメント分野では、富士電機インド社において、業界最高レベルの変換効率98.8%を実現した太陽光発電向けのセントラル型PCS(Power Conditioning System)「PVI1500CI」(DC1,500V、1,000~4,000kVA)を開発し発売しました。インド政府は2030年までに二酸化炭素排出の50%削減を目指しており、インドの太陽光発電市場は年間8~10GW規模で拡大すると予想されています。PVI1500CIは、日本で販売実績のあるPVI1500CJをベースとし、1,000kVAの電力変換モジュールを4台組み合わせることにより、最大4,000kVAの大容量に対応します。
国内では、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた電力需給調整力の一つとして、定置用蓄電池の導入が期待されています。蓄電池システムが導入される立地が、石油コンビナートや重化学系プラントなど沿岸地域に多いことから、重耐塩仕様の屋外設置型・2,600kVA蓄電池用PCS(PVI1400CJ-3)を開発し発売しました。耐環境性を向上したことにより、さまざまな設置場所への蓄電池システムの導入拡大に貢献します。また、電力市場で取引する事業者に対し、蓄電池の充放電計画の策定など運用を支援することにより、収益拡大に貢献する蓄電池運用システムの開発を進めています。
変電分野では、設置面積を大幅に削減した154kV,200MVAの特別三相変圧器を開発しました。特別三相変圧器は、三相変圧器を3個の単相変圧器に分割して輸送し、現地で再組立てが可能な構造の変圧器です。今回、単相変圧器の構造を改良し、負荷時タップ切換器を単相変圧器内に収納することで、当社同仕様の三相変圧器に対して、本体部分の設置面積を20%削減しました。
施設・電源システム分野では、工場設備や医療設備、放送・通信設備向けに200V系の中容量無停電電源装置「UPS6600FX」(20~50kVA)を開発し発売しました。本製品はインバータやコンバータなどの電力変換部をユニット構造として交換を容易にし、冷却ファンや制御電源などの部品を長寿命化したことにより、メンテナンスコストの削減に貢献します。また、データセンターの大容量化のニーズに対応するため、業界最大クラスとなる単機容量2,400kVAの大容量モジュール型無停電電源装置「UPS7500WX」を開発し発売しました。商用電源が正常な際に、電力損失が少ない商用電源から給電する「高効率運転モード(HEモード)」を搭載し、電力交換効率98.5%を実現しました。また、周辺盤を組み合わせた一体設計とすることで、設置面積を従来比25%削減し、業界最小クラスを実現しました。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は33億91百万円です。
■パワエレ インダストリー部門
ファクトリーオートメーション分野では、工作機械やファン・ポンプ、搬送ライン向けの汎用インバータ「FRENIC-Ace シリーズ」を刷新し、発売を開始しました。海外で広く普及し、高速通信が可能な通信規格であるEthernetを標準搭載したタイプや、省スペース化が可能なフィンレスタイプなどの機種をそろえ、インバータのメンテナンスに有効な予兆保全機能を強化しました。本製品は、日本、東南アジア、欧米などにグローバルに展開していきます。
FAコンポーネント分野では、製造現場の装置・機械の監視・操作に用いられ、IoTシステムのゲートウェイ機器としても活用されるプログラマブル表示器「MONITOUCH V10 シリーズ」を開発し発売しました。クアッドコアCPUの搭載とアプリケーションの最適化により、業界トップの操作性と視認性、通信処理の高速化を実現しました。また、ロボット・印刷機・金属加工機・搬送装置向けに中容量(2.9kW~7.5kW)対応のサーボシステム「ALPHA7」シリーズを開発し発売しました。国際標準規格IEC 61800-5-2などで定義された各種安全機能にも対応し、安全操業に貢献します。さらに、「ALPHA7」用の診断オプションを開発し発売しました。当社独自のアナリティクス・AI(MSPC)を適用した異常診断機能により、加工装置など設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼動中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。これにより、装置の安定稼働に貢献します。
駆動制御システム分野では、国内鉄鋼圧延プラント設備を中心に1970年代に多数納入された直流電動機(日本電機工業会規格 JEM1109に準拠)の互換型として「800番/600番互換型鉄鋼圧延補機用誘導電動機」を開発し発売しました。本誘導電動機は既設の直流電動機に外形寸法を合わせたとともに、出力や回転速度及び過負荷耐量を含めた電気仕様、耐振強化構造や冷却方式についても既設の直流電動機と同等仕様としたことにより、短期間でのシステムの置き換えを可能としました。
計測制御システム分野では、ソフトセンサを構築するためのツールとして、業界で初めて自動機械学習を適用した「推算用モデル式構築/演算ツール」を開発し発売しました。ソフトセンサは、リアルタイムで測定することが難しい濃度や強度などの値を、温度や圧力、流量などの容易に収集できるデータを使って推算する技術で、化学や鉄鋼、製薬などのプラント・工場で用いられます。このソフトセンサを監視制御システムに実装することで、製造過程の製品状態をリアルタイムで推算でき、原料やエネルギーのムダを抑えることが可能となりますが、一方でソフトセンサを構築するためには多くの作業が必要で、構築に時間がかかっていました。今回開発した「推算用モデル式構築/演算ツール」は、ソフトセンサを構築する工程を自動化したことで作業の大幅な時間短縮を実現し、顧客の作業効率を改善します。
