有価証券報告書-第15期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 15:14
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、雇用情勢の改善に伴う個人消費の持ち直しや、成長分野への投資の増加を背景に、一部に弱さは見られるものの全体としては緩やかに回復しております。今後についても回復が続くと期待されておりますが、人手不足感の高まりや増税の影響、海外経済の不確実性など、先行きについては慎重さが見られるようになってまいりました。
当社を取り巻く環境は、スマートフォンの普及によってインターネットのモバイル化が進み、インターネットの利用時間やそれを介したサービス消費も増加するなど、安定的な成長と市場拡大が続いております。利便性が向上する一方で、テクノロジーの進化や新たなビジネス、サービスの創出は加速しており、事業環境は目まぐるしく変化しております。
情報通信機器の保有状況を見ると、スマートフォンが75.1%(前年同期比3.3ポイント増)、タブレット端末が36.4%(前年同期比2.0ポイント増)となり、普及は一巡し安定成長へと移行しております。(出所:総務省「平成30年版情報通信白書」)。また、スマートフォンやタブレット端末の普及と利用増加に伴い、モバイルコンテンツの市場規模は、2018年には全体で2兆1,109億円(前年同期比12.5%増)となり、高い伸び率で拡大が続いております(出所:一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム)。
音楽やアーティスト関連の市場動向といたしましては、2018年の音楽ソフト(オーディオレコード及び音楽ビデオ合計)の生産金額は2,403億円(前年同期比3.6%増)、音楽配信の販売金額が644億円(前年同期比12.5%増)とそれぞれ増加いたしました(出所:一般社団法人日本レコード協会)。特に、音楽配信では、ストリーミングサービスの利用が急拡大しており、市場拡大の牽引役となっております。同様に2018年のライブ、コンサートの年間動員数は、4,862万人(前年同期比1.7%増)、市場規模としては3,448億円(同3.7%増)と、こちらも拡大が続いております(出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会)。
市場全体としては堅調に推移する一方で、音楽やコンテンツに対する利用者の志向が「モノ消費」から「コト消費」へと移行してきており、変化する事業環境を的確に捉え、競争力を維持、向上させていくことが、より重要となってきております。
このような外部環境の中、当社グループでは、アーティストやタレント、声優、アニメまでの幅広いジャンルを対象に、ファンクラブサイトの運営を中心として、キャラクター、スタンプ、音楽、電子書籍といった多岐にわたるデジタルコンテンツの配信や、eコマースに至るまで複合的な事業展開をしてまいりました。多数保有するコンテンツの優位性を生かし、それらを相互活用することでグループ全体でのシナジー効果を発揮させ、事業基盤の拡大と多様化を進めてまいりました。
また、VRや電子チケットなど成長分野での新たな事業領域の開拓と、事業の多角化を積極的に推進してまいりました。
加えて、今後の当社グループの新たな成長のため、当社と同様にファンクラブサイト/ファンサイトを運営し、電子チケットサービスも手がけるEMTG株式会社を完全子会社化いたしました。今後は、両社の得意分野や経営資源を相互活用することでの業容拡大と、事業効率化による収益性の向上を見込んでおります。
なお、EMTG株式会社につきましては、2018年6月29日にその発行済株式の一部を取得した結果、2018年6月30日より持分法適用会社に、2018年9月28日にその他の同社発行済株式の全てを当社株式に株式交換したことにより、2018年9月30日(みなし取得日)に完全子会社となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は6,919百万円(前年同期比87.8%増)、営業利益は403百万円(前年同期比30.5%増)、経常利益は450百万円(前年同期比3.7%増)となりました。EMTG株式会社の完全子会社化の過程で、合意時点と比較し交換時点において当社株価が上昇したことにより、交換時における株価をもとに算出された取得総額が当初想定した取得総額を超過いたしました。それに伴い取得総額の差額2,664百万円を減損損失として特別損失に計上することとなり、その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,269百万円となりました。
セグメントごとの概要は、以下のとおりであります。
(a)コンテンツ事業
コンテンツ事業では、スマートフォンやPC向けのファンクラブサイト運営や各種デジタルコンテンツ配信、アプリの提供などを行っており、これまでのセグメントでは、携帯コンテンツ配信事業、PCコンテンツ配信事業及びアプリ事業が含まれております。
