有価証券報告書-第5期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、コンテンツの価値を高めるプラットフォーマーとしての飛躍を期し、総合メディア企業㈱KADOKAWAのIP創出力と、IT企業㈱ドワンゴの創造性を結集しながら、世界に類のない企業体への進化を目指しております。
日々新たなサービスが生まれ、競争環境が変化するインターネットサービス市場においては、高度な技術力に裏付けされた独創的なコミュニケーションの場を提供し、多様なユーザーニーズにお応えしております。リアルなイベントとの連携がユニークなカルチャーを創出し、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が広がっていく中、出版、映像、ゲーム等の制作で積み上げてきた企画力、編集力等を駆使して魅力あるコンテンツを創造し、国内外の様々なメディアにマルチ展開させて収益を最大化させるメディアミックス戦略を積極展開しております。
コンテンツのデジタル化が加速する状況下、電子書籍や、アニメを中心とした海外での動画配信は需要が高まっております。高い競争力を持つコンテンツとネットワーク技術を最大限活用しながら、海外拠点での拡販や、日本のコンテンツのリアルな体験を提供するインバウンド関連事業など、新たなビジネスの創造をグローバルに図っております。また、デジタルネイティブ世代のニーズを探りながら、新たなインターネットサービスの投入準備を進めております。
既存の出版ビジネスにおいては、書籍を一部単位で高品質かつ低コストにオンデマンド印刷できる製造・物流一体の最新鋭工場(2020年度フル稼働予定)を建設して製造原価と返品率を低下させ、絶版を無くすことで価値を長期にわたって保存する、画期的な取り組みを進めております。
当連結会計年度における各セグメント別の業績は、以下のとおりであります。
出版事業の売上高は1,159億58百万円(前年同期比2.9%増)、セグメント利益(営業利益)は72億53百万円(前年同期比20.9%増)となりました。出版事業の収益構成は、電子書籍・電子雑誌販売、書籍・雑誌販売、権利販売、海外拠点売上等により多様化している中、主に電子書籍・電子雑誌販売が牽引し、業績は好調に推移しております。
電子書籍・電子雑誌では、当社グループの総合電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」の8周年キャンペーンなどの施策で販売が引き続き好調に推移しており、外販事業においても、当連結会計年度より新たな外部電子書籍ストアに許諾を開始し、販売を加速させております。また、9月には「ニコニコ書籍」アプリと「BOOK☆WALKER」アプリを統合しました。それにより、MAU(月間アクティブユーザー)が底上げされるとともに、作品の品揃えが拡大し、1ユーザーあたりの購入金額が上昇しております。グローバル戦略を推し進めるため2015年10月にグランドオープンした「BOOK☆WALKER Global」や2016年2月にオープンした「台湾BOOK☆WALKER」も高い成長を維持しております。
書籍では、コミックスの「よつばと!(14)」「ダンジョン飯(6)」「乙嫁語り(11)」といった大型作品や「盾の勇者の成り上がり」「オーバーロード」「Fate」シリーズが好調に推移しております。ライトノベルは、「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」「この素晴らしい世界に祝福を!」といった人気シリーズが引き続き堅調に推移している一方、市場が停滞している中で新たなヒットシリーズの創出、育成にも注力しております。一般書は、「トラペジウム」、学習まんが「日本の歴史」や「どっちが強い!?」が収益貢献しました。一般文庫は、「ラプラスの魔女」「君は月夜に光り輝く」「ビブリア古書堂の事件手帖」「未来のミライ」といった映画化作品の原作本や「過ぎ去りし王国の城」が好調に推移しております。また、権利販売では主に遊技機向けの商品化許諾が収益貢献しました。出版物はメディアミックス展開の重要な源泉の一つであり、ヒット作創出のため年間5,000点の新刊を継続的に発行してまいります。なお、2020年度からフル稼働を予定している最新鋭の製造・物流拠点においては、工場建設やシステム整備等がスケジュール通り順調に進捗しており、一部の文庫やライトノベルにおいて、デジタル印刷による商業生産を開始しました。
雑誌では、地域情報誌「Walker」シリーズ、ライフスタイル誌「レタスクラブ」等でWebメディアとの連動によるビジネスモデルの転換を進めており、Webメディアのページビューや広告収入の増加等の成果につなげてまいります。テレビ情報メディア「ザテレビジョン」については、お正月特大号の販売や「ザテレビジョンWeb」が好調に推移しました。刊行計画や発行部数の見直し等で雑誌販売は減少しておりますが、実売率の改善により収支は好転の兆しを見せております。
映像・ゲーム事業の売上高は482億95百万円(前年同期比1.8%増)、セグメント利益(営業利益)は39億19百万円(前年同期比36.3%増)となりました。
映像では、「STEINS;GATEゼロ」「殺戮の天使」「やがて君になる」等の海外ライセンス販売が収益に貢献いたしました。また、アニメの配信収入や「Re:ゼロから始める異世界生活」等の商品化許諾による収益貢献があり、国内外問わず豊富なIPを活用したビジネス展開を拡大させております。㈱ムービーウォーカーの展開するデジタル映画前売券サービス「ムビチケ」も好調に推移し収益貢献しております。
