有価証券報告書-第38期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/21 15:00
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当連結会計年度における経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に関する認識および分析・検討内容は次の通りです。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 連結経営成績の状況
a.事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況
(a) 事業全体の状況
ⅰ.経営環境と当社グループの取り組み
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業を手がけ、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ企業価値の最大化に取り組んでいます。このため、取り組むべき6つのマテリアリティ(重要課題)(注1)を特定し、事業を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献しています。
2024年3月期の国内景気は、地政学リスクの高まりやインフレによる先行き不透明感が継続した一方でコロナ禍からの経済活動正常化やインバウンド需要の回復などにより緩やかな回復傾向にありました。一方、テレワークやオンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、コロナ禍をきっかけとした人々の生活様式の変化や深刻化する人手不足に対応するため、企業や行政のデジタル化は必要不可欠なものとなりました。デジタル化は、生産性向上やイノベーションの創発を促すことで今後の日本の社会を変革していく原動力となり、さらに、文章・画像・プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができる生成AIの出現により、変革のスピードは加速すると考えています。このような環境の下、情報・テクノロジー領域のさまざまな事業を展開する当社グループが果たすべき役割は、ますます重要性を増しています。
当社は2023年5月、3ヵ年の中期経営計画とともに、長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指すことを発表しました。これは、AIの加速度的な進化により急増すると予見されるデータ処理や電力の需要に対応できる構造を持ったインフラを構築し、未来の多様なデジタルサービスを支える不可欠な存在となることを意図しています。そして、この長期ビジョンの実現に向け、本中期経営計画においては事業基盤を着実に再構築することを目的として掲げています。すなわち、成長戦略「Beyond Carrier」を推進することにより通信料の値下げの影響からの回復に取り組み、この計画期間の最終年度である2026年3月期において、親会社の所有者に帰属する純利益を最高益となる5,350億円とすることを目指します。成長戦略「Beyond Carrier」とは、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的にグループの事業を拡大し、企業価値の最大化を目指すものです。また、通信事業とそれらのグループ事業との連携を強化することを通じて、通信事業の競争力を高め、さらにグループ事業のサービス利用者数の拡大やユーザーエンゲージメントの向上などのシナジーの創出を推進します。

<経営環境に関する認識>当社グループが認識している主な外部環境要因および対応は以下の通りです。
金利上昇当社は長期有利子負債の9割程度について固定金利での借り入れを行っており、直ちに重要な影響はありません。(注2)
為替変動当社の為替エクスポージャーは限定的ですが、よりリスクの低減を図るため、必要に応じて為替予約取引を利用しています。
燃料価格高騰当社は基地局やネットワークセンターなどで多くの電力を使用しており、燃料価格高騰の影響を受けます。2024年3月期は燃料価格の上昇が収まりつつあり、前期に比べてその影響が緩和されています。今後も省エネ設備の導入などにより、電力量の削減に取り組んでいきます。なお、1kWh当たりの電力料金が1円上がった場合の年間影響額は約23億円です。(注3)
半導体不足半導体不足の影響は軽減され、通信設備等の当社への納入までのリードタイム長期化の問題は概ね改善しました。一部の影響は改善途上ですが、5Gネットワークの構築に重要な影響はありません。