情報制御システム分野では、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献するため、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)を提供しています。MESは、複数の「MainGATE」のパッケージで構成されています。従来は分かれていた製造の実行指示、製造管理、統合マスタ管理を1つに統合したパッケージを開発し発売しました。新たに搭載した製造実績データの連携機能により、操業の効率化・品質管理・設備保全などに活用できます。さらに、国際標準の通信規格OPC UAに準拠したことで、連携可能な監視制御システムや基幹業務システムが拡大しました。また、製造実績分析パッケージ「MainGATE/PPA」の機能を拡張した「MainGATE/MPA」を開発し発売しました。生産管理の国際標準規格ISO22400-2に準拠し、そこで定められた製造現場の主要な4つのオペレーション領域毎(品質/生産性/保全/在庫)に分析テンプレートを準備し、KPI(重要業績評価指標)からプロセスデータまでのドリルダウン分析を可能とすることで、データ活用による製造工程のDXを支援します。
放射線機器・システム分野では、任意の場所で中性子線の線量率の測定が可能な可搬型モニタリングポストを開発し発売しました。内部機器の改良などにより小型軽量にしたことで、移動式架台に機器類を実装して容易に運搬できます。また、内蔵したGPSによって取得した位置情報と線量率データと合わせて保存することで、自然災害時などにおける安全管理を支援します。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は46億19百万円です。
■半導体部門
産業モジュール分野では、低損失で高温動作が可能な第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。鉄道や再生可能エネルギー分野における高耐圧化の要求に応えるため、大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)パッケージに、最新の第7世代IGBT/FWD「Xシリーズ」チップを搭載した3,300V耐圧品を系列化しました。これまでに系列化した1,700V耐圧品及び2,300V耐圧品とともに、サンプル展開を進めています。風力発電システム向けには、電力安定化回路に対して最適化した第7世代IGBTモジュール1,700V/600A DualXTを開発し、量産を開始しました。このモジュールの適用により、電力変換装置の信頼性向上に貢献します。また、太陽光発電システム向けに最適化したIGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を新たに開発し、サンプル展開を開始しました。従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことにより、装置の小型化に貢献します。エアコンやサーボシステム向けには、第7世代IGBT/FWDチップを搭載したモールドタイプの小容量IPM(Intelligent Power Module)650V/10~30Aを開発し発売しました。モールド構造の採用により高密度実装化することでモジュールの外形寸法を大幅に小型化(従来ケース構造比40%)しました。また、最新のチップを適用することで、従来製品に対して、電力損失を10%低減し、電磁ノイズも約1/3に低減しました。これらにより、機器の小型化と省エネに貢献します。
車載モジュール分野では、中国の電動車市場向けに、RC-IGBTチップと冷却性能の改善により、電力密度をさらに高めた直接水冷型パワーモジュール750V/820A(M675パッケージ)を開発し、量産を開始しました。また、2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、損失を低減し信頼性を高めた次世代IGBT及びSiCの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の高効率化と小型軽量化に貢献します。
IC分野では、LED照明用第4世代臨界PFC-ICを開発し、量産を開始しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)改善機能により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制Class Cに準拠しました。また、新たに開発した第4.5世代LLC電流共振ICと組み合わせて適用することで、電源システムにおける軽負荷時の効率向上、待機電力の低減、電源部品の削減によるコストダウンに貢献します。また、スイッチング電源向けに、第7世代PWM制御ICを開発し、サンプル展開を開始しました。ICの間欠動作機能を追加することにより、電源待機時の消費電力を低減し、省エネルギーに貢献します。さらに高電圧入力端子の耐圧を従来の500Vから業界最高の710Vに高耐圧化したことで、海外の電力供給が不安定な地域でも適用可能になります。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は61億円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電プラントの発電効率や稼働率の向上に向けて、復水器の高効率化、タービンの汚損抑制や高腐食性蒸気に対する耐久性向上などの技術を継続して開発しています。また、マイクログリッドや風力発電サイト向けの蓄電池システムで要求される停電時の自立運転機能を付加した、大容量の蓄電池型PCSの開発を進めています。工場・施設などの電源向けに、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した定置型の水素発電システムの開発を進めています。現在、日本産業規格(JIS)に準拠した安全性試験(JIS C 62282-3-100)と性能試験(JIS C 62282-3-201)を完了し、発電システムとしての信頼性を確認しました。引き続き、当社がこれまでの燃料電池の研究開発で培った劣化抑制技術、監視制御技術、メンテナンス技術を活かし、発電効率の低下抑制や発電システムの長寿命化を実現します。