ゲームでは、3月発売の「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」が大変好調に推移し、利益拡大に大きく貢献しました。また、「DARK SOULS REMASTERED」が国内外で引き続き好調に推移し、パッケージ販売だけでなく、海外ロイヤリティ収入も収益貢献しました。「METAL MAX Xeno」「コナン アウトキャスト」等のパッケージゲーム、歴代「アーマード・コア」シリーズのBGMを収録したCD集「ARMORED CORE ORIGINAL SOUNDTRACK 20th ANNIVERSARY BOX」、2015年3月発売の「Bloodborne」や2016年3月発売の「DARK SOULS Ⅲ」の海外ロイヤリティ収入も引き続き好調でした。
一方、㈱ドワンゴが11月に提供開始した位置情報ゲームアプリ「テクテクテクテク」においては、収益貢献が期待値を大幅に下回ったことから、アプリ開発費を一括費用化するとともに、2019年6月でサービス終了することといたしました。
Webサービス事業の売上高は258億48百万円(前年同期比10.9%減)、セグメント損失(営業損失)は25億76百万円(前年同期 営業損失10億67百万円)となりました。
ポータルでは、日本最大級の動画プラットフォームである「niconico」における「ニコニコプレミアム会員」の サービス収入を柱とし、ウェブサイト上のバナー等の広告、有料動画等の関連収益を計上しております。「niconico」においては、回線の増強や画質の向上を中心とした動画・生放送サービスの視聴環境改善を進め、新バージョン(く)(読み方:クレッシェンド)や、新しい生放送アプリ「nicocas」の提供などを行ってきましたが、「ニコニコプレミアム会員」は減少傾向が続いており、当連結会計年度末には180万人となりました。
11月には「テクテクテクテク」、12月には“人工生命”の観察・育成アプリ「ARTILIFE」を提供開始しました。「テクテクテクテク」は、アプリ提供開始直後から積極的なプロモーション等を行いユーザー数の拡大に努めてきましたが、想定を大きく下回ったことが減益要因となりました。
また、事業見直し・事業撤退にかかる費用を計上したことも減益要因となりました。
ライブでは、競合する他の動画サービスとの差別化を図るべく、「ネットとリアルの融合」をテーマに各種ライブイベントの企画・運営等を行っております。4月に開催した「ニコニコ超会議2018」の2日間の会場来場者数は過去最高の16万1,277人を記録、インターネット視聴者数は612万1,170人となりました。8月に開催した世界最大のアニソンライブ「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」は3日間で8万1千人を集め、収益貢献しました。
モバイルでは、シングル楽曲/着うた®等の配信を行う総合エンタテインメントサイト「dwango.jp(ドワンゴ ジェイピー)」や、アニメ総合ポータルサイト「animelo」からの収益を計上しております。有料会員数は減少しておりますが、引き続き、外注費や広告宣伝費等の固定費削減に努めており、収益性を維持しております。
その他事業の売上高は221億43百万円(前年同期比6.3%増)、セグメント損失(営業損失)は26億13百万円(前年同期 営業損失13億56百万円)となりました。
その他事業では、ネットとリアルを融合させた双方向性を特長とする教育プログラムの提供や、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール運営を行う教育事業、キャラクター商品の企画・制作・販売やアイドルCDのeコマース等のMD(物販)事業を行っております。また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を収益化の目途としているインバウンド事業の準備費用が計上されております。
これらの結果、当連結会計年度における業績は、売上高2,086億5百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益27億7百万円(前年同期比13.9%減)、経常利益42億5百万円(前年同期比13.2%増)となりました。なお、連結子会社である㈱ドワンゴ等において、固定資産の減損損失41億74百万円を特別損失に計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失40億85百万円(前年同期 親会社株主に帰属する当期純利益10億38百万円)となりました。
なお、株主還元の充実及び資本効率の向上を図るため、2018年5月10日開催の臨時取締役会において2018年9月28日までを対象期間、2,600千株、30億円をそれぞれ上限とする自己株式の取得を決議したことに伴い、 2,562,600株、2,999,951,100円の取得を完了しました。
②キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失を計上したものの、非資金項目の減損損失を計上したこと等により、58億64百万円の収入(前年同期は16億8百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出等により、130億58百万円の支出(前年同期は187億65百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得及び配当金の支払等により、42億36百万円の支出(前年同期は64億21百万円の支出)となりました。
