有価証券報告書-第80期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
②生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.ソフトウェアには、ソフトウェア製品マスター制作までの研究開発費に該当する金額を含んでおります。
2.システムサービスの金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等を含んでおりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)上記の金額には、消費税等を含んでおりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)上記の金額には、消費税等を含んでおりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されています。なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要性がある会計方針」および「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載の通りです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、経営方針(2021-2023)の最終年度である2024年3月期の数値目標として、調整後営業利益率10%以上、売上収益3,400億円(うち、アウトソーシング1,000億円)を掲げ、ROEは15%、連結配当性向は40%を目途としてまいりました。
当期の連結業績は、調整後営業利益率9.2%、売上収益3,680億円(うち、アウトソーシング750億円)の計画※に対し、実績は調整後営業利益率9.1%、売上収益3,701億円(うち、アウトソーシング766億円)となり、調整後営業利益率は計画を下回ったものの、売上収益は計画を上回りました。またROEは16.5%、連結配当性向は39.8%となりました。
※2024年2月1日発表の2024年3月期第3四半期決算短信にて、連結業績予想等を修正しており、修正後の業績予想数値を記載しております。
b.経営成績等の状況に関する経営者の視点による認識・分析・検討(事業全体)
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費や企業の設備投資の持ち直し等により、穏やかな回復基調が続きました。
情報サービス産業においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域を中心に企業の強い投資意欲が継続しております。
一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など海外景気の下振れが国内景気を下押しするリスクがあることに加え、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などが、今後の企業の投資意欲に影響を及ぼす可能性があります。
このような環境下、当社グループが目指す「Vision2030注1」の実現に向けて、「経営方針(2021-2023)」に基づく取り組みを推進してまいりました。基本方針としては、お客様の持続的成長に貢献する顧客DXの推進「For Customer」と、各業種・業界のお客様、パートナーと共に社会課題解決を進める社会DXの推進「For Society」を定め、価値創出力を強化するための「風土改革」も推進してまいりました。
当社グループは、これまで培ってきたビジネス構想力とエンジニアリング力に加え、システム開発やソリューション提供を通じて得られた幅広い業種・業界での知見を有しており、多くのお客様との信頼関係やパートナーとの強いつながりを活かし、社会課題解決に取り組み、社会的価値と経済的価値の創出を目指しています。
当連結会計年度におきましても、これまでに獲得した幅広い知見をもとに、「For Customer」、「For Society」視点での取り組みが拡大しております。
金融分野では、オープン環境/パブリッククラウドでのフルバンキングシステム「BankVision®」、共同利用型勘定系サービス「OptBAE®」の売上収益が拡大しております。
当社グループは、金融機関向けにフロントからバック業務まで幅広い領域でサービスやソリューションを提供しており、FinTech、XTechなどの新規プレイヤーとも多くの協業実績があります。これらの業務知見、技術力、連携力を活かし、金融サービスを機能単位で提供する新しいプラットフォームサービス「ファイナンシャル・サービスプラットフォーム」構想注2を進めております。この取り組みの一環として、地域金融機関向け共同利用型バンキングアプリ「#tsumuGO_mobile®注3」を2024年3月に提供開始しました。すでに複数の金融機関に採用を決定いただいており、今後も「いつでも」「どこでも」「だれでも」気軽に使える機能を拡充し、地域活性化と住みやすい街づくりを支援してまいります。
流通分野では、人手不足が課題となっている小売業向け店舗DXとして、店舗業務の大幅な効率化につながる「電子棚札ソリューション注4」の採用が拡大しております。2024年2月には、電子棚札に特化したクラウドサービス「BIPROGY ESL SaaS™」の提供を開始しました。本サービスは、システム構築から運用保守、業務活用までトータルで提供するため、手軽に電子棚札を導入できるようになります。すでに複数の食品スーパーに採用を決定いただいており、システムの拡張性や柔軟性、維持管理なども持続的にサポートすることで、小売業界のDX化を支援してまいります。