ソリューションサービス分野では、発電プラント向けメンテナンスサービスとして、発電機の劣化診断技術の開発を進めています。運転中の発電機から、劣化要因となる腐食性ガスを測定し、固定子巻線の劣化状態を推定する技術です。従来よりも測定可能なガス種を増やして余寿命の推定精度を向上し、保守・保全プランを提案します。
原子力分野では、原子力発電所の廃止措置で発生する廃棄物の円滑な処理に向けて、迅速に放射性元素濃度を分析するため、試料の前処理を含めた分析システムの開発を進めています。また、原子力発電所で発生する廃液や焼却灰を固化して処分するため、一般的に使用されているセメントに比べてセシウムの閉じ込め効果が高いジオポリマーを用いた安定固化技術の開発を進めています。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は10億21百万円です。
■食品流通部門
自動販売機(自販機)分野では、省エネルギー(省エネ)性能を向上させた「サステナ自販機」の機種拡大を進めています。サステナ自販機は、インバータ制御によるコンプレッサの高効率化、庫内構造と断熱材の最適化による侵入熱量の低減などを進めることにより、従来機と比べて年間消費電力量を最大20%削減し、業界最高レベルの省エネを実現、2022年度には主力機種を対象として発売しました。2023年度は小型機を中心に対象機種を拡大して系列開発を推進しています。
店舗分野では、平型冷凍ショーケースの消費電力量削減のため、ショーケースの上部に取り付け可能な「省エネフード」を開発し発売しました。商品の取出しやすさを維持しながら、天井からの輻射熱による熱負荷の侵入を低減し、冷凍機の負荷を削減する事で省エネを実現しました。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は17億62百万円です。
■新技術・基盤技術部門
太陽光発電や風力発電で発電し、貯蔵した電力を電力取引市場で売買するビジネスが拡大しています。そこで、電力取引における独立系発電事業者(IPP)や特定卸供給事業者(アグリゲーター)などの収益最大化に向けて、EMS(Energy Management System)に搭載する、電力取引市場の価格予測技術を開発しています。また、卸売電力や需給調整などの新たな電力取引市場での収益向上のため、充放電を計画的に行う蓄電池システムの制御技術を開発しています。
エネルギー利用効率向上や生産性向上のため、デジタル技術を活用した製造現場のスマート化が進展しています。これに伴いネットワーク化が進んでいますが、外部からのサイバー攻撃による情報流出や生産停止のリスクは増大しており、サイバーセキュリティ対策の重要性が増しています。そこで、制御システムにおけるセキュリティの国際標準規格であるIEC62443への対応に向けたセキュリティ検証技術の開発を進めています。
当社の半導体事業は、需要の拡大により多くの案件に対応するため、開発リードタイムの短縮が課題となっています。この課題を解決するため、シミュレーション技術の高度化を進めています。現在、パワー半導体の電気回路と熱の連成解析において、従来の3Dモデルと同等の解析精度を維持し、かつ、1/1000の短時間で計算できる1Dモデルの技術開発に取り組んでいます。
近年、分散型電源の利用が拡大する中、太陽光発電や燃料電池、蓄電池など、直流で動作する電源設備が増えています。これらを直流バスで接続する直流配電システムの高効率化に向け、低損失かつ広範囲な電圧変動に対応可能なDC/DCコンバータを開発しています。当社SiCモジュール適用による高効率化と、新回路方式による電圧の許容範囲拡大化に向け、要素技術開発を進めています。
地熱発電では、配管内にシリカ(SiO2)によるスケールが堆積すると発電効率が低下するため、発電停止を伴うメンテナンス作業が必要となります。そこで、メンテナンス回数の削減のため、計算科学を用いたシリカスケールの発生量予測技術開発に取り組んでいます。
将来の水素社会実現に向けて、水素製造装置のコスト低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。性能向上や長期信頼性などの技術課題の抽出と対策を検討するため、水電解セルの実証を進めています。本開発の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」で「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しています。
■その他部門
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は7百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。
当社は、2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和.Prosperity2023」に掲げる「売上高1兆円」、「営業