<主な取り組み>・2023年6月、当社は、「ネットゼロ」の取り組みをグループ企業に拡大することを公表しました。当社の「ネットゼロ」とは、自社の事業活動や電力消費などに伴い排出する温室効果ガス「スコープ1」および「スコープ2」に加えて、取引先などで排出される温室効果ガス「スコープ3」も含めた事業活動に関わる全ての温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)を2050年までに実質ゼロにすることを意味します。当社グループはこの「ネットゼロ」の達成に向け、再生可能エネルギー発電事業者と再生可能エネルギーの調達契約を締結し、通信事業で使用している電力量相当(約20億kWh)の調達を行うなど、さまざまな取り組みを実施しています。
・高まる生成AIニーズに迅速に対応し、当社は次世代社会インフラの構築に向けて、NVIDIAと協業し「分散型AIデータセンター」の構築を進めるとともに、AIと共存する未来に必要な計算基盤のサービスの提供を行う取り組みを開始しました。2023年7月、この計算基盤のサービス提供に関わる取り組みが経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である 「クラウドプログラム」の供給確保計画として、経済産業省に認定されました。さらに、今後構築する国内最大規模の計算基盤を活用し、国産生成AIの自社開発を目指します。また、2023年8月には、日本マイクロソフト㈱と日本市場における企業や自治体のお客さまのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速することを目指し、クラウドサービスや生成AI領域を中心とした戦略的提携に合意しました。このように、当社は国産生成AIの自社開発に取り組みつつ、パートナー企業が開発する複数の生成AIも活用する「マルチ生成AI体制」により、企業のさまざまなニーズに対応したソリューションを提供していきます。なお、生成AIを用いたサービスの実現や次世代社会インフラの構築のための投資資金については、当社が2023年11月1日を払込期日として発行した第1回社債型種類株式による調達資金の一部を充当する予定です。社債型種類株式とは、普通株式への転換権がなく、当初設定された優先配当金以上の配当が行われない、議決権の希薄化が生じない設計となっており、普通株式の株主に配慮した形での自己資本の拡充を通じ資金調達を行う手法です。
・コンシューマ事業では、2023年10月から「ソフトバンク」と「ワイモバイル」の両ブランドで新しい料金プランを提供開始しました。「ソフトバンク」ブランドでは、グループシナジーを生かした取り組みとして、「PayPay」の利用状況などに応じたポイント付与率やデータ容量が異なる3種類の「ペイトク」プランを開始しました。「ワイモバイル」ブランドでは、高速データ通信をより多く楽しみたいというユーザーのニーズに応え、従来からデータ容量を増加させた「シンプル2 S/M/L」を開始しました。
・メディア・EC事業では、2023年10月に当社子会社のZホールディングス㈱を存続会社とし、同社ならびにLINE㈱およびヤフー㈱を中心としたグループ内再編に関する手続きが完了しました。同日をもって、Zホールディングス㈱はLINEヤフー㈱に、LINE㈱はZ中間グローバル㈱に商号変更され、ヤフー㈱は消滅しました。グループ内再編を通じ、LINEヤフー㈱は、シナジー創出のスピードを加速させ、プロダクト創出力と収益力の向上を追求し、新たな価値の創出を目指します。
・エンタープライズ事業では、2024年3月、当社はコネクテッドカーおよびSDCV向けにIoTプラットフォームをグローバル展開するCubic Telecom Ltd.の株式の54.3%(議決権所有割合)を取得しました (以下「本取引」)。当社とCubic Telecom Ltd.は本取引を通して、次世代社会インフラの要となるグローバルIoTプラットフォームの構築に共に取り組み、コネクテッドカーやSDCV、IoTモビリティ(注4)領域におけるグローバルビジネスを主導していきます。
(注1) マテリアリティ(重要課題)の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) サステナビリティ全般 c.戦略及び指標及び目標 ⅱ.マテリアリティ(重要課題)」をご参照ください。
(注2) 長期有利子負債は、短期借入金およびIFRS第16号「リース」適用による影響を除いた有利子負債(銀行ローン・社債・リース負債・債権流動化)を指します。固定金利での借り入れは、固定金利および金利スワップ取引等により支払利息の固定化を行った一部の変動金利の借入金を含みます。
(注3) 当社および主な子会社における2023年3月期の電気使用量2,278,902MWhに基づいた試算です。
(注4) IoTモビリティは、自動車やバイク、大型車両、商業用車両、農業用車両、重機械、ドローンなどを含みます。
ⅱ.連結経営成績の概況
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
売上高59,12060,8401,7202.9%
営業利益10,6028,761△1,841△17.4%
税引前利益8,6298,059△570△6.6%
法人所得税△2,087△2,156△693.3%
純利益6,5415,903△639△9.8%
親会社の所有者5,3144,891△423△8.0%
非支配持分1,2281,012△216△17.6%
調整後EBITDA(注1)15,66416,6771,0126.5%

