訂正有価証券報告書-第16期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、雇用情勢の改善と個人消費の持ち直しにより、全体としては緩やかに回復しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、足下では急速に悪化しており、極めて厳しい状況にあります。先行きについても、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクが懸念され、感染症の影響による極めて厳しい状況が続くと見込まれております。
当社グループの事業領域であるインターネット関連市場は、スマートフォンをはじめとするモバイル端末が生活にとって最も身近なデバイスとなるまで普及し、インターネットの利用時間やそれを介したサービス消費も増加するなど、安定的な成長と拡大が続いております。一方で、テクノロジーの進化や新たなビジネス、サービスの創出は加速しており、加えて2020年には第5世代移動通信システムの商用化が始まるなど、事業環境は目まぐるしく変化しております。
音楽やアーティスト関連の市場動向といたしましては、2019年の音楽ソフト(オーディオレコード及び音楽ビデオ合計)の生産金額は2,291億円(前年同期比4.7%減)、音楽配信の販売金額が706億円(前年同期比9.6%増)となりました(出所:一般社団法人日本レコード協会)。特に音楽配信では、ストリーミングサービスの利用が急拡大しており、新たな市場が形成されております。
ライブ、コンサート市場は、2019年上半期(1月から6月)の市場規模が1,573億円(同9.4%増)となり、引き続き拡大しております(出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会)。しかしながら足下の状況としては、新型コロナウイルス感染症流行の影響により、多くのライブ、コンサートが中止、延期となっており、コンサート市場へも大きな影響が出ております。
音楽の市場全体としては、利用者の志向が「モノ消費」から「コト消費」へと移行してきており、加えて、コロナウイルス感染症の影響により、ライブ、コンサートの動画視聴も普及するなど、事業環境は変化しており、それらを的確に捉え、競争力を維持、向上させていくことが、より重要となってきております。
このような外部環境の中、当社グループでは、アーティストを中心として、タレントや声優、アニメまで幅広いジャンルにおいて、ファンクラブサイトを事業の軸としながら、電子チケットやeコマース、キャラクター、スタンプ、音楽、電子書籍といった多岐にわたるデジタルコンテンツの配信に至るまで、複合的な事業展開をしてまいりました。数多くの有力アーティストやコンテンツを保有するという優位性を生かし、それらを相互活用することでグループ全体でのシナジー効果を発揮させ、事業基盤の拡大と多様化を進めてまいりました。
加えて、VRや電子チケットなど今後の成長分野での新たな事業領域の開拓と収益の獲得も引き続き推進してまいりました。
また、経営資源の最適分配を行うと同時に、役割や業務内容の明確化を図り、それぞれの責任と権限において迅速な意思決定を行うことによって、さらなる事業拡大や経営人材の育成等を進め、持続的に企業価値の向上を図っていくことができる体制を構築すべく、2020年4月1日より持株会社体制へと移行いたしました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は11,061百万円(前年同期比59.9%増)、営業利益は729百万円(前年同期比80.9%増)、経常利益は924百万円(前年同期比105.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は470百万円(前期は2,269百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの概要は、以下のとおりであります。
(a)コンテンツ事業
コンテンツ事業では、主にスマートフォン向けにファンクラブサイト運営や各種デジタルコンテンツ配信、動画サービス、アプリの提供などを行っております。
当連結会計年度におきましては、引き続きアーティスト等の獲得による新規ファンクラブ/ファンサイトの開設を進めるとともに、会員向けのチケット先行販売や会員限定のイベントの実施などにより、収益の源泉となる新たな有料会員の獲得に取り組んでまいりました。加えて、年額制のファンクラブの採用や、アプリ化などを進めることで、多様化する利用者ニーズへの対応と、収益獲得のための間口の拡大にも努めてまいりました。
また、電子チケット及びチケットトレードサービスのファンクラブサイトへの導入や、サイトやアプリのリニューアルなどによって、既存のファンクラブにおける会員数の維持向上や単価上昇のための施策を講じてまいりました。
この他、これまでのコンテンツ配信で培った経験やノウハウを活用し、動画配信分野の強化並びにVRなどの新規事業の開発にも引き続き努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度におけるコンテンツ事業の売上高は9,165百万円(前年同期比60.1%増)、セグメント利益は1,294百万円(前年同期比161.5%増)となりました。
(b)EC事業