製造分野では、当社グループが長年培ってきたCAD、CG技術を活かして2022年に設立した子会社V-Drive Technologiesが手掛ける「自動運転シミュレーションプラットフォーム(DIVP®注5)」の引き合いが拡大し、導入社数も順調に増えております。国内外での自動運転車の社会実装が進む中で、自動車メーカーやサプライヤ―、大学、自治体とともに、交通事故や運転手不足等の社会課題解決につながる自動運転社会の実現に貢献してまいります。
公共分野では、カーボンニュートラル実現に向けて、取引量の増加が見込まれるカーボンオフセット注6に係る業務の負担を軽減する環境価値管理サービス「Re:lvis®(リルビス)」や、AIにより太陽光発電の余剰電力量を予測する「太陽光余剰予測サービス」を提供しております。企業の目的や課題に合わせた提案・サービス提供を幅広く行うことで、カーボンニュートラル実現に貢献してまいります。
また、AIを活用した顧客DXへの取り組みも加速しております。
生成AIに対する期待の高まりを受け、企業向け「ChatGPT」利用環境構築サービス「Azure OpenAI ServiceスターターセットPlus注7」の導入が拡大しております。本サービスは、セキュアな生成AI環境構築と生成AI活用シナリオの作成を伴走型で支援します。
流通業向けには、AI需要予測による発注自動化サービス「AI‐Order Foresight®」の適用が拡大しています。製造業向けには、台湾のProfet AI社と提携し、スマートファクトリーや製造DXを推進しており、生産技術部門を中心に多くの引き合いがあります。
当社グループのユニアデックス株式会社では、長年蓄積した豊富な運用実績データを元に、障害調査の自動化などAIを活用して運用業務の自立化を支援する新たなマネージドサービスの開発に着手しております。データとAIを融合してビジネスを繋ぎ、企業の課題解決や新しい価値の創出を支援してまいります。
「経営方針(2021-2023)」では、社会の期待や要請に対する対応力を高めていくことでステークホルダーの皆様から信頼され、期待され続ける企業グループになることを目指してきました。社会課題解決の実現に向けて推進していく社員自らがイニシアティブをとって社会に働きかけ、さまざまなステークホルダーを巻き込み解決に向けてチャレンジしていけるよう、当社グループではさらなる風土改革を推進してまいります。
これまでVision2030実現に向けて、当社グループ一体となって取り組んでまいりました。今後も新たに定めた経営方針(2024-2026)のもと、目標達成に向けた取り組みをより一層加速してまいります。
(注)
1. Vision2030については、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/com/management_policy.html
2. ファイナンシャル・サービスプラットフォーム構想については、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/fsp.html
3. #tsumuGO_mobileについては、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/tsumugo.html
4. 電子棚札ソリューションについては、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/shelf-tag.html
5. DIVP:Driving Intelligence Validation Platformの略称で、実現象と一致性の高いシミュレーションモデルに基づいた仮想空間における、さまざまな交通環境下で再現性の高い安全評価を行うためのプラットフォームのこと。DIVPは、学校法人幾徳学園の登録商標です。
6. カーボンオフセット:非化石証書などの環境価値で発生させた温室効果ガスの埋め合わせを行うこと。
7. Azure OpenAI ServiceスターターセットPlusについては、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/rinzatalkplus.html
8. 記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。
当連結会計年度の売上収益は、お客様からのIT投資に対する旺盛な需要を背景に、システムサービスやアウトソーシングを中心に全てのセグメントで増加し、前期に比べ302億44百万円増収の3,701億42百万円(前期比8.9%増)となりました。
利益面につきましては、投資強化などによる販売費及び一般管理費の増加を、増収による売上総利益の増益分でカバーし、営業利益は、前期に比べ36億14百万円増加の332億87百万円(前期比12.2%増)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業増益や法人所得税の減少により、前期に比べ50億43百万円増加の252億46百万円(前期比25.0%増)となりました。
なお、当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益※につきましては、前期に比べ44億18百万円増加の338億12百万円(前期比15.0%増)となりました。
※調整後営業利益は、売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
財政状態
当連結会計年度末の総資産の状況につきましては、現金及び現金同等物、無形資産並びに繰延税金資産の増加等により、前連結会計年度末比338億22百万円増加の3,142億19百万円となりました。
