有価証券報告書-第17期(2022/01/01-2022/12/31)

【提出】
2023/03/27 16:00
【資料】
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【項目】
124項目
(業績等の概要)
(1) 業績
年初来日本をはじめ米国や欧州各国において新型コロナウイルス感染症との共存による経済活動が進みましたが、中国国内におけるゼロコロナ政策に伴う上海等主要都市でのロックダウンの影響や、ロシアのウクライナ侵攻以降エネルギーを始めとする基礎的物資の高騰に拍車がかかり、世界経済の回復ペースを鈍らせました。また、米国の政策金利の引き上げや、日米金利差の拡大を受けた円安傾向が続き、現在は日本の政策金利の実質的な引き上げによりこの円安傾向は一段落しましたが、依然として先行き不透明な状況が継続しております。
この状況下、当社グループは、2023年12月期までの3ヶ年を対象とした中期経営戦略「Transform Next 2023」を策定し取り組みを進めてまいりました。
その結果、当期の売上収益は、製造業全般における設備投資の積極化を受けた工作機械向け及び自動車市場におけるEV化の加速に伴うセラミックボールの需要が堅調に推移し、併せて大幅な円安効果並びに原材料・エネルギー等の高騰に対する価格転嫁もあり、前期比16.4%増の79,036百万円となりました。利益面につきましては、売上高の増加及びコスト改善の効果が見られた一方で、第2四半期以降に計上した欧州ローラービジネス構造改革に対する費用2,414百万円及びそれに伴う生産停止等による生産性低下影響に加え、エネルギー価格等の上昇に応じた価格転嫁が十分及ばず、さらに、プレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産等及びリニアビジネスののれんの減損損失13,562百万円を計上したことにより、前期から14,881百万円減少し、9,065百万円の営業損失となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期損益は前期から12,643百万円減少し、9,089百万円の損失となりました。
セグメント業績を示すと、次のとおりであります。
プレシジョン・コンポーネントビジネス
プレシジョン・コンポーネントビジネスでは、主にベアリングの重要な構成要素として使用される精密ボール及び精密ローラー等を製造販売しております。精密ボール又は精密ローラーを用いたベアリングは自動車や工作機械をはじめとする産業機械などに多く用いられております。当期は、積極的な設備投資による工作機械の需要拡大及びEVの生産拡大等がありました。
この結果、プレシジョン・コンポーネントビジネスの売上収益は、前期比17.2%増の73,671百万円となりました。セグメント損益(営業損益)につきましては、欧州ローラービジネス構造改革に対する費用、米国事業の有形固定資産等の減損損失9,546百万円を計上したことから、前期から10,593百万円減少し、5,457百万円の損失となりました。
リニアビジネス
主に工作機械等に使用されるボールねじ及び大型送風機を製造販売しておりますが、当期は、工作機械の需要が堅調に推移しました。
この結果、リニアビジネスの売上収益は、前期比5.5%増の5,364百万円となりました。一方で、セグメント損益(営業損益)につきましては、のれんの減損損失4,016百万円を計上したことから、前期から4,290百万円減少し、3,628百万円の損失となりました。
その他
その他では、売上収益は前年同期と同額の1百万円となりました。セグメント利益(営業利益)につきましては、前期比11.6%増の20百万円となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の各活動におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業債権及びその他の債権や棚卸資産の増加を主な要因とし、4,136百万円の資金の減少となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出を主な要因とし、3,504百万円の資金の減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金支払や自己株式取得を主な要因として、1,762百万円の資金の減少となりました。これらに当連結会計年度のUSドル高及びユーロ高を主な要因とする、997百万円の換算差額等を加算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は24,119百万円と前連結会計年度末と比べ8,405百万円の減少となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2021年12月期2022年12月期
親会社所有者帰属持分比率(%)33.931.3
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)37.925.3
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)1,356.86△2,155.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)6.9△3.8

親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/支払利息
(注) 1 IFRSに基づく連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3 キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
4 有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
プレシジョン・コンポーネントビジネス51,943123.1
リニアビジネス3,220117.1
合計55,163122.8

(注) 1 上記の金額は、平均販売価格で表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称商品仕入高(百万円)前年同期比(%)
プレシジョン・コンポーネントビジネス7,965140.8
リニアビジネス1191,419.9
合計8,084142.7

(注) 1 上記の金額は、平均仕入価格で表示しております。
(3) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
プレシジョン・コンポーネントビジネス----
リニアビジネス4,45799.52,38484.5
合計4,45799.52,38484.5

(注) 1 プレシジョン・コンポーネントビジネスの生産方式は、見込生産のため該当事項はありません。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
プレシジョン・コンポーネントビジネス73,671117.2
リニアビジネス5,364105.5
その他1100.0
合計79,036116.4