EC事業につきましては、主に当社グループの運営するファンクラブサイト等を通じて、CD、DVD及びブルーレイといった音楽映像商品と、アーティストグッズを販売しております。
当連結会計年度においては、アーティストのオフィシャル通販サイトの開設や、ファンクラブ限定の先行販売などを実施することで、収益を拡大させてまいりました。また、ライブやイベント会場の物販でもスムーズに利用できるQRコード認証とスマホ決済サービスや、独自のPOSレジシステムといった新規サービス開発にも注力しており、新たな取り組みとして、グッズの事前販売・会場受け取りサービスも開始するなど、eコマースの枠を超え、販売機会を増加させております。
以上の結果、当連結会計年度におけるEC事業の売上高は734百万円(前年同期比23.1%増)、セグメント利益は433百万円(前年同期比111.4%増)となりました。
(c)電子チケット事業
電子チケット事業には、電子チケット及びチケットトレード、並びにそれらに付随する各種サービスからの収益により構成されております。音楽のライブはもちろんのこと、プロ野球やフィギュアスケートといったスポーツ、遊園地などのレジャー施設まで幅広く電子チケットサービスを提供しております。
当連結会計年度においては、有力アーティストのライブやスポーツイベントへの電子チケットの導入を進めてまいりました。特に、2019年6月より施行されたチケット不正転売禁止法に対応する、ライブやイベントへ行けなくなった人が他者に適法、適切にチケットを譲渡できる公式の仕組みであるチケットトレードサービスついては、業界最大手のプレイガイドの1社である株式会社イープラスと、子会社を通じて資本業務提携を締結し、公式2次流通のスタンダートとなるべく、サービスの普及を推進してまいりました。
しかしながら、第4四半期においてコロナウイルス感染症の影響により、ライブ、コンサートの多くが中止、延期されたことに伴い、電子チケット及びチケットトレードに関連する収益も大きく減少し、払い戻し手数料の負担なども行いました。
電子チケット周辺領域のサービスといたしましては、プロ野球の公式カードコレクションアプリを合計8球団で展開するにいたりました。また、ライブをより楽しむためのデジタルコンテンツパックサービスの提供や、アイドルグループのアプリの新規リリース及びリニューアルにも取り組んでまいりました。今後についても、カードコレクションアプリのスポーツ以外への横展開や、新たな電子チケット付加サービスの開発、提供を進めることで、周辺領域でのビジネスも拡大させていくことを計画しております。
以上の結果、当連結会計年度におけるチケット事業の売上高は1,093百万円(前年同期比120.2%増)、セグメント損失は254百万円(前年同期はセグメント利益123百万円)となりました。
(d)その他事業
その他事業には、上記3つのセグメントに属さない連結子会社の収益等が計上されており、主にアパレルやプロダクション事業が含まれております。
引き続き当連結会計年度におきましても、将来の収益獲得に向けた事業育成を行ってきたことから、売上高は68百万円(前年同期比31.6%減)、セグメント損失は48百万円(前年同期はセグメント損失27百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(a)キャッシュ・フロー及び流動性の状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ453百万円減少し、4,904百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、128百万円のプラス(前連結会計年度は1,442百万円のプラス)となりました。
主な増加要因は、税金等調整前当期純利益926百万円の計上、仕入債務の増加726百万円及び預り金の増加347百万円であり、主な減少要因は未払金の減少1,784百万円及び売上債権の増加370百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは685百万円のマイナス(前連結会計年度は2,569百万円のプラス)となりました。
主な減少要因は投資有価証券の取得による支出323百万円及び有形固定資産の取得による支出327百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは104百万円のプラス(前連結会計年度は60百万円のマイナス)となりました。
増加要因は非支配株主からの払込みによる収入195百万円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入106百万円であり、主な減少要因は配当金の支払197百万円であります。
2021年3月期は、営業活動によるキャッシュ・フローとして300百万円を見込んでおります。創出したフリー・キャッシュフローについては電子チケットやVRといった新規事業におけるシステム、サービス開発に投じることで将来の事業育成をすすめるとともに追加的株主還元への機動的なアロケーションも検討していきます。
なお、株主還元については、2021年3月期についても。引き続き連結配当性向を30%以上を目安とし、約200百万円の配当を見込んでおります。今後においても、株主の皆様に対する安定的な利益還元を経営上の重要課題としてとらえており、将来の事業展開に備えた財務基盤の強化や、今後の業績等を勘案の上、長期的視点から、配当政策を進めてまいります。
(b)資本の財源及び資金の流動性
