有価証券報告書-第114期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成されています。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っています。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損に反映しています。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。
重要な会計方針及び見積りの内容は、連結財務諸表の注記「3.重要な会計方針」に記載しています。なお、会計上の見積りには、新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定が含まれていますが、会計上の見積りの参考となる前例や、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がなく、当社は利用可能な情報をもとに見積りを行っているため、事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。
(2)生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また製品の性質上、原則として見込生産を主体とする生産方式を採っています。
なお、当社グループは製品の在庫を一定の必要水準に保つように生産活動を行っていることから、生産実績は販売実績に概ね類似しています。
(3)当連結会計年度の経営成績の分析
2020年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響の長期化を背景に、世界的に消費や投資が落ち込みました。各国の経済対策や株価の回復はあるものの、政治・金融情勢、貿易停滞のリスクなどの不確実性が高く、日本もこうした影響を少なからず受け、景気の先行きが見通しにくい状況が続きました。
このような経営環境のもと、当社は、事業の状況に応じて固定費削減等の対応策を実施しながら、新型コロナウイルス感染症がもたらす社会の変化を捉え、その課題解決に向けた取り組みを推進しました。また、2019年度からスタートした中期戦略をベースに、「基幹事業」「共創事業」「再挑戦事業」のポートフォリオマネジメントと経営体質強化を継続してきました。
具体的には、成長に向けた投資として、現場プロセス事業において、2020年7月に米国のサプライチェーン・ソフトウェアの専門企業であるBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)に対し、議決権比率20%の戦略的株式投資を実施しました(注)1。同社がグローバルに提供する先進的なソリューションとビジネスモデルを習得することで、当社のソリューション能力強化を図り、ビジネスモデル変革を加速させてまいります。
他社との連携・共創による競争力強化に向けては、車載用角形電池事業において、トヨタ自動車㈱との合弁会社であるプライム プラネット エナジー&ソリューションズ㈱が2020年4月1日より事業を開始しました。優れた品質・性能とコスト等を実現する高い競争力のある電池の開発、また安定的な電池の供給に取り組んでいます。
加えて、収益性の改善に向けては、半導体事業について、台湾の半導体メーカーNuvoton Technology Corporationへの事業譲渡を2020年9月に完了しました。また、ソーラー事業について、開発・生産体制の最適化を目的として、2020年6月にバッファロー工場(米ニューヨーク州)における太陽電池のセル、モジュールの生産を停止し、9月に撤退を完了しました。さらに2021年2月に、住宅用、公共・産業用太陽電池の自社生産から2021年度中に撤退することを公表しました(注)2。
なお、2020年11月には、より中長期的な視点での当社事業の競争力強化のため、2022年4月(予定)に持株会社制へ移行することを決定しました。各事業会社は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計などを通じて、競争力の大幅な強化に取り組む一方、持株会社は、各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、グループ全社視点での成長戦略を推進し、グループとしての企業価値向上に努めてまいります。
(注)1. 2021年4月23日の取締役会において、Blue Yonderの80%分の株式追加取得を行い、同社を完全子会社化することを決定しました。
2. 今後も、国内では、太陽電池の生産委託などによるパナソニックブランドでの販売を継続し、海外では、北米などで実施している太陽電池の外部調達による販売を継続します。
①売上高
当年度の連結売上高は、6兆6,988億円(前年度比11%減)となりました。国内売上は、空気清浄機などの増収はあったものの、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、住宅関連事業の非連結化影響もあり、減収となりました。海外売上は、プロセスオートメーションの実装機や、情報通信インフラ向けの蓄電システム、産業モーターなどが増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、減収となりました。