(注1) 調整後EBITDAの算定方法は、「(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
当期の連結経営成績の概況は、以下の通りです。
(ⅰ) 売上高
当期の売上高は、前期比1,720億円(2.9%)増の60,840億円となりました。ファイナンス事業は2022年10月に子会社化したPayPay㈱の影響などにより905億円、ディストリビューション事業はICT(情報通信技術)関連の商材およびサブスクリプションサービスの堅調な増加などにより566億円、メディア・EC事業はアスクルグループ(アスクル㈱および子会社)およびZOZOグループ(㈱ZOZOおよび子会社)の成長に伴うコマース売上の増加、アカウント広告の成長に伴うメディア売上の増加により524億円、エンタープライズ事業はデジタル化に伴うソリューション需要の増加などにより372億円、それぞれ増収となりました。一方で、コンシューマ事業は物販等売上、ブロードバンド売上、モバイル売上が増加したものの、でんき売上の減少により591億円の減収となりました。なお、当期のコンシューマ事業におけるモバイル売上は、2021年春に実施した通信料の値下げの影響の縮小やスマートフォン契約数の増加などにより、前期の945億円減少から、当期では83億円増加へ反転しました。
(ⅱ) 営業利益
当期の営業利益は、前期比1,841億円(17.4%)減の8,761億円となりました。これは主として、メディア・EC事業が382億円、コンシューマ事業が331億円、エンタープライズ事業が265億円、ファイナンス事業が74億円、ディストリビューション事業が20億円、それぞれ増益となった一方、前期に計上したPayPay㈱の子会社化に伴う段階取得に係る差益2,948億円が剥落したことによるものです。なお、当該段階取得に係る差益の影響を除いた場合、当期の営業利益は、前期比1,107億円(14.5%)の増益となりました。
(ⅲ) 純利益
当期の純利益は、前期比639億円(9.8%)減の5,903億円となりました。これは主として、前期において、保有する投資有価証券の評価損を計上したことに加えて、当期においては、前期に繰り入れた訴訟に係る引当金について戻入を計上したこと、およびLINEヤフーグループが保有するWebtoon Entertainment Inc.に対する持分比率の変動に伴う持分変動利益を計上したことが増益に寄与した一方、前述のとおり、営業利益が減少したことによるものです。
(ⅳ) 親会社の所有者に帰属する純利益
当期の親会社の所有者に帰属する純利益は、前期比423億円(8.0%)減の4,891億円となりました。また、前述の段階取得に係る差益の影響を除いた場合、当期の親会社の所有者に帰属する純利益は、前期比1,529億円(45.5%)の増益となりました。なお、非支配持分に帰属する純利益は、主としてLINEヤフーグループの純利益が減少したことに伴い、前期比216億円(17.6%)減の1,012億円となりました。
(ⅴ) 調整後EBITDA
当期の調整後EBITDAは、前期比1,012億円(6.5%)増の16,677億円となりました。これは主として、前期に計上したPayPay㈱の子会社化に伴う段階取得に係る差益を除いた営業利益が増加していることによるものです。
(b) セグメント情報に記載された区分ごとの状況
ⅰ.コンシューマ事業
<事業概要>コンシューマ事業では、主として国内の個人のお客さまに対し、モバイルサービス、ブロードバンドサービスおよび「おうちでんき」などの電力サービスを提供しています。また、携帯端末メーカーから携帯端末を仕入れ、ソフトバンクショップ等を運営する代理店または個人のお客さまに対して販売しています。
<業績全般>
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
売上高28,83128,239△591△2.1%
営業費用(注)24,20723,284△922△3.8%
うち、減価償却費及び償却費4,2753,959△316△7.4%
セグメント利益4,6244,9553317.2%

(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
売上高の内訳
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
サービス売上23,03321,885△1,148△5.0%
モバイル15,13515,219830.6%
ブロードバンド3,9684,051832.1%
でんき3,9302,615△1,315△33.5%
物販等売上5,7986,3545579.6%
売上高合計28,83128,239△591△2.1%

コンシューマ事業の売上高は、前期比591億円(2.1%)減の28,239億円となりました。そのうち、サービス売上は前期比1,148億円(5.0%)減の21,885億円となり、物販等売上は前期比557億円(9.6%)増の6,354億円となりました。
サービス売上のうち、モバイルは前期比83億円(0.6%)増加しました。これは、2021年春に実施した通信料の値下げにより平均単価が減少した影響が縮小傾向にあるなか、スマートフォン契約数が「ワイモバイル」ブランドを中心に伸びたことなどによるものです。通信料の値下げによる平均単価の減少は、主に「ソフトバンク」「ワイモバイル」の両ブランドにおいて2021年春に導入した料金プランの浸透、および「ソフトバンク」から「ワイモバイル」への移行が進んだことによるものです。なお、各四半期連結会計期間のモバイル売上(顧客獲得施策影響を除く)は前年同期比の減少幅の縮小が続いていましたが、2024年3月期は第3四半期以降において前年同期比で増収に転じたことにより、通期でも増収に反転しました。
(単位:億円)
2023年3月期2024年3月期
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期
モバイル売上3,9043,9253,7233,5833,8463,9203,7483,704
うち、顧客獲得施策影響(注)--△159△284--△183△227
モバイル売上(顧客獲得施策影響を除く)3,9043,9253,8823,8673,8463,9203,9303,931
前年同期比△177△113△117△95△58△54964

