有価証券報告書-第75期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/08/28 17:05
【資料】
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【項目】
163項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題により、景気に減速感が見られていたところに、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、世界経済に深刻な打撃を与えました。年度後半には、米国や欧州、日本、中国など、各国の経済成長率は、いずれも前年度対比で大幅減を示すなど、当社を取り巻く環境は、厳しい状況で推移いたしました。
このような状況のなか、2019年のグローバル四輪車販売は暦年で90,266千台(前年比4.8%減)となりました。米国は販売奨励金が増加したものの、米中間の通商問題の影響により、暦年で17,048千台(前年比1.3%減)と2年ぶりに前年を下回りました。中国は暦年で25,769千台(前年比8.2%減)と2年連続で前年を下回りました。欧州は英国のEU離脱による経済不透明感があったものの、2020年から部分導入される排ガス規制見直し前の駆け込み需要により、暦年で15,340千台(前年比1.2%増)と2年ぶりに前年を上回りました。
日本においては、10月以降の増税や台風被害、新型コロナウイルス感染症の影響等により、2019年度は5,039千台(前年度比4.2%減)と4年ぶりに前年を下回りました。登録車は3,183千台(前年度比4.6%減)で3年連続の減少、軽自動車は1,856千台(前年度比3.5%減)と3年ぶりの減少となりました。
一方、グローバル二輪車販売は、最大市場であるインドが自賠責保険料の増額や、新排ガス規制導入による車両価格の上昇により大幅減になりました。
日本においては、軽二輪、小型二輪車の増加はあったものの、メインの原付第一種の減少により、全体で362千台(前年度比1.6%減)と6年連続で前年を下回りました。
このような環境のなか、当社グループの連結売上高は304,224百万円(前期比8.7%減)、連結営業利益は8,531百万円(前期比22.1%減)、連結経常利益は、6,893百万円(前期比35.6%減)となりました。また、足下で大幅に悪化した財務体質に対し、再び安定した財務体質と業績回復基調を取り戻すため、当期において抜本的構造改革の実施を決定し事業構造改革に関連する費用を特別損失として計上したほか、投資回収が見込めない既存設備の減損損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は、13,804百万円(前期は7,021百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
事業の種類別セグメント情報は次のとおりであります。
輸送用機器関連事業は、北米や中国市場における売上の低迷、及び新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高は287,436百万円(前期比9.3%減)、営業利益は6,912百万円(前期比29.6%減)となりました。
情報サービス事業は、公共分野や民間分野の受注拡大と収益構造の改善に取り組み、売上高は15,847百万円(前期比2.1%増)、営業利益は1,349百万円(前期比75.6%増)となりました。
その他事業は、売上高は6,401百万円(前期比7.7%減)、営業利益は264百万円(前期比32.9%減)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の基本的な方針とし、連結営業利益計画の達成と、営業キャッシュ・フローの確保を優先に活動しております。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,273百万円減少し、当連結会計年度末には53,822百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは、12,492百万円のマイナス(前期は30,643百万円のマイナス)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、15,305百万円(前期比148.6%増)となりました。この主な要因は、売上債権の増減額6,707百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は、23,601百万円(前期は33,374百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、6,337百万円(前期は8,154百万円)となりました。これは主に長期借入れによる収入によるものです。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
輸送用機器関連事業(百万円)282,51592.4
情報サービス事業(百万円)13,157101.9
その他事業(百万円)3,978106.1
合計(百万円)299,65092.9

(注) 1.金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
輸送用機器関連事業282,00090.25,76154.2
情報サービス事業12,93195.22,29382.3
その他事業4,984221.11,449327.5
合計299,91791.39,50468.6

(注) 1.金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
輸送用機器関連事業(百万円)286,82290.7
情報サービス事業(百万円)13,423102.0
その他事業(百万円)3,978106.1
合計(百万円)304,22491.3

