四半期報告書-第79期第3四半期(2022/10/01-2022/12/31)
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
■2022年6月21日に発生したUSBメモリー紛失事故の対応について
2022年6月に発生しました個人情報データを記録したUSBメモリーを紛失する重大な事故により、ステークホルダーの皆様に、多大なご心配とご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
本件の重要性に鑑みて、外部の専門家から構成される第三者委員会を2022年7月1日設置し、本事案および本事案類似の取引に関する客観性を確保した実態検証および原因分析ならびに改善策の提言を委嘱し、2022年12月12日に調査報告書を受領しました。調査結果を真摯に受け止め、提言も踏まえ再発防止策の徹底を図り、セキュリティ対策および委託先の管理・監督の強化に向けて引き続き取り組んでまいります。また、2022年9月21日に個人情報保護委員会から法律に基づく指導を受け、11月30日に改善報告書を提出しております。
今後、このような事態を二度と繰り返さぬよう、そして、安心して当社グループの提供サービスをご利用いただけるよう、個人情報の適切な取り扱いに関して当社グループ全体のガバナンス強化に取り組み、情報管理体制および運用の改善ならびに全役職員および委託先協力会社に対する教育、指導の再徹底を行い、再発防止に努め、信頼回復に全力を尽くしてまいります。
業績等の概要
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染対策を実施し、経済・社会活動の正常化が進む中で、景気は緩やかに持ち直しています。一方で、ウクライナ情勢の長期化や原材料価格の上昇、急激な為替変動、中国における新型コロナウイルス感染動向などにより、依然として先行きの不透明な状況が続いております。
国内の情報サービス市場においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域への投資意欲は強い傾向にあるものの、国内経済の先行き不透明感もあり、引き続き動向を注視していく必要があります。
このような環境の中、当社は、社会的価値創出企業の実現に向け、2022年4月にBIPROGY株式会社に商号変更しました。「Purpose注1」および「Vision2030注2」のもと、社会的価値の創出を通じて、グループ全体の企業価値を持続的に向上させる、新たなステージに向けて策定した経営方針(2021-2023)に基づく取り組みを行っております。
営業概況としましては、DX関連案件を中心としたシステムサービスや働き方改革関連のソフトウェア販売の増加が業績を牽引し、売上収益は前年同期比増となりました。利益面では、社内基幹システムの刷新などにより販売費及び一般管理費が増加したものの、増収により売上総利益が増益となったことなどから、営業利益、調整後営業利益ともに前年同期比で増益となりました。
受注高、受注残高においては、ともに前年同期比増となりました。金融機関や小売業におけるシステムサービス案件およびアウトソーシング案件が堅調に積み上がっております。引き続き、通期目標の達成に向け、着実に受注に繋げるよう、営業活動を強化してまいります。
中長期の成長に向けては、お客様の持続的成長に貢献する顧客DXの推進「For Customer」と、各業種・業界のお客様、パートナーと共に社会課題解決を進める社会DXの推進「For Society」という2つの視点を定め、「ビジネスエコシステムⓇ」の拡大に向けた取り組みを行っております。
「For Customer」の取り組みとしては、地域金融機関向け共同利用型勘定系サービス「OptBAEⓇ注3」の本格提供を開始しました。稼働済みの4金庫に加え7金庫の採用が決定しており、今後も順次本番サービスを開始していきます。「OptBAE」は、デジタル活用による金融機関の環境負荷軽減、コスト最適化、および地域経済の持続を支援します。また、利用金融機関向けのユーザー会では、各種IT人財メニューや勉強会等で、デジタル技術を活用できるIT人財の育成を支援していきます。今後も、地域金融機関の活動を支援するサービスを強化し、プラットフォームとして成長させてまいります。
「For Society」の取り組みとしては、2020年に策定した「環境長期ビジョン2050注4」に基づき、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けた取り組みに注力しております。2022年11月に非化石証書・環境価値の管理効率化を支援するSaaS型サービス「環境価値管理サービス」を販売開始しました。非化石証書の購入、管理を効率化し、自社のオフセット注5における負荷やコストの軽減、証書の仲介事業立ち上げ機会の創出やビジネスの拡大を支援しています。さらに、2022年12月には、アスエネ株式会社が提供するCO₂排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「アスゼロⓇ」の販売に関する業務提携をいたしました。「アスゼロ」と「環境価値管理サービス」を組み合わせることで、企業におけるカーボンニュートラルの取り組みをトータルで支援し、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