(注) 一部の顧客獲得施策はIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に基づき、モバイル売上から控除しています。
ブロードバンドは前期比83億円(2.1%)増加しました。これは主として、光回線サービス「SoftBank 光」契約数が増加したことによるものです。
でんきは前期比1,315億円(33.5%)減少しました。これは主として、電力市場での取引が減少したことによるものです。
物販等売上の増加は、主として、スマートフォンなどの販売単価および台数が増加したことによるものです。
営業費用は23,284億円となり、前期比で922億円(3.8%)減少しました。これは主として、スマートフォンなどの仕入原価が増加した一方、電力の仕入原価および減価償却費が減少したことなどによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比331億円(7.2%)増の4,955億円となりました。
ⅱ.エンタープライズ事業
<事業概要>エンタープライズ事業では、法人のお客さまに対し、モバイル回線提供や携帯端末レンタルなどのモバイルサービス、固定電話やデータ通信などの固定通信サービス、データセンター、クラウド、セキュリティ、グローバル、AI、IoT、デジタルマーケティング等のソリューションサービスなど、多様な法人向けサービスを提供しています。
<業績全般>
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
売上高7,5037,8753725.0%
営業費用(注)6,1526,2591071.7%
うち、減価償却費及び償却費1,5401,54880.5%
セグメント利益1,3511,61526519.6%

(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
売上高の内訳
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
モバイル3,2003,249491.5%
固定1,8211,754△67△3.7%
ソリューション等2,4822,87139015.7%
売上高合計7,5037,8753725.0%

エンタープライズ事業の売上高は、前期比372億円(5.0%)増の7,875億円となりました。そのうち、モバイルは前期比49億円(1.5%)増の3,249億円、固定は前期比67億円(3.7%)減の1,754億円、ソリューション等は前期比390億円(15.7%)増の2,871億円となりました。
モバイル売上の増加は、主として、端末売上および通信売上が増加したことによるものです。
固定売上の減少は、主として、電話サービスの契約数が減少したことによるものです。
ソリューション等売上の増加は、企業のデジタル化需要をとらえ、クラウドサービスやセキュリティソリューションなどの売上が増加したことなどによるものです。
営業費用は6,259億円となり、前期比で107億円(1.7%)増加しました。これは主として、前期に繰り入れた訴訟に係る引当金について戻入を計上した一方で、上記ソリューション等売上の増加に伴い原価が増加したことや、前期においてヘルスケアテクノロジーズ㈱の子会社化に伴い段階取得に係る差益を計上したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比265億円(19.6%)増の1,615億円となりました。
ⅲ.ディストリビューション事業
<事業概要>ディストリビューション事業は、変化する市場環境を迅速にとらえた最先端のプロダクトやサービスを提供しています。法人のお客さま向けには、クラウドサービス、AIを含めた先進テクノロジーを活用した商材を提供しています。個人のお客さま向けには、メーカーあるいはディストリビューターとして、ソフトウエアやモバイルアクセサリー、IoTプロダクト等、多岐にわたる商品の企画・提供を行っています。
<業績全般>
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
売上高5,9006,4665669.6%
営業費用(注)5,6586,2045469.7%
うち、減価償却費及び償却費414437.3%
セグメント利益243262208.1%

(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
ディストリビューション事業の売上高は、前期比566億円(9.6%)増の6,466億円となりました。これは主として、法人向けのICT(情報通信技術)関連の商材や注力しているクラウド、SaaSなどのサブスクリプションサービスが堅調に伸びたことによるものです。
営業費用は6,204億円となり、前期比で546億円(9.7%)増加しました。これは主として、売上高の増加に伴い売上原価が増加したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比20億円(8.1%)増の262億円となりました。
ⅳ.メディア・EC事業
<事業概要>メディア・EC事業は、メディアおよびコマースを中心としたサービスを展開し、オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供しています。メディア領域においては、総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションアプリ「LINE」での広告関連サービス、コマース領域においては「Yahoo!ショッピング」、「ZOZOTOWN」などのオンラインショッピングサービスや「Yahoo!オークション」などのリユースサービス、戦略領域においては、メディア・コマースに次ぐ新たな収益の柱となるよう取り組んでいるFinTechサービス等の提供を行っています。
<業績全般>
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
売上高15,61716,1415243.4%
営業費用(注)14,01914,1621421.0%
うち、減価償却費及び償却費1,5991,613130.8%
セグメント利益1,5971,98038223.9%

(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
売上高の内訳
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
メディア(注)6,8656,9991352.0%
コマース(注)7,9108,1972873.6%
戦略(注)7858769111.6%
その他(注)57691220.6%
売上高合計15,61716,1415243.4%

