有価証券報告書-第119期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米国では政府による財政支出の拡大や、減税による個人消費や設備投資の拡大により回復基調を維持したものの、中国で政府のデレバレッジ(債務圧縮)政策によるインフラ投資の減速や自動車販売を中心とした個人消費の鈍化から成長が減速したほか、欧州やアジアにおいても成長の低下がみられました。
また日本経済は、自然災害による一時的な影響はあったものの、前半は緩やかな回復基調を維持しましたが、後半は中国経済の減速とIT業界からの需要減少により、輸出企業を中心に伸び悩みました。
このような状況のなかで、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」を目指し、「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、当社グループ一丸となって取り組みを進めてまいりました。
当連結会計年度の連結業績につきましては、次のとおりであります。
日本やアジア、北米を中心に販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、売上高は1兆5,208億93百万円と前連結会計年度に比べて797億22百万円、率にして5.5%の増収となりました。売上高増加や富士機工グループを連結子会社化したことによる利益増加の効果等があったものの、売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等により、営業利益は666億8百万円と前連結会計年度に比べて147億82百万円、率にして18.2%の減益となりました。経常利益は696億58百万円と前連結会計年度に比べて129億13百万円、率にして15.6%の減益となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度は段階取得に係る差益を特別利益に計上しましたが、当連結会計年度は計上がないこと等により、246億63百万円と前連結会計年度に比べて250億33百万円、率にして50.4%の減益となりました。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
「機械器具部品」につきましては、日本やアジア、北米においてステアリングの販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、売上高は1兆3,458億22百万円と前連結会計年度に比べて662億49百万円、率にして5.2%の増収となりました。営業利益につきましては、売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等の影響を売上高増加や原価低減の効果で補えず、490億78百万円と前連結会計年度に比べて192億6百万円、率にして28.1%の減益となりました。
「工作機械」につきましては、日本や北米、中国において販売が増加したこと等により、売上高は1,750億70百万円と前連結会計年度に比べて134億73百万円、率にして8.3%の増収となりました。営業利益につきましては、売上高増加や原価低減の効果により、168億45百万円と前連結会計年度に比べて39億96百万円、率にして31.1%の増益となりました。
財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は、株式相場下落による投資有価証券の減少等により、1兆2,678億19百万円と前連結会計年度末に比べて27億45百万円の減少となりました。負債につきましては、退職給付に係る負債の減少等により、6,967億38百万円と前連結会計年度末に比べて12億34百万円の減少となりました。また、純資産につきましては、その他有価証券評価差額金の減少等により、5,710億80百万円と前連結会計年度末に比べて15億11百万円の減少となりました。
なお、1株当たり純資産額は前連結会計年度の1,554円11銭から1,564円21銭に増加いたしました。
また、有利子負債につきましては、2,735億61百万円と前連結会計年度末に比べて11億23百万円減少しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3) 長期的な会社の経営戦略」や「(5) 対処すべき課題」に記載しております様々な取り組みにより、ROAやROE等の指標の改善、経営上の目標達成につなげてまいります。
(2) キャッシュ・フローの状況
連結キャッシュ・フローにつきましては、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度は1,030億22百万円の資金の増加となりました。(前連結会計年度は1,000億33百万円の資金の増加。)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、当連結会計年度は753億24百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は990億49百万円の資金の減少。)
財務活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社であるダイベア株式会社の株式を追加取得し、完全子会社化したことによる支出等により、当連結会計年度は265億92百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は602億82百万円の資金の増加。)これらに換算差額等を加減算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,324億71百万円となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
(1) 生産実績
(注) 1 金額は平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。