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
本田技研工業㈱23,0846.921,6237.1


(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、期末日における資産、負債及び会計期間における収益、費用に影響する見積りや仮定を使用する必要があり、製品保証引当金、賞与引当金等がこれに当たります。これらは、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に記載されております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の分析
(資産・負債・純資産)
当連結会計年度における資産の合計は、312,384百万円(前連結会計年度は334,679百万円)となり、22,295百万円減少しました。流動資産は170,584百万円となり16,378百万円減少し、固定資産は141,800百万円となり5,916百万円減少しました。
流動資産は、受取手形及び売掛金が9,454万円減少したことが主な要因です。
固定資産は、建設仮勘定が8,433百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における負債の合計は268,027百万円(前連結会計年度は261,941百万円)となり、6,086百万円増加しました。流動負債は132,669百万円となり8,016百万円増加し、固定負債は135,357百万円となり1,930百万円減少しました。
流動負債は、短期借入金が12,616百万円増加したことが主な要因です。
固定負債は、長期借入金が3,918百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における純資産の合計は、44,357百万円(前連結会計年度は72,738百万円)となり、28,381百万円減少しました。これは利益剰余金が15,361百万円減少したことが主な要因です。
(3) 経営成績の分析
(売上高・営業利益)
当連結会計年度における連結業績は、北米や中国市場における売上の低迷、及び新型コロナウイルス感染症の影響で売上は減少しました。売上高は304,224百万円(前連結会計年度は333,278百万円)となり、29,054百万円減少となりました。利益につきましては、特に中国エリアにおける新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、営業利益は8,531百万円(前連結会計年度は10,956百万円)となり、2,425百万円減少しました。
(経常利益)
当連結会計年度は、営業外収益で2,858百万円となり、402百万円減少しました。主に受取利息573百万円、受取配当金522百万円及び持分法による投資利益850百万円になります。営業外費用は4,496百万円となり、990百万円増加しました。主に支払利息1,922百万円と為替差損1,360百万円の発生により、経常利益は6,893百万円で前期比3,817百万円減少しました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度は、減損損失4,825百万円と事業構造改善引当金繰入額5,704百万円を特別損失として計上し、税金等調整前当期純損失は5,352百万円(前連結会計年度は3,853百万円の税金等調整前当期純利益)となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純損失は13,804百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失7,021百万円)となり、前期比6,783百万円の減少となりました。
(4) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に製品を生産するための原材料や部品調達の支出と、製造費用や販売費及び一般管理費に計上する費用に資金を消費しております。また、設備投資資金は、生産設備を取得し生産体制の構築や情報システムの整備等に支出しております。これらの必要資金は、利益と減価償却費の内部資金により賄うことを基本方針としております。
当連結会計年度におきましては、量産設備増強等の設備投資を継続的に実施したことで、金融機関からの借入れによる資金調達をいたしました。当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度の58,096百万円から4,273百万円減少し、53,822百万円となりました。また、流動比率は128.6%となり前連結会計年度に比べ21.4ポイント減少しました。
(5) 事業等のリスクに記載した重要事象等を解消するための対応策
当社グループは「2 事業等のリスク 継続企業の前提に関する重要事象等について」に記載のとおり、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が一時的に存在しておりますが、当該重要事象等を解消し、再び安定した財務体質と業績回復基調を取り戻すための対応策として、この度抜本的な改革を踏まえた「第12次(2020-2024年度)中期経営計画」を取りまとめました。
また、毀損した自己資本の回復と成長投資の資金確保を目的に、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合から総額200億円の資金調達を実施いたします。今後、以下に示す計画を着実に実行し、再び安定した収益基盤を取り戻してまいります。
① 計画期間
2021年3月期から2025年3月期までの5か年
② 基本方針及び重点施策
a.基本方針
収益力・キャッシュフロー創出力の強化による財務体質の改善
b.重点施策
重点施策Ⅰ:事業構造改革の推進
1) 四輪事業
・「市場・顧客」×「商品」における選択と経営資源の集中
・グローバル生産供給体制の構造改革(最適化・再構築)
2) 二輪・汎用事業
・成長の見込める二輪事業への経営資源シフト
(施策の概要:事業の選択と集中)
四輪事業:次世代システム商品を強化する
二輪・汎用事業:経営資源を集中し、積極的な拡販によって収益を増大する
(施策の概要:グローバル生産供給体制の最適化)
米州:拠点統廃合を通じた経営合理化
欧州:拠点統廃合を通じた経営合理化
中国:中国市場への集中と域内生産体制の強化
アジア:グローバル供給基地の継続と補完体制の強化
日本:拠点統廃合を通じた経営合理化
日本エリアにおける生産拠点再編の一環として新潟工場と㈱落合製作所を閉鎖
新潟工場閉鎖の概要
1. 所在地 〒949-7226 新潟県南魚沼市山崎新田950
2. 主要製品 パワースライドドアドライブシステム、ウォッシャーポンプ等
3. 従業員数 182名(2020年7月1日現在)
4. 閉鎖予定時期 2021年9月
5. 業務引継ぎ先 ミツバ他工場、国内子会社
㈱落合製作所閉鎖の概要
1. 所在地 〒370-2451 群馬県富岡市宇田250-11
2. 主要製品 小型プレス部品等
3. 従業員数 63名(2020年7月1日現在)
4. 閉鎖予定時期 2020年12月
5. 業務引継ぎ先 ㈱ミツバ、外部サプライヤー
※プレス事業は譲渡
重点施策Ⅱ:企業体質の強化
1) フリーキャッシュフロー改善による財務体質の強化(固定費圧縮)
2) 開発型ものづくり企業としての継続的改善(継続的VA(Value Analysis))
3) 「構造改革」を支えるガバナンス・経営管理能力の強化と業務革新
(施策の概要)
投資の抑制:案件の精査・絞り込みによる設備投資の中止・凍結
経費削減:海外拠点含むグローバルでの経費削減
人事施策:関係会社を含む国内500名規模の希望退職者の募集及び海外拠点を含む間接人員の削減
重点施策Ⅲ:次世代に向けた取り組み
1) 次世代のビジネスの柱となる新価値商品の創出
2) システム開発を強化し、機電一体化による商品の高付加価値化
3) 品質問題の未然防止・再発防止・早期収束
③ 資本政策の概要
当社は、2020年7月15日開催の取締役会において、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合に対して、第三者割当の方法により、総額150億円のA種種類株式及び総額50億円のC種種類株式を発行すること(以下、「本第三者割当増資」といいます。)を決議いたしました。当該増資については、2020年8月28日の臨時株主総会において可決承認されており、当社は2020年8月29日から2021年1月20日の間に当該金額を受領する見込みであります。本第三者割当増資の実施により、毀損した自己資本を回復し、調達資金を成長事業への投資資金に充当することで、安定的な収益基盤の構築を図ってまいります。本第三者割当増資の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (重要な後発事象)」をご参照ください。
これらの状況を踏まえ、「継続企業の前提に関する重要な不確実性」は認められないものと判断しております。