②営業利益
営業利益は、2,586億円(前年度比12%減)となりました。経営体質強化に向けた固定費削減や、空調空質・車載電池・情報通信インフラ向けなどの中長期的な社会変化を捉えた事業の増益により、調整後営業利益(注)は増益となりましたが、前年の事業譲渡益の反動もあり、営業利益は減益となりました。
(注) 調整後営業利益:売上高から、売上原価と、販売費及び一般管理費を控除して算出した当社の経営管理指標
③税引前利益
金融収益は208億円(前年度314億円)、金融費用は186億円(前年度341億円)となりました。この結果、税引前利益は、2,608億円(前年度2,911億円)となりました。
④親会社の所有者に帰属する当期純利益
法人所得税費用は、769億円(前年度510億円)となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、1,651億円(前年度2,257億円)となりました。また、基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する当期純利益は、70円75銭(前年度96円76銭)となりました。
⑤セグメントの経営成績
当社グループは、経営管理上、7つのカンパニーがそれぞれの担当領域において事業部の自主責任経営を支えグローバルに事業推進を行っており、その成果を「アプライアンス」「ライフソリューションズ」「コネクティッドソリューションズ」「オートモーティブ」「インダストリアルソリューションズ」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しています。
a アプライアンス
当セグメントの売上高は、前年度比で4%減少し、2兆4,944億円となりました。
当年度は、国内や中国でルームエアコン・冷蔵庫・洗濯機などが堅調に推移し、その他の地域も回復傾向にありましたが、上期における市況悪化の影響に加え、テレビやデジタルカメラの販売絞込みなども影響し、全体では減収となりました。
主な事業部の状況では、空調冷熱ソリューションズ事業部では、中国・北東アジアでのルームエアコンや欧州のヒートポンプ式温水暖房機は堅調に推移したものの、アジアやインドのルームエアコン等が苦戦し、減収となりました。
キッチン空間事業部では、国内や中国・北東アジアで冷蔵庫や調理家電が堅調に推移し、増収となりました。
ランドリー・クリーナー事業部では、国内や中国・北東アジアでドラム式洗濯機の販売が堅調に推移し、増収となりました。
スマートライフネットワーク事業部では、欧州を中心としたテレビやデジタルカメラの販売絞込みにより、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、1,043億円となりました。家電事業を中心に堅調に推移した国内に加え、海外での収益改善や固定費・拡売費削減などの効果により、前年度から486億円の増益となりました。
b ライフソリューションズ
当セグメントの売上高は、前年度比で21%減少し、1兆5,073億円となりました。
当年度は、IAQ(室内空気質)事業は好調だったものの、住宅関連事業の非連結化影響に加え、国内の非住宅市場における配線器具や照明機器が減収となり、海外でもインド・マレーシアなどのロックダウンの影響により、減収となりました。
主な事業部の状況では、ライティング事業部では、需要低迷に加え、欧州事業の売却影響もあり、減収となりました。
エナジーシステム事業部では、電材事業において、海外はインドを中心に販売が回復したものの、国内は非住宅やリニューアル件名の遅延などの影響で配線器具などが減販、太陽電池事業における国内外の減販や北米拠点の撤退などもあり、減収となりました。
パナソニック エコシステムズ㈱では、IAQ事業で、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」が大きく販売を伸ばし、また、国内・中国での空気清浄機も好調だったことから、増収となりました。
ハウジングシステム事業部では、新型コロナウイルス感染症拡大による市況の悪化や採用機会の損失などにより、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、692億円となりました。IAQ事業の増販益や固定費削減の効果はありましたが、全体的な需要低迷による減販損や構造改革費用の計上に加え、前年度に住宅関連事業の譲渡益を計上した反動もあり、前年度から1,109億円の減益となりました。
c コネクティッドソリューションズ
当セグメントの売上高は、前年度比で21%減少し、8,182億円となりました。
当年度は、プロセスオートメーション事業の販売が好調だったものの、その他の事業における新型コロナウイルス感染症拡大による市況低迷の影響をカバーできず、全体では減収となりました。
主な事業部の状況では、パナソニック アビオニクス㈱では、航空機の大幅減産や運航便数の激減により、機内エンターテインメント・通信システムやメンテナンス・リペアサービスの販売が大幅に減少し、減収となりました。