当連結会計年度におきましては、EMTG株式会社を子会社化したことに伴い、当社グループにて運営するファンクラブ/ファンサイト並びにその有料会員数は大幅に増加いたしました。また、これまでと同様に、アーティストや声優、タレントのファンクラブ、ファンメールサイトの開設を進めるとともに、他社からのサイト運営の移管などによって、新たな有料会員の獲得に取り組んでまいりました。加えて、年額制のファンクラブの採用や、既存サイト及びサービスのアプリ化、アプリを通じたスマホ決済サービスの導入などを進めることで、多様化する利用者ニーズへの対応と、収益獲得のための間口の拡大にも努めてまいりました。
既存のファンクラブサイトにおいては、会員向けのチケット先行販売の実施や、電子チケット及びチケットトレードサービス、ファンメール等の導入によって、会員数維持や単価上昇のための施策を講じてまいりました。
また、これまでのコンテンツ配信で培った経験やノウハウを活用し、動画配信分野の強化並びに新規事業の開発にも引き続き努めてまいりました。
その他、アイドルグループとのコラボレーション公式ファンアプリにおいて、機能追加や利便性の向上を目的とした大型アップデートを行うとともに、各種キャンペーンを展開してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度におけるコンテンツ事業の売上高は5,726百万円(前年同期比70.7%)、セグメント利益は630百万円(前年同期比7.4%減)となりました。
(b)EC事業
EC事業は、従来のセグメントのeコマース事業が該当いたします。
EC事業につきましては、CD、DVD及びブルーレイといった音楽映像商品と、それに関連するアーティストグッズを中心に、当社グループの運営するファンクラブサイト等を通じた直販と、レコード会社の公式販売サイトの運営管理の両面から事業を展開してまいりました。当連結累計期間では、音楽映像商品の販売が堅調に推移いたしました。
アーティスト関連以外では、人気アニメ「エヴァンゲリオン」の公式オンラインストアの制作、運営を受託いたしました。サイトリニューアルを行うとともに、他社とのコラボレーションや商品の先行受注など、販売促進のため様々な取り組みを実施してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度におけるEC事業の売上高は596百万円(前年同期比161.9%増)、セグメント利益は205百万円(前年同期比732.0%増)となりました。
(c)電子チケット事業
電子チケット事業には、電子チケット及びチケットトレード、並びにそれらに付随する各種サービスからの収益により構成されております。
当連結会計年度では、音楽はもちろんのこと、プロ野球やフィギアスケートといったスポーツ、遊園地などのレジャー施設に至るまで幅広く電子チケットサービスを提供してまいりました。有力アーティストのコンサートやスポーツイベントへの電子チケットの導入が好調に進んだことから、この1年間では前年比約2倍となる約200万枚へと発券枚数を大きく増加させ、電子チケット業界有数の規模となりました。また、独自のチケットトレード機能についても、その導入先と利用が増加しております。加えて、電子チケットならではの特典コンテンツの付与や、アーティスト公式アプリへの実装、プロ野球等向けの選手カードゲーム、決済サービスなど、周辺の事業領域も順調に拡大させております。
以上の結果、当連結会計年度における電子チケット事業の売上高は496百万円(前年同期比-%)、セグメント利益は123百万円(前年同期比-%)となりました。
(d)その他事業
その他事業には、上記3つのセグメントに属さない主に新規事業開発を行う連結子会社の収益等が計上されております。
引き続き当連結会計年度におきましても、将来の収益獲得に向けた事業育成を行い、売上高は100百万円、セグメント損失は27百万円にとどまりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3,952百万円増加し、5,357百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,442百万円となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純損失2,212百万円及び減損損失2,664百万円であり、支出の主な内訳は未払金の増加1,296百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは2,569百万円となりました。
収入の主な内訳は投資有価証券の売却による収入31百万円であり、支出の主な内訳は投資有価証券の取得による支出100百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは△60百万円であり、主な内訳は配当金の支払額△164百万円であります。
③生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当社は、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績は記載しておりません。
(2)仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称仕入高(千円)前年同期比(%)
コンテンツ事業3,177,26278.5
EC事業327,906103.5
チケット事業312,017-
報告セグメント計3,817,18796.7
その他74,91523.0
合計3,892,10394.4