また、人手不足を背景とした店舗業務の効率化と廃棄ロス削減に向けたサプライチェーン改革を実現するサービスにより、流通・小売業のお客様の働き方改革やゼロエミッションの実現を後押ししております。2022年10月には、経済産業省公募事業の「物流施設におけるサプライチェーン横断的な自動化機器の効果的導入・活用事例の創出」注6において、当社を含む8社の共同実証実験の提案が採択されました。実証実験を通じて、ロボットを導入しやすい環境(ロボットフレンドリー環境)の実現に貢献するとともに、サプライチェーン・物流の効率化による生産性の向上と流通・物流業の持続可能な成長に向けて取り組んでまいります。
このような取り組みを通じて、レジリエンス、リジェネラティブ、ゼロエミッションという3つの社会インパクトに向けて、当社グループならではの独自のポジションを築き、持続可能な社会づくりを目指す「デジタルコモンズⓇ」の提供者として、新たなマーケットを創り出します。
当社グループでは、マテリアリティ注7の1つとして「新たな未来を創る人財の創出・強化とダイバーシティ&インクルージョンの進化」を定め、多様な人財が能力を発揮できる環境づくりに努めています。その取り組みの一環として、タレントマネジメントシステムの構築・運用を進め、ROLES注8を軸とする「HRアーキテクチャⓇ注9」を基に、「事業戦略と人財戦略の連動強化」「キャリア自律・リスキルの促進」「DX人財やビジネスプロデュース人財など、重点分野をリードする人財の獲得と育成」を主要施策として推進しています。また、女性特有の疾病や様々な不調に対する診療を行う、女性医師による女性専門外来を2022年11月に開設し、働く女性を支援する取り組みも進めています。このような取り組みを行うなかで、2022年11月にLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティが働きやすい職場づくりを目指す任意団体「work with Pride」が策定する「PRIDE指標注102022」にて、昨年度に引き続き、最高評価の「ゴールド」を受賞しました。
以上のように、経営方針(2021-2023)の達成に向けて、当社グループ一体となって取り組んでまいりました。今後も、様々なステークホルダーとのコミュニケーションを継続し、持続的な企業価値向上を目指し、サステナビリティ経営を推進してまいります。
(注)
1. Purposeについては、当社のウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/com/purpose_principles.html
2. Vision2030については、当社のウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/com/management_policy.html
3. OptBAE(オプトベイ):banking system service Optimizing cost structure and as a Business Assist Engineの略称。フルバンキングシステムのオープン技術を活用した共同利用型勘定系サービスのこと。
4. 環境長期ビジョン2050については、当社のウェブページの以下ご参照。
https://biprogy.disclosure.site/ja/themes/118?response_id=280#280
5.オフセット:非化石証書などの環境価値で発生させた温室効果ガスの埋め合わせを行うこと。
6 経済産業省公募事業である令和4年度「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業出に係る基盤構築事業(物流施設におけるサプライチェーン横断的な自動化機器の効果的導入・活用事例の創出)」
7. マテリアリティについては、当社のウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/sustainability/
8. ROLES:「業務遂行における役割」のこと。業務遂行で担う役割や、その際に必要となるスキル、コンピテンシーを定義したものであり、人的資本の種類・質・量を可視化する概念。
9. HRアーキテクチャ:人財マネジメント・人財開発施策、およびROLESを軸とした中長期的なキャリア形成に関する施策の全体像を俯瞰するフレームワーク
10. PRIDE指標:日本初の職場におけるLGBTなどのセクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価指標。