プロセスオートメーション事業部では、溶接機は需要低迷により減収となりましたが、実装機は5G機器やICT(情報通信技術)端末向けなどの販売が好調に推移したことにより、全体では増収となりました。
メディアエンターテインメント事業部では、リモートカメラが需要拡大により好調でしたが、世界的なイベント中止の影響を受け、プロジェクター等の販売が減少したことにより、全体では減収となりました。
モバイルソリューションズ事業部では、前年度のWindows7(注)サポート終了特需の反動減や企業の投資抑制などの影響により、減収となりました。
パナソニック システムソリューションズ ジャパン㈱では、東京2020の延期や、大手法人の投資延期等が影響し、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、200億円の損失となりました。アビオニクス事業などの減販影響に加え、前年度にセキュリティシステム事業の譲渡益を計上した反動や減損損失の計上などもあり、前年度から1,120億円の減益となりました。
(注)Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標です。
d オートモーティブ
当セグメントの売上高は、前年度比で10%減少し、1兆3,394億円となりました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響による上期の自動車生産台数の減少が大きく、急速に需要は回復したものの、車載機器事業、車載電池事業とも、年間では減収となりました。
車載機器事業では、注力領域であるコックピットシステムの売上は伸長し、商品ポートフォリオの入れ替えは着実に進んでいます。
車載電池事業では、円筒形リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上した高容量新製品を導入し、さらなる技術革新を進め、顧客要望に応えています。本技術導入により、北米電池工場では目標としていた35GWh相当の生産能力に到達しました。
当セグメントの営業利益は、109億円となりました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、減販損がありました。
一方、車載機器事業では、経営体質強化施策を加速し、固定費を大きく削減したことに加えて、前年度に計上したのれん減損の反動もあり、前年度から大幅な増益となりました。
車載電池事業でも、円筒形リチウムイオン電池の材料合理化や高容量新製品の導入効果などに加え、角形リチウムイオン電池の合弁会社化に伴う利益計上などにより、増益となりました。なお、北米電池工場設立後、円筒形車載電池事業として、初めて年間で黒字を計上しました。
セグメント全体では、前年度から575億円の増益となりました。
e インダストリアルソリューションズ
当セグメントの売上高は、前年度比で2%減少し、1兆2,555億円となりました。
当年度は、上期の新型コロナウイルス感染症拡大による影響を下期の市況回復で補いつつも、半導体事業譲渡等の影響により、減収となりました。
主な事業の状況では、システム事業は、半導体製造装置市場の好況や中国での生産設備の需要回復を受けて産業用モーターが拡大しました。また、情報化のさらなる進展に伴う通信量の増大を受けてデータセンター向け蓄電システムが堅調に推移するとともに、下期にはリレーやスイッチ等の車載部品も回復したことにより、増収となりました。
デバイス事業では、環境対応車向けコンデンサーが早期に回復し、データセンター向けコンデンサーの販売も好調に推移しました。一方、米中貿易摩擦の影響を受けて基地局向け基板材料が苦戦したほか、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による産業活動の停滞を受けマイクロ電池が低調に推移するなど、全体では減収となりました。
その他、半導体や液晶パネル事業は、事業譲渡や事業縮小などの影響により、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、662億円となりました。産業用モーターやデータセンター向けを中心とするコンデンサー・蓄電システムなどの増販益、固定費削減や材料合理化への取り組みに加え、前年度に計上した構造改革費用の反動などもあり、前年度から616億円の増益となりました。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載しています。
(5)財政状態及び流動性
①流動性と資金の源泉
当社グループでは、事業活動に必要な資金は自ら生み出すことを基本方針としています。また、生み出した資金については、グループ内ファイナンスにより効率的な資金活用を行っています。その上で、運転資金や事業投資などのため所要の資金が生じる場合には、財務体質や金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からの資金調達を行っています。
(資金)
当年度末の現金及び現金同等物の残高は1兆5,932億円となり、前年度末に比べ5,767億円増加しました。
当年度は、運転資金などの調達を主にコマーシャルペーパー(CP)の発行により行い、金融経済環境の悪化リスク等への備えとして1兆円超の現金・現金同等物を確保しました。また、2020年12月に無担保普通社債2,000億円を発行し、CPの償還資金に充当することにより、資金の中・長期化を図っています。