なお、工作機械の受注実績は以下のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しており、その作成にあたっては、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りにおいて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となることがあります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 退職給付に係る負債
退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率や年金資産の期待運用収益率等の見積りが存在しております。したがって、実際の結果が前提条件と異なる場合、あるいは前提条件が変更された場合には、その影響は累積され、将来にわたって規則的に償却されるため、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存することから、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
③ 有価証券の減損処理
当社グループは得意先及び金融機関の株式を保有しており、これらの株式は株式市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて有価証券の減損処理を行っております。したがって、将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価額に反映されていない損失又は簿価額の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
④ 製品保証引当金
当社グループは製品納入後に発生する製品保証費用の支出に充てるため、過去のクレーム発生割合を基礎にして当連結会計年度に対応する発生予想額を計上しております。クレームの発生割合は不確実な面が多く、実際の製品保証費用は見積額と異なることがあり、将来の製品保証費用及び債務に影響を与える可能性があります。
⑤ 環境対策引当金
当社グループは建物及び設備等に使用されているアスベスト及びポリ塩化ビフェニル(PCB)の除去、処分等に係る支出に備えるため、今後発生すると見込まれる費用を計上しておりますが、将来において法規制の強化や社会状況の変化によって更なる費用負担が生じる可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の各事業の概況は、次のとおりであります。
ステアリング事業においては、グローバルな競争が一層厳しさを増すなかでも確固たる市場シェアを維持するために、グローバル商談対応力の強化、お客様を設計段階からサポートするフロント・ローディング活動の強化、製造工程における省機化・省人化をはじめとした抜本的なコスト低減活動等、競争力向上に向けた施策を強力に推進してまいりました。自動運転及び電動化への対応については、事業拡大の機会と捉えて積極的に取り組みを進めており、自動運転制御、正着制御を可能にする次世代交通システムへ参画するとともに、より高度な自動運転の実現を目指し、アイシン精機株式会社、株式会社アドヴィックス、及び株式会社デンソーと、自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社「株式会社J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)」を2019年4月に設立いたしました。
駆動事業においては、ステアリング事業と連携したフロント・ローディング活動や各商品の原価低減活動の強化、効率的なグローバル生産供給体制の構築を進めるとともに、自動車メーカーの車両企画に合わせ最適な車両運動性能を実現するドライブラインシステムサプライヤーとして、駆動システム開発力の強化、将来のニーズを見据えた開発を推進してまいりました。今後市場の拡大が見込まれるEV向けにモーター冷却用電動オイルポンプを初受注し、2020年に欧州にて生産を開始する予定です。
軸受(ベアリング)事業においては、事業環境の厳しさが増すなかでも競争力を維持、向上させていくために、事業体質の強化に重点を置き、改善等の取り組みを進めてまいりました。労働人口の減少を見据え、生産ラインの自動化・無人化に向けたIoE(Internet of Everything モノだけでなく、人やサービスもつなぐこと)を活用した管理・改善の効率化や、より高度な業務へ人材をシフトする取り組みを進めております。販売面では、フロント・ローディング活動を強化するとともに、販売組織・ネットワークの最適化を進めております。また、グループ間の連携強化のため、当社グループのダイベア株式会社を公開買付け等により2019年1月に完全子会社化いたしました。
商品開発面においては、2018年11月、株式会社MUTECSと共同で「株式会社光洋マグネティックベアリング」を設立し、制御型磁気軸受の分野に参入いたしました。高まるニーズに応える迅速な商品投入等とともに、自動車市場における電動化や産業機械分野におけるベアリング使用環境の多様化に対応するため、狙いを絞った高付加価値商品の開発を進めてまいりました。
工作機械・メカトロ事業においては、お客様のモノづくりにおいてすべてのフェーズで価値を提供するため、工作機械をはじめ、IoEソリューション、ライフサイクルサポートなどあらゆる価値の提供に取り組んでまいりました。
2018年度は、労働人口減少、EV化などの社会変化とAI化などの技術の進展に対し新たな取り組みをいたしました。ギヤ複合加工性能を向上させ工程集約が実現できるギヤスカイビングセンタGS200H、AI機能の「スマートフェースコントロール」で誰でも高品位なロール加工が実現できるCNC円筒研削盤GE4Pi、EV化で増える減速機の偏心シャフトを高速で加工できるCBN小型クランクシャフト研削盤GF16Sの販売を開始し、第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)に出品いたしました。また、工程集約で効率的な加工ができる旋回主軸搭載の5軸マシニングセンタFH630SX-5Aの開発を行い、販売を開始いたしました。IoE商品としては、人の成長をサポートする「スキルアップNAVI」を含めた6つのソリューションを商品化し、「JTEKT IoE ソリューション」の充実を図りました。