負債につきましては、リース負債が減少した一方、契約負債等が増加したことにより、前連結会計年度末比71億6百万円増加の1,459億5百万円となりました。
資本につきましては、1,683億14百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は53.0%と前連結会計年度末比3.1ポイント上昇しました。
c.資本の財源及び資金の流動性について
財務政策
当社グループの資金需要は、営業活動に関する資金需要として、システムサービスおよびサポートサービスなどの外注費、販売用のコンピュータおよびソフトウェアの仕入の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものがあります。営業費用の主なものは人件費および営業支援費、新規サービスの開発等に向けた研究開発費です。また投資活動に関する資金需要として、新たなビジネス創出に向けた、事業会社、スタートアップ、ファンドへの戦略投資、既存ビジネス遂行のための設備投資などがあります。経営方針(2021-2023)においては、投資戦略を重要な施策の一つとしており、2024年3月期までの3ヵ年累計で601億円の実績となりました。経営方針(2024-2026)においても、投資を重要な施策と位置づけており、先端テクノロジー活用やイノベーションの持続的な創出、注力領域を中心とした国内外でのM&A等の実行を目指し、戦略投資を加速させていく計画です。
必要な資金については、既存のICT領域や今後成長が見込まれるサービス型ビジネスから創出されるキャッシュ・フローおよび手許資金等でまかなうことを基本としており、2025年3月期においても、この方針に変更はありません。
また、機動的な資金調達と安定性の確保を狙いとし、従来、主要取引金融機関と総額105億円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度において当該契約に基づく借入実行はありません。
株主還元については業績連動による配分を基本として、キャッシュ・フローの状況や成長に向けた投資とのバランス、経営環境などを総合的に考慮して利益還元方針を定めており、経営方針(2021-2023)においては連結配当性向40%を目処とする利益還元方針を定めておりました。この方針に沿って当連結会計年度においては、1株当たり100円(連結配当性向39.8%)の配当を実施しております。
キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比156億18百万円増加の592億63百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金につきましては、税引前当期利益341億64百万円に加え、非現金支出項目である減価償却費及び償却費178億60百万円等の収入加算要素および、棚卸資産の増加28億48百万円、営業債権及びその他の債権の増加23億75百万円等の収入減算要素により、416億93百万円の収入(前期比132億73百万円収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金につきましては、主に営業用コンピュータ等の有形固定資産の取得による支出21億76百万円、アウトソーシング用ソフトウェアに対する投資を中心とした無形資産の取得による支出105億93百万円、政策保有株式を中心とした投資有価証券の売却による収入75億16百万円等により、85億50百万円の支出(前期比69億86百万円支出減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金につきましては、リース負債の返済による支出90億48百万円、配当金の支払額85億42百万円等により、176億21百万円の支出(前期比4億21百万円支出減)となりました。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
システムサービス
システムサービスは、ソフトウェアの請負開発業務、SEサービス、コンサルティング等からなり、売上収益は1,270億39百万円(前期比9.8%増)、セグメント利益は441億37百万円(前期比11.4%増)となりました。金融機関や製造業、サービス業等、様々なお客様におけるデジタルトランスフォーメーション案件が活況となり、増収増益となりました。収益性も高水準を維持しております。また、受注高につきましても、医薬品関連行政機関向け大型案件や製造業、金融機関向けデジタルトランスフォーメーション案件の計上等により、前期比で増加しております。システムサービスを通じて獲得した知財を活用し、将来のプラットフォームサービスを創出していくことにより、付加価値の高いサービス型ビジネスへと繋げてまいります。
サポートサービス
サポートサービスは、ソフトウェア・ハードウェアの保守サービス、導入支援等からなり、売上収益は548億81百万円(前期比4.7%増)、セグメント利益は167億43百万円(前期比4.1%増)と増収増益となりました。引き続き収益性の維持・改善に取り組んでまいります。
アウトソーシング
アウトソーシングは、情報システムの運用受託やサービス型ビジネス等からなり、売上収益は765億82百万円(前期比14.8%増)、セグメント利益は169億8百万円(前期比0.8%減)となりました。リモートワーク関連などの他社クラウドサービスの売上増加や、サービス型ビジネスの利用拡大などにより増収となったものの、地域金融機関向け共同利用型勘定系サービス「OptBAE」への移行に伴う、従来の信金向けアウトソーシングサービスの採算性悪化や、物価上昇によるコスト増加などにより、減益となりました。今後、他社クラウドサービスと自社サービスを組み合わせた付加価値の高いマネージドサービスを提供していくとともに、運用効率のさらなる改善や収益性の高いサービス型ビジネスの拡大に取り組むことで、収益性向上を目指してまいります。
