有価証券報告書-第78期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/22 15:45
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【項目】
160項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症収束後の回復基調の中、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による高インフレとそれに伴う欧米各国の金融引き締め、また中国でのゼロコロナ政策緩和後の感染再拡大により、景気回復のペースが鈍化しました。国内においては、年末にかけて外需の低迷が景気の下押し要因となるものの、政府の支援策もあり個人消費は持ち直し、新型コロナウイルス感染症の感染抑制と経済活動の両立が図られました。
自動車業界におきましては、半導体供給不足の影響により、2022年のグローバル四輪車販売が暦年で80,976千台(前年比0.4%減)となりました。米国は、暦年で13,903千台(前年比7.8%減)と2年ぶりに前年を下回りました。欧州はロシアのウクライナ侵攻とエネルギー価格の上昇が重なり、暦年で11,309千台(前年比4.0%減)と2年ぶりに前年を下回りました。中国は内燃機関車に対する減税と電気自動車に対する補助金などの政策により、暦年で26,864千台(前年比2.2%増)と2年連続で前年を上回りました。日本においては、2022年度は4,386千台(前年度比4.0%増)と4年ぶりに前年を上回りました。登録車は2,693千台(前年度比1.2%増)と6年ぶりに増加、軽自動車は1,693千台(前年度比8.9%増)と4年ぶりに増加となりました。
また、グローバル二輪車販売は、最大市場であるインドが新型コロナウイルス感染症の収束などにより、暦年で15,608千台(前年比7.9%増)と2年連続で前年を上回りました。インドネシアは下期に挽回し、暦年で5,221千台(前年比1.6%増)と2年連続で前年を上回りました。
日本は、原付第二種と軽二輪車の減少により、2022年度で363千台(前年度比4.2%減)と2年ぶりに前年を下回りました。
このような状況の下、当社グループにおきましては、2020年度からスタートした中期経営計画の重点施策である「事業構造改革の推進」、「企業体質の強化」、「次世代に向けた取り組み」を着実に推進し、当連結会計年度においては、事業の選択と集中の一環として、2022年4月1日付で子会社である株式会社大嶋電機製作所の全出資持分を株式会社村上開明堂へ譲渡し、ドアミラー・四輪車用ランプ事業から撤退するとともに、2023年3月31日付で当社子会社のミツバ・ヨーロッパ・リミテッドを清算いたしました。また、財務体質強化のため、原材料価格高騰等のコスト増加に対応するための価格改善やグローバルでの経費削減等により採算改善に取り組むとともに、資産効率化の観点から、在庫削減、設備投資抑制、政策保有株式縮減などに取り組み、2023年3月31日付で優先株式の一部について早期償還を実施いたしました。
この結果、当連結会計年度の連結業績は、新型コロナウイルス感染症影響の緩和、半導体供給不足による自動車メーカーの減産幅縮小や円安効果などもあり、連結売上高は319,500百万円(前期比11.5%増)と前年を上回りましたが、原材料価格高騰による材料費上昇などにより、連結営業利益は6,718百万円(前期比6.5%減)、連結経常利益は、6,049百万円(前期比19.7%減)と前年を下回りました。一方、前連結会計年度において計上した、新型コロナウイルス感染症影響による費用や事業構造改善引当金繰入などの特別損失計上がなかったことから、税金等調整前当期純利益は5,855百万円(前期比19.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,185百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益83百万円)と前年を上回りました。
事業の種類別セグメント業績は次のとおりであります。
輸送用機器関連事業は、前述のとおり、売上高は299,540百万円(前期比11.7%増)と前期比で増加しましたが、コスト増加要因が重なり、セグメント利益は4,564百万円(前期比15.6%減)と減益となりました。
情報サービス事業は、警察向け、自治体向け、ガス事業者向け、製造業向けのソフトウエア開発・システム販売が堅調に推移したことから、売上高は17,234百万円(前期比11.2%増)となり、セグメント利益は1,760百万円(前期比23.4%増)となりました。
その他事業は、半導体供給不足により用品事業は減収となったものの、セグメント全体では、売上高は6,697百万円(前期比0.3%増)となり、セグメント利益は377百万円(前期比8.8%増)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の基本的な方針とし、連結営業利益計画の達成と、営業キャッシュ・フローの確保を優先に活動しております。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,034百万円増加し、当連結会計年度末には74,301百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは、20,449百万円のプラス(前期は4,903百万円のプラス)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、29,618百万円(前期比152.1%増)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益5,855百万円及び減価償却費16,816百万円、売上債権の減少2,916百万円、棚卸資産の減少6,046百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は、9,168百万円(前期は6,842百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出9,837百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は、20,677百万円(前期は12,775百万円)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出10,874百万円及び自己株式の取得による支出5,900百万円、配当金の支払額2,982百万円(非支配株主への配当金含む)によるものです。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前期比(%)
輸送用機器関連事業(百万円)298,138116.5
情報サービス事業(百万円)14,801112.5
その他事業(百万円)5,54998.8
合計(百万円)318,489115.9

(注) 金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
輸送用機器関連事業299,393112.38,741107.5
情報サービス事業16,081125.93,293138.3
その他事業6,193105.21,720159.8
合計321,668112.813,755118.7

(注) 金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前期比(%)
輸送用機器関連事業(百万円)298,782111.7
情報サービス事業(百万円)15,168112.7
その他事業(百万円)5,54998.8
合計(百万円)319,500111.5

