四半期報告書-第52期第3四半期(平成30年10月1日-平成30年12月31日)

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2019/02/13 9:47
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文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、企業の設備投資や個人消費が底堅く推移し、緩やかな回復が継続しております。海外経済は、全体として緩やかに回復を続けていますが、米国の通商政策による貿易摩擦の長期化、欧州における各国財政政策の動向、中国における景気減速懸念など、先行きに不透明感が生じております。
医療面におきましては、国内では、世界一の長寿社会を迎え、医療技術の発展による健康寿命延長への貢献が引き続き期待されており、同時にヘルスケア関連市場の継続的拡大が見込まれております。米国では、無保険者の解消のために導入された医療保険制度改革法の見直しが長期化しておりますが、影響は限定的であります。中国では、医療費抑制の政策を進めるものの、国家戦略を背景とした医療関連需要は底堅く推移しております。また、遺伝子解析技術が医療面でも応用されることにより、新たな領域が広がりつつあります。
このような状況の下、当社は、研究開発の中核拠点テクノパークに隣接する西神工業団地(神戸市西区)に、主に血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野の事業強化に向け、タンパク質や生物由来の原料を使用した診断薬(以下、バイオ診断薬)の研究開発、原料調達、生産から物流までを一貫して行うバイオ診断薬センターの建設を進めております。なお、本センターは、2019年4月より稼働予定です。
また、血液凝固検査の更なる効率化と質の向上を目指して、「全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000」を2018年12月に日本にて発売しました。従来商品と比較して、測定時間の短縮と小型化を実現し、当社の新ネットワークソリューション「Caresphere™」とも連携可能であり、装置の状態、検査室全体の稼働状況の把握・分析が可能となります。今後、海外にも市場導入を進めていく予定です。
近年、がん診療において、腫瘍中のゲノムプロファイル※を取得することで、患者さんのがん固有の遺伝子異常を解析し、診断や治療、抗がん剤の選定などに有用な情報を提供する“がんクリニカルシークエンシング検査”が注目されております。当社は、“がんクリニカルシークエンシング検査”の早期導入に向け、国立研究開発法人国立がん研究センターと共同で開発を進めてきた「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」について、がんゲノムプロファイリング検査用のシステムとして2018年12月に日本で初めて製造販売承認を取得いたしました。現在、本システムを用いた検査方法が国立がん研究センター中央病院を含む50施設のがんゲノム医療中核拠点病院及び連携病院において実施されております。今後は患者さんの受診機会を拡大するため、本システムの保険適用申請を予定しており、新たながん診断法を患者さんにお届けすることで、医療の発展と進化に貢献します。
※ 腫瘍中のゲノムプロファイル:
がんの診療上重要な、腫瘍中の複数の遺伝子の変異、増幅や融合を同時に解析して得られる情報。
<参考>地域別売上高
前第3四半期
連結累計期間
当第3四半期
連結累計期間
前年同期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内32,25115.931,82415.398.7
米州46,61223.048,77123.4104.6
EMEA53,36026.455,23226.5103.5
中国52,32125.854,79526.3104.7
アジア・パシフィック18,0058.917,7488.598.6
海外計170,30084.1176,54884.7103.7
合計202,551100.0208,372100.0102.9

国内販売につきましては、主に血球計数検査分野、免疫検査分野及び尿検査分野を中心に試薬の売上が伸長しましたが、シスメックス・ビオメリュー社の合弁契約の解消に伴い売上が減少いたしました。その結果、国内売上高は31,824百万円(前年同期比1.3%減)となりました。
海外販売につきましては、主に血球計数検査分野において機器の売上が減少しましたが、血球計数検査分野、血液凝固検査分野及び免疫検査分野において試薬の売上が伸長しました。その結果、海外売上高は176,548百万円(前年同期比3.7%増)、構成比84.7%(前年同期比0.6ポイント増)となりました。
この結果、当第3四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は208,372百万円(前年同期比2.9%増)、営業利益は42,570百万円(前年同期比4.5%減)、税引前四半期利益は39,931百万円(前年同期比11.5%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は28,907百万円(前年同期比5.4%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
① 日本
国内において、シスメックス・ビオメリュー社の合弁契約の解消に伴い売上が減少しましたが、主に血球計数検査分野、免疫検査分野及び尿検査分野を中心に試薬の売上が伸長したこと等により、売上高は33,663百万円(前年同期比0.1%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、及び研究開発費が増加したこと等により、セグメント利益(営業利益)は28,060百万円(前年同期比5.9%減)となりました。
② 米州
北米では、主に血球計数検査分野において試薬及び保守サービスの売上が増加したこと、また血液凝固検査分野において機器の売上が増加したこと等により、増収となりました。中南米では、主に血球計数検査分野において機器の売上が減少したこと等により、減収となりました。その結果、米州全体での売上高は45,631百万円(前年同期比3.2%増)となりました。
利益面につきましては、グループ間の商標ロイヤリティー支払の増加等に伴う売上原価の増加により、セグメント利益(営業利益)は2,515百万円(前年同期比33.9%減)となりました。
③ EMEA
主に血球計数検査分野及びライフサイエンス分野において試薬の売上が増加したこと等により、売上高は56,772百万円(前年同期比4.1%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収や売上原価率の改善による売上総利益の増加により、セグメント利益(営業利益)は4,707百万円(前年同期比8.2%増)となりました。
④ 中国
主に血球計数検査分野及び血液凝固検査分野において機器の売上が減少しましたが、血液凝固検査分野及び免疫検査分野において試薬の売上が伸長したこと等により、売上高は54,726百万円(前年同期比4.7%増)となりました。