ソフトウェア
ソフトウェアは、ソフトウェアの使用許諾契約によるソフトウェアの提供等からなり、売上収益は383億30百万円(前期比2.5%増)、セグメント利益は58億53百万円(前期比14.8%増)となりました。前期に比べ収益性の低い他社製ソフトウェア案件が減少した一方、大型から小口まで幅広い案件を獲得したことにより、増収増益となりました。
ハードウェア
ハードウェアは、機器の売買契約、賃貸借契約によるハードウェアの提供等からなり、売上収益は604億71百万円(前期比6.7%増)、セグメント利益は105億44百万円(前期比16.6%増)となりました。ネットワーク機器販売案件等の中小型案件が増加したことや前期に比べ採算性の高い案件が増加した影響等により、増収増益となりました。
その他
その他は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、回線サービス及び設備工事等を含み、売上高は128億36百万円(前期比17.1%増)、セグメント利益は29億86百万円(前期比20.1%増)となりました。
(注)セグメント利益は、当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益と調整を行っており、上記の全てのセグメント利益合計971億73百万円から、各報告セグメントに配賦していない販売費及び一般管理費を含む調整額633億60百万円を差し引いた338億12百万円(前期比15.0%増)が調整後営業利益となります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に含めて記載しております。
②生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) | 前期比(%) |
システムサービス(百万円) | 127,137 | 10.7 |
ソフトウェア(百万円) | 14,385 | △5.5 |
合計(百万円) | 141,523 | 8.8 |
(注)1.ソフトウェアには、ソフトウェア製品マスター制作までの研究開発費に該当する金額を含んでおります。
2.システムサービスの金額は、販売価格によっております。
3.上記の金額には、消費税等を含んでおりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高 (百万円) | 前期比 (%) | 受注残高 (百万円) | 前期比 (%) |
システムサービス | 127,624 | 7.3 | 36,993 | 1.6 |
サポートサービス | 57,191 | 5.3 | 48,091 | 5.0 |
アウトソーシング | 90,050 | 18.5 | 172,742 | 8.5 |
ソフトウェア | 39,379 | 4.4 | 9,128 | 13.0 |
ハードウェア | 57,561 | △8.8 | 16,625 | △14.9 |
その他 | 14,297 | 19.2 | 6,260 | 30.5 |
合計 | 386,104 | 6.6 | 289,842 | 5.8 |
(注)上記の金額には、消費税等を含んでおりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) | 前期比(%) |
システムサービス(百万円) | 127,039 | 9.8 |
サポートサービス(百万円) | 54,881 | 4.7 |
アウトソーシング(百万円) | 76,582 | 14.8 |
ソフトウェア(百万円) | 38,330 | 2.5 |
ハードウェア(百万円) | 60,471 | 6.7 |
その他(百万円) | 12,836 | 17.1 |
合計(百万円) | 370,142 | 8.9 |
(注)上記の金額には、消費税等を含んでおりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されています。なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要性がある会計方針」および「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載の通りです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、経営方針(2021-2023)の最終年度である2024年3月期の数値目標として、調整後営業利益率10%以上、売上収益3,400億円(うち、アウトソーシング1,000億円)を掲げ、ROEは15%、連結配当性向は40%を目途としてまいりました。
当期の連結業績は、調整後営業利益率9.2%、売上収益3,680億円(うち、アウトソーシング750億円)の計画※に対し、実績は調整後営業利益率9.1%、売上収益3,701億円(うち、アウトソーシング766億円)となり、調整後営業利益率は計画を下回ったものの、売上収益は計画を上回りました。またROEは16.5%、連結配当性向は39.8%となりました。
※2024年2月1日発表の2024年3月期第3四半期決算短信にて、連結業績予想等を修正しており、修正後の業績予想数値を記載しております。
b.経営成績等の状況に関する経営者の視点による認識・分析・検討(事業全体)