以上の結果、為替換算差額も含めて112億84百万円の支出となり、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、561億23百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.金額は、製造原価によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.金額は、仕入原価によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績については、受注高の販売高に対する割合が僅少であることから、記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、会計上の見積りが必要となる事項については、過去の実績や将来計画等を考慮し、「棚卸資産の評価に関する会計基準」「金融商品に関する会計基準」「固定資産の減損に係る会計基準」「資産除去債務に関する会計基準」「退職給付に関する会計基準」「税効果会計に係る会計基準」等の会計基準に基づいて会計処理を実施しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
b.財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1億90百万円増加し、2,400億72百万円となりました。自己株式の取得等により現金及び預金が減少し、また減損損失の計上等により固定資産が減少した一方、保有株式の時価の上昇等により投資有価証券が増加しました。
負債は、前連結会計年度末に比べて59億7百万円増加し、1,366億60百万円となりました。未払法人税等及び前受金が増加しました。
純資産は、前連結会計年度末に比べて57億16百万円減少し、1,034億11百万円となりました。保有株式の時価の上昇等によりその他有価証券評価差額金が増加した一方、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したこと及び配当金の支払等により利益剰余金が減少し、さらに自己株式を取得したことにより株主資本が減少しました。
c.資本の財源及び資金の流動性
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、以下のとおりであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)1.各指標の算出は、以下の算式を使用しております。
2.上記各指標は、連結ベースの財務数値により計算しております。3.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
5.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。また、利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
6.設立第1期である2015年3月期は、2014年10月1日から2015年3月31日までの6か月間であります。
(b)資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、製品の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備投資を目的とした資金需要の主なものは、出版事業における製造・物流工場の建設費、新規事業施設の建設費、Webサービス事業におけるインフラ強化やシステム開発費等によるものであります。
(c)財務政策
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は基本的に自己資金より充当し、設備投資資金や長期運転資金につきましては、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境を勘案の上、金融機関からの長期借入や社債発行及び株式発行により適宜調達を行っております。
なお、現金及び預金と有利子負債の推移は、以下のとおりであります。
(注)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、コンテンツの価値を高めるプラットフォーマーとしての飛躍を期し、総合メディア企業㈱KADOKAWAのIP創出力と、IT企業㈱ドワンゴの創造性を結集しながら、世界に類のない企業体への進化を目指しております。
日々新たなサービスが生まれ、競争環境が変化するインターネットサービス市場においては、高度な技術力に裏付けされた独創的なコミュニケーションの場を提供し、多様なユーザーニーズにお応えしております。リアルなイベントとの連携がユニークなカルチャーを創出し、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が広がっていく中、出版、映像、ゲーム等の制作で積み上げてきた企画力、編集力等を駆使して魅力あるコンテンツを創造し、国内外の様々なメディアにマルチ展開させて収益を最大化させるメディアミックス戦略を積極展開しております。
コンテンツのデジタル化が加速する状況下、電子書籍や、アニメを中心とした海外での動画配信は需要が高まっております。高い競争力を持つコンテンツとネットワーク技術を最大限活用しながら、海外拠点での拡販や、日本のコンテンツのリアルな体験を提供するインバウンド関連事業など、新たなビジネスの創造をグローバルに図っております。また、デジタルネイティブ世代のニーズを探りながら、新たなインターネットサービスの投入準備を進めております。
既存の出版ビジネスにおいては、書籍を一部単位で高品質かつ低コストにオンデマンド印刷できる製造・物流一体の最新鋭工場(2020年度フル稼働予定)を建設して製造原価と返品率を低下させ、絶版を無くすことで価値を長期にわたって保存する、画期的な取り組みを進めております。
