有価証券報告書-第121期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスに翻弄され、大幅なマイナス成長となりました。年度後半にかけ、ワクチン普及や各国の経済政策・金融政策の緩和基調に伴い、主要国の株価が上昇傾向となる等、世界経済は回復の兆しを見せております。しかし、経済活動には引き続き大きな制約が課せられており、決して楽観できる状態ではありません。
日本経済も、コロナショックの影響は大きく、緊急事態宣言が解除された2020年5月で底を打ったものの、緩やかな回復基調に留まり、コロナ前の水準にはいまだ到達しておりません。政府の給付金・資金繰り支援が企業活動を下支えしているものの、構造的な需要の変化や先行きの不透明感等からさらに事業環境が悪化する恐れもあり、今後を注視する必要があります。
このような状況のなかで、当社グループ全体で危機意識を共有することはもちろん、収益体質の抜本的な改善に向けて責任体制を明確化し、構造改革を推進してまいりました。その一環として、トヨタグループ各社との更なる連携強化及びこれまで以上に“モノづくり”を意識した現場目線の本社機能実現を企図し、2020年12月に名古屋市の本社を愛知県刈谷市へ移転いたしました。さらに、改革を一層加速させるために、新たな長期・中期経営計画を策定いたしました。
当連結会計年度の連結業績につきましては、次のとおりであります。
売上収益は1兆2,462億86百万円と前連結会計年度に比べ1,726億9百万円(12.2%)の減収となりました。事業利益につきましては159億12百万円となり、前連結会計年度に比べ216億44百万円(57.6%)の減益となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は8億円と前連結会計年度に比べ45億95百万円の増益となりました。
なお、売上収益事業利益率は1.3%と前連結会計年度より1.4ポイント低下しております。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
「機械器具部品」につきましては、他の国・地域に先駆けて経済活動を再開した中国では、ステアリングやベアリングの販売が前連結会計年度を上回る水準まで回復しました。中国以外の地域においても第2四半期連結会計期間以降、販売が回復したものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う第1四半期連結会計期間における大幅な販売減少の影響をカバーするに至らず、売上収益は1兆1,159億99百万円と前連結会計年度に比べ1,414億86百万円(11.3%)の減収となりました。事業利益につきましては、原価改善や労務費・経費の抑制に取り組んでまいりましたが、減収の影響が大きく、126億35百万円と前連結会計年度に比べ116億12百万円(47.9%)の減益となりました。
「工作機械」につきましては、日本や北米を中心に販売が減少したこと等により、売上収益は1,302億86百万円と前連結会計年度に比べ311億23百万円(19.3%)の減収となりました。減収の影響等により、事業利益は、21億77百万円と前連結会計年度に比べ100億78百万円(82.2%)の減益となりました。
財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末における資産は、株価上昇に伴う投資有価証券(その他の金融資産)や年金資産(その他の非流動資産)の増加等により、1兆2,913億円と前連結会計年度末に比べ470億86百万円の増加となりました。負債につきましては、コロナ禍の資金需要対応のため前期末に一時的に増加させた借入金を返済したこと等により、7,062億12百万円と前連結会計年度末に比べ64億49百万円の減少となりました。また、資本につきましては、株価上昇に伴いその他の包括利益が増加したこと等により、5,850億88百万円と前連結会計年度末に比べ535億36百万円の増加となりました。
なお、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,455円94銭から1,606円30銭に増加いたしました。
また、社債及び借入金につきましては、2,862億20百万円と前連結会計年度末に比べて419億5百万円減少しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3) 長期的な会社の経営戦略」や「(5) 優先的に対処すべき課題」に記載しております様々な取組みにより、経営上の目標達成につなげてまいります。
(2) キャッシュ・フローの状況
連結キャッシュ・フローにつきましては、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の減少等により、当連結会計年度は917億57百万円の資金の増加となりました(前連結会計年度は623億12百万円の資金の増加)。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、当連結会計年度は525億15百万円の資金の減少となりました(前連結会計年度は917億71百万円の資金の減少)。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済等により、当連結会計年度は579億57百万円の資金の減少となりました(前連結会計年度は342億39百万円の資金の増加)。
これらに換算差額等を加減算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,186億45百万円となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
(1) 生産実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
生産高(百万円) | 前年同期比(%) | |
機械器具部品 | 1,071,842 | 85.1 |
工作機械 | 90,916 | 75.8 |
合計 | 1,162,758 | 84.3 |
(注) 1 金額は平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。
なお、工作機械の受注実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |||
受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) | |
工作機械 | 76,519 | 76.0 | 29,852 | 72.3 |
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、受注高及び受注残高に著しい変動がありますが、米中貿易摩擦や中国の景気減速、新型コロナウイルス感染拡大等により顧客の設備投資意欲が減速したためであります。