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費や企業の設備投資の持ち直し等により、穏やかな回復基調が続きました。
情報サービス産業においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域を中心に企業の強い投資意欲が継続しております。
一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など海外景気の下振れが国内景気を下押しするリスクがあることに加え、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などが、今後の企業の投資意欲に影響を及ぼす可能性があります。
このような環境下、当社グループが目指す「Vision2030注1」の実現に向けて、「経営方針(2021-2023)」に基づく取り組みを推進してまいりました。基本方針としては、お客様の持続的成長に貢献する顧客DXの推進「For Customer」と、各業種・業界のお客様、パートナーと共に社会課題解決を進める社会DXの推進「For Society」を定め、価値創出力を強化するための「風土改革」も推進してまいりました。
当社グループは、これまで培ってきたビジネス構想力とエンジニアリング力に加え、システム開発やソリューション提供を通じて得られた幅広い業種・業界での知見を有しており、多くのお客様との信頼関係やパートナーとの強いつながりを活かし、社会課題解決に取り組み、社会的価値と経済的価値の創出を目指しています。
当連結会計年度におきましても、これまでに獲得した幅広い知見をもとに、「For Customer」、「For Society」視点での取り組みが拡大しております。
金融分野では、オープン環境/パブリッククラウドでのフルバンキングシステム「BankVision®」、共同利用型勘定系サービス「OptBAE®」の売上収益が拡大しております。
当社グループは、金融機関向けにフロントからバック業務まで幅広い領域でサービスやソリューションを提供しており、FinTech、XTechなどの新規プレイヤーとも多くの協業実績があります。これらの業務知見、技術力、連携力を活かし、金融サービスを機能単位で提供する新しいプラットフォームサービス「ファイナンシャル・サービスプラットフォーム」構想注2を進めております。この取り組みの一環として、地域金融機関向け共同利用型バンキングアプリ「#tsumuGO_mobile®注3」を2024年3月に提供開始しました。すでに複数の金融機関に採用を決定いただいており、今後も「いつでも」「どこでも」「だれでも」気軽に使える機能を拡充し、地域活性化と住みやすい街づくりを支援してまいります。
流通分野では、人手不足が課題となっている小売業向け店舗DXとして、店舗業務の大幅な効率化につながる「電子棚札ソリューション注4」の採用が拡大しております。2024年2月には、電子棚札に特化したクラウドサービス「BIPROGY ESL SaaS™」の提供を開始しました。本サービスは、システム構築から運用保守、業務活用までトータルで提供するため、手軽に電子棚札を導入できるようになります。すでに複数の食品スーパーに採用を決定いただいており、システムの拡張性や柔軟性、維持管理なども持続的にサポートすることで、小売業界のDX化を支援してまいります。
製造分野では、当社グループが長年培ってきたCAD、CG技術を活かして2022年に設立した子会社V-Drive Technologiesが手掛ける「自動運転シミュレーションプラットフォーム(DIVP®注5)」の引き合いが拡大し、導入社数も順調に増えております。国内外での自動運転車の社会実装が進む中で、自動車メーカーやサプライヤ―、大学、自治体とともに、交通事故や運転手不足等の社会課題解決につながる自動運転社会の実現に貢献してまいります。
公共分野では、カーボンニュートラル実現に向けて、取引量の増加が見込まれるカーボンオフセット注6に係る業務の負担を軽減する環境価値管理サービス「Re:lvis®(リルビス)」や、AIにより太陽光発電の余剰電力量を予測する「太陽光余剰予測サービス」を提供しております。企業の目的や課題に合わせた提案・サービス提供を幅広く行うことで、カーボンニュートラル実現に貢献してまいります。
また、AIを活用した顧客DXへの取り組みも加速しております。
生成AIに対する期待の高まりを受け、企業向け「ChatGPT」利用環境構築サービス「Azure OpenAI ServiceスターターセットPlus注7」の導入が拡大しております。本サービスは、セキュアな生成AI環境構築と生成AI活用シナリオの作成を伴走型で支援します。
流通業向けには、AI需要予測による発注自動化サービス「AI‐Order Foresight®」の適用が拡大しています。製造業向けには、台湾のProfet AI社と提携し、スマートファクトリーや製造DXを推進しており、生産技術部門を中心に多くの引き合いがあります。
当社グループのユニアデックス株式会社では、長年蓄積した豊富な運用実績データを元に、障害調査の自動化などAIを活用して運用業務の自立化を支援する新たなマネージドサービスの開発に着手しております。データとAIを融合してビジネスを繋ぎ、企業の課題解決や新しい価値の創出を支援してまいります。
「経営方針(2021-2023)」では、社会の期待や要請に対する対応力を高めていくことでステークホルダーの皆様から信頼され、期待され続ける企業グループになることを目指してきました。社会課題解決の実現に向けて推進していく社員自らがイニシアティブをとって社会に働きかけ、さまざまなステークホルダーを巻き込み解決に向けてチャレンジしていけるよう、当社グループではさらなる風土改革を推進してまいります。