利益率8%以上」を2022年度において1年前倒しで達成しました。2023年度は当社創立100周年の年であり、更な
る成長に向けて、パワエレ事業、パワー半導体事業の拡大を中核とする「成長戦略の推進」、グローバルでのもの
つくり力強化による「収益力の更なる強化」、及び、ESG(環境、人財、ガバナンス)を中心とした「経営基盤の
継続的な強化」を引き続き推し進めるとともに、外部環境変化への適応力を一層強化し、売上・利益の拡大を目指
しています。
当第2四半期連結累計期間における当社を取り巻く市場環境は、カーボンニュートラルやデジタル化に向けた投
資の拡大を背景に、自動車の電動化、省エネ、デジタルインフラ等の継続したニーズの高まりにより、製造業やデ
ータセンター等の設備投資が堅調に推移しました。その一方で、中国における設備投資は引き続き低調に推移した
他、世界的な金融引締め等により、先行きが不透明な状況が継続しました。
このような環境のもと、当社は、拡大する需要に対応したパワー半導体の生産能力増強や、顧客需要に対応した
生産体制の最適化、部材調達における地政学リスクやサプライチェーンの混乱影響の極小化に向けた取り組みを継
続して実施しました。
当第2四半期連結累計期間の連結業績の売上高は、「発電プラント」を除く4部門で増加し、前年同期に比べ
445億54百万円増加(10.0%増加)の4,916億92百万円となりました。
損益面では、原材料価格及び動力費の高騰影響や、研究開発費、生産能力増強に係る費用の増加があったもの
の、物量の増加に加え、製品販売価格の値上げや原価低減の推進、為替影響等により、営業損益は前年同期に比べ
82億75百万円増加の349億94百万円となりました。経常損益は前年同期に比べ57億40百万円増加の346億19百万円、親会社株主に帰属する四半期純損益は前年同期に比べ40億85百万円増加の243億43百万円となり、売上高、営業損益、経常損益、親会社株主に帰属する四半期純損益いずれも、過去最高を更新しました。
<セグメント別状況>■パワエレ エネルギー部門
売上高:1,227億94百万円(前年同期比 6.2%増加) 営業損益:86億99百万円(同 8億77百万円減少)
施設・電源システム分野の需要拡大を主因に、売上高は前年同期を上回りましたが、営業損益は器具分野の需要
減少等により前年同期を下回りました。
・エネルギーマネジメント分野は、産業向け変電機器及び電源機器の大口案件の増加等により、売上高は前年同
期を上回りましたが、営業損益は案件差等により、前年同期を下回りました。
・施設・電源システム分野は、国外のデータセンター及び半導体メーカ向け案件の増加により、売上高、営業損
益ともに前年同期を上回りました。
・器具分野は、セットメーカ及び半導体製造装置関連の需要減少等により、売上高、営業損益ともに前年同期を
下回りました。
■パワエレ インダストリー部門
売上高:1,712億47百万円(前年同期比 14.0%増加) 営業損益:50億22百万円(同 38億98百万円増加)
オートメーション分野、設備工事分野及びITソリューション分野の需要増加等により、売上高、営業損益ともに
前年同期を上回りました。
・オートメーション分野は、ファクトリーオートメーションにおけるコンポーネントの生産増を主因に、売上
高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・社会ソリューション分野は、放射線機器案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りまし
た。
・設備工事分野は、空調設備工事の大口案件等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・ITソリューション分野は、公共及び文教分野の大口案件等の需要増により、売上高、営業損益ともに前年同期
を上回りました。
■半導体部門
売上高:1,085億39百万円(前年同期比 11.9%増加) 営業損益:167億97百万円(同 18億49百万円増加)
・半導体分野は、電動車(xEV)向けパワー半導体の需要拡大により、売上高は前年同期を上回りました。営業
損益は、パワー半導体の生産能力増強に係る費用の増加、原材料価格の高騰があったものの、売上高の増加に
より、前年同期を上回りました。
■発電プラント部門
売上高:325億27百万円(前年同期比 6.5%減少) 営業損益:1億1百万円(同 5億90百万円増加)
・発電プラント分野は、前期の再生可能エネルギーの大口案件の影響により、売上高は前年同期を下回ったもの
の、営業損益は案件差及び原価低減の推進等により、前年同期を上回りました。
■食品流通部門
売上高:531億81百万円(前年同期比 18.7%増加) 営業損益:54億17百万円(同 21億88百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回り
ました。
・店舗流通分野は、コンビニエンスストア向け店舗設備機器の改装需要拡大に加え、カウンター機材案件の増加
により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
■その他部門
売上高:312億65百万円(前年同期比 9.3%増加) 営業損益:20億51百万円(同 5億17百万円増加)
(2)財政状態
当第2四半期連結会計期間末の総資産額は1兆1,729億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ86億19百万円減少しました。
