有価証券報告書-第76期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 16:33
【資料】
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【項目】
146項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、世界経済に深刻な打撃を与えました。年度半ばには、一部持ち直しの動きは見られたものの、長引く各国の入国制限や欧州主要国におけるロックダウン(都市封鎖)などの影響もあり、経済活動の停滞が長期化しました。また、年度後半には同感染症のワクチン投与が開始されたものの、感染の収束は見通せず、加えて変異株が出現するなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。
自動車業界におきましては、2020年のグローバル四輪車販売が暦年で77,661千台(前年比14.0%減)となりました。米国は同感染症の影響及び半導体供給ひっ迫等の影響により、暦年で14,577千台(前年比14.5%減)と2年連続で前年を下回りました。欧州は同感染症によるロックダウンの影響で、暦年で11,573千台(前年比24.6%減)と2年ぶりに前年を下回りました。中国は同感染症の影響による減少はあったものの、販売補助金等の消費刺激策が奏功し、暦年で25,272千台(前年比1.9%減)とマイナス幅は小幅にとどまりましたが、3年連続で前年を下回りました。日本は同感染症の影響及び半導体供給ひっ迫等の影響により、2020年度は4,657千台(前年度比7.6%減)と2年連続で前年を下回りました。登録車は2,899千台(前年度比8.9%減)で4年連続の減少、軽自動車は1,758千台(前年度比5.3%減)と2年連続の減少となりました。
また、グローバル二輪車販売は、最大市場であるインドが同感染症の影響により、暦年で13,956千台(前年比25.6%減)と2年連続で前年を下回りました。インドネシアは同感染症及びローン規制強化の影響により、暦年で3,743千台(前年比41.1%減)と2年連続で前年を下回りました。日本は軽二輪車の増加はあったものの、原付第一種、第二種、小型二輪車の減少により、暦年で326千台(前年比9.9%減)と7年連続で前年を下回りました。
このような状況の下、当社グループにおいては「第12次(2020-2024年度)中期経営計画」を策定し、「収益力・キャッシュ・フロー創出力の強化による財務体質の改善」を基本方針に、「事業構造改革の推進」、「企業体質の強化」、「次世代に向けた取り組み」の3つの重点施策に基づく諸施策の実行にグループを挙げて取り組んでまいりました。
当連結会計年度におきましては、上記重点施策に基づき、事業の選択と集中、グローバル生産供給体制の最適化を実行する一方、ローコストオペレーション推進のため、投資の抑制、グローバルでの経費削減、国内500名規模の希望退職の募集、海外を含む間接人員の削減に取り組み、企業体質の強化を図りました。財務面におきましては、2020年9月30日付でジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合による200億円の出資を受け、自己資本の充実を図りました。また、今後の機動的かつ柔軟な資本政策に備えるため、2021年1月21日付で、資本金を198億85百万円から50億円へ減資するとともに、資本準備金の額を265億82百万円減少し、それぞれの全額をその他資本剰余金に振り替えております。
この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高が269,202百万円(前期比11.5%減)と前期比で減少したものの、事業構造改革効果により、営業利益は8,548百万円(前期比0.2%増)、経常利益は、8,748百万円(前期比26.9%増)となりました。また、当社及び連結子会社において発生することが見込まれる拠点統廃合費用を合理的に見積もり、事業構造改革に関連する費用を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、732百万円(前期は13,804百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
事業の種類別セグメント情報は次のとおりであります。
輸送用機器関連事業は、同感染症の影響及び半導体供給ひっ迫等の影響により、売上高は250,025百万円(前期比13.0%減)、営業利益は6,815百万円(前期比1.4%減)となりました。
情報サービス事業は、公共分野や民間分野の受注拡大と、生産性の向上等により収益構造が改善したため、売上高は16,640百万円(前期比5.0%増)、営業利益は1,432百万円(前期比6.1%増)となりました。
その他事業は、売上高は6,322百万円(前期比1.2%減)、営業利益は290百万円(前期比9.6%増)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の基本的な方針とし、連結営業利益計画の達成と、営業キャッシュ・フローの確保を優先に活動しております。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ23,566百万円増加し、当連結会計年度末には77,389百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは、7,151百万円のプラス(前期は12,492百万円のマイナス)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、15,410百万円(前期比0.7%増)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益5,568百万円と仕入債務の増加額2,519百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は、6,655百万円(前期は23,601百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、12,816百万円(前期は6,337百万円)となりました。これは主に株式の発行による収入によるものです。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
輸送用機器関連事業(百万円)244,77286.6
情報サービス事業(百万円)14,309108.8
その他事業(百万円)5,125128.8
合計(百万円)264,20788.2

(注) 1.金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
輸送用機器関連事業253,33689.89,601166.6
情報サービス事業11,79991.23,061133.5
その他事業5,489110.180655.6
合計270,62490.213,469141.7

(注) 1.金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
輸送用機器関連事業(百万円)249,49687.0
情報サービス事業(百万円)14,580108.6
その他事業(百万円)5,125128.8
合計(百万円)269,20288.5