これまでVision2030実現に向けて、当社グループ一体となって取り組んでまいりました。今後も新たに定めた経営方針(2024-2026)のもと、目標達成に向けた取り組みをより一層加速してまいります。
(注)
1. Vision2030については、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/com/management_policy.html
2. ファイナンシャル・サービスプラットフォーム構想については、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/fsp.html
3. #tsumuGO_mobileについては、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/tsumugo.html
4. 電子棚札ソリューションについては、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/shelf-tag.html
5. DIVP:Driving Intelligence Validation Platformの略称で、実現象と一致性の高いシミュレーションモデルに基づいた仮想空間における、さまざまな交通環境下で再現性の高い安全評価を行うためのプラットフォームのこと。DIVPは、学校法人幾徳学園の登録商標です。
6. カーボンオフセット:非化石証書などの環境価値で発生させた温室効果ガスの埋め合わせを行うこと。
7. Azure OpenAI ServiceスターターセットPlusについては、当社グループウェブページの以下ご参照。
https://www.biprogy.com/solution/service/rinzatalkplus.html
8. 記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。
当連結会計年度の売上収益は、お客様からのIT投資に対する旺盛な需要を背景に、システムサービスやアウトソーシングを中心に全てのセグメントで増加し、前期に比べ302億44百万円増収の3,701億42百万円(前期比8.9%増)となりました。
利益面につきましては、投資強化などによる販売費及び一般管理費の増加を、増収による売上総利益の増益分でカバーし、営業利益は、前期に比べ36億14百万円増加の332億87百万円(前期比12.2%増)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業増益や法人所得税の減少により、前期に比べ50億43百万円増加の252億46百万円(前期比25.0%増)となりました。
なお、当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益※につきましては、前期に比べ44億18百万円増加の338億12百万円(前期比15.0%増)となりました。
※調整後営業利益は、売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
財政状態
当連結会計年度末の総資産の状況につきましては、現金及び現金同等物、無形資産並びに繰延税金資産の増加等により、前連結会計年度末比338億22百万円増加の3,142億19百万円となりました。
負債につきましては、リース負債が減少した一方、契約負債等が増加したことにより、前連結会計年度末比71億6百万円増加の1,459億5百万円となりました。
資本につきましては、1,683億14百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は53.0%と前連結会計年度末比3.1ポイント上昇しました。
c.資本の財源及び資金の流動性について
財務政策
当社グループの資金需要は、営業活動に関する資金需要として、システムサービスおよびサポートサービスなどの外注費、販売用のコンピュータおよびソフトウェアの仕入の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものがあります。営業費用の主なものは人件費および営業支援費、新規サービスの開発等に向けた研究開発費です。また投資活動に関する資金需要として、新たなビジネス創出に向けた、事業会社、スタートアップ、ファンドへの戦略投資、既存ビジネス遂行のための設備投資などがあります。経営方針(2021-2023)においては、投資戦略を重要な施策の一つとしており、2024年3月期までの3ヵ年累計で601億円の実績となりました。経営方針(2024-2026)においても、投資を重要な施策と位置づけており、先端テクノロジー活用やイノベーションの持続的な創出、注力領域を中心とした国内外でのM&A等の実行を目指し、戦略投資を加速させていく計画です。
必要な資金については、既存のICT領域や今後成長が見込まれるサービス型ビジネスから創出されるキャッシュ・フローおよび手許資金等でまかなうことを基本としており、2025年3月期においても、この方針に変更はありません。
投資実績 | (単位:億円) | ||||
2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 3ヵ年合計 | ||
戦略投資 | 39 | 35 | 36 | 109 | |
サービス開発投資 | 研究開発投資 | 41 | 40 | 45 | 126 |
設備投資 | 91 | 147 | 128 | 366 | |
合計 | 171 | 221 | 209 | 601 |