(注) 2023年6月30日に終了した3カ月間において、LINEヤフーグループでは、事業の管理区分を見直し、「メディア」および「その他」の一部サービスについて管理区分間で移管しました。さらに、2023年12月31日に終了した3カ月間において、Zホールディングス㈱ならびにLINE㈱およびヤフー㈱を中心としたグループ内再編に伴い、一部のサービスについて管理区分間で移管しました。これに伴い、2023年3月31日に終了した1年間におけるメディア・EC事業の売上高の内訳すべてを修正再表示しています。
メディア・EC事業の売上高は、前期比524億円(3.4%)増の16,141億円となりました。そのうち、メディアは前期比135億円(2.0%)増の6,999億円、コマースは前期比287億円(3.6%)増の8,197億円、戦略は前期比91億円(11.6%)増の876億円、その他は前期比12億円(20.6%)増の69億円となりました。
メディア売上の増加は、主として、アカウント広告の増収によるものです。
コマース売上の増加は、主として、アスクルグループやZOZOグループにおける増収によるものです。
戦略売上の増加は、主として、FinTech領域の売上が増加したことによるものです。
営業費用は14,162億円となり、前期比で142億円(1.0%)増加しました。これは主として、販売促進費や広告宣伝費が減少した一方、アスクルグループの売上原価に加えて減価償却費の増加などがあったことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比382億円(23.9%)増の1,980億円となりました。
ⅴ.ファイナンス事業
<事業概要>ファイナンス事業では、QRコード決済やクレジットカードなどのキャッシュレス決済サービス、加盟店のマーケティングソリューションの開発・提供、資産運用などの金融サービス、およびクレジットカード・電子マネー・QRコードなど多様化する決済を一括で提供する決済代行サービスなどを提供しています。
<業績全般>
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減増減率
売上高1,4232,32890563.6%
営業費用(注)1,5472,37883153.7%
うち、減価償却費及び償却費1312097859.2%
セグメント利益△124△5074△59.7%

(注) 営業費用には、売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業収益、その他の営業費用を含みます。
ファイナンス事業の売上高は、前期比905億円(63.6%)増の2,328億円となりました。これは主として、2022年10月のPayPay㈱の子会社化および同社における増収の影響によるものです。
営業費用は2,378億円となり、前期比で831億円(53.7%)増加しました。これは主として、上記PayPay㈱の子会社化の影響によるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比74億円増の△50億円となりました。
b. 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの5つのセグメントと、それ以外の事業から構成されています。いずれも、受注生産形態をとらない事業であるため、セグメントごとに生産の規模および受注の規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。なお、当連結会計年度における販売の状況については以下の通りです。
セグメントの名称金額(億円)前期比(%)
コンシューマ28,239△2.1
エンタープライズ7,8755.0
ディストリビューション6,4669.6
メディア・EC16,1413.4
ファイナンス2,32863.6
その他1,6872.4
セグメント間の内部売上高または振替高△1,8965.2
合計60,8402.9

(注) 1 金額は、外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高または振替高の合計です。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しています。
(2) 連結財政状態の状況
(単位:億円)
2023年
3月31日
2024年
3月31日
増減増減率
流動資産49,48152,6803,1996.5%
非流動資産97,341102,5395,1985.3%
資産合計146,822155,2198,3975.7%
流動負債63,72670,8537,12611.2%
非流動負債46,26545,010△1,255△2.7%
負債合計109,991115,8635,8715.3%
資本合計36,83139,3562,5266.9%

(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減
設備投資(注1)7,8866,509△1,378
うち、コンシューマ事業およびエンタープライズ事業の設備投資(注2)4,0753,128△948

(注1) 設備投資は検収ベースでの記載です。
(注2) コンシューマ事業およびエンタープライズ事業の設備投資は、レンタル端末への投資額、他事業者との共用設備投資(他事業者負担額)およびIFRS第16号「リース」適用による影響は除きます。
(資産)
当期末の資産合計は、前期末から8,397億円(5.7%)増加し、155,219億円となりました。これは主として、営業債権及びその他の債権の増加2,713億円、銀行事業の有価証券の増加2,334億円、その他の金融資産の増加2,270億円があったことによるものです。
(負債)
当期末の負債合計は、前期末から5,871億円(5.3%)増加し、115,863億円となりました。これは主として、営業債務及びその他の債務の増加2,177億円、有利子負債の増加1,864億円、銀行事業の預金の増加1,709億円があったことによるものです。有利子負債の増加は、主として、ソフトバンク㈱において各種の資金調達を実施したことによるものです。
(資本)
当期末の資本合計は、前期末から2,526億円(6.9%)増加し、39,356億円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は、1,521億円増加しました。これは主として、剰余金の配当による減少4,069億円、自己株式の取得による減少1,000億円があった一方、当期の純利益の計上による増加4,891億円、第1回社債型種類株式を含む新株の発行による増加1,373億円があったことによるものです。
(設備投資)
当期の設備投資は、前期比1,378億円減の6,509億円となりました。これは主として、生成AI基盤に係る投資を行った一方、5Gのエリア展開が一巡したことや、LINEヤフーグループの設備投資が減少したことによるものです。
(3) 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年増減
営業活動によるキャッシュ・フロー11,55812,397839
投資活動によるキャッシュ・フロー△1,548△9,276△7,728
財務活動によるキャッシュ・フロー△4,953△3,5711,382
現金及び現金同等物の期末残高20,59219,929△663
フリー・キャッシュ・フロー(注1)10,0103,121△6,889
割賦債権の流動化による影響(注1)196779583
調整後フリー・キャッシュ・フロー(注1)10,2063,900△6,306
調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフーグループ、PayPay等除く)(注2)6,1865,328△858