当連結会計年度における各セグメント別の業績は、以下のとおりであります。
出版事業の売上高は1,159億58百万円(前年同期比2.9%増)、セグメント利益(営業利益)は72億53百万円(前年同期比20.9%増)となりました。出版事業の収益構成は、電子書籍・電子雑誌販売、書籍・雑誌販売、権利販売、海外拠点売上等により多様化している中、主に電子書籍・電子雑誌販売が牽引し、業績は好調に推移しております。
電子書籍・電子雑誌では、当社グループの総合電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」の8周年キャンペーンなどの施策で販売が引き続き好調に推移しており、外販事業においても、当連結会計年度より新たな外部電子書籍ストアに許諾を開始し、販売を加速させております。また、9月には「ニコニコ書籍」アプリと「BOOK☆WALKER」アプリを統合しました。それにより、MAU(月間アクティブユーザー)が底上げされるとともに、作品の品揃えが拡大し、1ユーザーあたりの購入金額が上昇しております。グローバル戦略を推し進めるため2015年10月にグランドオープンした「BOOK☆WALKER Global」や2016年2月にオープンした「台湾BOOK☆WALKER」も高い成長を維持しております。
書籍では、コミックスの「よつばと!(14)」「ダンジョン飯(6)」「乙嫁語り(11)」といった大型作品や「盾の勇者の成り上がり」「オーバーロード」「Fate」シリーズが好調に推移しております。ライトノベルは、「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」「この素晴らしい世界に祝福を!」といった人気シリーズが引き続き堅調に推移している一方、市場が停滞している中で新たなヒットシリーズの創出、育成にも注力しております。一般書は、「トラペジウム」、学習まんが「日本の歴史」や「どっちが強い!?」が収益貢献しました。一般文庫は、「ラプラスの魔女」「君は月夜に光り輝く」「ビブリア古書堂の事件手帖」「未来のミライ」といった映画化作品の原作本や「過ぎ去りし王国の城」が好調に推移しております。また、権利販売では主に遊技機向けの商品化許諾が収益貢献しました。出版物はメディアミックス展開の重要な源泉の一つであり、ヒット作創出のため年間5,000点の新刊を継続的に発行してまいります。なお、2020年度からフル稼働を予定している最新鋭の製造・物流拠点においては、工場建設やシステム整備等がスケジュール通り順調に進捗しており、一部の文庫やライトノベルにおいて、デジタル印刷による商業生産を開始しました。
雑誌では、地域情報誌「Walker」シリーズ、ライフスタイル誌「レタスクラブ」等でWebメディアとの連動によるビジネスモデルの転換を進めており、Webメディアのページビューや広告収入の増加等の成果につなげてまいります。テレビ情報メディア「ザテレビジョン」については、お正月特大号の販売や「ザテレビジョンWeb」が好調に推移しました。刊行計画や発行部数の見直し等で雑誌販売は減少しておりますが、実売率の改善により収支は好転の兆しを見せております。
映像・ゲーム事業の売上高は482億95百万円(前年同期比1.8%増)、セグメント利益(営業利益)は39億19百万円(前年同期比36.3%増)となりました。
映像では、「STEINS;GATEゼロ」「殺戮の天使」「やがて君になる」等の海外ライセンス販売が収益に貢献いたしました。また、アニメの配信収入や「Re:ゼロから始める異世界生活」等の商品化許諾による収益貢献があり、国内外問わず豊富なIPを活用したビジネス展開を拡大させております。㈱ムービーウォーカーの展開するデジタル映画前売券サービス「ムビチケ」も好調に推移し収益貢献しております。
ゲームでは、3月発売の「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」が大変好調に推移し、利益拡大に大きく貢献しました。また、「DARK SOULS REMASTERED」が国内外で引き続き好調に推移し、パッケージ販売だけでなく、海外ロイヤリティ収入も収益貢献しました。「METAL MAX Xeno」「コナン アウトキャスト」等のパッケージゲーム、歴代「アーマード・コア」シリーズのBGMを収録したCD集「ARMORED CORE ORIGINAL SOUNDTRACK 20th ANNIVERSARY BOX」、2015年3月発売の「Bloodborne」や2016年3月発売の「DARK SOULS Ⅲ」の海外ロイヤリティ収入も引き続き好調でした。
一方、㈱ドワンゴが11月に提供開始した位置情報ゲームアプリ「テクテクテクテク」においては、収益貢献が期待値を大幅に下回ったことから、アプリ開発費を一括費用化するとともに、2019年6月でサービス終了することといたしました。
Webサービス事業の売上高は258億48百万円(前年同期比10.9%減)、セグメント損失(営業損失)は25億76百万円(前年同期 営業損失10億67百万円)となりました。
ポータルでは、日本最大級の動画プラットフォームである「niconico」における「ニコニコプレミアム会員」の サービス収入を柱とし、ウェブサイト上のバナー等の広告、有料動画等の関連収益を計上しております。「niconico」においては、回線の増強や画質の向上を中心とした動画・生放送サービスの視聴環境改善を進め、新バージョン(く)(読み方:クレッシェンド)や、新しい生放送アプリ「nicocas」の提供などを行ってきましたが、「ニコニコプレミアム会員」は減少傾向が続いており、当連結会計年度末には180万人となりました。