11. 記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。
売上収益・利益の状況
当第3四半期連結累計期間の売上収益は、システムサービスが好調に推移した結果、前年同期に比べ121億33百万円増収の2,299億76百万円(前年同期比5.6%増)となりました。
利益面につきましては、システムサービスの増収や収益性向上による増益効果などにより売上総利益が増益となったことから、社内基幹システム刷新に係る自社用機械化投資等による販売費及び一般管理費の増加分を吸収し、営業利益は前年同期に比べ8億43百万円増益の196億33百万円(前年同期比4.5%増)となりました。また、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、ファンド投資に係る評価益の減少等により金融収益が減少したことなどから、前年同期に比べ71百万円減益の135億70百万円(前年同期比0.5%減)となりました。
なお、当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益※につきましては、前年同期に比べ6億53百万円増益の192億82百万円(前年同期比3.5%増)となりました。
※調整後営業利益は売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産につきましては、営業債権の減少等により、前連結会計年度末比142億46百万円減少の2,544億円となりました。
負債につきましては営業債務の減少等により、前連結会計年度末比183億23百万円減少の1,196億48百万円となりました。
資本につきましては、1,347億51百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は52.3%と前連結会計年度末比4.3ポイント上昇いたしました。
資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要は、営業活動に関する資金需要として、システムサービスおよびサポートサービスなどの外注費、販売用のコンピュータおよびソフトウェアの仕入の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものがあります。営業費用の主なものは人件費および営業支援費、新規サービスの開発等に向けた研究開発費です。また、投資活動に関する資金需要として、新たなビジネス創出に向けた、事業会社、スタートアップ、ファンドへの戦略投資、既存ビジネス遂行のための設備投資などがあります。経営方針(2021-2023)においては、投資を重要な施策と位置づけており、先端テクノロジー活用とイノベーションの持続的な創出を目指しつつ、戦略投資を加速させていく計画です。
必要な資金については、既存のICT領域や今後成長が見込まれるサービス型ビジネスから創出されるキャッシュ・フローおよび手許資金等でまかなうことを基本としており、当第3四半期連結累計期間においても、この方針に変更はありません。
また、機動的な資金調達と安定性の確保を狙いとし、従来より、主要取引金融機関と総額105億円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。なお、当第3四半期連結累計期間において当該契約に基づく借入実行はありません。
株主還元については業績連動による配分を基本として、キャッシュ・フローの状況や成長に向けた投資とのバランス、経営環境などを総合的に考慮して利益還元方針を定めており、経営方針(2021-2023)においては連結配当性向40%を目処とする利益還元方針を定めております。
キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比82億86百万円減少の404億16百万円となりました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金につきましては、税引前四半期利益199億52百万円に加え、非現金支出項目である減価償却費及び償却費120億円、営業債権及びその他の債権の減少243億3百万円等の収入加算要素および、棚卸資産の増加66億29百万円、営業債務及びその他の債務の減少66億11百万円等の収入減算要素により、201億45百万円の収入(前年同期比19億77百万円収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金につきましては、主に営業用コンピュータ等の有形固定資産の取得による支出19億13百万円、アウトソーシング用ソフトウェアに対する投資を中心とした無形資産の取得による支出92億34百万円、ファンド投資や子会社であるCVCファンドの運用を中心とした投資有価証券の取得による支出24億40百万円等により、127億70百万円の支出(前年同期比44億32百万円支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金につきましては、リース負債の返済による支出64億70百万円、配当金の支払額90億31百万円等により、157億97百万円の支出(前年同期比7億72百万円支出増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
