半期報告書-第149期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2024/11/14 15:30
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【項目】
39項目
(1)経営成績
当社は、当事業年度より、2026年度を最終年度とする3ヵ年中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」をスタートしました。「利益重視経営による更なる企業価値向上」を基本方針として、デジタルを活用した生産性の向上と資本コストを意識した事業運営による「収益力の強化」、新製品投入や海外事業の拡大を軸とした「成長戦略の推進」、並びにESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みの継続による「経営基盤の強化」を推し進めるとともに、外部環境変化への適応力を一層強化し、売上・利益の拡大と持続的な企業価値向上を目指しています。
当中間連結会計期間における当社を取り巻く市場環境は、脱炭素化やデジタル化に向けた投資の拡大を背景に、エネルギーの安定供給、省エネ等の継続したニーズの高まりにより、製造業やデータセンターにおける設備投資が堅調に推移した一方で、中国経済の低迷継続等を背景に工作機械関連等の需要は低調に推移しました。また、電動車(xEV)市場は地域毎の強弱があり、伸長は想定よりも緩やかなものとなりました。
このような環境のもと、当社は、SiCパワー半導体の生産能力増強の準備や、顧客需要に対応した生産体制の最適化、地産地消の推進等により、収益性向上に継続して取り組みました。
当中間連結会計期間の連結業績の売上高は、「エネルギー」「食品流通」が増加し、前年同期に比べ56億85百万円増加(1.2%増加)の4,973億77百万円となり、過去最高を更新しました。
損益面では、原材料価格の高騰影響や、コンポーネントの物量減少影響があったものの、高付加価値商材の投入や製品販売価格の値上げ、原価低減の推進、為替影響等により、営業損益は前年同期に比べ53億42百万円増加の403億36百万円、経常損益は前年同期に比べ43億30百万円増加の389億49百万円となり、営業損益、経常損益ともに過去最高を更新しました。また、親会社株主に帰属する中間純損益は、投資有価証券の一部を売却し特別利益に計上した影響等により、前年同期に比べ111億96百万円増加の355億39百万円となり、過去最高益となりました。
<セグメント別状況>■エネルギー部門
売上高:1,476億29百万円(前年同期比 0.9%増加) 営業損益:97億59百万円(同 11億7百万円増加)
器具分野の需要回復の遅れによる需要減少等があったものの、エネルギーマネジメント分野を中心としたプラント、システムの需要増加により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りました。
・発電プラント分野は、再生可能エネルギー大口案件の影響等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回
りました。
・エネルギーマネジメント分野は、電力、産業及び鉄道向け変電機器の大口案件の増加等により、売上高、営業
損益ともに前年同期を上回りました。
・施設・電源システム分野は、データセンター向け需要は堅調に推移したものの、海外における半導体メーカ向
け大口案件の減少により、売上高は前年同期を下回りました。営業損益は案件差等により、前年同期を上回り
ました。
・器具分野は、機械セットメーカ向け需要回復の遅れに伴う需要減少により、売上高は前年同期を下回りまし
た。営業損益は、売上高の減少と原材料価格の高騰影響により、前年同期を下回りました。
■インダストリー部門
売上高:1,768億49百万円(前年同期比 1.6%減少) 営業損益:83億93百万円(同 32億22百万円増加)
オートメーション分野における低圧インバータの在庫調整継続や、設備工事分野における大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りましたが、オートメーション分野のプロセスオートメーション及び社会ソリューショ
ン分野の需要増加等により、営業損益は前年同期を上回りました。
・オートメーション分野は、ファクトリーオートメーションにおける低圧インバータの在庫調整継続により、売
上高は前年同期を下回ったものの、プロセスオートメーションにおける駆動制御システム等の需要増加等によ
り、営業損益は前年同期と同水準となりました。
・社会ソリューション分野は、原子力関連の大口案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回
りました。
・DXソリューション分野は、ITソリューションにおける大口案件の増加により、売上高、営業損益ともに前年同
期を上回りました。
・設備工事分野は、前年同期の空調設備工事の大口案件影響により、売上高は前年同期を下回りました。営業損
益は案件差や原価低減の推進等により、前年同期を上回りました。
(注)当中間連結会計期間より、従来の「ITソリューション分野」を「DXソリューション分野」に改称するとともに、「情報ソリューション」を「社会ソリューション分野」から「DXソリューション分野」へ移管しております。なお、各分野の前年同期比につきましては、前年同期の数値を移管後の分野に組み替えたうえで算出しております。
■半導体部門