流動資産は7,020億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ115億1百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ契約資産が236億13百万円、棚卸資産が361億6百万円、それぞれ増加した一方で、現金及び預金が245億56百万円、売掛金が520億68百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定資産は4,708億37百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億91百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は3,183億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ104億13百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,524億78百万円となり、前連結会計年度末に比べ75億23百万円減少しました。これは、主に投資有価証券が、売却及びその他有価証券の時価評価差額相当分の減少を主因として、108億52百万円減少したことによるものであります。
当第2四半期連結会計期間末の負債合計は5,771億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ323億9百万円減少しました。
流動負債は4,345億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ122億74百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べコマーシャル・ペーパーが220億円増加した一方で、仕入債務が120億24百万円、1年内償還予定の社債が150億円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定負債は1,426億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ200億36百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が130億円減少したことなどによるものであります。
なお、当第2四半期連結会計期間末の有利子負債残高は1,569億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ262億93百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は13.4%となり、前連結会計年度末に比べ2.1ポイント減少しました。
当第2四半期連結会計期間末の純資産合計は5,957億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ236億91百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が157億73百万円、為替換算調整勘定が131億15百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は46.1%となり、前連結会計年度末に比べ2.3ポイント増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当第2四半期連結累計期間における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、132億43百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加(前年同期は492億18百万円の増加)となり、前年同期に対して359億75百万円の資金流入額の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において営業活動による資金の増加は、348億28百万円(前年同期は598億71百万円の増加)となりました。これは、棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前四半期純利益の計上並びに売上債権及び契約資産が減少したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、250億43百万円の資金流入額の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において投資活動による資金の減少は、215億85百万円(前年同期は106億53百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、109億32百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において財務活動による資金の減少は、418億63百万円(前年同期は357億13百万円の減少)となりました。これは主として、長期借入金の返済並びに社債の償還などによるものであります。
これらの結果、当第2四半期連結会計期間末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末残高に比べ245億83百万円(29.2%)減少し、595億82百万円となりました。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第2四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8)研究開発活動
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛けています。
