有価証券報告書-第16期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/26 13:46
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による社会経済活動の制限緩和を背景に、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られるものの、ロシアのウクライナ侵攻等の影響による原材料価格やエネルギー価格の上昇と物価の高騰、各国での政策金利の引き上げや円安の進行に加え、世界的なサプライチェーンの混乱による供給制約の問題が継続する等、先行きが不透明な状況が続きました。
当社グループを取り巻く環境としましては、情報通信技術の拡充や世界的な脱炭素化の加速等を背景に半導体需要の中長期的な増加が期待されるものの、足元では在庫調整等の影響を受け半導体製造装置メーカーや半導体メーカーにおける設備投資及び生産活動の減速が見られました。自動車関連メーカーでは断続的な生産調整が継続しました。
このような状況の下、当社グループは第4次中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期)で掲げる「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」の中期経営目標のもと、「大手製造業向けワンストップ戦略」、「地域プラットフォーム戦略」及び「ソリューション戦略」を成長戦略として推し進めております。中核事業領域である大手製造業向け人材派遣において、半導体製造装置エンジニアの育成・強化による顧客工場内の全工程でのシェアの拡大を進めるとともに、地域の有力派遣事業者との業務提携やM&Aによる地域の職場での安定的な雇用環境の整備、併せて大手企業グループ向けの人材流動化支援を進め、事業基盤のさらなる強化・拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度は、当計画の3年目であり、前連結会計年度における徹底した採用活動の強化で積み上げた技術職社員数を起点としてトップラインの引き上げを図るとともに、当社グループが中長期的に成長加速を実現していくための筋肉質な事業基盤を整え、収益性の向上に努めました。
当社グループは、2022年4月1日付でグループ内の大幅な組織再編を行いました。上述の中期経営計画における各成長戦略の実行力を高めるための組織再編を実施し、共通の事業特性を持つ事業会社を統合しました。併せて、2022年4月から新しい業務システムの段階的な導入を進め、事業会社間のアドミニストレーション業務等を標準化、共通化することによって、生産性の向上、さらには人員配置の最適化を進めてまいりました。加えて、採用活動において、事業会社毎に保有する求人情報等のデータベースをグループで統合し、採用オペレーションを最適化することにより、採用効率を改善する取り組みを進めました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,523百万円増加し、71,630百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,173百万円減少し、41,702百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,696百万円増加し、29,928百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度は売上高170,631百万円(前年同期156,769百万円、8.8%の増収)、営業利益8,914百万円(前年同期6,257百万円、42.5%の増益)、EBITDA(※)15,714百万円(前年同期7,502百万円、109.5%の増加)、経常利益8,834百万円(前年同期5,954百万円、48.4%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益3,831百万円(前年同期3,140百万円、22.0%の増益)、技術職社員数は45,530名(前年同期45,386名、144名の増加)となりました。
※ EBITDA=営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+のれん償却額+株式報酬費用
セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。なお、当連結会計年度の期首より、セグメントを従来の「マニュファクチャリング事業」「ソリューション事業」「エンジニアリング事業」の3セグメントから、「マニュファクチャリング事業」「エリア事業」「ソリューション事業」「エンジニアリング事業」「海外事業」の5セグメントに変更しております。このため、前年同期数値につきましては、変更後のセグメント区分に組み替えて比較分析を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(セグメント情報等)に記載のとおりであります。
(マニュファクチャリング事業)
「輸送機器関連分野」では、依然として部材不足による自動車関連メーカーの生産調整が継続しました。
「産業・業務用機械関連分野」「エレクトロニクス関連分野」では、秋口以降、半導体の在庫調整等の影響を背景とした新たな増員需要の先送りや欠員補充の見送り等の顧客状況を踏まえ、慎重な採用活動を進めました。また、顧客に密着した課題解決型の提案等により顧客企業とのリレーションを強化し、派遣先工場内シェアを高めてきたことで人材需要低下の影響を最小限に留めることができました。
このような状況のもと、前年同期比で技術職社員数は減少しましたが、高水準の人材管理の訴求や自社で育成した高スキル人材の派遣を進めたことにより増収となりました。費用面においては、採用関連費の効率化等の販売費及び一般管理費の削減への取り組みが奏功し、大幅な増益となりました。