これらの結果、当年度末の無担保普通社債の残高は8,800億円、米ドル建無担保普通社債の残高は25億米ドルとなりました。
(有利子負債)
有利子負債は、無担保普通社債の発行を行ったものの、CPの償還等もあり、前年度末の1兆4,713億円から当年度末には1兆4,474億円へ減少しました。なお、当社は不安定な金融経済環境における資金調達リスクに備え、2018年6月に複数の取引銀行と期間を3年間とするコミットメントライン契約(注)を締結しています。当該契約に基づく無担保の借入設定上限は総額7,000億円ですが、借入実績はありません。
(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約
(格付け)
当社は、㈱格付投資情報センター(R&I)、S&P グローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)、及びムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)から格付けを取得しています。当年度末の当社の格付けは、次のとおりです。
R&I:A (長期、アウトルック:安定的)、a-1 (短期)
S&P:A-(長期、アウトルック:安定的)、A-2 (短期)
ムーディーズ:Baa1 (長期、アウトルック:ネガティブ)
②キャッシュ・フロー
当社グループは、事業収益力強化によりフリーキャッシュ・フローを向上させ、中長期的に事業を発展させていくことが重要と考えています。同時に、継続的な運転資本の圧縮、保有資産の見直しなどによるキャッシュ・フローの創出にも徹底して取り組んでいます。
当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは5,040億円、投資活動により増加したキャッシュ・フローは1,766億円となり、両者を合計したフリーキャッシュ・フローは、6,806億円(前年差4,564億円の良化)となりました。
なお、キャッシュ・フローの分析の詳細は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは5,040億円(前年度は4,303億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、前年の一時的な支払い等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の投資活動により増加したキャッシュ・フローは1,766億円(前年度は2,061億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、Blue Yonderへの株式投資に伴う支出はあったものの、設備投資の抑制に加え、車載用角形電池事業の合弁会社化に伴う収入や資産譲渡等があったためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の財務活動により減少したキャッシュ・フローは1,777億円(前年度は482億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、当年度においては、国内社債の発行がありましたが、短期社債発行残高が減少したことに加え、前年度において米ドル建無担保普通社債の発行があったためです。
これらに為替変動の影響等を加味した結果、当年度末で現金及び現金同等物の残高は1兆5,932億円となり、前年度末に比べ5,767億円増加しました。
③設備投資額と減価償却費
当社グループでは、将来の成長に向けて、重点事業を中心に投資を着実に行っていくという考え方に基づき設備投資を行った結果、当年度の設備投資額(有形固定資産のみ)については、前年度の2,689億円から379億円減少し、2,310億円となりました。主要な設備投資は、「オートモーティブ」における車載用のリチウムイオン電池(米国)等の生産設備、「インダストリアルソリューションズ」における電子部品・制御機器等の生産設備、「アプライアンス」における家庭用電化機器等の生産設備です。
減価償却費(有形固定資産のみ)は、前年度の2,050億円から256億円減少し、1,794億円となりました。
④資産、負債及び資本
当年度末の総資産は6兆8,471億円となり、前年度末に比べ6,286億円の増加となりました。これは、車載用角形電池事業の合弁会社化及び半導体事業の譲渡による資産の減少はありましたが、現金及び現金同等物の増加やBlue Yonderへの株式投資などによるものです。
負債は、前年度末に比べ159億円増加し、4兆786億円となりました。これは、主に未払法人所得税等の増加によるものです。
親会社の所有者に帰属する持分は2兆5,940億円となり、前年度末に比べ5,957億円増加しました。これは、主に親会社の所有者に帰属する当期純利益及びその他の包括利益の計上などによるものです。また、親会社の所有者に帰属する持分に非支配持分を加味した資本合計は2兆7,685億円となりました。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は前年度末の32.1%から増加し、37.9%となりました。