当第2四半期連結累計期間における富士電機の研究開発費は169億2百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当第2四半期連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,171件です。
■パワエレ エネルギー部門
エネルギーマネジメント分野では、富士電機インド社において、業界最高レベルの変換効率98.8%を実現した太陽光発電向けのセントラル型PCS(Power Conditioning System)「PVI1500CI」(DC1,500V、1,000~4,000kVA)を開発し発売しました。インド政府は2030年までに二酸化炭素排出の50%削減を目指しており、インドの太陽光発電市場は年間8~10GW規模で拡大すると予想されています。PVI1500CIは、日本で販売実績のあるPVI1500CJをベースとし、1,000kVAの電力変換モジュールを4台組み合わせることにより、最大4,000kVAの大容量に対応します。
国内では、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた電力需給調整力の一つとして、定置用蓄電池の導入が期待されています。蓄電池システムが導入される立地が、石油コンビナートや重化学系プラントなど沿岸地域に多いことから、重耐塩仕様の屋外設置型・2,600kVA蓄電池用PCS(PVI1400CJ-3)を開発し発売しました。耐環境性を向上したことにより、さまざまな設置場所への蓄電池システムの導入拡大に貢献します。また、電力市場で取引する事業者に対し、蓄電池の充放電計画の策定など運用を支援することにより、収益拡大に貢献する蓄電池運用システムの開発を進めています。
変電分野では、設置面積を大幅に削減した154kV,200MVAの特別三相変圧器を開発しました。特別三相変圧器は、三相変圧器を3個の単相変圧器に分割して輸送し、現地で再組立てが可能な構造の変圧器です。今回、単相変圧器の構造を改良し、負荷時タップ切換器を単相変圧器内に収納することで、当社同仕様の三相変圧器に対して、本体部分の設置面積を20%削減しました。
施設・電源システム分野では、工場設備や医療設備、放送・通信設備向けに200V系の中容量無停電電源装置「UPS6600FX」(20~50kVA)を開発し発売しました。本製品はインバータやコンバータなどの電力変換部をユニット構造として交換を容易にし、冷却ファンや制御電源などの部品を長寿命化したことにより、メンテナンスコストの削減に貢献します。また、データセンターの大容量化のニーズに対応するため、業界最大クラスとなる単機容量2,400kVAの大容量モジュール型無停電電源装置「UPS7500WX」を開発し発売しました。商用電源が正常な際に、電力損失が少ない商用電源から給電する「高効率運転モード(HEモード)」を搭載し、電力交換効率98.5%を実現しました。また、周辺盤を組み合わせた一体設計とすることで、設置面積を従来比25%削減し、業界最小クラスを実現しました。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は33億91百万円です。
■パワエレ インダストリー部門
ファクトリーオートメーション分野では、工作機械やファン・ポンプ、搬送ライン向けの汎用インバータ「FRENIC-Ace シリーズ」を刷新し、発売を開始しました。海外で広く普及し、高速通信が可能な通信規格であるEthernetを標準搭載したタイプや、省スペース化が可能なフィンレスタイプなどの機種をそろえ、インバータのメンテナンスに有効な予兆保全機能を強化しました。本製品は、日本、東南アジア、欧米などにグローバルに展開していきます。
FAコンポーネント分野では、製造現場の装置・機械の監視・操作に用いられ、IoTシステムのゲートウェイ機器としても活用されるプログラマブル表示器「MONITOUCH V10 シリーズ」を開発し発売しました。クアッドコアCPUの搭載とアプリケーションの最適化により、業界トップの操作性と視認性、通信処理の高速化を実現しました。また、ロボット・印刷機・金属加工機・搬送装置向けに中容量(2.9kW~7.5kW)対応のサーボシステム「ALPHA7」シリーズを開発し発売しました。国際標準規格IEC 61800-5-2などで定義された各種安全機能にも対応し、安全操業に貢献します。さらに、「ALPHA7」用の診断オプションを開発し発売しました。当社独自のアナリティクス・AI(MSPC)を適用した異常診断機能により、加工装置など設備の正常時のデータ(診断モデル)と稼動中のデータの差異を解析することで異常の検知や原因分析ができます。これにより、装置の安定稼働に貢献します。
駆動制御システム分野では、国内鉄鋼圧延プラント設備を中心に1970年代に多数納入された直流電動機(日本電機工業会規格 JEM1109に準拠)の互換型として「800番/600番互換型鉄鋼圧延補機用誘導電動機」を開発し発売しました。本誘導電動機は既設の直流電動機に外形寸法を合わせたとともに、出力や回転速度及び過負荷耐量を含めた電気仕様、耐振強化構造や冷却方式についても既設の直流電動機と同等仕様としたことにより、短期間でのシステムの置き換えを可能としました。
計測制御システム分野では、ソフトセンサを構築するためのツールとして、業界で初めて自動機械学習を適用した「推算用モデル式構築/演算ツール」を開発し発売しました。ソフトセンサは、リアルタイムで測定することが難しい濃度や強度などの値を、温度や圧力、流量などの容易に収集できるデータを使って推算する技術で、化学や鉄鋼、製薬などのプラント・工場で用いられます。このソフトセンサを監視制御システムに実装することで、製造過程の製品状態をリアルタイムで推算でき、原料やエネルギーのムダを抑えることが可能となりますが、一方でソフトセンサを構築するためには多くの作業が必要で、構築に時間がかかっていました。今回開発した「推算用モデル式構築/演算ツール」は、ソフトセンサを構築する工程を自動化したことで作業の大幅な時間短縮を実現し、顧客の作業効率を改善します。