売上高:1,080億48百万円(前年同期比 0.5%減少) 営業損益:150億59百万円(同 17億38百万円減少)
・半導体分野は、為替影響や電動車(xEV)向けパワー半導体の海外向け物量の減少があったものの、産業分野
向けの物量増加により、売上高は前年同期と同水準となりました。営業損益は、生産能力増強に係る費用の増
加、原材料価格の高騰等により、前年同期を下回りました。
■食品流通部門
売上高:582億86百万円(前年同期比 9.6%増加) 営業損益:87億9百万円(同 32億92百万円増加)
・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前年同期を上回り
ました。
・店舗流通分野は、新紙幣発行に伴う改刷対応特需を主因に、売上高、営業損益ともに前年同期を上回りまし
た。
■その他部門
売上高:274億15百万円(前年同期比 12.3%減少) 営業損益:16億52百万円(同 3億99百万円減少)
(注)前第3四半期連結会計期間より、組織構造の変更に伴い、報告セグメントを従来の「パワエレ エネルギー」、
「パワエレ インダストリー」、「半導体」、「発電プラント」及び「食品流通」から、「エネルギー」、「インダストリー」、「半導体」及び「食品流通」に変更しております。なお、各セグメントの前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えたうえで算出しております。

(2)財政状態
当中間連結会計期間末の総資産額は1兆2,325億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ386億56百万円減少しました。
流動資産は7,130億98百万円となり、前連結会計年度末に比べ499億74百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ契約資産が43億75百万円、棚卸資産が189億36百万円、それぞれ増加した一方で、受取手形が49億20百万円、売掛金が773億21百万円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定資産は5,193億41百万円となり、前連結会計年度末に比べ112億77百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は3,574億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ205億75百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,618億48百万円となり、前連結会計年度末に比べ92億97百万円減少しました。これは、主に投資有価証券が、売却及びその他有価証券の時価評価差額相当分の減少を主因として、112億35百万円減少したことによるものであります。
当中間連結会計期間末の負債合計は5,525億30百万円となり、前連結会計年度末に比べ571億71百万円減少しました。
流動負債は3,975億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ778億28百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ契約負債が317億67百万円増加した一方で、仕入債務が347億10百万円、短期借入金が277億1百万円、コマーシャル・ペーパーが360億円、それぞれ減少したことなどによるものであります。
固定負債は1,550億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ206億57百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ社債が100億円、長期借入金が150億83百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
なお、当中間連結会計期間末の有利子負債残高は1,143億60百万円となり、前連結会計年度末に比べ485億46百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は9.3%となり、前連結会計年度末に比べ3.5ポイント減少しました。
当中間連結会計期間末の純資産合計は6,799億87百万円となり、前連結会計年度末に比べ185億15百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べその他有価証券評価差額金が45億58百万円減少した一方で、利益剰余金が247億62百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は50.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.0ポイント増加しました。
(3)キャッシュ・フロー