また、機動的な資金調達と安定性の確保を狙いとし、従来、主要取引金融機関と総額105億円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度において当該契約に基づく借入実行はありません。
株主還元については業績連動による配分を基本として、キャッシュ・フローの状況や成長に向けた投資とのバランス、経営環境などを総合的に考慮して利益還元方針を定めており、経営方針(2021-2023)においては連結配当性向40%を目処とする利益還元方針を定めておりました。この方針に沿って当連結会計年度においては、1株当たり100円(連結配当性向39.8%)の配当を実施しております。
キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比156億18百万円増加の592億63百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金につきましては、税引前当期利益341億64百万円に加え、非現金支出項目である減価償却費及び償却費178億60百万円等の収入加算要素および、棚卸資産の増加28億48百万円、営業債権及びその他の債権の増加23億75百万円等の収入減算要素により、416億93百万円の収入(前期比132億73百万円収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金につきましては、主に営業用コンピュータ等の有形固定資産の取得による支出21億76百万円、アウトソーシング用ソフトウェアに対する投資を中心とした無形資産の取得による支出105億93百万円、政策保有株式を中心とした投資有価証券の売却による収入75億16百万円等により、85億50百万円の支出(前期比69億86百万円支出減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金につきましては、リース負債の返済による支出90億48百万円、配当金の支払額85億42百万円等により、176億21百万円の支出(前期比4億21百万円支出減)となりました。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
システムサービス
システムサービスは、ソフトウェアの請負開発業務、SEサービス、コンサルティング等からなり、売上収益は1,270億39百万円(前期比9.8%増)、セグメント利益は441億37百万円(前期比11.4%増)となりました。金融機関や製造業、サービス業等、様々なお客様におけるデジタルトランスフォーメーション案件が活況となり、増収増益となりました。収益性も高水準を維持しております。また、受注高につきましても、医薬品関連行政機関向け大型案件や製造業、金融機関向けデジタルトランスフォーメーション案件の計上等により、前期比で増加しております。システムサービスを通じて獲得した知財を活用し、将来のプラットフォームサービスを創出していくことにより、付加価値の高いサービス型ビジネスへと繋げてまいります。
サポートサービス
サポートサービスは、ソフトウェア・ハードウェアの保守サービス、導入支援等からなり、売上収益は548億81百万円(前期比4.7%増)、セグメント利益は167億43百万円(前期比4.1%増)と増収増益となりました。引き続き収益性の維持・改善に取り組んでまいります。
アウトソーシング
アウトソーシングは、情報システムの運用受託やサービス型ビジネス等からなり、売上収益は765億82百万円(前期比14.8%増)、セグメント利益は169億8百万円(前期比0.8%減)となりました。リモートワーク関連などの他社クラウドサービスの売上増加や、サービス型ビジネスの利用拡大などにより増収となったものの、地域金融機関向け共同利用型勘定系サービス「OptBAE」への移行に伴う、従来の信金向けアウトソーシングサービスの採算性悪化や、物価上昇によるコスト増加などにより、減益となりました。今後、他社クラウドサービスと自社サービスを組み合わせた付加価値の高いマネージドサービスを提供していくとともに、運用効率のさらなる改善や収益性の高いサービス型ビジネスの拡大に取り組むことで、収益性向上を目指してまいります。
ソフトウェア
ソフトウェアは、ソフトウェアの使用許諾契約によるソフトウェアの提供等からなり、売上収益は383億30百万円(前期比2.5%増)、セグメント利益は58億53百万円(前期比14.8%増)となりました。前期に比べ収益性の低い他社製ソフトウェア案件が減少した一方、大型から小口まで幅広い案件を獲得したことにより、増収増益となりました。
ハードウェア
ハードウェアは、機器の売買契約、賃貸借契約によるハードウェアの提供等からなり、売上収益は604億71百万円(前期比6.7%増)、セグメント利益は105億44百万円(前期比16.6%増)となりました。ネットワーク機器販売案件等の中小型案件が増加したことや前期に比べ採算性の高い案件が増加した影響等により、増収増益となりました。
その他
その他は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、回線サービス及び設備工事等を含み、売上高は128億36百万円(前期比17.1%増)、セグメント利益は29億86百万円(前期比20.1%増)となりました。
(注)セグメント利益は、当社グループが業績管理指標として採用している調整後営業利益と調整を行っており、上記の全てのセグメント利益合計971億73百万円から、各報告セグメントに配賦していない販売費及び一般管理費を含む調整額633億60百万円を差し引いた338億12百万円(前期比15.0%増)が調整後営業利益となります。