当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成されています。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っています。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損に反映しています。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。
重要な会計方針及び見積りの内容は、連結財務諸表の注記「3.重要な会計方針」に記載しています。なお、会計上の見積りには、新型コロナウイルス感染症の影響に関する一定の仮定が含まれていますが、会計上の見積りの参考となる前例や、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がなく、当社は利用可能な情報をもとに見積りを行っているため、事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。
(2)生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また製品の性質上、原則として見込生産を主体とする生産方式を採っています。
なお、当社グループは製品の在庫を一定の必要水準に保つように生産活動を行っていることから、生産実績は販売実績に概ね類似しています。
(3)当連結会計年度の経営成績の分析
2020年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響の長期化を背景に、世界的に消費や投資が落ち込みました。各国の経済対策や株価の回復はあるものの、政治・金融情勢、貿易停滞のリスクなどの不確実性が高く、日本もこうした影響を少なからず受け、景気の先行きが見通しにくい状況が続きました。
このような経営環境のもと、当社は、事業の状況に応じて固定費削減等の対応策を実施しながら、新型コロナウイルス感染症がもたらす社会の変化を捉え、その課題解決に向けた取り組みを推進しました。また、2019年度からスタートした中期戦略をベースに、「基幹事業」「共創事業」「再挑戦事業」のポートフォリオマネジメントと経営体質強化を継続してきました。
具体的には、成長に向けた投資として、現場プロセス事業において、2020年7月に米国のサプライチェーン・ソフトウェアの専門企業であるBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)に対し、議決権比率20%の戦略的株式投資を実施しました(注)1。同社がグローバルに提供する先進的なソリューションとビジネスモデルを習得することで、当社のソリューション能力強化を図り、ビジネスモデル変革を加速させてまいります。
他社との連携・共創による競争力強化に向けては、車載用角形電池事業において、トヨタ自動車㈱との合弁会社であるプライム プラネット エナジー&ソリューションズ㈱が2020年4月1日より事業を開始しました。優れた品質・性能とコスト等を実現する高い競争力のある電池の開発、また安定的な電池の供給に取り組んでいます。
加えて、収益性の改善に向けては、半導体事業について、台湾の半導体メーカーNuvoton Technology Corporationへの事業譲渡を2020年9月に完了しました。また、ソーラー事業について、開発・生産体制の最適化を目的として、2020年6月にバッファロー工場(米ニューヨーク州)における太陽電池のセル、モジュールの生産を停止し、9月に撤退を完了しました。さらに2021年2月に、住宅用、公共・産業用太陽電池の自社生産から2021年度中に撤退することを公表しました(注)2。
なお、2020年11月には、より中長期的な視点での当社事業の競争力強化のため、2022年4月(予定)に持株会社制へ移行することを決定しました。各事業会社は、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や事業特性に応じた柔軟な制度設計などを通じて、競争力の大幅な強化に取り組む一方、持株会社は、各事業会社の競争力強化を積極的に支援するほか、グループ全社視点での成長戦略を推進し、グループとしての企業価値向上に努めてまいります。
(注)1. 2021年4月23日の取締役会において、Blue Yonderの80%分の株式追加取得を行い、同社を完全子会社化することを決定しました。
2. 今後も、国内では、太陽電池の生産委託などによるパナソニックブランドでの販売を継続し、海外では、北米などで実施している太陽電池の外部調達による販売を継続します。
①売上高
当年度の連結売上高は、6兆6,988億円(前年度比11%減)となりました。国内売上は、空気清浄機などの増収はあったものの、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、住宅関連事業の非連結化影響もあり、減収となりました。海外売上は、プロセスオートメーションの実装機や、情報通信インフラ向けの蓄電システム、産業モーターなどが増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、減収となりました。
