有価証券報告書-第118期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/27 16:43
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122項目
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米国経済が堅調な雇用や個人消費、設備投資を背景に緩やかな回復基調を維持するとともに、欧州やアジア・新興国の経済も緩やかな拡大傾向となりました。
また日本経済は、東アジアの地政学的なリスクは継続しているものの、政府による経済政策を背景に、企業収益、雇用・所得環境の改善が続き、回復基調で推移いたしました。
このような状況の中で、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」を目指し、「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、当社グループ一丸となって取り組みを進めてまいりました。
当連結会計年度の連結業績につきましては、次のとおりであります。
円安の効果に加え、日本・中国を中心に販売が増加したことにより、売上高は1兆4,411億70百万円と前連結会計年度に比べて1,228億60百万円、率にして9.3%の増収となりました。増収及び円安の効果等により、営業利益は813億91百万円と前連結会計年度に比べて39億48百万円、率にして5.1%の増益となりました。これにより経常利益は825億71百万円と前連結会計年度に比べて44億75百万円、率にして5.7%の増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、496億97百万円と前連結会計年度に比べて21億74百万円、率にして4.6%の増益となりました。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度において、当社グループの管理体制の変更に伴い、区分を変更しており、前連結会計年度について変更後の区分に組み替えた上で、比較・分析を行っております。
「機械器具部品」につきましては、円安の効果に加え、ステアリング、軸受の販売が大幅に増加したこと等により、売上高は1兆2,795億72百万円と前連結会計年度に比べて1,035億22百万円、率にして8.8%の増収となりました。営業利益につきましては、円安や増収の効果があったものの、売価水準の低下や研究開発費等の増加により、前連結会計年度並みの682億84百万円となりました。
「工作機械」につきましては、日本・北米を中心に販売が増加したこと等により、売上高は1,615億97百万円と前連結会計年度に比べて193億37百万円、率にして13.6%の増収となりました。営業利益につきましては、増収の効果等により、128億49百万円と前連結会計年度に比べて36億58百万円、率にして39.8%の増益となりました。
財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は、連結範囲の異動に伴う各資産の増加やのれんの計上等により、1兆2,770億66百万円と前連結会計年度末に比べて1,592億14百万円の増加となりました。負債につきましては、社債の発行や借入金の増加等により、7,044億73百万円と前連結会計年度末に比べて995億28百万円の増加となりました。また、純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上やその他の包括利益累計額の増加等により、5,725億92百万円と前連結会計年度末に比べて596億85百万円の増加となりました。
なお、1株当たり純資産額は前連結会計年度の1,422円08銭から1,554円11銭に増加いたしました。
また、有利子負債については、2,746億85百万円と前連結会計年度末に比べて878億64百万円増加しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3) 長期的な会社の経営戦略」や「(5) 対処すべき課題」に記載しております様々な取り組みにより、ROAやROE等の指標の改善、経営上の目標達成につなげてまいります。
(2) キャッシュ・フローの状況
連結キャッシュ・フローにつきましては、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、たな卸資産・売上債権の増加による資金の減少があったものの、税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費等の非資金損益項目の調整等により、当連結会計年度は1,000億33百万円の資金の増加となりました。(前連結会計年度は992億77百万円の資金の増加。)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出や連結範囲の異動を伴う子会社株式の取得等により、当連結会計年度は990億49百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は680億66百万円の資金の減少。)
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行や長期借入金の増加等により、当連結会計年度は602億82百万円の資金の増加となりました。(前連結会計年度は221億4百万円の資金の減少。)これらに換算差額等を加算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,326億48百万円となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
(1) 生産実績
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