1)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質のもとで、高い資本効率を追求し、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。財務体質に関しては、2019年3月期において会計上の手続きによる特別損失を計上したことで自己資本比率が一時的に低下いたしておりますが、2019年3月期以前の70%程度の水準に回復、維持することを目指し、リスク耐性の強化を図ります。資本効率に関しても同様に2019年3月期に一時的な低下が見られましたが、ROE(自己資本利益率)を10%以上の水準とすることを目安といたします。
設備及び新規事業への投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。一方で健全な財務体質を維持することも念頭に、各事業年度における投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則とし、十分な水準の手元流動性を確保してまいります。
2)資金需要の主な内容
当社グループの営業活動に係る資金支出は、販売に比例し発生するアーティスト等へのロイヤリティや販売手数料などがありますが、収益の認識後に生じるものが多く、資金が先行して支出されることはありません。この他、新規事業やサービス開発のための費用、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金支出は、企業価値向上に資する企業への投資やM&Aに投じることも計画しております。
3)資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、内部資金にて賄うことを原則としており、創業以来、金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債はございません。今後についても同様の方針です。
③生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当社グループは、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。
(2)仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は、仕入価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)受注実績
当社グループは、受注生産を行っていないため、受注実績は記載しておりません。
(4)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来生じる実際の結果とは異なる可能性がありますので、ご留意ください。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は10,660百万円(前連結会計年度末比4.4%増)となりました。
流動資産は7,818百万円(同5.7%増)となりました。主な内訳は現金及び預金4,870百万円(同9.1%減)、売掛金1,564百万円(同31.0%増)となっております。
固定資産は2,841百万円(同0.9%増)となりました。主な内訳は建物602百万円(同76.9%増)、のれん983百万円(同18.2%減)、顧客関連資産385百万円(同11.8%減)、投資有価証券214百万円(同6.9%増)となっております。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は5,851百万円(前連結会計年度末比0.2%増)となりました。
流動負債は5,570百万円(同1.6%減)となりました。主な内訳は買掛金2,805百万円(同34.9%増)であります。
固定負債は280百万円(同57.7%増)となりました。主な内訳は繰延税金負債235百万円(同76.3%増)であります。
(純資産の部)
当連結会計期間末の純資産の合計は4,808百万円(前連結会計年度末比10.0%増)となりました。主な内訳は資本金308百万円(同21.7%増)、資本剰余金3,687百万円(同24.9%減)、利益剰余金614百万円(前連結会計年度末は△833百万円)であります。
(b)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は11,061百万円(前連結会計年度比59.9%増)となりました。これは、2018年9月に子会社化したEMTG株式会社(現株式会社Fanplus)が、通期で収益貢献したことにより、コンテンツ事業売上が増加したことによるものであります。
(売上原価)
売上原価は8,133百万円(前連結会計年度比63.1%増)となりました。主な増加要因はコンテンツ事業売上の増加に伴う費用増加によるものであります。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、2,198百万円(前連結会計年度比41.2%増)となりました。これは主に、広告宣伝費、及びコンテンツ事業における売上高に応じて発生する販売手数料を計上したものです。この結果、営業利益は729百万円(同80.9%増)となりました。
(営業外損益)