当中間連結会計期間における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、617億78百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加(前年同期は132億43百万円の増加)となり、前年同期に対して485億35百万円の資金流入額の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間において営業活動による資金の増加は、875億43百万円(前年同期は348億28百万円の増加)となりました。これは、棚卸資産が増加し、仕入債務が減少した一方で、税金等調整前中間純利益の計上並びに売上債権及び契約資産が減少したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、527億15百万円の資金流入額の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間において投資活動による資金の減少は、257億65百万円(前年同期は215億85百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
前年同期に対しては、41億80百万円の資金流出額の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当中間連結会計期間において財務活動による資金の減少は、641億10百万円(前年同期は418億63百万円の減少)となりました。これは主として、コマーシャル・ペーパーの減少並びに長期借入金の返済などによるものであります。
これらの結果、当中間連結会計期間末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末残高に比べ8億48百万円(1.3%)減少し、646億94百万円となりました。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間連結会計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7)財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当中間連結会計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8)研究開発活動
富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、クリーンエネルギーの主流化からエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、エネルギーの供給から需要まで関わるソリューションを提供しています。
当中間連結会計期間における富士電機の研究開発費は182億52百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
また、当中間連結会計期間末において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,342件です。
■エネルギー部門
発電プラント分野では、将来の水素社会の到来に備え、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した工場・施設向け水素燃料電池システムの開発を進めています。2023年度には、10年を超える耐久性を見通せる発電出力150kWの燃料電池システムを開発しました。現在は、耐久性を維持しつつ、さらなる高出力化に向けた開発に取り組んでいます。
器具分野では、国内トップシェアの電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジした「SC-NEXTシリーズ」の定格電流40~65A品の開発を完了し発売しました。本シリーズは、従来品の長寿命・高信頼性の特徴を継承しつつ、外形の更なる小型化を実現し、制御盤の小型化や高機能化に貢献します。2023年度に発売した11~38A品に加えて、今回の開発で定格電流11A~65A(定格電圧200V)の小型・中型容量のラインアップが完成し、幅広い顧客の用途に応えることが可能となりました。
当中間連結会計期間における当部門の研究開発費は43億77百万円です。
■インダストリー部門
ファクトリーオートメーション分野では、国内・海外のエレベータメーカー向けに、乗用エレベータ用に制御性能を最適化したインバータ「FRENIC-Lift(LM3)」シリーズを開発し発売しました。モータ軸回転角度の検出分解能を向上し、エレベータ始動時のかごの落下量を従来機種に比べて約47%改善したことにより、良好な乗り心地を実現します。また、製造ラインやプラントの生産性向上に貢献する新たな機能を搭載したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」SPHのCPUモジュールとして、「SPH2200」(監視・シーケンス制御用)、「SPH3300」(モーション制御用)を開発し発売しました。演算エンジンを刷新したことで従来に比べて制御速度を6.5倍向上するとともに、これまで上位機種に搭載していた計測・制御データを定周期で記録する当社独自のデータロギング機能を標準搭載し、自動化・省人化に必要な生産設備のデータを可視化し、製造現場のDXに貢献します。さらに、ロボット、機械装置向けのサーボシステム「ALPHA7」シリーズの容量11kW、15kWを開発しました。2023年度に発売した容量2.9kW~7.5kWに加えて、今回の開発でシリーズのラインアップが完成しました。これにより、顧客の幅広いニーズに対応します。