11月には「テクテクテクテク」、12月には“人工生命”の観察・育成アプリ「ARTILIFE」を提供開始しました。「テクテクテクテク」は、アプリ提供開始直後から積極的なプロモーション等を行いユーザー数の拡大に努めてきましたが、想定を大きく下回ったことが減益要因となりました。
また、事業見直し・事業撤退にかかる費用を計上したことも減益要因となりました。
ライブでは、競合する他の動画サービスとの差別化を図るべく、「ネットとリアルの融合」をテーマに各種ライブイベントの企画・運営等を行っております。4月に開催した「ニコニコ超会議2018」の2日間の会場来場者数は過去最高の16万1,277人を記録、インターネット視聴者数は612万1,170人となりました。8月に開催した世界最大のアニソンライブ「Animelo Summer Live 2018 “OK!”」は3日間で8万1千人を集め、収益貢献しました。
モバイルでは、シングル楽曲/着うた®等の配信を行う総合エンタテインメントサイト「dwango.jp(ドワンゴ ジェイピー)」や、アニメ総合ポータルサイト「animelo」からの収益を計上しております。有料会員数は減少しておりますが、引き続き、外注費や広告宣伝費等の固定費削減に努めており、収益性を維持しております。
その他事業の売上高は221億43百万円(前年同期比6.3%増)、セグメント損失(営業損失)は26億13百万円(前年同期 営業損失13億56百万円)となりました。
その他事業では、ネットとリアルを融合させた双方向性を特長とする教育プログラムの提供や、クリエイティブ分野で活躍する人材を国内外で育成するスクール運営を行う教育事業、キャラクター商品の企画・制作・販売やアイドルCDのeコマース等のMD(物販)事業を行っております。また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を収益化の目途としているインバウンド事業の準備費用が計上されております。
これらの結果、当連結会計年度における業績は、売上高2,086億5百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益27億7百万円(前年同期比13.9%減)、経常利益42億5百万円(前年同期比13.2%増)となりました。なお、連結子会社である㈱ドワンゴ等において、固定資産の減損損失41億74百万円を特別損失に計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失40億85百万円(前年同期 親会社株主に帰属する当期純利益10億38百万円)となりました。
なお、株主還元の充実及び資本効率の向上を図るため、2018年5月10日開催の臨時取締役会において2018年9月28日までを対象期間、2,600千株、30億円をそれぞれ上限とする自己株式の取得を決議したことに伴い、 2,562,600株、2,999,951,100円の取得を完了しました。
②キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失を計上したものの、非資金項目の減損損失を計上したこと等により、58億64百万円の収入(前年同期は16億8百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出等により、130億58百万円の支出(前年同期は187億65百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得及び配当金の支払等により、42億36百万円の支出(前年同期は64億21百万円の支出)となりました。
以上の結果、為替換算差額も含めて112億84百万円の支出となり、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、561億23百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) | |
出版事業 | (百万円) | 76,649 | 99.63 |
映像・ゲーム事業 | (百万円) | 33,525 | 96.14 |
Webサービス事業 | (百万円) | 20,610 | 94.48 |
その他 | (百万円) | 11,301 | 123.65 |
合計 | (百万円) | 142,086 | 99.53 |
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.金額は、製造原価によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) | |
出版事業 | (百万円) | 2,356 | 90.50 |
映像・ゲーム事業 | (百万円) | 2,188 | 102.52 |
Webサービス事業 | (百万円) | 276 | 108.35 |
その他 | (百万円) | 7,150 | 94.48 |
合計 | (百万円) | 11,972 | 95.31 |
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.金額は、仕入原価によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績については、受注高の販売高に対する割合が僅少であることから、記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前年同期比(%) | |
出版事業 | (百万円) | 115,958 | 102.90 |
映像・ゲーム事業 | (百万円) | 48,295 | 101.80 |