当連結会計年度における営業外収益は201百万円(前連結会計年度比326.6%増)となりました。主な内訳は、投資有価証券売却益179百万円であります。営業外費用は6百万円(前連結会計年度は計上なし)となりました。主な内訳は支払手数料2百万円であります。この結果、経常利益は924百万円(同105.3%増)となりました。
(特別損益)
当連結会計年度における特別利益は6百万円(前連結会計年度比84.2%減)となりました。内訳は、固定資産売却益6百万円であります。特別損失は5百万円となりました。主な内訳は投資有価証券評価損4百万円であります。この結果、税金等調整前当期純利益は926百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純損失2,212百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度における法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)は603百万円となり、非支配株主持分に帰属する当期純利損失は148百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は470百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,269百万円)となりました。
(c)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(d)資本の財源及び資金の流動性についての分析
1) 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、人件費を中心とした当社グループ全体の販売費及び一般管理費や、売上高に応じて発生するコンテンツホルダーへ対するロイヤリティ及び販売手数料、新規事業開発のための人件費です。売上高に応じて発生する費用の多くは、販売代金の回収後に支払いが行われるため、販売が拡大する局面にあっても運転資金が増加することはありません。
2) 財務政策
当社グループは、事業活動を適切に維持するための資金確保、及び資金の流動性の維持を図るため、営業活動で得られた自己資金により事業活動の維持、設備投資の資金を賄うことを基本にしており、資金の借り入れは行っておりません。今後においても、当社グループの事業拡大に必要な運転、設備資金は自己資金で充当可能であると考えております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、雇用情勢の改善と個人消費の持ち直しにより、全体としては緩やかに回復しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、足下では急速に悪化しており、極めて厳しい状況にあります。先行きについても、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクが懸念され、感染症の影響による極めて厳しい状況が続くと見込まれております。
当社グループの事業領域であるインターネット関連市場は、スマートフォンをはじめとするモバイル端末が生活にとって最も身近なデバイスとなるまで普及し、インターネットの利用時間やそれを介したサービス消費も増加するなど、安定的な成長と拡大が続いております。一方で、テクノロジーの進化や新たなビジネス、サービスの創出は加速しており、加えて2020年には第5世代移動通信システムの商用化が始まるなど、事業環境は目まぐるしく変化しております。
音楽やアーティスト関連の市場動向といたしましては、2019年の音楽ソフト(オーディオレコード及び音楽ビデオ合計)の生産金額は2,291億円(前年同期比4.7%減)、音楽配信の販売金額が706億円(前年同期比9.6%増)となりました(出所:一般社団法人日本レコード協会)。特に音楽配信では、ストリーミングサービスの利用が急拡大しており、新たな市場が形成されております。
ライブ、コンサート市場は、2019年上半期(1月から6月)の市場規模が1,573億円(同9.4%増)となり、引き続き拡大しております(出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会)。しかしながら足下の状況としては、新型コロナウイルス感染症流行の影響により、多くのライブ、コンサートが中止、延期となっており、コンサート市場へも大きな影響が出ております。
音楽の市場全体としては、利用者の志向が「モノ消費」から「コト消費」へと移行してきており、加えて、コロナウイルス感染症の影響により、ライブ、コンサートの動画視聴も普及するなど、事業環境は変化しており、それらを的確に捉え、競争力を維持、向上させていくことが、より重要となってきております。
このような外部環境の中、当社グループでは、アーティストを中心として、タレントや声優、アニメまで幅広いジャンルにおいて、ファンクラブサイトを事業の軸としながら、電子チケットやeコマース、キャラクター、スタンプ、音楽、電子書籍といった多岐にわたるデジタルコンテンツの配信に至るまで、複合的な事業展開をしてまいりました。数多くの有力アーティストやコンテンツを保有するという優位性を生かし、それらを相互活用することでグループ全体でのシナジー効果を発揮させ、事業基盤の拡大と多様化を進めてまいりました。
加えて、VRや電子チケットなど今後の成長分野での新たな事業領域の開拓と収益の獲得も引き続き推進してまいりました。