生産高(百万円)前年同期比(%)
機械器具部品1,287,814112.4
工作機械107,768104.9
合計1,395,582111.8

(注) 1 金額は平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。
なお、工作機械の受注実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
工作機械135,517118.060,992128.1

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
セグメントの名称当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
販売高(百万円)前年同期比(%)
機械器具部品1,279,572108.8
工作機械161,597113.6
合計1,441,170109.3

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 平成28年4月1日
至 平成29年3月31日)
当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
トヨタ自動車㈱228,73017.4230,99616.0

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しており、その作成にあたっては、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りにおいて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となることがあります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 退職給付に係る負債
退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率や年金資産の期待運用収益率等の見積りが存在しております。したがって、実際の結果が前提条件と異なる場合、あるいは前提条件が変更された場合には、その影響は累積され、将来にわたって規則的に償却されるため、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存することから、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
③ 有価証券の減損処理
当社グループは得意先及び金融機関の株式を保有しており、これらの株式は株式市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて有価証券の減損処理を行っております。したがって、将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価額に反映されていない損失又は簿価額の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
④ 製品保証引当金
当社グループは製品納入後に発生する製品保証費用の支出に充てるため、過去のクレーム発生割合を基礎にして当連結会計年度に対応する発生予想額を計上しております。クレームの発生割合は不確実な面が多く、実際の製品保証費用は見積額と異なることがあり、将来の製品保証費用及び債務に影響を与える可能性があります。
⑤ 環境対策引当金
当社グループは建物及び設備等に使用されているアスベスト及びポリ塩化ビフェニル(PCB)の除去、処分等に係る支出に備えるため、今後発生すると見込まれる費用を計上しておりますが、将来において法規制の強化や社会状況の変化によって更なる費用負担が生じる可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の各事業の概況は、次のとおりであります。
ステアリング事業においては、グローバルな競争が一層厳しさを増す中でも確固たる市場シェアを維持するために、グローバル商談対応力の強化、お客様を設計段階からサポートするフロント・ローディング活動の強化、製造工程における省機化・省人化をはじめとした抜本的なコスト低減活動等、競争力向上に向けた施策を強力に推進してまいりました。生産供給体制の面では、今後成長が見込まれるインド市場において、当連結会計年度より新たにSONA KOYO STEERING SYSTEMS LTD社(本社:インド共和国ニューデリー市。平成30年4月7日付でJTEKT INDIA LTD.へ社名変更)グループを当社グループに迎え、現地における経営の効率化・競争力強化を進めております。また、アフリカにおいては、平成29年9月に当社グループ初の生産拠点となるJTEKT AUTOMOTIVE MOROCCO S.A.S.を設立いたしました。日本国内においては、当社グループのステアリングシステム提案力強化に向け、当連結会計年度より新たに富士機工株式会社グループを当社グループに迎え、両グループのコラム事業の垂直統合を進めております。新たな需要の取り込みとしては、北米において農場等で荷物の搬送や移動に使用される多目的車両、Utility Task Vehicle向けの電動パワーステアリングを開発、量産開始いたしました。自動運転化及び電動化への対応については、事業拡大の機会と捉えて積極的に取り組みを進めており、平成29年11月に、ソフトウェア開発拠点として株式会社ジェイテクトIT開発センター秋田を設立いたしました。
駆動事業においては、ステアリング事業と連携したフロント・ローディング活動や各商品の原価低減活動の強化、効率的なグローバル生産供給体制の構築を進めるとともに、カーメーカーの車両企画に合わせ最適な車両運動性能を実現するドライブラインシステムサプライヤーとして、駆動システム開発力の強化、将来のニーズを見据えた開発を推進してまいりました。平成29年8月には、高積載や泥濘路での走行等、過酷な環境下でも高い耐久性を発揮する小型トラック向けTORSENを開発、量産開始いたしました。