Webサービス事業 | (百万円) | 25,848 | 89.06 |
その他 | (百万円) | 22,143 | 106.35 |
合計 | (百万円) | 212,246 | 101.08 |
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
日本出版販売㈱ | 22,393 | 10.7 | 21,257 | 10.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、会計上の見積りが必要となる事項については、過去の実績や将来計画等を考慮し、「棚卸資産の評価に関する会計基準」「金融商品に関する会計基準」「固定資産の減損に係る会計基準」「資産除去債務に関する会計基準」「退職給付に関する会計基準」「税効果会計に係る会計基準」等の会計基準に基づいて会計処理を実施しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
b.財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1億90百万円増加し、2,400億72百万円となりました。自己株式の取得等により現金及び預金が減少し、また減損損失の計上等により固定資産が減少した一方、保有株式の時価の上昇等により投資有価証券が増加しました。
負債は、前連結会計年度末に比べて59億7百万円増加し、1,366億60百万円となりました。未払法人税等及び前受金が増加しました。
純資産は、前連結会計年度末に比べて57億16百万円減少し、1,034億11百万円となりました。保有株式の時価の上昇等によりその他有価証券評価差額金が増加した一方、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したこと及び配当金の支払等により利益剰余金が減少し、さらに自己株式を取得したことにより株主資本が減少しました。
c.資本の財源及び資金の流動性
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、以下のとおりであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
2015年 3月期 | 2016年 3月期 | 2017年 3月期 | 2018年 3月期 | 2019年 3月期 | |
自己資本比率 | 50.2% | 51.4% | 44.5% | 44.7% | 42.2% |
時価ベースの自己資本比率 | 64.8% | 58.3% | 43.8% | 30.0% | 30.7% |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 | 4.1年 | 4.4年 | 5.7年 | 40.7年 | 11.2年 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ | 236.2倍 | 68.9倍 | 115.3倍 | 16.2倍 | 59.0倍 |
(注)1.各指標の算出は、以下の算式を使用しております。
自己資本比率 | :自己資本 ÷ 総資産 |
時価ベースの自己資本比率 | :株式時価総額 ÷ 総資産 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 | :有利子負債 ÷ 営業キャッシュ・フロー |
インタレスト・カバレッジ・レシオ | :営業キャッシュ・フロー ÷ 利払い |
2.上記各指標は、連結ベースの財務数値により計算しております。3.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
5.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。また、利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
6.設立第1期である2015年3月期は、2014年10月1日から2015年3月31日までの6か月間であります。
(b)資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、製品の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備投資を目的とした資金需要の主なものは、出版事業における製造・物流工場の建設費、新規事業施設の建設費、Webサービス事業におけるインフラ強化やシステム開発費等によるものであります。
(c)財務政策
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は基本的に自己資金より充当し、設備投資資金や長期運転資金につきましては、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境を勘案の上、金融機関からの長期借入や社債発行及び株式発行により適宜調達を行っております。
なお、現金及び預金と有利子負債の推移は、以下のとおりであります。
2015年 3月期 | 2016年 3月期 | 2017年 3月期 | 2018年 3月期 | 2019年 3月期 | |
現金及び預金 (百万円) | 63,207 | 60,804 | 105,542 | 85,962 | 73,597 |
有利子負債 (百万円) | 31,746 | 29,544 | 67,759 | 65,527 | 65,640 |
(注)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。