持続的成長の柱となる新領域の創出に向けた開発テーマの成果としては、少子高齢化、労働人口不足といった社会課題に対し、当社の強みであるアシスト技術やトライボロジー(摩擦工学)技術、製造現場を持つメーカーとしてのノウハウを活かしたパワーアシストスーツ「J-PAS」を開発、2018年8月に日本国内での販売を開始いたしました。2019年3月には新たにウェブサイトを用いた製造業の受発注マッチングクラウドサービス「ファクトリーエージェント」を開始し、2019年度中の本格稼働を予定しております。また、多様化する電源課題への対応を目指し「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」を開発、2019年5月より生産を開始いたしました。この商品は、自動車業界のみならず、工作機械、建設機械、鉄道、発電装置、交通インフラ等の様々な領域で、予備電源、補助電源としての活用も期待されており、これからの社会のニーズに沿った様々な形で貢献できるものと考えております。
上記のほか、当社では多様化・高度化が進む研究課題に対して、自社での研究・開発の強化、オープンイノベーションの取り組みを一層活発にし、高度なイノベーションを創出するため、当社東刈谷事業場内及び東京ジェイテクトビル内に、新たな研究開発拠点を開設いたしました。既存事業での次世代先端技術の研究を推進するとともに、新規事業領域の創生にも積極的に挑戦をしてまいります。
① 売上高
当連結会計年度の売上高は、日本やアジア、北米を中心に販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、1兆5,208億93百万円と前連結会計年度に比べて797億22百万円(5.5%)の増収となりました。
機械器具部品におきましては、日本やアジア、北米においてステアリングの販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、1兆3,458億22百万円と前連結会計年度に比べて662億49百万円(5.2%)の増収となりました。
工作機械におきましては、日本や北米、中国において販売が増加したこと等により、1,750億70百万円と前連結会計年度に比べて134億73百万円(8.3%)の増収となりました。
② 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、売上高増加や富士機工グループを連結子会社化したことによる利益増加の効果等があったものの、売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等により、666億8百万円と前連結会計年度に比べて147億82百万円(18.2%)の減益となりました。
なお、売上高営業利益率は4.4%と前連結会計年度より1.3%減少しております。
③ 営業外収益及び費用
営業外収益及び費用につきましては、当連結会計年度は、30億49百万円の利益となりました。独禁法対応費用の減少等により、11億80百万円の利益であった前連結会計年度と比べて、営業外収支が改善しました。
④ 経常利益
以上により、当連結会計年度の経常利益は696億58百万円と前連結会計年度に比べて129億13百万円(15.6%)の減益となりました。
当社グループは、社会環境の変化に迅速に対応するため中期経営計画を毎年ローリングし、既存事業の競争力の強化、次世代に向けた新規事業の創出、及びこれらの事業戦略を中長期で支える事業基盤の構築に取り組んでおりますが、中期経営計画中に示した具体的な経営指標に対する実績は、次のとおりとなりました。
2014年度当初中期経営計画(期間:2014-2018年度)の目標と実績
2018年度当初中期経営計画(期間:2018-2022年度)の目標と実績
M&A及び新規顧客獲得等により売上高の目標は達成したものの、競争環境の激化による売価水準の低下を原価低減と生産性の向上で補うことができず、また、将来を見据えた研究開発費等が増加したため、営業利益の目標に対しては大幅な未達となりました。今後は上記の目標の達成に向けて、新たな高付加価値商品の開発加速、製造ラインの省人化・無人化や業務改革等による生産性の向上に取組んでまいります。
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資、研究開発費等の長期資金需要と、当社製品製造のための材料及び部品購入等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務方針としております。
現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、市場あるいは金融機関からの資金調達を通じ、現行事業の推進と事業拡大に必要となる資金を確保できる状況と考えております。
また、グループ各社に偏在する余剰資金の相互融通を図る等、資金効率の向上に努めております。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米国では政府による財政支出の拡大や、減税による個人消費や設備投資の拡大により回復基調を維持したものの、中国で政府のデレバレッジ(債務圧縮)政策によるインフラ投資の減速や自動車販売を中心とした個人消費の鈍化から成長が減速したほか、欧州やアジアにおいても成長の低下がみられました。
また日本経済は、自然災害による一時的な影響はあったものの、前半は緩やかな回復基調を維持しましたが、後半は中国経済の減速とIT業界からの需要減少により、輸出企業を中心に伸び悩みました。
このような状況のなかで、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」を目指し、「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、当社グループ一丸となって取り組みを進めてまいりました。