(注1) フリー・キャッシュ・フロー、割賦債権の流動化による影響、調整後フリー・キャッシュ・フローの算定方法は、「(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
(注2) LINEヤフーグループ、PayPay等のフリー・キャッシュ・フロー、役員への貸付などを除き、Aホールディングス㈱からの受取配当を含みます。なお、PayPay等にはAホールディングス㈱、Bホールディングス㈱、PayPay㈱、PayPayカード㈱、PayPay証券㈱、PPSCインベストメントサービス㈱を含みます。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは12,397億円の収入となりました。前期比では839億円収入が増加しており、これは主として、営業債権及びその他の債権の増加に伴う支出の増加があった一方で、調整後EBITDAが増加し、銀行事業に係る預金や貸付金の増減により収入が増加したことによるものです。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
当期の投資活動によるキャッシュ・フローは9,276億円の支出となりました。前期比では7,728億円支出が増加しており、これは主として、前期においてPayPay㈱を子会社化した際の現金及び現金同等物残高の受け入れに伴う収入が3,973億円あったことによる反動と、当期において銀行事業の有価証券の取得による支出が増加したことによるものです。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
当期の財務活動によるキャッシュ・フローは3,571億円の支出となりました。これは、銀行借入・リース・社債・債権流動化・第1回社債型種類株式の発行などの資金調達による収入が29,736億円あった一方で、借入金の弁済・配当金支払・自己株式の取得などの支出が33,307億円あったことによるものです。
d.現金及び現金同等物の期末残高
a.~c.の結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末比663億円減の19,929億円となりました。
e.調整後フリー・キャッシュ・フロー
当期の調整後フリー・キャッシュ・フローは3,900億円の収入となりました。前期比では6,306億円減少しましたが、これは割賦債権の流動化による収入が増加し、上記の通り、営業活動によるキャッシュ・フローの収入が増加した一方で、投資活動によるキャッシュ・フローの支出の増加があったことによるものです。
f.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の財務戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営方針 d.財務戦略」をご参照ください。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
3月31日に終了した1年間
2023年2024年
親会社所有者帰属持分比率15.2%15.3%
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)5.35.1
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)25.526.5

<各指標の計算方法>親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分合計/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(※1)/キャッシュ・フロー(※2)
インタレスト・カバレッジ・レシオ:調整後EBITDA(※3)/支払利息(※4)
(※1) 有利子負債は連結財政状態計算書の流動負債と非流動負債の中の有利子負債の合計値を使用しています。
(※2) キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
(※3) 算出方法は、「(4)<財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標 a.調整後EBITDA」をご参照ください。
(※4) 支払利息は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標
当社グループは、IFRSで定義されていないか、IFRSに基づき認識されない財務指標を使用しています。経営者は、当社グループの業績に対する理解を高め、現在の業績を評価する上での重要な指標として用いることを目的として、当該指標を使用しています。当該指標はIFRSでは定義されていないため、他社において当社グループとは異なる計算方法または異なる目的で用いられる可能性があります。そのため、比較可能性を担保する観点から、その有用性を制限しています。
a.調整後EBITDA
調整後EBITDAは、営業利益に「減価償却費及び償却費(固定資産除却損を含む)」、「株式報酬費用」および通常の事業活動では発生しない費用・収益である「その他の調整項目」を加減算したものです。「その他の調整項目」には、連結損益計算書に記載されている「その他の営業収益」および「その他の営業費用」が含まれています。
当社グループは、非現金取引の影響を除いた業績評価のための指標として調整後EBITDAを使用しています。調整後EBITDAは、当社グループの業績をより適切に評価するために有用かつ必要な指標であると考えています。
営業利益と調整後EBITDAの調整は、以下の通りです。
(単位:億円)
2023年3月31日に
終了した1年間
2024年3月31日に
終了した1年間
営業利益10,6028,761
(加算)減価償却費及び償却費(注)7,9517,691
(加算)株式報酬費用218230
(加算(△は減算))その他の調整項目:
事業譲渡益
-△105
(加算(△は減算))その他の調整項目:
子会社の支配喪失に伴う利益
△35△48
(加算(△は減算))その他の調整項目:
企業結合に伴う再測定による利益
△3,101-
(加算(△は減算))その他の調整項目:
減損損失
56147
(加算(△は減算))その他の調整項目:
その他の調整項目
△27-
調整後EBITDA15,66416,677