計測機器分野では、鉄道事業者向けに河川橋梁の健全性を高精度に評価する業界初の橋梁モニタリングシステムを開発し発売しました。従来は、台風や豪雨による増水後、作業員を派遣して目視確認や衝撃振動試験により橋梁の健全性を確認していました。本システムは、橋梁に高分解能加速度センサとセンサデータの伝送機能を搭載したモニタリングシステムを設置して橋梁の固有振動数を自動で取得し、取得したデータを独自のアルゴリズムにより解析することで、橋脚の異常兆候の有無を判定します。これにより現地作業を省力化しつつ、交通インフラの安全性向上に貢献します。また、発電プラントやガス設備など高耐圧性能が求められる環境向けに、ピエゾ式抵抗型高圧測定圧力計を開発しました。本製品は、従来の静電容量式圧力センサに比べて、高圧領域で誤差が少ない構造のピエゾ式圧力センサを採用したことで、業界トップクラスの耐圧150MPaを実現しました。これにより、年々掘削深度が深くなり高耐圧化する海底油田設備などに対応します。
駆動制御システム分野では、発電や鉄鋼・化学プラント向けに、中型誘導電動機「低圧三相モータMLU2形シリーズ」(定格電圧200V、400V)及び「高圧三相モータMLA6形シリーズ」(3,000V、3,300V、6,000V、6,600V)のモデルチェンジ品を開発し発売しました。本シリーズは、従来機に比べて始動トルクを大きく向上し、始動電流の増加を抑制しました。これにより、搭載したシステムの安定運転に貢献します。
原子力分野では、原子力発電所の廃止措置による解体・撤去で発生する廃棄物を分別して適切に処理するため、試料の前処理を含めた分析技術の開発を進めています。これまでに、放射性元素塩素36に対して、誘導結合プラズマ質量分析法を用い、かつ、試料の前処理工程を簡素化し、計測時間を従来の1/30に短縮する技術を確立しています。現在は、分析可能な放射性元素種類の拡充に向けた開発に取り組んでいます。これにより、廃棄物処理の効率化に貢献します。
情報ソリューション分野では、業種・業態を問わず、情報の検索や分析を容易にし、様々な管理業務の効率化を支援するBI(ビジネスインテリジェンス:Business Intelligence)ツール「軽技Web V8.0」を開発し発売しました。本製品は、専門知識が無くとも、簡単な操作でデータを検索・活用できます。今回新たにユニバーサルデザインを取り入れ、より操作性を向上することで、レポート作成などの業務の効率化に貢献します。
当中間連結会計期間における当部門の研究開発費は51億31百万円です。
■半導体部門
産業モジュール分野では、低損失で高温動作が可能な第7世代IGBT技術を適用した製品の系列を拡大しています。太陽光発電システム向けに最適化したIGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を開発し、2023年度から継続してサンプル展開を進めています。内部レイアウトの改善により、パッケージは従来と同じ寸法を維持しながら、従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことで、装置の小型化に貢献します。本製品は、当期中に量産を開始する予定です。また、鉄道や再生可能エネルギー(再エネ)発電システム向けに1,200V系列のAll-SiCモジュール(M295パッケージ)を開発し、量産を開始しました。第2世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第2世代SiCチップ)の適用により、従来のSi-IGBTチップに比べて総損失を約70%低減しました。また、M295パッケージは、従来の標準パッケージ(M276)に比べて配線インダクタンスを24%削減し、SiC-MOSFETの高速スイッチング時において、ノイズや故障の原因となるサージ電圧を抑制しました。これらにより、インバータなどの顧客装置の効率向上や信頼性向上に貢献します。さらに、再エネ発電システム向けとして、「HPnC」(High Power next Core)パッケージに第3世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第3世代SiCチップ)を搭載した大容量モジュール(2,300V/1,200A)を開発し、サンプル展開を開始しました。第2世代SiCチップに比べ低損失・小型化した第3世代SiCチップを用いることにより、再エネ発電システムの効率向上と容量拡大が可能となります。これにより、更なる大容量化が求められる再エネ市場の拡大に貢献します。
車載モジュール分野では、軽・小型車用インバータ向けに直接水冷型パワーモジュール750V/300A,450A,600A(M682パッケージ)の開発を進めています。本製品は、低損失の第7世代RC-IGBTチップを搭載し、冷却性能を改善することで、電力密度をさらに高めました。また、2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、第3世代SiCチップを搭載して発生損失を大幅に低減しつつ、パッケージの薄型と低インダクタンス化を実現した次世代SiCパワーモジュールの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の更なる高効率化と小型・軽量化に貢献します。
当中間連結会計期間における当部門の研究開発費は66億93百万円です。
■食品流通部門
自動販売機(自販機)分野では、販売できる商品の選択肢を広げ、小売業・アグリ分野などのこれまで自販機が活用されていなかった市場へ訴求し、店舗の省人・省力化に貢献する冷蔵ロッカー型自販機を開発しています。本自販機では、商品の大きさに合わせて、顧客自身が商品の収納室の間仕切りを着脱できるため、飲料や食品のような定形品に限らず、野菜や生花などの不定形品にあわせて収納室容量を自由に変更できます。また、収納室の背面から冷気を送り込むダクト循環方式を新たに開発し、収納室容量変更の影響を受けず、温度ムラの無い保冷構造を実現しました。本自販機は、8月末よりフィールドテストを開始し、2025年3月から発売する予定です。