システムサービス
システムサービスは、ソフトウェアの請負開発業務、SEサービス、コンサルティング等からなり、売上収益は808億6百万円(前年同期比11.6%増)、セグメント利益は277億49百万円(前年同期比24.8%増)となりました。サービス業や金融機関等、幅広い業種のお客様におけるデジタルトランスフォーメーション案件などが堅調に推移した結果、増収増益となりました。また、受注高につきましても、デジタルトランスフォーメーション関連案件に対する需要が堅調に推移し、前年同期比で増加しております。引き続き顧客接点強化や業務改革を中心としたデジタルトランスフォーメーション関連ビジネスを積極的に展開し、付加価値の高いサービス提供により収益の拡大を目指してまいります。
サポートサービス
サポートサービスは、ソフトウェア・ハードウェアの保守サービス、導入支援等からなり、売上収益は387億13百万円(前年同期比1.3%増)、セグメント利益は122億53百万円(前年同期比0.1%減)と増収減益となりました。引き続き収益性の維持・改善に取り組んでまいります。
アウトソーシング
アウトソーシングは、情報システムの運用受託やサービス型ビジネス等からなり、売上収益は480億18百万円(前年同期比2.0%増)、セグメント利益は129億4百万円(前年同期比5.3%減)となりました。売上収益は、地域金融機関向け共同利用型勘定系サービス「OptBAE」において順次本番サービスを開始するなど、金融機関向けプラットフォームサービスが収益拡大に貢献し増収となりました。また、EC事業者向けプラットフォームサービスも採用拡大に向けて順調に進捗しております。売上差益は、前年同期に計上した利益率の高い大型案件の影響により減益となりました。
経営方針(2021-2023)において当セグメントを成長ドライバーと定め、ITアウトソーシングの更なる拡大に加え、お客様のデジタルトランスフォーメーションを推進するサービスの提供や、社会課題の解決に貢献する様々なサービス型ビジネスの拡大に取り組むことで、一層の事業拡大を目指してまいります。
ソフトウェア
ソフトウェアは、ソフトウェアの使用許諾契約によるソフトウェアの提供等からなり、売上収益は231億43百万円(前年同期比13.5%増)、セグメント利益は21億79百万円(前年同期比23.9%減)となりました。前年同期に比べ増収となったものの、利益率の低い案件が増加したことにより、減益となりました。
ハードウェア
ハードウェアは、機器の売買契約、賃貸借契約によるハードウェアの提供等からなり、売上収益は322億6百万円(前年同期比1.4%減)、セグメント利益は49億95百万円(前年同期比13.9%減)となりました。前年同期に比べ採算性の高い大型案件が減少した影響等により、減収減益となりました。
その他
その他は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、回線サービスおよび設備工事等を含み、売上収益は70億88百万円、セグメント利益は15億74百万円となり、前年同期と同水準になりました。
(注)セグメント利益は当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益と調整を行っており、上記の全てのセグメント利益合計616億56百万円から、各報告セグメントに配賦していない販売費及び一般管理費を含む調整額△423億73百万円を差し引いた192億82百万円が調整後営業利益となります。
(2) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は、28億26百万円です。
当第3四半期連結累計期間において、主なサービス・商品等の開発として、新たに以下を製品化し、提供を開始しました。
・従業員同士が日頃の協力や行動に対する称賛・感謝の気持ちを、デジタルカードで贈り合うサービス「PRAISE CARD」の提供を開始。ブロックチェーン技術が使用されており、デジタルカードの送受信量や保有量データを元に活性度を分析し、コミュニティの状態を可視化することができる。企業の人的資本向上とESG経営における情報開示を支援する。
・非化石証書・環境価値の管理効率化を支援する「環境価値管理サービス」のうち、「購入代行機能」を販売開始。「環境価値管理サービス」は、非化石証書の調達・割当・対外機関への報告までの手続きを一気通貫で行うことができるSaaS型サービスであり、非化石証書・環境価値管理の効率化を通じて、社会のカーボンニュートラル実現を支援する。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