②営業利益
営業利益は、2,586億円(前年度比12%減)となりました。経営体質強化に向けた固定費削減や、空調空質・車載電池・情報通信インフラ向けなどの中長期的な社会変化を捉えた事業の増益により、調整後営業利益(注)は増益となりましたが、前年の事業譲渡益の反動もあり、営業利益は減益となりました。
(注) 調整後営業利益:売上高から、売上原価と、販売費及び一般管理費を控除して算出した当社の経営管理指標
③税引前利益
金融収益は208億円(前年度314億円)、金融費用は186億円(前年度341億円)となりました。この結果、税引前利益は、2,608億円(前年度2,911億円)となりました。
④親会社の所有者に帰属する当期純利益
法人所得税費用は、769億円(前年度510億円)となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、1,651億円(前年度2,257億円)となりました。また、基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する当期純利益は、70円75銭(前年度96円76銭)となりました。
⑤セグメントの経営成績
当社グループは、経営管理上、7つのカンパニーがそれぞれの担当領域において事業部の自主責任経営を支えグローバルに事業推進を行っており、その成果を「アプライアンス」「ライフソリューションズ」「コネクティッドソリューションズ」「オートモーティブ」「インダストリアルソリューションズ」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しています。
a アプライアンス
当セグメントの売上高は、前年度比で4%減少し、2兆4,944億円となりました。
当年度は、国内や中国でルームエアコン・冷蔵庫・洗濯機などが堅調に推移し、その他の地域も回復傾向にありましたが、上期における市況悪化の影響に加え、テレビやデジタルカメラの販売絞込みなども影響し、全体では減収となりました。
主な事業部の状況では、空調冷熱ソリューションズ事業部では、中国・北東アジアでのルームエアコンや欧州のヒートポンプ式温水暖房機は堅調に推移したものの、アジアやインドのルームエアコン等が苦戦し、減収となりました。
キッチン空間事業部では、国内や中国・北東アジアで冷蔵庫や調理家電が堅調に推移し、増収となりました。
ランドリー・クリーナー事業部では、国内や中国・北東アジアでドラム式洗濯機の販売が堅調に推移し、増収となりました。
スマートライフネットワーク事業部では、欧州を中心としたテレビやデジタルカメラの販売絞込みにより、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、1,043億円となりました。家電事業を中心に堅調に推移した国内に加え、海外での収益改善や固定費・拡売費削減などの効果により、前年度から486億円の増益となりました。
b ライフソリューションズ
当セグメントの売上高は、前年度比で21%減少し、1兆5,073億円となりました。
当年度は、IAQ(室内空気質)事業は好調だったものの、住宅関連事業の非連結化影響に加え、国内の非住宅市場における配線器具や照明機器が減収となり、海外でもインド・マレーシアなどのロックダウンの影響により、減収となりました。
主な事業部の状況では、ライティング事業部では、需要低迷に加え、欧州事業の売却影響もあり、減収となりました。
エナジーシステム事業部では、電材事業において、海外はインドを中心に販売が回復したものの、国内は非住宅やリニューアル件名の遅延などの影響で配線器具などが減販、太陽電池事業における国内外の減販や北米拠点の撤退などもあり、減収となりました。
パナソニック エコシステムズ㈱では、IAQ事業で、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」が大きく販売を伸ばし、また、国内・中国での空気清浄機も好調だったことから、増収となりました。
ハウジングシステム事業部では、新型コロナウイルス感染症拡大による市況の悪化や採用機会の損失などにより、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、692億円となりました。IAQ事業の増販益や固定費削減の効果はありましたが、全体的な需要低迷による減販損や構造改革費用の計上に加え、前年度に住宅関連事業の譲渡益を計上した反動もあり、前年度から1,109億円の減益となりました。
c コネクティッドソリューションズ
当セグメントの売上高は、前年度比で21%減少し、8,182億円となりました。
当年度は、プロセスオートメーション事業の販売が好調だったものの、その他の事業における新型コロナウイルス感染症拡大による市況低迷の影響をカバーできず、全体では減収となりました。
主な事業部の状況では、パナソニック アビオニクス㈱では、航空機の大幅減産や運航便数の激減により、機内エンターテインメント・通信システムやメンテナンス・リペアサービスの販売が大幅に減少し、減収となりました。