当連結会計年度の連結業績につきましては、次のとおりであります。
日本やアジア、北米を中心に販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、売上高は1兆5,208億93百万円と前連結会計年度に比べて797億22百万円、率にして5.5%の増収となりました。売上高増加や富士機工グループを連結子会社化したことによる利益増加の効果等があったものの、売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等により、営業利益は666億8百万円と前連結会計年度に比べて147億82百万円、率にして18.2%の減益となりました。経常利益は696億58百万円と前連結会計年度に比べて129億13百万円、率にして15.6%の減益となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度は段階取得に係る差益を特別利益に計上しましたが、当連結会計年度は計上がないこと等により、246億63百万円と前連結会計年度に比べて250億33百万円、率にして50.4%の減益となりました。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
「機械器具部品」につきましては、日本やアジア、北米においてステアリングの販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、売上高は1兆3,458億22百万円と前連結会計年度に比べて662億49百万円、率にして5.2%の増収となりました。営業利益につきましては、売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等の影響を売上高増加や原価低減の効果で補えず、490億78百万円と前連結会計年度に比べて192億6百万円、率にして28.1%の減益となりました。
「工作機械」につきましては、日本や北米、中国において販売が増加したこと等により、売上高は1,750億70百万円と前連結会計年度に比べて134億73百万円、率にして8.3%の増収となりました。営業利益につきましては、売上高増加や原価低減の効果により、168億45百万円と前連結会計年度に比べて39億96百万円、率にして31.1%の増益となりました。
財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は、株式相場下落による投資有価証券の減少等により、1兆2,678億19百万円と前連結会計年度末に比べて27億45百万円の減少となりました。負債につきましては、退職給付に係る負債の減少等により、6,967億38百万円と前連結会計年度末に比べて12億34百万円の減少となりました。また、純資産につきましては、その他有価証券評価差額金の減少等により、5,710億80百万円と前連結会計年度末に比べて15億11百万円の減少となりました。
なお、1株当たり純資産額は前連結会計年度の1,554円11銭から1,564円21銭に増加いたしました。
また、有利子負債につきましては、2,735億61百万円と前連結会計年度末に比べて11億23百万円減少しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3) 長期的な会社の経営戦略」や「(5) 対処すべき課題」に記載しております様々な取り組みにより、ROAやROE等の指標の改善、経営上の目標達成につなげてまいります。
(2) キャッシュ・フローの状況
連結キャッシュ・フローにつきましては、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度は1,030億22百万円の資金の増加となりました。(前連結会計年度は1,000億33百万円の資金の増加。)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、当連結会計年度は753億24百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は990億49百万円の資金の減少。)
財務活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社であるダイベア株式会社の株式を追加取得し、完全子会社化したことによる支出等により、当連結会計年度は265億92百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は602億82百万円の資金の増加。)これらに換算差額等を加減算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,324億71百万円となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
(1) 生産実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |
生産高(百万円) | 前年同期比(%) | |
機械器具部品 | 1,291,276 | 100.3 |
工作機械 | 129,539 | 120.2 |
合計 | 1,420,815 | 101.8 |
(注) 1 金額は平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績
当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。
なお、工作機械の受注実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |||
受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) | |
工作機械 | 133,231 | 98.3 | 59,817 | 98.1 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |
販売高(百万円) | 前年同期比(%) | |
機械器具部品 | 1,345,822 | 105.2 |
