有価証券報告書-第22期(令和1年6月1日-令和2年5月31日)

【提出】
2020/08/27 15:02
【資料】
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【項目】
158項目
(1)経営成績等の状況の概要
1.財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、大型台風など相次ぐ自然災害の発生や2019年10月の消費増税による消費者マインドの落ち込み、その後発生した新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の停滞等、当連結会計年度末にかけ今後の景気動向について鈍化が懸念される状況が続きました。
当社グループの属する住宅業界におきましては、新設住宅着工戸数は全体では前年度比7%減の88万戸となり、利用関係別に見た持ち家着工戸数はほぼ前年度並みの28万戸となりました。しかしながら、2020年3月以降に拡大した新型コロナウイルス感染症および、その後4月7日に政府より発出された緊急事態宣言に基づく不要不急な外出の自粛要請等により、当連結会計年度末にかけ、住宅業界は、受注および販売を確保するため慎重な対応が求められる状況が続きました。
当社においては、2020年1月より新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する不測の事態に備え本社に対策本部を設置し、2月末に発生した中国のサプライチェーンの不安定化による一部住宅設備の納品遅延等に際しても、建築工事への影響を最小限に止めるよう必要な対応を進めてまいりました。
このような状況のなか、当社グループにおきましては、2019年5月期よりスタートした中期経営計画「タマステップ2021」に則り、「注文住宅着工棟数№1を目指し、事業改革にて新たな事業の柱を構築する」を基本方針とし、地域特性に合わせた販売戦略を策定、実施し、当社グループの中核事業である注文住宅事業の収益基盤を強化するとともに、各事業においてより一層の収益力の向上に努めました。
当社グループの連結経営成績につきましては、売上高209,207百万円(前連結会計年度比12.0%増)となりました。利益につきましては営業利益9,873百万円(同34.0%増)、経常利益9,754百万円(同40.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,109百万円(同29.9%増)となりました。
また、当社グループの当連結会計年度末における資産総額は、101,713百万円(前連結会計年度比13.6%増)となりました。流動資産は、現金及び預金の増加3,979百万円、仕掛販売用不動産の増加7,655百万円などにより75,519百万円(同20.0%増)となりました。なお、現金及び現金同等物は「2.キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、30,993百万円(同14.7%増)となりました。また、固定資産は投資有価証券の減少などにより26,193百万円(同1.4%減)となりました。
また、負債総額は、80,480百万円(同12.9%増)となりました。流動負債は、短期借入金の増加などにより68,847百万円(同13.4%増)となりました。固定負債は、長期借入金の増加などにより11,633百万円(同9.6%増)となりました。
純資産は、配当金の支払1,142百万円、自己株式の取得893百万円等があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益5,109百万円の計上等により3,042百万円増加し、21,232百万円(同16.7%増)となりました。
2.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,979百万円増加し、当連結会計年度末には30,993百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は、2,201百万円(前連結会計年度は12,525百万円の増加)となりました。これは主に、たな卸資産の増加6,643百万円(同2,243百万円)、営業債権の増加1,920百万円(同1,827百万円)等があったものの、税金等調整前当期純利益8,205百万円(同5,756百万円)、減価償却費1,550百万円(同1,775百万円)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は、3,494百万円(同1,531百万円)となりました。これは、新規支店の開設等の有形固定資産の取得による支出2,679百万円(同1,393百万円)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の増加は、5,274百万円(前連結会計年度は15,605百万円の減少)となりました。これは、短期借入金の増加6,751百万円(同109百万円)等によるものであります。
3.生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当社グループ(当社及び連結子会社)が営む住宅事業、不動産事業、金融事業、エネルギー事業及びその他事業では生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。
(2) 受注実績