プロセスオートメーション事業部では、溶接機は需要低迷により減収となりましたが、実装機は5G機器やICT(情報通信技術)端末向けなどの販売が好調に推移したことにより、全体では増収となりました。
メディアエンターテインメント事業部では、リモートカメラが需要拡大により好調でしたが、世界的なイベント中止の影響を受け、プロジェクター等の販売が減少したことにより、全体では減収となりました。
モバイルソリューションズ事業部では、前年度のWindows7(注)サポート終了特需の反動減や企業の投資抑制などの影響により、減収となりました。
パナソニック システムソリューションズ ジャパン㈱では、東京2020の延期や、大手法人の投資延期等が影響し、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、200億円の損失となりました。アビオニクス事業などの減販影響に加え、前年度にセキュリティシステム事業の譲渡益を計上した反動や減損損失の計上などもあり、前年度から1,120億円の減益となりました。
(注)Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標です。
d オートモーティブ
当セグメントの売上高は、前年度比で10%減少し、1兆3,394億円となりました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響による上期の自動車生産台数の減少が大きく、急速に需要は回復したものの、車載機器事業、車載電池事業とも、年間では減収となりました。
車載機器事業では、注力領域であるコックピットシステムの売上は伸長し、商品ポートフォリオの入れ替えは着実に進んでいます。
車載電池事業では、円筒形リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上した高容量新製品を導入し、さらなる技術革新を進め、顧客要望に応えています。本技術導入により、北米電池工場では目標としていた35GWh相当の生産能力に到達しました。
当セグメントの営業利益は、109億円となりました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、減販損がありました。
一方、車載機器事業では、経営体質強化施策を加速し、固定費を大きく削減したことに加えて、前年度に計上したのれん減損の反動もあり、前年度から大幅な増益となりました。
車載電池事業でも、円筒形リチウムイオン電池の材料合理化や高容量新製品の導入効果などに加え、角形リチウムイオン電池の合弁会社化に伴う利益計上などにより、増益となりました。なお、北米電池工場設立後、円筒形車載電池事業として、初めて年間で黒字を計上しました。
セグメント全体では、前年度から575億円の増益となりました。
e インダストリアルソリューションズ
当セグメントの売上高は、前年度比で2%減少し、1兆2,555億円となりました。
当年度は、上期の新型コロナウイルス感染症拡大による影響を下期の市況回復で補いつつも、半導体事業譲渡等の影響により、減収となりました。
主な事業の状況では、システム事業は、半導体製造装置市場の好況や中国での生産設備の需要回復を受けて産業用モーターが拡大しました。また、情報化のさらなる進展に伴う通信量の増大を受けてデータセンター向け蓄電システムが堅調に推移するとともに、下期にはリレーやスイッチ等の車載部品も回復したことにより、増収となりました。
デバイス事業では、環境対応車向けコンデンサーが早期に回復し、データセンター向けコンデンサーの販売も好調に推移しました。一方、米中貿易摩擦の影響を受けて基地局向け基板材料が苦戦したほか、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による産業活動の停滞を受けマイクロ電池が低調に推移するなど、全体では減収となりました。
その他、半導体や液晶パネル事業は、事業譲渡や事業縮小などの影響により、減収となりました。
当セグメントの営業利益は、662億円となりました。産業用モーターやデータセンター向けを中心とするコンデンサー・蓄電システムなどの増販益、固定費削減や材料合理化への取り組みに加え、前年度に計上した構造改革費用の反動などもあり、前年度から616億円の増益となりました。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載しています。
(5)財政状態及び流動性
①流動性と資金の源泉
当社グループでは、事業活動に必要な資金は自ら生み出すことを基本方針としています。また、生み出した資金については、グループ内ファイナンスにより効率的な資金活用を行っています。その上で、運転資金や事業投資などのため所要の資金が生じる場合には、財務体質や金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からの資金調達を行っています。
(資金)
当年度末の現金及び現金同等物の残高は1兆5,932億円となり、前年度末に比べ5,767億円増加しました。
当年度は、運転資金などの調達を主にコマーシャルペーパー(CP)の発行により行い、金融経済環境の悪化リスク等への備えとして1兆円超の現金・現金同等物を確保しました。また、2020年12月に無担保普通社債2,000億円を発行し、CPの償還資金に充当することにより、資金の中・長期化を図っています。