(注) 上表の「減価償却費及び償却費」には、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 d. 連結キャッシュ・フロー計算書」に記載されている減価償却費及び償却費(2023年3月31日に終了した1年間7,642億円 2024年3月31日に終了した1年間7,438億円)に加えて、同計算書に記載されている固定資産除却損(2023年3月31日に終了した1年間309億円 2024年3月31日に終了した1年間253億円)が含まれています。
b.営業利益マージンおよび調整後EBITDAマージン
営業利益マージンは営業利益を売上高で除して計算しています。調整後EBITDAマージンは上記a.調整後EBITDAを売上高で除して計算しています。
当社グループは、以下の業績指標を使用しています。
(a) 営業利益マージン
当社グループは、営業利益に対する影響を管理する指標として営業利益マージンを使用しています。
(b) 調整後EBITDAマージン
調整後EBITDAは上記の営業利益から「減価償却費及び償却費(固定資産除却損を含む)」、「株式報酬費用」および「その他の調整項目」を加減算して算出されています。当社グループは、調整後EBITDAマージンが本業の経常的な収益性を理解するのに適しており、業績評価をより適切に行うために有用かつ必要な指標であると考えています。
営業利益マージンおよび調整後EBITDAマージンの算定方法は以下の通りです。
(単位:億円)
2023年3月31日に
終了した1年間
2024年3月31日に
終了した1年間
売上高59,12060,840
営業利益10,6028,761
営業利益マージン17.9%14.4%
調整後EBITDA15,66416,677
調整後EBITDAマージン26.5%27.4%

c.フリー・キャッシュ・フローおよび調整後フリー・キャッシュ・フロー
フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加算して計算される指標です。
調整後フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローから端末の割賦債権流動化による資金調達額を加算し、当該返済額を減算して計算される指標です。当社グループは、調整後フリー・キャッシュ・フローが、当社グループの実質的な資金創出能力を示し、債務返済能力や事業への追加投資能力の評価を行うために有用な指標であると考えています。
財務活動によるキャッシュ・フローには、割賦債権流動化による資金調達額および返済額が含まれています。当社グループでは、割賦債権は営業活動の中で発生するものであることから、当該債権の流動化によるキャッシュ・フローを、営業活動によるキャッシュ・フローに加減算したものが、当社グループの経常的な資金創出能力をより適切に表すと考えています。従って、割賦債権流動化の資金調達額および返済額をフリー・キャッシュ・フローの調整項目として加減算することにより、調整後フリー・キャッシュ・フローを計算しています。
フリー・キャッシュ・フローと調整後フリー・キャッシュ・フローの調整項目および調整額は以下の通りです。
(単位:億円)
2023年3月31日に
終了した1年間
2024年3月31日に
終了した1年間
営業活動によるキャッシュ・フロー11,55812,397
投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出)(注1)△6,075△5,522
投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出以外)(注2)4,528△3,754
フリー・キャッシュ・フロー10,0103,121
割賦債権流動化取引:調達額(注3)3,7814,588
割賦債権流動化取引:返済額(注3)△3,585△3,809
割賦債権の流動化による影響196779
調整後フリー・キャッシュ・フロー10,2063,900