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)
住宅事業157,320△ 16.9118,798△ 6.4
不動産事業223+ 2,911.277+ 937.1
合計157,544△ 16.9118,875△ 6.3

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 金融事業、エネルギー事業、その他事業では、受注活動を行っていないため記載しておりません。
4 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
住宅事業167,099+ 10.2
不動産事業33,427+ 25.5
金融事業1,434+ 23.1
エネルギー事業791△ 10.3
その他事業6,454△ 1.3
合計209,207+ 12.0

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主たる販売先は不特定多数の一般消費者であり、相手先別販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はありません。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(当連結会計年度の経営成績等)
当社グループの売上高は、注文住宅事業において、従前から進めてきた各月の着工棟数の平準化施策により完工棟数が底上げされたことや、前期から実施してきた価格改定による利益率の改善効果等により、209,207百万円(前連結会計年度比12.0%増)となりました。利益面では、注文住宅事業における売上高増により、営業利益は9,873百万円(同34.0%増)、経常利益は9,754百万円(同40.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、5,109百万円(同29.9%増)となりました。1株当たり当期純利益は172円76銭(前連結会計年度は130円89銭)となりました。
事業全体としては2期連続の最高収益を達成しましたが、これは、当連結会計年度を2年目とする中期経営計画「タマステップ2021」に基づき、経営資源の選択と集中を推し進め、注文住宅事業を中心に戸建分譲事業およびリフォーム事業の強化を図ってきたことによる収益力向上の成果が十分に表れたものと捉えています。
セグメントごとの経営成績等の詳細は、「(3)セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析」に記載しているとおりであります。
(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、不動産事業における販売用不動産取得があります。また、設備投資資金需要の主なものとしては、注文住宅事業における展示場の新設および移転があります。当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入等を行っており、自己資本比率等の財務健全性指標を注視しながら、最適な選択を実施していきます。
なお、当連結会計年度における借入金及びリース債務等を含む有利子負債の残高は27,465百万円(前連結会計年度は20,013百万円)となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、30,993百万円となっております。
(3)セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析
(住宅事業)
住宅事業においては、注文住宅事業において、新しく17ヶ所(うち移転6ヶ所)の出店を行い、営業拠点は245ヶ所になりました。また、モデルハウス、ショールームのリニューアルを60ヶ所において実施しました。
当社の展開する戦略商品である「地域限定商品」を中心に受注が引き続き高水準を維持したことに加え、従前より進めてきた各月の着工棟数の平準化施策により、期初から完工棟数が底上げされ、その結果、引渡棟数については8,890棟と前年同期比で5.3%増加しました。また、前期より実施してきた価格改定による利益率の改善効果等もあり、当連結会計年度の損益水準は大きく改善しました。
また、リフォーム事業において、引き続き、入居後10年を経過したお客様を中心に保証延長工事等のリフォーム受注活動を積極的に展開するとともに、業務品質向上のための社員研修等、組織力の強化に努めた結果、増収増益となりました。今後も、累計で13万棟を超える豊富なストック情報をもとにお客様との関係深化を図りつつ、築年数やお客様のニーズに応じた最適なリフォーム商品の提案と販売を進めてまいります。
以上の結果、当事業の売上高は167,099百万円(前年同期比10.2%増)、営業利益は3,775百万円(同370.9%増)となりました。
(不動産事業)
不動産事業においては、戸建分譲事業において、引き続き、資金回転率を重視した10区画以下の小規模分譲地を中心とした仕入、販売に取り組みました。これまでの分譲営業体制の強化に加え、2019年10月の消費税引き上げを意識した需要動向もあり受注・引渡ともに好調に推移し、引渡棟数については620棟と前年同期比で31.4%増加しました。今後とも、良質な販売用地を確保するための仕入体制の強化に注力しつつ、販売棟数の確実な伸長を図っていく方針です。