これらの結果、当年度末の無担保普通社債の残高は8,800億円、米ドル建無担保普通社債の残高は25億米ドルとなりました。
(有利子負債)
有利子負債は、無担保普通社債の発行を行ったものの、CPの償還等もあり、前年度末の1兆4,713億円から当年度末には1兆4,474億円へ減少しました。なお、当社は不安定な金融経済環境における資金調達リスクに備え、2018年6月に複数の取引銀行と期間を3年間とするコミットメントライン契約(注)を締結しています。当該契約に基づく無担保の借入設定上限は総額7,000億円ですが、借入実績はありません。
(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約
(格付け)
当社は、㈱格付投資情報センター(R&I)、S&P グローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)、及びムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)から格付けを取得しています。当年度末の当社の格付けは、次のとおりです。
R&I:A (長期、アウトルック:安定的)、a-1 (短期)
S&P:A-(長期、アウトルック:安定的)、A-2 (短期)
ムーディーズ:Baa1 (長期、アウトルック:ネガティブ)
②キャッシュ・フロー
当社グループは、事業収益力強化によりフリーキャッシュ・フローを向上させ、中長期的に事業を発展させていくことが重要と考えています。同時に、継続的な運転資本の圧縮、保有資産の見直しなどによるキャッシュ・フローの創出にも徹底して取り組んでいます。
当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは5,040億円、投資活動により増加したキャッシュ・フローは1,766億円となり、両者を合計したフリーキャッシュ・フローは、6,806億円(前年差4,564億円の良化)となりました。
なお、キャッシュ・フローの分析の詳細は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは5,040億円(前年度は4,303億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、前年の一時的な支払い等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の投資活動により増加したキャッシュ・フローは1,766億円(前年度は2,061億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、Blue Yonderへの株式投資に伴う支出はあったものの、設備投資の抑制に加え、車載用角形電池事業の合弁会社化に伴う収入や資産譲渡等があったためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当年度の財務活動により減少したキャッシュ・フローは1,777億円(前年度は482億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、当年度においては、国内社債の発行がありましたが、短期社債発行残高が減少したことに加え、前年度において米ドル建無担保普通社債の発行があったためです。
これらに為替変動の影響等を加味した結果、当年度末で現金及び現金同等物の残高は1兆5,932億円となり、前年度末に比べ5,767億円増加しました。
③設備投資額と減価償却費
当社グループでは、将来の成長に向けて、重点事業を中心に投資を着実に行っていくという考え方に基づき設備投資を行った結果、当年度の設備投資額(有形固定資産のみ)については、前年度の2,689億円から379億円減少し、2,310億円となりました。主要な設備投資は、「オートモーティブ」における車載用のリチウムイオン電池(米国)等の生産設備、「インダストリアルソリューションズ」における電子部品・制御機器等の生産設備、「アプライアンス」における家庭用電化機器等の生産設備です。
減価償却費(有形固定資産のみ)は、前年度の2,050億円から256億円減少し、1,794億円となりました。
④資産、負債及び資本
当年度末の総資産は6兆8,471億円となり、前年度末に比べ6,286億円の増加となりました。これは、車載用角形電池事業の合弁会社化及び半導体事業の譲渡による資産の減少はありましたが、現金及び現金同等物の増加やBlue Yonderへの株式投資などによるものです。
負債は、前年度末に比べ159億円増加し、4兆786億円となりました。これは、主に未払法人所得税等の増加によるものです。
親会社の所有者に帰属する持分は2兆5,940億円となり、前年度末に比べ5,957億円増加しました。これは、主に親会社の所有者に帰属する当期純利益及びその他の包括利益の計上などによるものです。また、親会社の所有者に帰属する持分に非支配持分を加味した資本合計は2兆7,685億円となりました。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は前年度末の32.1%から増加し、37.9%となりました。