■2022年6月21日に発生したUSBメモリー紛失事故の対応について
2022年6月に発生しました個人情報データを記録したUSBメモリーを紛失する重大な事故により、ステークホルダーの皆様に、多大なご心配とご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
本件の重要性に鑑みて、外部の専門家から構成される第三者委員会を2022年7月1日設置し、本事案および本事案類似の取引に関する客観性を確保した実態検証および原因分析ならびに改善策の提言を委嘱し、2022年12月12日に調査報告書を受領しました。調査結果を真摯に受け止め、提言も踏まえ再発防止策の徹底を図り、セキュリティ対策および委託先の管理・監督の強化に向けて引き続き取り組んでまいります。また、2022年9月21日に個人情報保護委員会から法律に基づく指導を受け、11月30日に改善報告書を提出しております。
今後、このような事態を二度と繰り返さぬよう、そして、安心して当社グループの提供サービスをご利用いただけるよう、個人情報の適切な取り扱いに関して当社グループ全体のガバナンス強化に取り組み、情報管理体制および運用の改善ならびに全役職員および委託先協力会社に対する教育、指導の再徹底を行い、再発防止に努め、信頼回復に全力を尽くしてまいります。
業績等の概要
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染対策を実施し、経済・社会活動の正常化が進む中で、景気は緩やかに持ち直しています。一方で、ウクライナ情勢の長期化や原材料価格の上昇、急激な為替変動、中国における新型コロナウイルス感染動向などにより、依然として先行きの不透明な状況が続いております。
国内の情報サービス市場においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域への投資意欲は強い傾向にあるものの、国内経済の先行き不透明感もあり、引き続き動向を注視していく必要があります。
このような環境の中、当社は、社会的価値創出企業の実現に向け、2022年4月にBIPROGY株式会社に商号変更しました。「Purpose注1」および「Vision2030注2」のもと、社会的価値の創出を通じて、グループ全体の企業価値を持続的に向上させる、新たなステージに向けて策定した経営方針(2021-2023)に基づく取り組みを行っております。
営業概況としましては、DX関連案件を中心としたシステムサービスや働き方改革関連のソフトウェア販売の増加が業績を牽引し、売上収益は前年同期比増となりました。利益面では、社内基幹システムの刷新などにより販売費及び一般管理費が増加したものの、増収により売上総利益が増益となったことなどから、営業利益、調整後営業利益ともに前年同期比で増益となりました。
受注高、受注残高においては、ともに前年同期比増となりました。金融機関や小売業におけるシステムサービス案件およびアウトソーシング案件が堅調に積み上がっております。引き続き、通期目標の達成に向け、着実に受注に繋げるよう、営業活動を強化してまいります。
中長期の成長に向けては、お客様の持続的成長に貢献する顧客DXの推進「For Customer」と、各業種・業界のお客様、パートナーと共に社会課題解決を進める社会DXの推進「For Society」という2つの視点を定め、「ビジネスエコシステムⓇ」の拡大に向けた取り組みを行っております。
「For Customer」の取り組みとしては、地域金融機関向け共同利用型勘定系サービス「OptBAEⓇ注3」の本格提供を開始しました。稼働済みの4金庫に加え7金庫の採用が決定しており、今後も順次本番サービスを開始していきます。「OptBAE」は、デジタル活用による金融機関の環境負荷軽減、コスト最適化、および地域経済の持続を支援します。また、利用金融機関向けのユーザー会では、各種IT人財メニューや勉強会等で、デジタル技術を活用できるIT人財の育成を支援していきます。今後も、地域金融機関の活動を支援するサービスを強化し、プラットフォームとして成長させてまいります。
「For Society」の取り組みとしては、2020年に策定した「環境長期ビジョン2050注4」に基づき、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けた取り組みに注力しております。2022年11月に非化石証書・環境価値の管理効率化を支援するSaaS型サービス「環境価値管理サービス」を販売開始しました。非化石証書の購入、管理を効率化し、自社のオフセット注5における負荷やコストの軽減、証書の仲介事業立ち上げ機会の創出やビジネスの拡大を支援しています。さらに、2022年12月には、アスエネ株式会社が提供するCO₂排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「アスゼロⓇ」の販売に関する業務提携をいたしました。「アスゼロ」と「環境価値管理サービス」を組み合わせることで、企業におけるカーボンニュートラルの取り組みをトータルで支援し、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