以上の結果、売上高82,089百万円(前年同期76,003百万円、8.0%の増収)、セグメント利益10,988百万円(前年同期6,345百万円、73.2%の増益)、技術職社員数14,001名(前年同期14,963名、962名の減少)となりました。
(エリア事業)
求職者の多様なニーズに応えるために、各地域において新たな顧客開拓と既存顧客における求人案件の多様化に注力し、これをもとにした採用活動を進めたことで、技術職社員数が大きく増加し、増収となりました。費用面においては、2022年4月1日付のグループ内の大幅な組織再編に伴い業務基盤の共通化を進めたこと等により、販売費及び一般管理費の削減への取り組みが奏功し、大幅な増益となりました。
以上の結果、売上高51,222百万円(前年同期44,611百万円、14.8%の増収)、セグメント利益1,902百万円(前年同期は941百万円の損失)、技術職社員数13,332名(前年同期12,225名、1,107名の増加)となりました。
(ソリューション事業)
2021年10月に連結子会社化したUTエフサス・クリエ株式会社による増収効果が一巡したことに加え、2022年3月末のUTシステムプロダクツ株式会社の売却による影響が生じたことで減収となりました。一方利益面では、既存子会社の技術職社員数の増加や一部の請負現場における稼働の増加により、増益となりました。
以上の結果、売上高18,645百万円(前年同期21,081百万円、11.6%の減収)、セグメント利益146百万円(前年同期76百万円、91.8%の増益)、技術職社員数3,134名(前年同期3,060名、74名の増加)となりました。
(エンジニアリング事業)
従前より新卒入社社員の育成・配属体制の構築に注力してきたことが奏功し、2022年4月に迎え入れた新卒入社社員約200名の稼働開始・戦力化が前期よりも早期に実現しました。さらに、建設、ITともに受注動向は堅調であり、前年同期比で技術職社員数が増加したことにより、増収増益となりました。
以上の結果、売上高9,040百万円(前年同期7,934百万円、13.9%の増収)、セグメント利益1,131百万円(前年同期787百万円、43.6%の増益)、技術職社員数1,469名(前年同期1,388名、81名の増加)となりました。
(海外事業)
ベトナム経済は、新型コロナウイルス感染症に関する規制が撤廃され、国内総生産(GDP)は高い伸びを続けており、その回復状況は鮮明であります。従前より拠点を有するホーチミン市を中心とする南部地域から、ハノイ市を中心とする北部地域まで営業活動を拡大し、日系企業からの案件獲得に注力いたしました。加えて、2021年10月の新型コロナウイルス感染症に関する規制緩和以降、ベトナム国内の生産活動が回復したことにより増収増益となりました。
以上の結果、売上高9,663百万円(前年同期7,180百万円、34.6%の増収)、セグメント利益326百万円(前年同期13百万円)、技術職社員数13,594名(前年同期13,750名、156名の減少)となりました。
なお、海外事業につきましては、決算日が12月末日であることから2022年1~12月期の実績を3ヶ月遅れで当連結会計年度に計上しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、31,969百万円(前連結会計年度末比6,142百万円増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、13,004百万円(前年同期は2,279百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益8,734百万円(株式報酬費用5,562百万円を除いた場合の税金等調整前当期純利益14,296百万円)が計上されたことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,139百万円(前年同期は6,300百万円の使用)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出2,446百万円が計上されたことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、4,748百万円(前年同期は4,554百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出3,648百万円及び配当金の支払額975百万円が計上されたことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは生産活動を行っていないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループが行う事業は全て受注時の業務量をその後の顧客の要望に合わせて変更することが多いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
マニュファクチャリング事業82,0868.0
エリア事業51,20714.8
ソリューション事業18,634△11.6
エンジニアリング事業9,04013.9
海外事業9,66334.6
合計170,6318.8

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、10%未満のため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は55,784百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,036百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が6,142百万円増加したことによるものであります。固定資産は15,846百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,486百万円増加いたしました。