工作機械 | 175,070 | 108.3 |
合計 | 1,520,893 | 105.5 |
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||
販売高(百万円) | 割合(%) | 販売高(百万円) | 割合(%) | |
トヨタ自動車㈱ | 230,996 | 16.0 | 242,102 | 15.9 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しており、その作成にあたっては、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りにおいて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となることがあります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 退職給付に係る負債
退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率や年金資産の期待運用収益率等の見積りが存在しております。したがって、実際の結果が前提条件と異なる場合、あるいは前提条件が変更された場合には、その影響は累積され、将来にわたって規則的に償却されるため、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存することから、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
③ 有価証券の減損処理
当社グループは得意先及び金融機関の株式を保有しており、これらの株式は株式市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて有価証券の減損処理を行っております。したがって、将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価額に反映されていない損失又は簿価額の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。
④ 製品保証引当金
当社グループは製品納入後に発生する製品保証費用の支出に充てるため、過去のクレーム発生割合を基礎にして当連結会計年度に対応する発生予想額を計上しております。クレームの発生割合は不確実な面が多く、実際の製品保証費用は見積額と異なることがあり、将来の製品保証費用及び債務に影響を与える可能性があります。
⑤ 環境対策引当金
当社グループは建物及び設備等に使用されているアスベスト及びポリ塩化ビフェニル(PCB)の除去、処分等に係る支出に備えるため、今後発生すると見込まれる費用を計上しておりますが、将来において法規制の強化や社会状況の変化によって更なる費用負担が生じる可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の各事業の概況は、次のとおりであります。
ステアリング事業においては、グローバルな競争が一層厳しさを増すなかでも確固たる市場シェアを維持するために、グローバル商談対応力の強化、お客様を設計段階からサポートするフロント・ローディング活動の強化、製造工程における省機化・省人化をはじめとした抜本的なコスト低減活動等、競争力向上に向けた施策を強力に推進してまいりました。自動運転及び電動化への対応については、事業拡大の機会と捉えて積極的に取り組みを進めており、自動運転制御、正着制御を可能にする次世代交通システムへ参画するとともに、より高度な自動運転の実現を目指し、アイシン精機株式会社、株式会社アドヴィックス、及び株式会社デンソーと、自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社「株式会社J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)」を2019年4月に設立いたしました。
駆動事業においては、ステアリング事業と連携したフロント・ローディング活動や各商品の原価低減活動の強化、効率的なグローバル生産供給体制の構築を進めるとともに、自動車メーカーの車両企画に合わせ最適な車両運動性能を実現するドライブラインシステムサプライヤーとして、駆動システム開発力の強化、将来のニーズを見据えた開発を推進してまいりました。今後市場の拡大が見込まれるEV向けにモーター冷却用電動オイルポンプを初受注し、2020年に欧州にて生産を開始する予定です。
軸受(ベアリング)事業においては、事業環境の厳しさが増すなかでも競争力を維持、向上させていくために、事業体質の強化に重点を置き、改善等の取り組みを進めてまいりました。労働人口の減少を見据え、生産ラインの自動化・無人化に向けたIoE(Internet of Everything モノだけでなく、人やサービスもつなぐこと)を活用した管理・改善の効率化や、より高度な業務へ人材をシフトする取り組みを進めております。販売面では、フロント・ローディング活動を強化するとともに、販売組織・ネットワークの最適化を進めております。また、グループ間の連携強化のため、当社グループのダイベア株式会社を公開買付け等により2019年1月に完全子会社化いたしました。
商品開発面においては、2018年11月、株式会社MUTECSと共同で「株式会社光洋マグネティックベアリング」を設立し、制御型磁気軸受の分野に参入いたしました。高まるニーズに応える迅速な商品投入等とともに、自動車市場における電動化や産業機械分野におけるベアリング使用環境の多様化に対応するため、狙いを絞った高付加価値商品の開発を進めてまいりました。
工作機械・メカトロ事業においては、お客様のモノづくりにおいてすべてのフェーズで価値を提供するため、工作機械をはじめ、IoEソリューション、ライフサイクルサポートなどあらゆる価値の提供に取り組んでまいりました。