情報制御システム分野では、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献するため、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)を提供しています。MESは、複数の「MainGATE」のパッケージで構成されています。従来は分かれていた製造の実行指示、製造管理、統合マスタ管理を1つに統合したパッケージを開発し発売しました。新たに搭載した製造実績データの連携機能により、操業の効率化・品質管理・設備保全などに活用できます。さらに、国際標準の通信規格OPC UAに準拠したことで、連携可能な監視制御システムや基幹業務システムが拡大しました。また、製造実績分析パッケージ「MainGATE/PPA」の機能を拡張した「MainGATE/MPA」を開発し発売しました。生産管理の国際標準規格ISO22400-2に準拠し、そこで定められた製造現場の主要な4つのオペレーション領域毎(品質/生産性/保全/在庫)に分析テンプレートを準備し、KPI(重要業績評価指標)からプロセスデータまでのドリルダウン分析を可能とすることで、データ活用による製造工程のDXを支援します。
放射線機器・システム分野では、任意の場所で中性子線の線量率の測定が可能な可搬型モニタリングポストを開発し発売しました。内部機器の改良などにより小型軽量にしたことで、移動式架台に機器類を実装して容易に運搬できます。また、内蔵したGPSによって取得した位置情報と線量率データと合わせて保存することで、自然災害時などにおける安全管理を支援します。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は46億19百万円です。
■半導体部門
産業モジュール分野では、低損失で高温動作が可能な第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。鉄道や再生可能エネルギー分野における高耐圧化の要求に応えるため、大容量モジュール「HPnC」(High Power next Core)パッケージに、最新の第7世代IGBT/FWD「Xシリーズ」チップを搭載した3,300V耐圧品を系列化しました。これまでに系列化した1,700V耐圧品及び2,300V耐圧品とともに、サンプル展開を進めています。風力発電システム向けには、電力安定化回路に対して最適化した第7世代IGBTモジュール1,700V/600A DualXTを開発し、量産を開始しました。このモジュールの適用により、電力変換装置の信頼性向上に貢献します。また、太陽光発電システム向けに最適化したIGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を新たに開発し、サンプル展開を開始しました。従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことにより、装置の小型化に貢献します。エアコンやサーボシステム向けには、第7世代IGBT/FWDチップを搭載したモールドタイプの小容量IPM(Intelligent Power Module)650V/10~30Aを開発し発売しました。モールド構造の採用により高密度実装化することでモジュールの外形寸法を大幅に小型化(従来ケース構造比40%)しました。また、最新のチップを適用することで、従来製品に対して、電力損失を10%低減し、電磁ノイズも約1/3に低減しました。これらにより、機器の小型化と省エネに貢献します。
車載モジュール分野では、中国の電動車市場向けに、RC-IGBTチップと冷却性能の改善により、電力密度をさらに高めた直接水冷型パワーモジュール750V/820A(M675パッケージ)を開発し、量産を開始しました。また、2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、損失を低減し信頼性を高めた次世代IGBT及びSiCの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の高効率化と小型軽量化に貢献します。
IC分野では、LED照明用第4世代臨界PFC-ICを開発し、量産を開始しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)改善機能により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制Class Cに準拠しました。また、新たに開発した第4.5世代LLC電流共振ICと組み合わせて適用することで、電源システムにおける軽負荷時の効率向上、待機電力の低減、電源部品の削減によるコストダウンに貢献します。また、スイッチング電源向けに、第7世代PWM制御ICを開発し、サンプル展開を開始しました。ICの間欠動作機能を追加することにより、電源待機時の消費電力を低減し、省エネルギーに貢献します。さらに高電圧入力端子の耐圧を従来の500Vから業界最高の710Vに高耐圧化したことで、海外の電力供給が不安定な地域でも適用可能になります。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は61億円です。
■発電プラント部門