これは主に当社グループのシステム構築への投資進捗に伴い、ソフトウエアが1,473百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は71,630百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,523百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は27,903百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,436百万円増加いたしました。これは主に預り金が984百万円減少したものの、未払法人税等が3,699百万円増加したことによるものであります。固定負債は13,798百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,609百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が3,589百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は41,702百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,173百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は29,928百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,696百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金による配当を968百万円行ったものの、親会社株主に帰属する当期純利益が3,831百万円計上されたこと及び新株予約権が5,561百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は31.8%(前連結会計年度末は30.8%)となりました。
b.経営成績の分析
当連結会計年度は、第4次中期経営計画の3年目であり、前連結会計年度における徹底した採用活動の強化で積み上げた技術職社員数を起点としてトップラインの引き上げを図るとともに、当社グループが中長期的に成長加速を実現していくための筋肉質な事業基盤を整え、収益性の向上に努めました。
その具体的な取組みとして、2022年4月1日付でグループ内の大幅な組織再編を行いました。上述の中期経営計画における各成長戦略の実行力を高めるための組織再編を実施し、共通の事業特性を持つ事業会社を統合したことで、特にエリア事業における人件費や採用関連費の効率化を実現しました。併せて、2022年4月から新しい業務システムの段階的な導入を進め、事業会社間のアドミニストレーション業務等を標準化、共通化することによって、生産性の向上、さらには人員配置の最適化を進めてまいりました。加えて、採用活動において、事業会社毎に保有する求人情報等のデータベースをグループで統合し、採用オペレーションを最適化することにより、採用効率を改善する取り組みを進めました。これらの取組みにより、売上高は過去最高を更新するとともに、販売管理費効率(株式報酬費用を除く)が改善し、持続的な事業成長のための基盤構築を進めました。
これらの結果、当連結会計年度における経営成績は、売上高170,631百万円(前年同期比8.8%増)、営業利益8,914百万円(前年同期比42.5%増)、EBITDA(※)15,714百万円(前年同期比109.5%増)、経常利益8,834百万円(前年同期比48.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,831百万円(前年同期比22.0%増)となりました。
※ EBITDA=営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+のれん償却額+株式報酬費用
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主幹事業が属する製造業界におきましては、為替変動や国内外の景気変動の影響等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
そのほか、経営成績に重要な影響を与える可能性のある要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のものがあります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、売上債権の回収サイクルと仕入債務の支払いサイクルのギャップ及び営業活動上において必要な人件費や手数料等の販売費及び一般管理費であります。設備投資資金としては、主に自社利用のソフトウエア等への投資であります。
所要資金は、運転資金需要が中心であるため、自己資金をベースとしつつも、M&Aを含む成長局面の需要に対しては金融機関からの借入を適時組み合わせ、必要資金を賄っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(のれんの回収可能性)
当社グループは、のれんについて、20年以内の合理的な年数で定額法により償却を行っております。
のれんに係る減損要否の検討は、のれんの発生原因である超過収益力やシナジー効果が将来にわたって発現するかに着目して行っており、のれんが帰属する事業の事業計画に沿って営業利益等が計上されているかを毎期モニタリングしております。
事業計画の達成が危ぶまれる状況など減損の兆候が認められる場合には、事業計画の合理性について見直しを行い、これに基づく割引前将来キャッシュ・フローによって、減損損失の認識の要否を判定いたします。減損損失を認識する場合においては割引後将来キャッシュ・フローで算定する回収可能性に基づき減損損失を測定することとしております。
検討に用いる将来の事業計画には、在籍人数及び派遣単価等の項目が重要な仮定として用いられております。これらについては、その性質上、一定の仮定を設定した上での判断を伴うものであり、当該仮定に変化が生じた場合は、減損の兆候の有無の判断、認識するか否かの判定、又は測定する減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。