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
本田技研工業㈱21,6237.119,1077.1


(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、資産、負債及び収益、費用等の額の算定に際して、過去の実績や状況を分析し、様々な要因を考慮して、その時点で最も合理的であると考えられる基準に基づいて見積りや判断を行っておりますが、実際の結果は、見積りに内在する不確実性があるため、これら見積り時の計上金額と大幅に異なる結果となる可能性があります。
新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、現時点では今後の広がり方や収束時期等を予測することは困難なことから、当連結会計年度末時点で入手可能な外部の情報を踏まえて、2022年3月期の一定期間にわたり当該影響が継続するとの仮定の下、会計上の見積りを行っております。
連結財務諸表に関して、当社グループが認識している特に重要な会計方針は、以下のとおりです。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産は、主として将来の課税所得の見込に基づき、回収可能性を慎重に検討し計上しております。回収の実現性が低いと判断した場合には、適正と考えられる金額へ減額する可能性があります。
(製品保証引当金)
製品保証引当金は、販売された製品のうち、返品による交換費用や再生産出来なくなった場合に発生する廃棄費用、さらに取引先において弊社製品取り付け後に不具合が生じた場合に発生する取り外し工賃等に備えるため、過去3年間の製品保証費及び売上高から計算される平均返品率に基づき計上しております。また、発生額を個別に見積ることができる費用については、販売台数や販売単価、回収可能率に基づき見積額を試算し、計上しております。
当社及び連結子会社は、製品保証引当金が適切な金額かどうかを常に確認しており、発生が見込まれる製品保証関連費用について、必要かつ十分な金額を計上していると考えております。
実際に発生する製品保証関連費用は、それらの見積りと異なることがあり、製品保証引当金の計上が大きく修正される可能性があります。
(事業構造改善引当金)
事業構造改善引当金は、事業構造の改善に伴い発生することが見込まれる損失に備えるため、当連結会計年度末で合理的に見積ることが可能なものについて、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を計上しております。当該見積りには、第12次中期経営計画における重点施策である「事業構造改革の推進」に基づき実施する、グローバル生産供給体制最適化に伴う拠点統廃合により発生する設備移設等の業務移管関連費用及び拠点移転等の不動産関連費用、人員異動等の人件費の見込みなどの仮定を用いております。
当社及び連結子会社は、発生が見込まれる事業構造改善費用について、必要かつ十分な金額を計上していると考えておりますが、当該見積り及び当該仮定について、事業戦略の見直しや外部環境の変化等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する事業構造改善引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(固定資産の減損)
固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローの水準を基に減損の兆候の検討をおこない、減損の兆候が認められる場合、減損損失を認識するかどうかの判定をおこなっております。判定の結果、当初想定した投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合には、固定資産の減損処理を行う可能性があります。
(2) 財政状態の分析
(資産・負債・純資産)
当連結会計年度における資産の合計は、343,136百万円(前連結会計年度は312,384百万円)となり、30,752百万円増加しました。流動資産は202,744百万円となり32,160百万円増加し、固定資産は140,392百万円となり1,408百万円減少しました。
流動資産の増加は、現金及び預金が23,049百万円増加したことが主な要因です。
固定資産の減少は、建設仮勘定が8,679百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における負債の合計は266,919百万円(前連結会計年度は268,027百万円)となり、1,108百万円減少しました。流動負債は137,114百万円となり4,445百万円増加し、固定負債は129,804百万円となり5,553百万円減少しました。
流動負債の増加は、支払手形及び買掛金が4,345百万円増加したことが主な要因です。
固定負債の減少は、長期借入金が6,861百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における純資産の合計は、76,217百万円(前連結会計年度は44,357百万円)となり、31,860百万円増加しました。これは第三者割当増資によるA種種類株式及びC種種類株式の発行により、資本剰余金が増加したことが主な要因です。
(3) 経営成績の分析
(売上高・営業利益)
当連結会計年度における連結業績は、新型コロナウイルス感染症の影響で、売上高は269,202百万円(前連結会計年度は304,224百万円)となり、35,021百万円減少したものの、事業構造改革効果により、営業利益は8,548百万円(前連結会計年度は8,531百万円)となり、17百万円増加しました。
(経常利益)
当連結会計年度は、営業外収益で4,404百万円となり、1,546百万円増加しました。主なものは為替差益967百万円、雇用調整助成金743百万円になります。営業外費用は4,204百万円となり、291百万円減少しました。主なものは支払利息1,960百万円、外国源泉税763百万円になります。経常利益は8,748百万円で、前期比1,855百万円の増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度は、事業構造改善引当金繰入額1,245百万円を特別損失として計上し、税金等調整前当期純利益は5,568百万円(前連結会計年度は5,352百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は732百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失13,804百万円)となり、前期比14,536百万円の増加となりました。
(4) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に製品を生産するための原材料や部品調達の支出と、製造費用や販売費及び一般管理費に計上する費用に資金を消費しております。また、設備投資資金は、生産設備を取得し生産体制の構築や情報システムの整備等に支出しております。これらの必要資金は、利益と減価償却費の内部資金により賄うことを基本方針としております。
当連結会計年度におきましては、2020年9月30日にジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合より200億円の出資を受けたため、直近の資金繰りに支障は生じておりません。当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度の53,822百万円から23,566百万円増加し、77,389百万円となりました。また、流動比率は147.9%となり前連結会計年度に比べ19.3ポイント増加しました。