また、人手不足を背景とした店舗業務の効率化と廃棄ロス削減に向けたサプライチェーン改革を実現するサービスにより、流通・小売業のお客様の働き方改革やゼロエミッションの実現を後押ししております。2022年10月には、経済産業省公募事業の「物流施設におけるサプライチェーン横断的な自動化機器の効果的導入・活用事例の創出」注6において、当社を含む8社の共同実証実験の提案が採択されました。実証実験を通じて、ロボットを導入しやすい環境(ロボットフレンドリー環境)の実現に貢献するとともに、サプライチェーン・物流の効率化による生産性の向上と流通・物流業の持続可能な成長に向けて取り組んでまいります。
このような取り組みを通じて、レジリエンス、リジェネラティブ、ゼロエミッションという3つの社会インパクトに向けて、当社グループならではの独自のポジションを築き、持続可能な社会づくりを目指す「デジタルコモンズⓇ」の提供者として、新たなマーケットを創り出します。
当社グループでは、マテリアリティ注7の1つとして「新たな未来を創る人財の創出・強化とダイバーシティ&インクルージョンの進化」を定め、多様な人財が能力を発揮できる環境づくりに努めています。その取り組みの一環として、タレントマネジメントシステムの構築・運用を進め、ROLES注8を軸とする「HRアーキテクチャⓇ注9」を基に、「事業戦略と人財戦略の連動強化」「キャリア自律・リスキルの促進」「DX人財やビジネスプロデュース人財など、重点分野をリードする人財の獲得と育成」を主要施策として推進しています。また、女性特有の疾病や様々な不調に対する診療を行う、女性医師による女性専門外来を2022年11月に開設し、働く女性を支援する取り組みも進めています。このような取り組みを行うなかで、2022年11月にLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティが働きやすい職場づくりを目指す任意団体「work with Pride」が策定する「PRIDE指標注102022」にて、昨年度に引き続き、最高評価の「ゴールド」を受賞しました。
以上のように、経営方針(2021-2023)の達成に向けて、当社グループ一体となって取り組んでまいりました。今後も、様々なステークホルダーとのコミュニケーションを継続し、持続的な企業価値向上を目指し、サステナビリティ経営を推進してまいります。
(注)
1. Purposeについては、当社のウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/com/purpose_principles.html
2. Vision2030については、当社のウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/com/management_policy.html
3. OptBAE(オプトベイ):banking system service Optimizing cost structure and as a Business Assist Engineの略称。フルバンキングシステムのオープン技術を活用した共同利用型勘定系サービスのこと。
4. 環境長期ビジョン2050については、当社のウェブページの以下ご参照。
https://biprogy.disclosure.site/ja/themes/118?response_id=280#280
5.オフセット:非化石証書などの環境価値で発生させた温室効果ガスの埋め合わせを行うこと。
6 経済産業省公募事業である令和4年度「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業出に係る基盤構築事業(物流施設におけるサプライチェーン横断的な自動化機器の効果的導入・活用事例の創出)」
7. マテリアリティについては、当社のウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/sustainability/
8. ROLES:「業務遂行における役割」のこと。業務遂行で担う役割や、その際に必要となるスキル、コンピテンシーを定義したものであり、人的資本の種類・質・量を可視化する概念。
9. HRアーキテクチャ:人財マネジメント・人財開発施策、およびROLESを軸とした中長期的なキャリア形成に関する施策の全体像を俯瞰するフレームワーク
10. PRIDE指標:日本初の職場におけるLGBTなどのセクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価指標。