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度
(自 2021年 1月 1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年 1月 1日
至 2022年12月31日)
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
AB SKF14,76121.718,27623.1
NTN㈱6,6719.87,7359.8

(注) 上記の金額には当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当社グループの財政状態及び経営成績の分析は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに基づき作成しております。重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りが必要であります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、将来に関する仮定及び報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記」の「2.作成の基礎 (4)見積り及び判断の利用」及び「3.重要な会計方針」に記載しております。
(2) 経営成績の分析
① 売上収益
年初来日本をはじめ米国や欧州各国において新型コロナウイルス感染症との共存による経済活動が進みましたが、中国国内におけるゼロコロナ政策に伴う上海等主要都市でのロックダウンの影響や、ロシアのウクライナ侵攻以降エネルギーを始めとする基礎的物資の高騰に拍車がかかり、世界経済の回復ペースを鈍らせました。このような状況のなか、当連結会計年度の売上収益は、製造業全般における設備投資の積極化を受けた工作機械向け及び自動車市場におけるEV化の加速に伴うセラミックボールの需要が堅調に推移し、併せて大幅な円安効果並びに原材料・エネルギー等の高騰に対する価格転嫁もあり、前連結会計年度に比べ16.4%増加の79,036百万円となりました。事業別に見ますと、プレシジョン・コンポーネントビジネスでは、積極的な設備投資による工作機械の需要拡大及びEVの生産拡大等により、前連結会計年度に比べ17.2%増加の73,671百万円、リニアビジネスでは、主に工作機械の需要が堅調に推移したため、前連結会計年度に比べ5.5%増加の5,364百万円となりました。
② 売上原価、売上総利益
売上原価は、前連結会計年度に比べ31.2%増加の71,277百万円、売上総利益は前連結会計年度に比べ43.0%減少の7,759百万円となりました。売上原価率は、コスト改善の効果が見られた一方で、エネルギー価格等上昇に応じた価格転嫁が十分及ばず、更にプレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産の減損損失を計上したことにより、前連結会計年度に比べ10.2%増加し、90.2%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、主にプレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産の減損損失を計上したことにより、前連結会計年度に比べ13.7%増加の8,398百万円となりました。
④ 営業損益
営業損益は、売上高の増加及びコスト改善の効果が見られた一方で、第2四半期以降に計上した欧州ローラービジネス構造改革に対する費用に加え、エネルギー価格等の上昇に応じた価格転嫁が十分及ばず、さらに、プレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産等及びリニアビジネスののれんの減損損失を計上したことにより、9,065百万円の営業損失となりました。事業部別に見ますと、プレシジョン・コンポーネントビジネスでは、5,457百万円、リニアビジネスでは、3,628百万円の営業損失となりました。
⑤ 法人所得税費用
法人所得税費用は、主に減損損失にかかる法人税等調整額を計上したことにより、△563百万円となりました。
⑥ 親会社の所有者に帰属する当期損益
これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、9,089百万円の損失となりました。
⑦ EBITDA
EBITDA(営業利益+減価償却費及び償却費+減損損失)は、第2四半期以降に計上した欧州ローラービジネス構造改革に対する費用を計上したことにより、前連結会計年度に比べ11.6%減少の8,155百万円となりました。
⑧ フリーキャッシュフロー(FCF)
FCF(営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー)は、営業債権及びその他の債権や棚卸資産が増加し、また、固定資産の取得による支出が増加したことから、7,640百万円の支出となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4) 経営戦略の現状と見直しおよび経営者の問題認識と今後の方針
経営戦略の現状と見直しおよび経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(5) キャッシュ・フローの状況に関する分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(6) 資本の財源及び運用についての分析
当社グループは、継続的に企業価値を向上させることを経営の指針とし、①設備投資、②株主還元、③借入金の返済のバランスをとりながら、資金の使途を決定しています。当社グループの資金の源泉は、内部資金及びツバキ・ナカシマ本体の社債及び銀行借入金により調達したものであり、グローバル・キャッシュ・マネジメントシステムを活用し、グループ内の資金をタイムリーに把握すると共に、グループ会社間親子ローンやグループ会社間配当を実施する等し、資金効率の向上に努めております。キャッシュ創出力が当社の強みであり、利益の向上と共に運転資本の最適化を図っています。
なお、現金及び現金同等物の残高は24,119百万円となっております。
(7) 資金需要及び財務政策
当社グループの資金需要は主に設備投資及び運転資金であります。
現在、設備投資資金につきましては、内部資金または社債及び銀行借入金により資金調達をすることとしております。また、今後につきましては、健全な財政状態の維持を図っていくとともに資本効率を高めてまいります。