(注1) 投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出)に関連するキャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる投資活動によるキャッシュ・フローの「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」および「有形固定資産及び無形資産の売却による収入」の純額です。
(注2) 投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出以外)に関連するキャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる投資活動によるキャッシュ・フローの「投資の取得による支出」、「投資の売却または償還による収入」、「銀行事業の有価証券の取得による支出」、「銀行事業の有価証券の売却または償還による収入」、「子会社の支配獲得による収支(△は支出)」および「その他」の純額です。
(注3) 割賦債権流動化取引:調達額および割賦債権流動化取引:返済額に関連するキャッシュ・フローは、主として連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる財務活動によるキャッシュ・フローの「短期有利子負債の純増減額(△は減少額)」、「有利子負債の収入」および「有利子負債の支出」に含まれています。なお、割賦債権流動化取引のうち、短期間で調達および返済を行う取引については純額表示しています。
(5) 重要な判断を要する会計方針及び見積り
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、当社グループにとって最適な会計方針を採用し、一定の前提条件に基づく見積りを行う必要があります。連結財政状態計算書上の資産および負債、連結損益計算書上の収益および費用、または開示対象となる偶発負債および偶発資産などに重要な影響を与える可能性がある項目に関して、経営者は、過去の経験や決算日時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき見積りを行っています。
以下の各項目は、その認識および測定にあたり、経営者の重要な判断および会計上の見積りを必要とするものです。
a.企業結合により取得した無形資産およびのれんの公正価値測定ならびに減損に係る見積り
企業結合により取得した無形資産およびのれんは、支配獲得日における公正価値で認識しています。企業結合時の取得対価の配分に際しては、経営者の判断および見積りが、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。企業結合により識別した無形資産(顧客基盤や商標権など)およびのれんは、見積将来キャッシュ・フローや割引率、既存顧客の逓減率、対象商標権から生み出される将来売上予想やロイヤルティレート等の仮定に基づいて測定しています。企業結合により取得した無形資産およびのれんの取得価額は、当連結会計年度は904億円(前連結会計年度は6,438億円)です。
また、無形資産およびのれんの減損を判断する際に、資金生成単位の回収可能価額の見積りが必要となりますが、減損テストで用いる回収可能価額は、資産の耐用年数、資金生成単位により生じることが予想される見積将来キャッシュ・フロー、市場成長率見込、市場占有率見込および割引率等の仮定に基づいて測定しています。
これらの仮定は、経営者の最善の見積りによって決定されますが、将来の不確実な経済条件の変動により影響を受ける可能性があり、仮定の見直しが必要となった場合には連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
企業結合により取得した無形資産およびのれんの公正価値に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (2) 企業結合」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6.企業結合」をご参照ください。無形資産およびのれんの減損に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (11) 有形固定資産、使用権資産、無形資産およびのれんの減損」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産」をご参照ください。
b.有形固定資産および無形資産の残存価額・耐用年数の見積り
有形固定資産および無形資産は、当社グループの総資産に対する重要な構成要素です。見積りおよび仮定は、資産の帳簿価額および減価償却費または償却費に重要な影響を及ぼす可能性があります。
資産の減価償却費は、耐用年数の見積りおよび残存価額(有形固定資産の場合)を用いて算出されます。資産の耐用年数および残存価額は、資産を取得または創出した時点で見積りを行い、その後、各連結会計年度末に見直しを行います。資産の耐用年数および残存価額の変更は、連結財務諸表に対して重要な調整を必要とする可能性があります。経営者は、資産を取得または創出した時点ならびに見直し時に、同種資産に対する経験に基づき、予想される技術上の変化、除却時の見積費用、当該資産の利用可能見込期間、既存顧客の逓減率、当該資産から得られると見込まれる生産高またはこれに類似する単位数および資産の耐用年数に制約を与える契約上の取決めなどの関連する要素を勘案して、当該資産の耐用年数および残存価額を決定しています。有形固定資産の減価償却費は、当連結会計年度は3,079億円(前連結会計年度は2,955億円)であり、無形資産の償却費は、当連結会計年度は2,764億円(前連結会計年度は2,562億円)です。
有形固定資産および無形資産の帳簿価額・減価償却費または償却費に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.有形固定資産」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.のれんおよび無形資産」をご参照ください。有形固定資産および無形資産の残存価額・耐用年数の見積りに関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (7) 有形固定資産、(9) 無形資産」をご参照ください。
c.金融商品の公正価値の測定方法
当社グループは、特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いています。観察可能ではないインプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。市場で観察可能ではないインプットを用いた金融資産の公正価値は、当連結会計年度末は3,451億円(前連結会計年度末は3,246億円)です。
金融商品の公正価値に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 30.金融商品の公正価値 (1) 公正価値ヒエラルキーのレベル別分類、(2) レベル3に分類した金融商品の公正価値測定」をご参照ください。
d.契約獲得コストの償却期間の見積り
当社グループは、契約獲得コストについて、契約獲得コストに直接関連する財またはサービスが提供されると予想される期間(すなわち、契約獲得コストの償却期間)にわたって、定額法により償却しています。契約獲得コストの償却期間は、契約条件および過去の実績データなどに基づいた解約率や機種変更までの予想期間などの関連する要素を勘案して決定しています。契約獲得コストの償却期間の変更は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。契約獲得コストに係る償却費は、当連結会計年度は2,421億円(前連結会計年度は2,335億円)です。
契約獲得コストに関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (16) 収益 b.契約コスト」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.契約コスト」をご参照ください。