11. 記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。
売上収益・利益の状況
当第3四半期連結累計期間の売上収益は、システムサービスが好調に推移した結果、前年同期に比べ121億33百万円増収の2,299億76百万円(前年同期比5.6%増)となりました。
利益面につきましては、システムサービスの増収や収益性向上による増益効果などにより売上総利益が増益となったことから、社内基幹システム刷新に係る自社用機械化投資等による販売費及び一般管理費の増加分を吸収し、営業利益は前年同期に比べ8億43百万円増益の196億33百万円(前年同期比4.5%増)となりました。また、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、ファンド投資に係る評価益の減少等により金融収益が減少したことなどから、前年同期に比べ71百万円減益の135億70百万円(前年同期比0.5%減)となりました。
なお、当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益※につきましては、前年同期に比べ6億53百万円増益の192億82百万円(前年同期比3.5%増)となりました。
※調整後営業利益は売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産につきましては、営業債権の減少等により、前連結会計年度末比142億46百万円減少の2,544億円となりました。
負債につきましては営業債務の減少等により、前連結会計年度末比183億23百万円減少の1,196億48百万円となりました。
資本につきましては、1,347億51百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は52.3%と前連結会計年度末比4.3ポイント上昇いたしました。
資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要は、営業活動に関する資金需要として、システムサービスおよびサポートサービスなどの外注費、販売用のコンピュータおよびソフトウェアの仕入の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものがあります。営業費用の主なものは人件費および営業支援費、新規サービスの開発等に向けた研究開発費です。また、投資活動に関する資金需要として、新たなビジネス創出に向けた、事業会社、スタートアップ、ファンドへの戦略投資、既存ビジネス遂行のための設備投資などがあります。経営方針(2021-2023)においては、投資を重要な施策と位置づけており、先端テクノロジー活用とイノベーションの持続的な創出を目指しつつ、戦略投資を加速させていく計画です。
必要な資金については、既存のICT領域や今後成長が見込まれるサービス型ビジネスから創出されるキャッシュ・フローおよび手許資金等でまかなうことを基本としており、当第3四半期連結累計期間においても、この方針に変更はありません。
また、機動的な資金調達と安定性の確保を狙いとし、従来より、主要取引金融機関と総額105億円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。なお、当第3四半期連結累計期間において当該契約に基づく借入実行はありません。
株主還元については業績連動による配分を基本として、キャッシュ・フローの状況や成長に向けた投資とのバランス、経営環境などを総合的に考慮して利益還元方針を定めており、経営方針(2021-2023)においては連結配当性向40%を目処とする利益還元方針を定めております。
キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比82億86百万円減少の404億16百万円となりました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金につきましては、税引前四半期利益199億52百万円に加え、非現金支出項目である減価償却費及び償却費120億円、営業債権及びその他の債権の減少243億3百万円等の収入加算要素および、棚卸資産の増加66億29百万円、営業債務及びその他の債務の減少66億11百万円等の収入減算要素により、201億45百万円の収入(前年同期比19億77百万円収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金につきましては、主に営業用コンピュータ等の有形固定資産の取得による支出19億13百万円、アウトソーシング用ソフトウェアに対する投資を中心とした無形資産の取得による支出92億34百万円、ファンド投資や子会社であるCVCファンドの運用を中心とした投資有価証券の取得による支出24億40百万円等により、127億70百万円の支出(前年同期比44億32百万円支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金につきましては、リース負債の返済による支出64億70百万円、配当金の支払額90億31百万円等により、157億97百万円の支出(前年同期比7億72百万円支出増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