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
本田技研工業㈱20,4737.118,6865.9


(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、資産、負債及び収益、費用等の額の算定に際して、過去の実績や状況を分析し、様々な要因を考慮して、その時点で最も合理的であると考えられる基準に基づいて見積りや判断を行っておりますが、実際の結果は、見積りに内在する不確実性があるため、これら見積り時の計上金額と大幅に異なる結果となる可能性があります。
ウクライナをめぐる現下の国際情勢の影響に関して、当社及び連結子会社は、現時点では収束時期等を予測することは困難なことから、当連結会計年度末時点で入手可能な外部の情報を踏まえて、2024年3月期の一定期間にわたり当該影響が継続するとの仮定の下、会計上の見積りを行っております。
連結財務諸表に関して、当社グループが認識している特に重要な会計方針は、以下のとおりです。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産は、主として将来の課税所得の見込に基づき、回収可能性を慎重に検討し計上しております。回収の実現性が低いと判断した場合には、適正と考えられる金額へ減額する可能性があります。
(製品保証引当金)
製品保証引当金は、販売された製品のうち、返品による交換費用や再生産出来なくなった場合に発生する廃棄費用、さらに取引先において当社製品取り付け後に不具合が生じた場合に発生する取り外し工賃等に備えるため、過去3年間の製品保証費及び売上高から計算される平均返品率に基づき計上しております。また、発生額を個別に見積ることができる費用については、販売台数や販売単価、回収可能率に基づき見積額を試算し、計上しております。
当社及び連結子会社は、製品保証引当金が適切な金額かどうかを常に確認しており、発生が見込まれる製品保証関連費用について、必要かつ十分な金額を計上していると考えております。
実際に発生する製品保証関連費用は、それらの見積りと異なることがあり、製品保証引当金の計上が大きく修正される可能性があります。
(事業構造改善引当金)
事業構造改善引当金は、事業構造の改善に伴い発生することが見込まれる損失に備えるため、当連結会計年度末で合理的に見積ることが可能なものについて、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を計上しております。当該見積りには、事業構造改革に基づき実施する、拠点統廃合により発生する設備移設等の業務移管関連費用及び拠点移転等の不動産関連費用、人員異動等の人件費の見込みなどの仮定を用いております。
当社及び連結子会社は、発生が見込まれる事業構造改善費用について、必要かつ十分な金額を計上していると考えておりますが、当該見積り及び当該仮定について、事業戦略の見直しや外部環境の変化等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する事業構造改善引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(固定資産の減損)
固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローの水準を基に減損の兆候の検討を行い、減損の兆候が認められる場合、減損損失を認識するかどうかの判定を行っております。判定の結果、当初想定した投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合には、固定資産の減損処理を行う可能性があります。
(2) 財政状態の分析
(資産・負債・純資産)
当連結会計年度における資産の合計は、328,452百万円(前連結会計年度は342,750百万円)となり、14,298百万円減少しました。流動資産は198,189百万円となり8,522百万円減少し、固定資産は130,262百万円となり5,776百万円減少しました。
流動資産の減少は、受取手形が1,956百万円、商品及び製品が1,966百万円、原材料及び貯蔵品が1,520百万円、それぞれ減少したことが主な要因です。
固定資産の減少は、有形固定資産の減価償却進行により、建物及び構築物が637百万円、機械装置及び運搬具が3,712百万円、工具、器具及び備品が442百万円、それぞれ減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における負債の合計は241,493百万円(前連結会計年度は254,549百万円)となり、13,055百万円減少しました。流動負債は130,513百万円となり15,066百万円増加し、固定負債は110,980百万円となり28,121百万円減少しました。
流動負債の増加は、1年内返済予定の長期借入金が増加したことにより短期借入金が19,086百万円増加したことが主な要因であり、固定負債の減少は、金融機関への返済及び借入金の1年内返済予定の長期借入金が短期借入金に振り替わったことにより長期借入金が28,255百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における純資産の合計は、86,958百万円(前連結会計年度は88,201百万円)となり、1,243百万円減少しました。為替換算調整勘定が5,650百万円増加しましたが、A種種類株式5,000株を取得及び消却したことにより資本剰余金が7,101百万円減少したことが主な要因です。
(3) 経営成績の分析
(売上高・営業利益)
当連結会計年度における連結業績は、新型コロナウイルス感染症の影響緩和、半導体供給不足による自動車メーカーの減産幅縮小や円安効果などにより、売上高は319,500百万円(前連結会計年度は286,482百万円)となり、33,018百万円増加しましたが、原材料価格高騰による材料費上昇などにより、営業利益は6,718百万円(前連結会計年度は7,187百万円)となり、468百万円減少しました。
(経常利益)
当連結会計年度は、営業外収益が3,311百万円となり、801百万円減少しました。主なものは受取利息1,002百万円、為替差益746百万円になります。営業外費用は3,981百万円となり、210百万円増加しました。主なものは支払利息2,126百万円、外国源泉税765百万円になります。経常利益は6,049百万円で、前期比1,480百万円の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度は、在外子会社の事業休止に伴う棚卸資産評価損245百万円、在外子会社の清算による割増退職金等の事業構造改善費用113百万円などを特別損失として計上し、税金等調整前当期純利益は5,855百万円(前連結会計年度は4,898百万円)となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は1,185百万円(前連結会計年度は83百万円)となり、前期比1,101百万円の増加となりました。
(4) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に製品を生産するための原材料や部品調達の支出と、製造費用や販売費及び一般管理費に計上する費用に資金を消費しております。また、設備投資資金は、生産設備を取得し生産体制の構築や情報システムの整備等に支出しております。これらの必要資金は、利益と減価償却費の内部資金により賄うことを基本方針としております。
当連結会計年度におきましては、2022年9月30日に取引金融機関との間のコミットメントライン契約150億円の契約の期日更新をおこなっており、直近の資金繰りに支障は生じておりません。当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度の73,267百万円から1,034百万円増加し、74,301百万円となりました。また、流動比率は151.9%となり前連結会計年度に比べ27.2ポイント減少しました。