マンション事業においては、用地価格の高騰から新規プロジェクトに係る仕入を厳選する傍ら、中古住宅への需要の高まりに対応した中古マンションのリノベーション販売を中心に進めてきましたが、当社がメインターゲットとする首都圏、特に都心部においてオリンピック関連の建設ラッシュによる原価高騰が長期化していること等から、販売実績は計画未達となりました。
サブリース事業においては、引き続き東京23区内に所在する管理物件数の拡大に努力した結果、期末管理物件数は16棟となり、事業収入は順調に推移しました。
オフィス区分所有権販売事業においては、オフィス需要の旺盛な東京主要7区を対象に仕入を行い、確実に販売を進めた結果、販売実績は好調に推移しました。
以上に加え、当連結会計年度に売却した販売用不動産(東京都大田区)の売却収益が不動産事業の収益向上に貢献した一方、前連結会計年度における販売用不動産(福岡県福岡市)の売却収益が大きかったことにより、当事業の売上高は、33,427百万円(前年同期比25.5%増)、営業利益は4,726百万円(同14.9%減)となりました。
なお、当連結会計年度における販売用不動産(東京都大田区)の売却につきましては、2019年7月26日に公表しました「(開示事項の経過)販売用不動産の売却に関するお知らせ」をご参照ください。
(金融事業)
金融事業においては、引き続き積極的な保険販売とつなぎ融資を推し進めました。保険販売については、近年頻繁に発生する自然災害や、健康・年金といった老後への備えに対する意識の高まりから、補償内容の見直しや拡充といったお客様ニーズを販売活動において的確に捉えるとともに、お客様からの問合せに対するフォローアップ体制の充実に努め、また、つなぎ融資については、当社で住宅を建築いただくお客様への提案活動を強化すること等により収益向上に努めた結果、増収増益となりました。
以上の結果、当事業の売上高は1,434百万円(前年同期比23.1%増)、営業利益は564百万円(同30.5%増)となりました。
(エネルギー事業)
エネルギー事業においては、福岡県大牟田市で商業運転するメガソーラー発電施設の売電実績が、昨年夏以降の天候不順や電力会社による出力制御の指示により軟調に推移したことおよび同施設に係る固定資産税の減免措置が終了したこと等により、当事業の売上高は791百万円(前年同期比10.3%減)、営業利益は206百万円(同36.9%減)となりました。
(その他事業)
その他事業においては、住宅事業における引渡棟数の増加により住宅周辺事業が引き続き堅調に推移しました。また、主に前連結会計年度に行ったグループ会社の事業整理の結果、損益水準が黒字ベースに転換したことにより、営業利益を計上することができました。
以上の結果、当事業の売上高は6,454百万円(前年同期比1.3%減)、営業利益は513百万円(同277.8%増)となりました。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社は特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。
①販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価
販売用不動産及び仕掛販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、たな卸資産の簿価切下げに伴う評価損を計上しております。正味売却価額の見積りについては、当連結会計年度末現在における販売見込額を算定しております。経済情勢や不動産市況の悪化等により、正味売却価額が見込以上に下落した場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
②投資有価証券の評価
その他有価証券のうち、時価のある有価証券については時価法を、時価のない有価証券については移動平均法による原価法を採用しております。時価のない有価証券について、その実質価額が取得原価に比べ著しく下落した場合、回復の見込があると認められる場合を除き、減損処理しております。時価のない有価証券の実質価額の見積りについては、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失等が発生した場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
③固定資産の減損
固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。固定資産の回収可能価額は、正味売却価額により測定しております。回収可能価額を正味売却価額により測定する場合の時価は、主として不動産鑑定士から入手した不動産鑑定評価基準に基づく評価額、及び処分見積額をもとに算定しておりますが、市況の変動や前提条件に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
④繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できる場合に、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額を収益又は費用として計上する可能性があります。
⑤完成工事補償引当金
完成工事に係る瑕疵担保の費用に備えるため、当連結会計年度の完成工事高に対する将来の見積補償額を完成工事補償引当金として計上しております。想定していなかった事象の発生により、将来の見積補償額を上回る費用が発生した場合は、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。