再生可能エネルギー分野では、地熱発電プラントの発電効率や稼働率の向上に向けて、復水器の高効率化、タービンの汚損抑制や高腐食性蒸気に対する耐久性向上などの技術を継続して開発しています。また、マイクログリッドや風力発電サイト向けの蓄電池システムで要求される停電時の自立運転機能を付加した、大容量の蓄電池型PCSの開発を進めています。工場・施設などの電源向けに、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した定置型の水素発電システムの開発を進めています。現在、日本産業規格(JIS)に準拠した安全性試験(JIS C 62282-3-100)と性能試験(JIS C 62282-3-201)を完了し、発電システムとしての信頼性を確認しました。引き続き、当社がこれまでの燃料電池の研究開発で培った劣化抑制技術、監視制御技術、メンテナンス技術を活かし、発電効率の低下抑制や発電システムの長寿命化を実現します。
ソリューションサービス分野では、発電プラント向けメンテナンスサービスとして、発電機の劣化診断技術の開発を進めています。運転中の発電機から、劣化要因となる腐食性ガスを測定し、固定子巻線の劣化状態を推定する技術です。従来よりも測定可能なガス種を増やして余寿命の推定精度を向上し、保守・保全プランを提案します。
原子力分野では、原子力発電所の廃止措置で発生する廃棄物の円滑な処理に向けて、迅速に放射性元素濃度を分析するため、試料の前処理を含めた分析システムの開発を進めています。また、原子力発電所で発生する廃液や焼却灰を固化して処分するため、一般的に使用されているセメントに比べてセシウムの閉じ込め効果が高いジオポリマーを用いた安定固化技術の開発を進めています。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は10億21百万円です。
■食品流通部門
自動販売機(自販機)分野では、省エネルギー(省エネ)性能を向上させた「サステナ自販機」の機種拡大を進めています。サステナ自販機は、インバータ制御によるコンプレッサの高効率化、庫内構造と断熱材の最適化による侵入熱量の低減などを進めることにより、従来機と比べて年間消費電力量を最大20%削減し、業界最高レベルの省エネを実現、2022年度には主力機種を対象として発売しました。2023年度は小型機を中心に対象機種を拡大して系列開発を推進しています。
店舗分野では、平型冷凍ショーケースの消費電力量削減のため、ショーケースの上部に取り付け可能な「省エネフード」を開発し発売しました。商品の取出しやすさを維持しながら、天井からの輻射熱による熱負荷の侵入を低減し、冷凍機の負荷を削減する事で省エネを実現しました。
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は17億62百万円です。
■新技術・基盤技術部門
太陽光発電や風力発電で発電し、貯蔵した電力を電力取引市場で売買するビジネスが拡大しています。そこで、電力取引における独立系発電事業者(IPP)や特定卸供給事業者(アグリゲーター)などの収益最大化に向けて、EMS(Energy Management System)に搭載する、電力取引市場の価格予測技術を開発しています。また、卸売電力や需給調整などの新たな電力取引市場での収益向上のため、充放電を計画的に行う蓄電池システムの制御技術を開発しています。
エネルギー利用効率向上や生産性向上のため、デジタル技術を活用した製造現場のスマート化が進展しています。これに伴いネットワーク化が進んでいますが、外部からのサイバー攻撃による情報流出や生産停止のリスクは増大しており、サイバーセキュリティ対策の重要性が増しています。そこで、制御システムにおけるセキュリティの国際標準規格であるIEC62443への対応に向けたセキュリティ検証技術の開発を進めています。
当社の半導体事業は、需要の拡大により多くの案件に対応するため、開発リードタイムの短縮が課題となっています。この課題を解決するため、シミュレーション技術の高度化を進めています。現在、パワー半導体の電気回路と熱の連成解析において、従来の3Dモデルと同等の解析精度を維持し、かつ、1/1000の短時間で計算できる1Dモデルの技術開発に取り組んでいます。
近年、分散型電源の利用が拡大する中、太陽光発電や燃料電池、蓄電池など、直流で動作する電源設備が増えています。これらを直流バスで接続する直流配電システムの高効率化に向け、低損失かつ広範囲な電圧変動に対応可能なDC/DCコンバータを開発しています。当社SiCモジュール適用による高効率化と、新回路方式による電圧の許容範囲拡大化に向け、要素技術開発を進めています。
地熱発電では、配管内にシリカ(SiO2)によるスケールが堆積すると発電効率が低下するため、発電停止を伴うメンテナンス作業が必要となります。そこで、メンテナンス回数の削減のため、計算科学を用いたシリカスケールの発生量予測技術開発に取り組んでいます。
将来の水素社会実現に向けて、水素製造装置のコスト低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。性能向上や長期信頼性などの技術課題の抽出と対策を検討するため、水電解セルの実証を進めています。本開発の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」で「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しています。
■その他部門
当第2四半期連結累計期間における当部門の研究開発費は7百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本四半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。