また、経営資源の最適分配を行うと同時に、役割や業務内容の明確化を図り、それぞれの責任と権限において迅速な意思決定を行うことによって、さらなる事業拡大や経営人材の育成等を進め、持続的に企業価値の向上を図っていくことができる体制を構築すべく、2020年4月1日より持株会社体制へと移行いたしました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は11,061百万円(前年同期比59.9%増)、営業利益は729百万円(前年同期比80.9%増)、経常利益は924百万円(前年同期比105.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は470百万円(前期は2,269百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの概要は、以下のとおりであります。
(a)コンテンツ事業
コンテンツ事業では、主にスマートフォン向けにファンクラブサイト運営や各種デジタルコンテンツ配信、動画サービス、アプリの提供などを行っております。
当連結会計年度におきましては、引き続きアーティスト等の獲得による新規ファンクラブ/ファンサイトの開設を進めるとともに、会員向けのチケット先行販売や会員限定のイベントの実施などにより、収益の源泉となる新たな有料会員の獲得に取り組んでまいりました。加えて、年額制のファンクラブの採用や、アプリ化などを進めることで、多様化する利用者ニーズへの対応と、収益獲得のための間口の拡大にも努めてまいりました。
また、電子チケット及びチケットトレードサービスのファンクラブサイトへの導入や、サイトやアプリのリニューアルなどによって、既存のファンクラブにおける会員数の維持向上や単価上昇のための施策を講じてまいりました。
この他、これまでのコンテンツ配信で培った経験やノウハウを活用し、動画配信分野の強化並びにVRなどの新規事業の開発にも引き続き努めてまいりました。
以上の結果、当連結会計年度におけるコンテンツ事業の売上高は9,165百万円(前年同期比60.1%増)、セグメント利益は1,294百万円(前年同期比161.5%増)となりました。
(b)EC事業
EC事業につきましては、主に当社グループの運営するファンクラブサイト等を通じて、CD、DVD及びブルーレイといった音楽映像商品と、アーティストグッズを販売しております。
当連結会計年度においては、アーティストのオフィシャル通販サイトの開設や、ファンクラブ限定の先行販売などを実施することで、収益を拡大させてまいりました。また、ライブやイベント会場の物販でもスムーズに利用できるQRコード認証とスマホ決済サービスや、独自のPOSレジシステムといった新規サービス開発にも注力しており、新たな取り組みとして、グッズの事前販売・会場受け取りサービスも開始するなど、eコマースの枠を超え、販売機会を増加させております。
以上の結果、当連結会計年度におけるEC事業の売上高は734百万円(前年同期比23.1%増)、セグメント利益は433百万円(前年同期比111.4%増)となりました。
(c)電子チケット事業
電子チケット事業には、電子チケット及びチケットトレード、並びにそれらに付随する各種サービスからの収益により構成されております。音楽のライブはもちろんのこと、プロ野球やフィギュアスケートといったスポーツ、遊園地などのレジャー施設まで幅広く電子チケットサービスを提供しております。
当連結会計年度においては、有力アーティストのライブやスポーツイベントへの電子チケットの導入を進めてまいりました。特に、2019年6月より施行されたチケット不正転売禁止法に対応する、ライブやイベントへ行けなくなった人が他者に適法、適切にチケットを譲渡できる公式の仕組みであるチケットトレードサービスついては、業界最大手のプレイガイドの1社である株式会社イープラスと、子会社を通じて資本業務提携を締結し、公式2次流通のスタンダートとなるべく、サービスの普及を推進してまいりました。
しかしながら、第4四半期においてコロナウイルス感染症の影響により、ライブ、コンサートの多くが中止、延期されたことに伴い、電子チケット及びチケットトレードに関連する収益も大きく減少し、払い戻し手数料の負担なども行いました。
電子チケット周辺領域のサービスといたしましては、プロ野球の公式カードコレクションアプリを合計8球団で展開するにいたりました。また、ライブをより楽しむためのデジタルコンテンツパックサービスの提供や、アイドルグループのアプリの新規リリース及びリニューアルにも取り組んでまいりました。今後についても、カードコレクションアプリのスポーツ以外への横展開や、新たな電子チケット付加サービスの開発、提供を進めることで、周辺領域でのビジネスも拡大させていくことを計画しております。
以上の結果、当連結会計年度におけるチケット事業の売上高は1,093百万円(前年同期比120.2%増)、セグメント損失は254百万円(前年同期はセグメント利益123百万円)となりました。
(d)その他事業
その他事業には、上記3つのセグメントに属さない連結子会社の収益等が計上されており、主にアパレルやプロダクション事業が含まれております。