2018年度は、労働人口減少、EV化などの社会変化とAI化などの技術の進展に対し新たな取り組みをいたしました。ギヤ複合加工性能を向上させ工程集約が実現できるギヤスカイビングセンタGS200H、AI機能の「スマートフェースコントロール」で誰でも高品位なロール加工が実現できるCNC円筒研削盤GE4Pi、EV化で増える減速機の偏心シャフトを高速で加工できるCBN小型クランクシャフト研削盤GF16Sの販売を開始し、第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)に出品いたしました。また、工程集約で効率的な加工ができる旋回主軸搭載の5軸マシニングセンタFH630SX-5Aの開発を行い、販売を開始いたしました。IoE商品としては、人の成長をサポートする「スキルアップNAVI」を含めた6つのソリューションを商品化し、「JTEKT IoE ソリューション」の充実を図りました。
持続的成長の柱となる新領域の創出に向けた開発テーマの成果としては、少子高齢化、労働人口不足といった社会課題に対し、当社の強みであるアシスト技術やトライボロジー(摩擦工学)技術、製造現場を持つメーカーとしてのノウハウを活かしたパワーアシストスーツ「J-PAS」を開発、2018年8月に日本国内での販売を開始いたしました。2019年3月には新たにウェブサイトを用いた製造業の受発注マッチングクラウドサービス「ファクトリーエージェント」を開始し、2019年度中の本格稼働を予定しております。また、多様化する電源課題への対応を目指し「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」を開発、2019年5月より生産を開始いたしました。この商品は、自動車業界のみならず、工作機械、建設機械、鉄道、発電装置、交通インフラ等の様々な領域で、予備電源、補助電源としての活用も期待されており、これからの社会のニーズに沿った様々な形で貢献できるものと考えております。
上記のほか、当社では多様化・高度化が進む研究課題に対して、自社での研究・開発の強化、オープンイノベーションの取り組みを一層活発にし、高度なイノベーションを創出するため、当社東刈谷事業場内及び東京ジェイテクトビル内に、新たな研究開発拠点を開設いたしました。既存事業での次世代先端技術の研究を推進するとともに、新規事業領域の創生にも積極的に挑戦をしてまいります。
① 売上高
当連結会計年度の売上高は、日本やアジア、北米を中心に販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、1兆5,208億93百万円と前連結会計年度に比べて797億22百万円(5.5%)の増収となりました。
機械器具部品におきましては、日本やアジア、北米においてステアリングの販売が増加したことに加え、前連結会計年度中に富士機工グループを連結子会社化した影響等により、1兆3,458億22百万円と前連結会計年度に比べて662億49百万円(5.2%)の増収となりました。
工作機械におきましては、日本や北米、中国において販売が増加したこと等により、1,750億70百万円と前連結会計年度に比べて134億73百万円(8.3%)の増収となりました。
② 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、売上高増加や富士機工グループを連結子会社化したことによる利益増加の効果等があったものの、売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加等により、666億8百万円と前連結会計年度に比べて147億82百万円(18.2%)の減益となりました。
なお、売上高営業利益率は4.4%と前連結会計年度より1.3%減少しております。
③ 営業外収益及び費用
営業外収益及び費用につきましては、当連結会計年度は、30億49百万円の利益となりました。独禁法対応費用の減少等により、11億80百万円の利益であった前連結会計年度と比べて、営業外収支が改善しました。
④ 経常利益
以上により、当連結会計年度の経常利益は696億58百万円と前連結会計年度に比べて129億13百万円(15.6%)の減益となりました。
当社グループは、社会環境の変化に迅速に対応するため中期経営計画を毎年ローリングし、既存事業の競争力の強化、次世代に向けた新規事業の創出、及びこれらの事業戦略を中長期で支える事業基盤の構築に取り組んでおりますが、中期経営計画中に示した具体的な経営指標に対する実績は、次のとおりとなりました。
2014年度当初中期経営計画(期間:2014-2018年度)の目標と実績
2019年3月期実績 | 2019年3月期目標 | |
売上高 | 15,208億円 | 13,400億円 |
営業利益 | 666億円 | 1,000億円 |
営業利益率 | 4.4% | 7.5% |
2018年度当初中期経営計画(期間:2018-2022年度)の目標と実績
2019年3月期実績 | 2023年3月期目標 | |
棚卸資産回転月数 | 1.4か月 | 1.2か月 |
NET DEレシオ | 0.29 | 0.06 |
ROE | 4.6% | 10.0% |
ROA | 1.9% | 5.0% |
M&A及び新規顧客獲得等により売上高の目標は達成したものの、競争環境の激化による売価水準の低下を原価低減と生産性の向上で補うことができず、また、将来を見据えた研究開発費等が増加したため、営業利益の目標に対しては大幅な未達となりました。今後は上記の目標の達成に向けて、新たな高付加価値商品の開発加速、製造ラインの省人化・無人化や業務改革等による生産性の向上に取組んでまいります。
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資、研究開発費等の長期資金需要と、当社製品製造のための材料及び部品購入等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務方針としております。
現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、市場あるいは金融機関からの資金調達を通じ、現行事業の推進と事業拡大に必要となる資金を確保できる状況と考えております。
また、グループ各社に偏在する余剰資金の相互融通を図る等、資金効率の向上に努めております。