有価証券報告書-第95期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/30 16:04
【資料】
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【項目】
175項目
1.経営成績等の状況の概要
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、アジア地域では、中国において景気の減速が続いたほか、タイやインドネシアにおいても経済成長に鈍化傾向がみられました。米国では、着実な景気の回復が続きました。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善傾向にあったものの、輸出や鉱工業生産に減少の動きがみられました。
当社グループを取り巻く事業環境は、自動車や半導体関連の需要の減少、銅価格の下落、国内におけるセメント需要の減少があったものの、パラジウム価格の上昇等による影響がありました。
このような状況のもと、当社グループは、10年後を見据えた長期経営方針及び成長戦略の立案・実行に重点を置いた中期経営戦略(2017-2019年度)に基づき、「成長への変革」をテーマに企業価値の向上に向けて、全社方針として掲げている「事業ポートフォリオの最適化」、「事業競争力の徹底追求」及び「新製品・新事業の創出」に向けた諸施策を引き続き推進してまいりました。
この結果、当連結会計年度は、連結売上高は1兆5,161億円(前年度比8.8%減)、連結営業利益は379億52百万円(同3.0%増)、連結経常利益は496億10百万円(同2.1%減)となりました。また、当社における固定資産減損損失として274億20百万円、三菱アルミニウム株式会社における固定資産減損損失として203億51百万円、焼結事業における事業再編損失引当金繰入額として302億72百万円を計上したほか、当社の連結子会社であるユニバーサル製缶株式会社における独占禁止法関連損失として104億23百万円を計上しております。これにより、親会社株主に帰属する当期純損失は728億50百万円(前年度は12億98百万円の当期純利益)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度より、報告セグメントの変更等を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。なお、以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。
なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の報告セグメントごとの営業利益は、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。
(高機能製品)
(単位:億円)

前期当期増減(増減率)
売上高5,7095,119△590(△10.3%)
営業利益11912△107(△89.7%)
経常利益13214△117(△88.7%)

銅加工品は、自動車向け製品及び半導体関連製品の販売が減少したことから、減収減益となりました。
電子材料は、機能材料及び電子デバイス製品の販売が減少したことに加えて、多結晶シリコン製品の製造コストの増加等により、減収減益となりました。
アルミ製品は、飲料用の通常缶・ボトル缶及び圧延・加工品である自動車向け押出製品・熱交板材等の販売が減少したことから、減収減益となりました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことから、減少しました。
(加工事業)
(単位:億円)

前期当期増減(増減率)
売上高1,7151,502△212(△12.4%)
営業利益16785△82(△49.1%)
経常利益15669△86(△55.4%)

超硬製品は、中国をはじめとした国内外における販売が減少したことから、減収減益となりました。
焼結製品等は、主要製品である焼結部品の販売が減少したものの、出荷に係る費用の減少等により損失は縮小しました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことから、減少しました。
(金属事業)
(単位:億円)

前期当期増減(増減率)
売上高7,2006,650△550(△7.6%)
営業利益又は営業損失(△)△71192264(-%)
経常利益23280257(-%)

銅地金は、銅価格の下落があったものの、製錬コストの減少等により、減収増益となりました。
金及びその他の金属は、原料中の含有量の減少により減産となったものの、パラジウム価格が上昇した影響等により、減収増益となりました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高は減少したものの、営業利益は増加しました。経常利益は、営業利益が増加したことから、増加しました。
(セメント事業)
(単位:億円)

前期当期増減(増減率)
売上高2,5362,382△154(△6.1%)
営業利益166119△46(△28.2%)
経常利益197149△47(△24.1%)

国内では、首都圏において東京五輪関連工事、東海地区において新名神高速関連工事、東北地区において震災復興関連工事による需要がそれぞれ減少したことなどから、販売数量が減少し、減収減益となりました。
海外では、米国において、生コンの販売数量が増加したものの、原材料費や人件費等の操業コストが増加しました。また、豪州の石炭事業において、石炭の販売価格が下落しました。この結果、増収減益となりました。
以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことから、減少しました。
(その他の事業)
(単位:億円)

前期当期増減(増減率)
売上高1,9471,873△74(△3.8%)
営業利益10083△16(△16.4%)
経常利益10398△5(△5.5%)

エネルギー関連は、原子力関連の販売が増加したことにより、増収増益となりました。
環境リサイクルは、家電リサイクルの処理量が増加したことにより増収となったものの、有価物売却単価の下落に加えて、操業コストの増加により、損失が拡大しました。
エネルギー関連及び環境リサイクル以外の事業は、合算で減収減益となりました。
以上により、前年度に比べてその他の事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことから、減少しました。
(2) キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失であったものの、非資金損益項目である減価償却費、減損損失等の加算などにより、675億円の収入(前期比726億円の収入減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に係る支出等により、668億円の支出(前期比193億円の支出減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの発行等により、288億円の収入(前期比764億円の収入増加)となりました。
以上に、換算差額等による増減を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、1,272億円(前期末比276億円の増加)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
「(1) 経営成績」において、各事業のセグメント情報に関連付けて記載しております。
2.経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2020年6月30日)現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析
① 経営成績
当連結会計年度における経営成績の概況については、「1.経営成績等の状況の概要」に記載しております。
② 財政状態
当連結会計年度末の総資産残高は、前期末比 342億円(1.8%)減少し、1兆9,040億円となりました。流動資産は、現金及び預金の増加等により、前期末比 458億円(5.0%)増加の 9,554億円となりました。固定資産は、投資有価証券の減少等により、前期末比 800億円(7.8%)減少の 9,485億円となりました。
負債残高は、前期末比 1,030億円(8.5%)増加し、1兆3,180億円となりました。流動負債は、コマーシャル・ペーパーの増加等により、前期末比 698億円(9.6%)増加の 7,978億円となりました。固定負債は、事業再編損失引当金の増加等により、前期末比 332億円(6.8%)増加の 5,201億円となりました。なお、借入金に社債、コマーシャル・ペーパーを加えた有利子負債残高については、前期末比 528億円(10.7%)増加の 5,476億円となりました。
純資産残高は、利益剰余金の減少等により、前期末比 1,373億円(19.0%)減少の 5,860億円となりました。
この結果、連結ベースの自己資本比率は、前期末の32.7%から26.6%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は 4,838.31円から 3,870.35円に減少しました。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(3) 事業戦略と見通し
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び流動性の管理方針
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、内部資金、銀行借入、社債発行等により資金調達を行っております。また、キャッシュマネージメントシステムの導入等によるグループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上に努めております。
当社グループの資金の状況については、「1.経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(5) 経営者の問題意識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、収益力、有利子負債等グループの財政状況を認識し、現在の事業規模及び入手可能な情報に基づき経営資源の最も効率的な運用を行い、企業価値を最大限に高めるべく努めております。
(6) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しておりますが、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りつきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
① 貸倒引当金、関係会社事業損失引当金の計上
当社グループの保有する債権または関係会社への投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積もり、引当金を計上しておりますが、将来、債務者や被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
② 事業再編損失引当金の計上
焼結事業を営む関係会社において発生することが見込まれる事業再編に伴う損失に備えるため、現時点において発生が見込まれる額を見積り、引当金を計上しております。将来、経済環境の著しい悪化や再編計画の変更等により、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
③ 有価証券の減損処理
当社グループの保有する株式については、時価のある有価証券、時価のない有価証券ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。
④ 固定資産の減損処理
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日))及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 2003年10月31日)を適用しております。将来、経済環境の著しい悪化や市場価格の著しい下落の発生如何によっては、減損損失を計上する可能性があります。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。