店舗分野では、さらなる省エネルギー(省エネ)化やCO2排出量削減のニーズに応えるため、太陽光パネルや蓄電池を併設したコンビニエンスストアのエネルギーを制御する「新店舗コントローラ」を開発しています。運転環境に対応してショーケースを最適に制御して省エネを実現するとともに、太陽光パネルの発電量や店舗の電力需要の予測制御機能との組み合わせにより、発電した電力を余すことなく活用することで、CO2排出量の削減と購入電力量の低減に貢献します。
通貨機器分野では、7月3日に発行された新紙幣を識別する技術を開発し、つり銭機や自販機のビルバリデータへの搭載を開始しました。なお、既に市場で稼働しているつり銭機などに対しては、ソフトウェアの更新のみで新紙幣対応が可能です。これにより、顧客の負担を軽減できます。
当中間連結会計期間における当部門の研究開発費は20億48百万円です。
■新技術・基盤技術分野
カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光や風力など再エネの利用拡大が求められています。一方、郊外など大きな電力を流すことのできない系統に再エネを接続する場合、電圧振動が増加する懸念があります。これに対応するために、再エネ用パワーコンディショナー(PCS)の出力電圧・電流を安定させる新たな制御アルゴリズムの開発に取り組んでいます。現在、本制御を搭載した検証機を製作し、性能評価を行っています。
工場など製造現場ではエネルギー利用効率や生産性向上を目的として、設備の消費電力、装置の稼働率や良品率など、様々なデータの活用が進んでいます。一方で、設備や装置のデータ活用には外部サーバとの接続が必要不可欠でありサイバー攻撃による情報流出や生産停止などのリスクが増大することから、セキュリティ対策が重要となります。制御システムにおけるセキュリティ対策に関する標準は、国際標準IEC62443に定められており、この認証取得に向けた技術開発を進めています。現在は、当社コントローラ製品を対象として、メモリ保護や不正アクセス防止など、セキュリティ対策技術の開発を進めております。
研究開発における開発リードタイムの短縮や生産性・品質向上に向けて、構造設計やソフトウェア開発における生成AIの活用を進めています。構造設計においては、シミュレーション技術と生成AI技術を融合したジェネレーティブデザインの実用化に取り組んでいます。この技術は、要求仕様や制約条件の範囲で3次元形状を自動で生成するとともに、生成された複数の形状案から最適な形状を選定できます。また、ソフトウェア開発においては、生成AIによるプログラムの自動生成技術の開発に取り組んでいます。
水素社会の到来に向けて、水素製造コストの低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。現在、水電解用の新規電解質膜及び新規触媒を用いて小型セルを試作し、大面積化した場合の課題抽出と、連続運転試験による耐久性の検証を実施しています。本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しています。
また、水素と同様に次世代燃料として期待され、水素キャリアとしても利用可能なアンモニアの社会実装に向けた周辺技術の開発も進めています。アンモニア燃料供給船やバンカリング装置に適用する高感度アンモニア漏えい検知技術や配管内に残留するアンモニアの回収技術などの安全対策技術の開発を行っています。本研究はNEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「アンモニア燃料船サプライチェーン構築における周辺機器開発」として実施しています。
また、工場用コージェネレーションシステムや船舶のディーゼルエンジンの脱炭素化に向けてCO2分離回収装置の開発に取り組んでいます。これらの比較的小規模なシステムにおいて低コスト化が可能な膜方式を適用したCO2分離技術の開発と共に、膜性能を維持するための排ガスの前処理技術(排ガスの除熱、除湿、集塵)の開発を並行して進めています。
サーキュラーエコノミーの実現に向けて、リサイクル可能な樹脂材料の実用化に向けた技術開発に取り組んでいます。現在、熱可塑系材料の耐加水分解性や機械強度などの性能を維持するため、材料添加による加水分解抑制や加工条件の最適化を実施しています。今後、対策効果の検証を進めるとともに、大量生産する場合の品質安定化などの課題抽出を進めていきます。
SiCよりさらに低損失な次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)を用いた、縦型GaNパワーデバイスを開発しています。現在、デバイスの構造形成に必要なイオン注入技術の実用化やパワーデバイスの性能に大きく影響するMOS界面(金属-酸化物-半導体界面)における欠陥抑制の研究を進めています。本研究の一部は文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業(パワーデバイス領域)」として実施しています。
■その他部門
当中間連結会計期間における当部門の研究開発費は0百万円です。
(注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本半期報告書の提出日現在において合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。