引き続き当連結会計年度におきましても、将来の収益獲得に向けた事業育成を行ってきたことから、売上高は68百万円(前年同期比31.6%減)、セグメント損失は48百万円(前年同期はセグメント損失27百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(a)キャッシュ・フロー及び流動性の状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ453百万円減少し、4,904百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、128百万円のプラス(前連結会計年度は1,442百万円のプラス)となりました。
主な増加要因は、税金等調整前当期純利益926百万円の計上、仕入債務の増加726百万円及び預り金の増加347百万円であり、主な減少要因は未払金の減少1,784百万円及び売上債権の増加370百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは685百万円のマイナス(前連結会計年度は2,569百万円のプラス)となりました。
主な減少要因は投資有価証券の取得による支出323百万円及び有形固定資産の取得による支出327百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは104百万円のプラス(前連結会計年度は60百万円のマイナス)となりました。
増加要因は非支配株主からの払込みによる収入195百万円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入106百万円であり、主な減少要因は配当金の支払197百万円であります。
2021年3月期は、営業活動によるキャッシュ・フローとして300百万円を見込んでおります。創出したフリー・キャッシュフローについては電子チケットやVRといった新規事業におけるシステム、サービス開発に投じることで将来の事業育成をすすめるとともに追加的株主還元への機動的なアロケーションも検討していきます。
なお、株主還元については、2021年3月期についても。引き続き連結配当性向を30%以上を目安とし、約200百万円の配当を見込んでおります。今後においても、株主の皆様に対する安定的な利益還元を経営上の重要課題としてとらえており、将来の事業展開に備えた財務基盤の強化や、今後の業績等を勘案の上、長期的視点から、配当政策を進めてまいります。
(b)資本の財源及び資金の流動性
1)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質のもとで、高い資本効率を追求し、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。財務体質に関しては、2019年3月期において会計上の手続きによる特別損失を計上したことで自己資本比率が一時的に低下いたしておりますが、2019年3月期以前の70%程度の水準に回復、維持することを目指し、リスク耐性の強化を図ります。資本効率に関しても同様に2019年3月期に一時的な低下が見られましたが、ROE(自己資本利益率)を10%以上の水準とすることを目安といたします。
設備及び新規事業への投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。一方で健全な財務体質を維持することも念頭に、各事業年度における投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則とし、十分な水準の手元流動性を確保してまいります。
2)資金需要の主な内容
当社グループの営業活動に係る資金支出は、販売に比例し発生するアーティスト等へのロイヤリティや販売手数料などがありますが、収益の認識後に生じるものが多く、資金が先行して支出されることはありません。この他、新規事業やサービス開発のための費用、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金支出は、企業価値向上に資する企業への投資やM&Aに投じることも計画しております。
3)資金調達
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、内部資金にて賄うことを原則としており、創業以来、金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債はございません。今後についても同様の方針です。
③生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当社グループは、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。
(2)仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 仕入高(千円) | 前年同期比(%) |
コンテンツ事業 | 5,190,757 | 63.4 |
EC事業 | 147,926 | △54.9 |
チケット事業 | 215,316 | △31.0 |
報告セグメント計 | 5,554,000 | 45.5 |
その他 | 72,657 | △3.0 |
合計 | 5,626,657 | 44.6 |
(注)1.金額は、仕入価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)受注実績
当社グループは、受注生産を行っていないため、受注実績は記載しておりません。
(4)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
コンテンツ事業 | 9,165,846 | 60.1 |