(注)1 金額は、仕入価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)受注実績
当社は、受注生産を行っていないため、受注実績は記載しておりません。
(4)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
コンテンツ事業5,726,21570.7
EC事業596,717161.9
チケット事業496,625-
報告セグメント計6,819,55990.4
その他99,445△2.8
合計6,919,00587.8

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来生じる実際の結果とは異なる可能性がありますので、ご留意ください。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は10,212百万円(前連結会計年度末比235.7%増)となりました。
流動資産は7,396百万円(同202.1%増)となりました。主な内訳は現金及び預金5,357百万円(同281.3%増)、売掛金1,193百万円(同105.4%増)となっております。
固定資産は2,816百万円(同374.6%増)となりました。主な内訳は建物340百万円(同74.5%増)、投資有価証券200百万円(同58.5%増)、のれん1,201百万円(同82,929.5%増)、顧客関連資産437百万円(同-百万円)となっております。
(負債の部)
流動負債は5,662百万円(同539.3%増)となりました。主な内訳は買掛金2,079百万円(同410.2%増)であります。
固定負債は178百万円(同602.4%増)となりました。主な内訳は繰延税金負債133百万円(同-百万円)であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産の合計は4,371百万円(同105.2%減)となりました。主な内訳は資本金253百万円(同2.1%増)、資本剰余金4,912百万円(同1,709.0%増)、利益剰余金△833百万円(同2,434百万円減)であります。
(b)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は6,919百万円となりました。売上高の内訳は、コンテンツ事業が5,726百万円、EC事業が596百万円、チケット事業が496百万円であり、その他事業が99百万円であります。
(売上原価)
売上原価は4,958百万円となりました。売上原価の内訳は、コンテンツ事業が4,233百万円、EC事業が351百万円、電子チケット事業が312百万円、その他事業が74百万円となっております。これは主にコンテンツ事業における、収益に比例するロイヤリティ等の計上によるものです。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、1,556百万円となりました。これは主に、広告宣伝費、及びコンテンツ事業における売上高に応じて発生する販売手数料を計上したこと、並びにEMTG株式会社の子会社化に伴い計上したのれんの償却によるものです。この結果、営業利益は403百万円となりました。
(営業外損益)
当連結会計年度における営業外収益は、主にEMTG株式会社の子会社化に伴い計上した持分法による投資利益の計上により47百万円となりました。この結果、経常利益は450百万円となりました。
(特別損益)
特別利益として、段階取得に係る差益39百万円を計上いたしました。特別損失として、投資有価証券評価損11百万円を計上いたしました。加えて、EMTG株式会社の完全子会社化の過程で、合意時点と比較し交換時点において当社株価が上昇したことにより、交換時における株価をもとに算出された取得総額が当初想定した取得総額を超過いたしました。それに伴い取得総額の差額2,664百万円を減損損失として計上いたしました。この結果、税金等調整前当期純損失は2,212百万円となりました。(親会社株主に帰属する当期純損益)
法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)として、53百万円を計上し、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損失2,269百万円となりました。
(c)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(d)資本の財源及び資金の流動性についての分析
1) 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、人件費を中心とした当社グループ全体の販売費及び一般管理費や、売上高に応じて発生するコンテンツホルダーへ対するロイヤリティ及び販売手数料、新規事業開発のための人件費です。
売上高に応じて発生する費用の多くは、販売代金の回収後に支払いが行われるため、販売が拡大する局面にあっても運転資金が増加することはありません。
2) 財務政策
当社グループは、事業活動を適切に維持するための資金確保、及び資金の流動性の維持を図るため、営業活動で得られた自己資金により事業活動の維持、設備投資の資金を賄うことを基本にしており、資金の借り入れは行っておりません。
今後においても、当社グループの事業拡大に必要な運転、設備資金は自己資金で充当可能であると考えております。