システムサービス
システムサービスは、ソフトウェアの請負開発業務、SEサービス、コンサルティング等からなり、売上収益は808億6百万円(前年同期比11.6%増)、セグメント利益は277億49百万円(前年同期比24.8%増)となりました。サービス業や金融機関等、幅広い業種のお客様におけるデジタルトランスフォーメーション案件などが堅調に推移した結果、増収増益となりました。また、受注高につきましても、デジタルトランスフォーメーション関連案件に対する需要が堅調に推移し、前年同期比で増加しております。引き続き顧客接点強化や業務改革を中心としたデジタルトランスフォーメーション関連ビジネスを積極的に展開し、付加価値の高いサービス提供により収益の拡大を目指してまいります。
サポートサービス
サポートサービスは、ソフトウェア・ハードウェアの保守サービス、導入支援等からなり、売上収益は387億13百万円(前年同期比1.3%増)、セグメント利益は122億53百万円(前年同期比0.1%減)と増収減益となりました。引き続き収益性の維持・改善に取り組んでまいります。
アウトソーシング
アウトソーシングは、情報システムの運用受託やサービス型ビジネス等からなり、売上収益は480億18百万円(前年同期比2.0%増)、セグメント利益は129億4百万円(前年同期比5.3%減)となりました。売上収益は、地域金融機関向け共同利用型勘定系サービス「OptBAE」において順次本番サービスを開始するなど、金融機関向けプラットフォームサービスが収益拡大に貢献し増収となりました。また、EC事業者向けプラットフォームサービスも採用拡大に向けて順調に進捗しております。売上差益は、前年同期に計上した利益率の高い大型案件の影響により減益となりました。
経営方針(2021-2023)において当セグメントを成長ドライバーと定め、ITアウトソーシングの更なる拡大に加え、お客様のデジタルトランスフォーメーションを推進するサービスの提供や、社会課題の解決に貢献する様々なサービス型ビジネスの拡大に取り組むことで、一層の事業拡大を目指してまいります。
ソフトウェア
ソフトウェアは、ソフトウェアの使用許諾契約によるソフトウェアの提供等からなり、売上収益は231億43百万円(前年同期比13.5%増)、セグメント利益は21億79百万円(前年同期比23.9%減)となりました。前年同期に比べ増収となったものの、利益率の低い案件が増加したことにより、減益となりました。
ハードウェア
ハードウェアは、機器の売買契約、賃貸借契約によるハードウェアの提供等からなり、売上収益は322億6百万円(前年同期比1.4%減)、セグメント利益は49億95百万円(前年同期比13.9%減)となりました。前年同期に比べ採算性の高い大型案件が減少した影響等により、減収減益となりました。
その他
その他は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、回線サービスおよび設備工事等を含み、売上収益は70億88百万円、セグメント利益は15億74百万円となり、前年同期と同水準になりました。
(注)セグメント利益は当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益と調整を行っており、上記の全てのセグメント利益合計616億56百万円から、各報告セグメントに配賦していない販売費及び一般管理費を含む調整額△423億73百万円を差し引いた192億82百万円が調整後営業利益となります。
(2) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は、28億26百万円です。
当第3四半期連結累計期間において、主なサービス・商品等の開発として、新たに以下を製品化し、提供を開始しました。
・従業員同士が日頃の協力や行動に対する称賛・感謝の気持ちを、デジタルカードで贈り合うサービス「PRAISE CARD」の提供を開始。ブロックチェーン技術が使用されており、デジタルカードの送受信量や保有量データを元に活性度を分析し、コミュニティの状態を可視化することができる。企業の人的資本向上とESG経営における情報開示を支援する。
・非化石証書・環境価値の管理効率化を支援する「環境価値管理サービス」のうち、「購入代行機能」を販売開始。「環境価値管理サービス」は、非化石証書の調達・割当・対外機関への報告までの手続きを一気通貫で行うことができるSaaS型サービスであり、非化石証書・環境価値管理の効率化を通じて、社会のカーボンニュートラル実現を支援する。