EC事業 | 734,534 | 23.1 |
チケット事業 | 1,093,427 | 120.2 |
報告セグメント計 | 10,993,808 | 61.2 |
その他 | 68,043 | △31.6 |
合計 | 11,061,851 | 59.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来生じる実際の結果とは異なる可能性がありますので、ご留意ください。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は10,660百万円(前連結会計年度末比4.4%増)となりました。
流動資産は7,818百万円(同5.7%増)となりました。主な内訳は現金及び預金4,870百万円(同9.1%減)、売掛金1,564百万円(同31.0%増)となっております。
固定資産は2,841百万円(同0.9%増)となりました。主な内訳は建物602百万円(同76.9%増)、のれん983百万円(同18.2%減)、顧客関連資産385百万円(同11.8%減)、投資有価証券214百万円(同6.9%増)となっております。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は5,851百万円(前連結会計年度末比0.2%増)となりました。
流動負債は5,570百万円(同1.6%減)となりました。主な内訳は買掛金2,805百万円(同34.9%増)であります。
固定負債は280百万円(同57.7%増)となりました。主な内訳は繰延税金負債235百万円(同76.3%増)であります。
(純資産の部)
当連結会計期間末の純資産の合計は4,808百万円(前連結会計年度末比10.0%増)となりました。主な内訳は資本金308百万円(同21.7%増)、資本剰余金3,687百万円(同24.9%減)、利益剰余金614百万円(前連結会計年度末は△833百万円)であります。
(b)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は11,061百万円(前連結会計年度比59.9%増)となりました。これは、2018年9月に子会社化したEMTG株式会社(現株式会社Fanplus)が、通期で収益貢献したことにより、コンテンツ事業売上が増加したことによるものであります。
(売上原価)
売上原価は8,133百万円(前連結会計年度比63.1%増)となりました。主な増加要因はコンテンツ事業売上の増加に伴う費用増加によるものであります。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、2,198百万円(前連結会計年度比41.2%増)となりました。これは主に、広告宣伝費、及びコンテンツ事業における売上高に応じて発生する販売手数料を計上したものです。この結果、営業利益は729百万円(同80.9%増)となりました。
(営業外損益)
当連結会計年度における営業外収益は201百万円(前連結会計年度比326.6%増)となりました。主な内訳は、投資有価証券売却益179百万円であります。営業外費用は6百万円(前連結会計年度は計上なし)となりました。主な内訳は支払手数料2百万円であります。この結果、経常利益は924百万円(同105.3%増)となりました。
(特別損益)
当連結会計年度における特別利益は6百万円(前連結会計年度比84.2%減)となりました。内訳は、固定資産売却益6百万円であります。特別損失は5百万円となりました。主な内訳は投資有価証券評価損4百万円であります。この結果、税金等調整前当期純利益は926百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純損失2,212百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度における法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)は603百万円となり、非支配株主持分に帰属する当期純利損失は148百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は470百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,269百万円)となりました。
(c)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(d)資本の財源及び資金の流動性についての分析
1) 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、人件費を中心とした当社グループ全体の販売費及び一般管理費や、売上高に応じて発生するコンテンツホルダーへ対するロイヤリティ及び販売手数料、新規事業開発のための人件費です。売上高に応じて発生する費用の多くは、販売代金の回収後に支払いが行われるため、販売が拡大する局面にあっても運転資金が増加することはありません。
2) 財務政策
当社グループは、事業活動を適切に維持するための資金確保、及び資金の流動性の維持を図るため、営業活動で得られた自己資金により事業活動の維持、設備投資の資金を賄うことを基本にしており、資金の借り入れは行っておりません。今後においても、当社グループの事業拡大に必要な運転、設備資金は自己資金で充当可能であると考えております。