軸受(ベアリング)事業においては、事業環境の厳しさが増す中でも競争力を維持し、向上させていくために、事業体質の強化に重点を置き、改善等の取り組みを進めてまいりました。産業機械分野向けの旗艦工場である国分工場については、モノの流れの整流化や設備の老朽化・陳腐化対策を行うことにより、一定の成果が出始めております。加えて労働人口の減少を見据え、生産ラインの自動化・無人化に向けたIoE(Internet of Everything モノだけでなく、人やサービスもつなげる)を活用した管理・改善の効率化や、より高度な業務へ人材をシフトする取り組み等、事業体質をより強固にするために、取り組みを進めております。また、当社グループの宇都宮機器株式会社ではニードルベアリング事業の基盤強化に向け、平成30年6月に栃木県の清原工業団地にて新工場を建設いたしました。販売面では、お客様を設計段階からサポートするフロント・ローディング活動を強化するとともに、販売組織・ネットワークの最適化を進めております。商品開発面においては、高まるニーズに応える迅速な製品投入等とともに、自動車市場における電動化や産業機械分野における軸受(ベアリング)使用環境の変化に対応するため、狙いを絞った高付加価値商品の開発を進めてまいりました。
工作機械・メカトロ事業においては、当社グループ内の強みを集約し、総合生産ラインビルダーとして導入から稼動・保守、オーバーホールまで、設備のライフサイクルに合わせてサポートできる体制の強化を進めるとともに、お客様のニーズにタイムリーにお応えするため、新商品のリリースを進めてまいりました。研削盤においては、平成29年8月より、自動車等のクランクシャフト加工において、高精度加工、高生産性、高いフレキシブル性を実現するCBNクランクシャフト研削盤「GF50Mシリーズ」を販売開始いたしました。また、ギヤ加工分野においては、平成29年5月より、画期的な小型化を実現し量産ラインへの組み込みが容易となった「GS200H」を販売開始いたしました。加えて、当社が進めるIoEの一翼を担う商品として、平成29年9月に、設備の稼動状態を表示する状態ランプを監視し、稼動状態を見える化する「JTEKT-SignalHop」を販売開始いたしました。
また、新たな領域への取り組みとして、平成27年9月に国連サミットで採択された「SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」や、経団連の企業行動憲章に代表される社会課題の解決に積極的に取り組むとともに、持続的成長の柱となる新領域の創出に向け、平成29年4月に新規事業推進部を組織し、将来に向けた開発テーマを継続的に創出する体制を構築いたしました。成果の一例として、平成29年11月には、少子高齢化、労働人口不足、労働災害の増加といった社会課題に対し、当社の強みであるアシスト技術やトライボロジー(摩擦工学)技術、製造現場を持つメーカーとしてのノウハウを活かしたパワーアシストスーツを開発し、平成30年度に日本国内での販売を開始する予定です。また、平成29年11月には、大型車へ電動パワーステアリングを搭載する際に問題となる出力不足を解消する「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」を開発し、次年度の量産に向け、準備を進めております。なお、この商品は、自動車業界のみならず、工作機械、建設機械、鉄道、発電装置、交通インフラ等の様々な領域で、予備電源、補助電源としての活用も期待されており、これからの社会、お客様のニーズに沿った様々な形で貢献できるものと考えております。
① 売上高
当連結会計年度の売上高は、円安の効果に加え、日本・中国での販売が大幅に増加したこと等により、1兆4,411億70百万円と前連結会計年度に比べて1,228億60百万円(9.3%)の増収となりました。
機械器具部品におきましては、円安の効果に加え、ステアリング、軸受の販売が大幅に増加したこと等により、1兆2,795億72百万円と前連結会計年度に比べて1,035億22百万円(8.8%)の増収となりました。
工作機械におきましては、日本・北米を中心に販売が増加したこと等により、1,615億97百万円と前連結会計年度に比べて193億37百万円(13.6%)の増収となりました。
② 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、増収及び円安の効果等により、813億91百万円と前連結会計年度に比べて39億48百万円(5.1%)の増益となりました。
なお、売上高営業利益率は5.6%と前連結会計年度より0.2%減少しております。
③ 営業外収益及び費用
営業外収益及び費用につきましては、当連結会計年度は、11億80百万円の利益となりました。独禁法対応費用の減少等により、6億53百万円の利益であった前連結会計年度と比べて、収支が改善しました。
④ 経常利益
以上により、当連結会計年度の経常利益は825億71百万円と前連結会計年度に比べて44億75百万円(5.7%)の増益となりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資、研究開発費等の長期資金需要と、当社製品製造のための材料及び部品購入等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務方針としております。
現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、市場あるいは金融機関からの資金調達を通じ、現行事業の推進と事業拡大に必要となる資金を確保できる状況と考えております。
また、グループ各社に偏在する余剰資金の相互融通を図る等、資金効率の向上に努めております。