(3) 販売実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
販売高(百万円) | 前年同期比(%) | |
機械器具部品 | 1,115,999 | 88.7 |
工作機械 | 130,286 | 80.7 |
合計 | 1,246,286 | 87.8 |
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
トヨタ自動車㈱ | 257,145 | 18.1 | 231,583 | 18.6 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び、将来に関する仮定及び報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「3.重要な会計方針」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の各事業の概況は、次のとおりであります。
ステアリング事業においては、パワーステアリングのトップランナーとして、グローバル競争を勝ち抜くため、全工程にわたる抜本的なコスト改善と、次世代製品開発及び自動運転や電動化等に対応する先進技術の開発に取り組んでまいりました。自動運転分野では、次世代型公共交通システムの実現への貢献のため、従前より参画している内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムとして、羽田空港地域における自動運転バス正着制御技術(目標地点に密着して停止するよう自動制御する技術)の実証実験を実施いたしました。また、機能安全設計等、高度化する技術と多様化するお客様のニーズに対応すべく、電動パワーステアリング向けモーターコントロールユニット(MCU)の自社開発も進め、2020年10月には搭載車両の販売が開始されました。自動運転の本格的な普及に向けて、安心・安全な製品群をそろえ、商品力強化のスピードアップを図ってまいります。
駆動事業においては、ドライブラインシステムサプライヤーとして世界のリーディングカンパニーへ飛躍することを目標に、徹底した原価低減活動やグローバル生産体制確立、駆動システム開発力の強化に取り組むとともに、将来の地球環境への貢献に向けた開発を推進しております。製品開発においては、当社のトルクコントロールデバイス(トルセンLSD、4WD車用電子制御カップリング・ITCC)がトヨタ自動車株式会社の「GR YARIS」の高レベルなスポーツドライビング実現に貢献しております。また、トヨタ自動車株式会社の「MIRAI」に高圧水素供給バルブ・減圧弁が採用される等、高圧水素供給システムの分野で水素社会の実現に向けても引き続き貢献していきます。
軸受(ベアリング)事業においては、競争力の更なる向上を目指し、徹底した生産性向上の追求、生産技術革新、グローバル最適調達等を強力に推進してまいりました。その結果は第3四半期以降、明確に表れており、さらにスピードを上げ継続して取組みを進めてまいります。また、製品開発においても、自動車の低燃費化、高効率化に貢献するとともに、電動化にも対応する製品として、シリーズNo.1の低トルク性能とシリーズ最軽量を実現した「第5世代 低トルク円すいころ軸受 LFT-V」を開発いたしました。産業機械用では、地球環境・社会環境の変化に伴うお客様のニーズにタイムリーに対応した省エネ・再生エネ商品で世の中に貢献しております。
工作機械・メカトロ事業においては、モノづくりイノベーションカンパニーとして、工作機械とIoEソリューション、ライフサイクルサポートを推進してまいりました。匠が生み出す比類なき高精度研削盤「GR7i-400」は、リチウム電池や積層コンデンサ、高機能フィルムの製造に必要な高精度ロールの製造を可能にすることで成長分野に貢献します。ギヤスカイビング加工機では、加工テストをデジタルシミュレーションする技術を開発しました。これにより、顧客の早期の量産開始に寄与いたします。また、「CBNカム砥石研削盤」は、その省エネ性能が高く評価され、優秀省エネ機器・システム表彰で最高位の経済産業大臣賞を受賞いたしました。
当社は、取り巻く環境の変化を先読みして持続的に成長するために、少子高齢化や環境・エネルギー問題といった将来の社会課題に対するニーズと、既存の事業で培った技術やノウハウといったシーズを掛け合わせることで、新規事業領域の創出に取り組んでおります。当連結会計年度は、介護領域に注目し、少子高齢化・人手不足等喫緊の社会課題への貢献を果たすべく、2製品の販売を開始いたしました。
「J-PAS fleairy(フレアリー)」は、フレーム構造をもたないベルト巻き上げ式により大幅に軽量化した衣服型アクティブパワーアシストスーツで、介助される方にやさしい素材を用い、介護現場の様々なシーンで有効なアシスト力で作業を支援します。
「J-Walker テクテック」は、高齢者の健康寿命延伸を目的とした当社オリジナル「自立推進トレーニングロボット」であります。ノルディックウォークやゲーミフィケーション機能を取り入れ、楽しみながらトレーニングすることで、「介護予防」、「自立推進」に貢献いたします。
※「GR YARIS」「MIRAI」はトヨタ自動車株式会社の登録商標であります。
「トルセン」「ITCC」「LFT」「J-PAS」「J-PAS fleairy」「J-Walker」「J-Walker テクテック」は当社の登録商標であります。
当社グループは、2030年の目指す姿を達成するための第一期中計期間の目標数値を次のとおりとしました。また、2023年度に事業利益1,000億円の達成を目指し、中期経営計画を推進してまいります。
第一期中期経営計画(期間:2021~2023年度)の目標
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
損益分岐点売上比率 | 85% | 83% | 80% |
※2019年度売上収益比
なお、これらの目標数値につきましては、達成を保証するものではありません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資、研究開発費等の長期資金需要と、当社製品製造のための材料及び部品購入等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務方針としております。
現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、市場あるいは金融機関からの資金調達を通じ、現行事業の推進と事業拡大に必要となる資金を確保できる状況と考えております。
また、グループ各社に偏在する余剰資金の相互融通を図る等、資金効率の向上に努めております。