利益面につきましては、増収及びその他の営業収益が増加したこと等により、セグメント利益(営業利益)は6,984百万円(前年同期比15.2%増)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
台湾及び韓国において血球計数検査分野を中心に、売上が伸長しましたが、東南アジアでは、前年同期にインド及びバングラデシュで大型の政府入札案件の獲得があったことによる反動のため減収となったこと等により、売上高は17,578百万円(前年同期比1.8%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、売上原価率の改善による売上総利益の増加等により、セグメント利益(営業利益)は2,298百万円(前年同期比4.1%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて1,464百万円増加し、323,444百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が15,554百万円減少しましたが、その他の短期金融資産が8,206百万円、有形固定資産が3,746百万円、棚卸資産が3,387百万円、その他の流動資産が2,066百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて9,522百万円減少し、71,013百万円となりました。この主な要因は、未払法人所得税が3,547百万円、営業債務及びその他の債務が3,013百万円、未払賞与が2,440百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて10,987百万円増加し、252,431百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が14,062百万円増加したこと、その他の資本の構成要素が3,535百万円減少したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の74.8%から3.0ポイント増加して77.8%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より15,554百万円減少し、45,889百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、29,092百万円(前年同期比5,133百万円減)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が39,931百万円(前年同期比5,199百万円減)、減価償却費及び償却費が11,645百万円(前年同期比752百万円増)、営業債権の減少額が2,780百万円(前年同期比2,612百万円増)、棚卸資産の増加額が3,823百万円(前年同期比2,167百万円減)、営業債務の減少額が1,477百万円(前年同期は2,818百万円の増加)、法人所得税の支払額が15,768百万円(前年同期比5,795百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、29,420百万円(前年同期比2,543百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が12,286百万円(前年同期比3,698百万円増)、無形資産の取得による支出が6,656百万円(前年同期比297百万円減)、資本性金融商品の取得による支出が2,015百万円(前年同期比199百万円増)、定期預金の預入による支出が7,648百万円(前年同期比7,616百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、14,176百万円(前年同期比2,155百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が14,600百万円(前年同期比2,106百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は13,330百万円であります。
また、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第3四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は次のとおりであります。
① 2018年4月 当社と国立研究開発法人国立がん研究センター(以下、国立がん研究センター)が共同で開発を進めてきた“がん関連遺伝子パネル※1検査システム”を用いて行う“個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査”が、先進医療※2として承認されたとともに、本検査を国立がん研究センターにて開始いたしました。
※1 がん関連遺伝子パネル:
がんの診療上重要な複数の遺伝子の変異、増幅や融合を同時に解析できる診断薬のこと。NCCオンコパネルは、国立がん研究センターが中心となり開発された遺伝子パネルであり、日本人に特徴的な遺伝子変異を適切に診断できるように設計されている。
※2 先進医療:
未だ保険診療の対象に至らない医療技術のうち、厚生労働大臣の承認を受けたものを指す。2004年12月の厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣(規制改革、産業再生機構)、行政改革担当、構造改革特区・地域再生担当との「基本的合意」に基づき、国民の安全性を確保し、患者さんの負担増大を防止するといった観点も踏まえつつ、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、保険診療との併用を認めることとしたもの。
② 2018年4月 当社とイミュニティリサーチ株式会社は、イミュニティリサーチ株式会社が独占的通常実施権を有する「免疫チェックポイント阻害剤の効果を事前に血液検査で予測する方法に関する特許」について、当社への再実施権を許諾する契約を締結いたしました。当社は、本特許に基づいた診断技術を開発し、免疫チェックポイント阻害剤における効果予測の実現を目指します。
③ 2018年5月 当社が独自に開発したOSNA™法※3を用いて、がんのリンパ節転移を迅速に検出するがんリンパ節転移検査システムの新製品「遺伝子増幅検出装置 RD-200」及び遺伝子増幅検出試薬「リノアンプ™CK19」を国内で発売を開始することを発表いたしました。
※3 OSNA™法:
当社が開発した直接遺伝子増幅法(One-Step Nucleic Acid Amplification)。リンパ節へのがん転移の有無を判定できる。
④ 2018年6月 当社、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構※4及び国立大学法人京都大学は、神戸医療産業都市推進機構が進める「創薬イノベーションプログラム※5—免疫関連疾患の診断技術の開発—」に関する共同研究を開始いたしました。3者は、共同研究を通じて、自己免疫疾患※6や慢性炎症性疾患の早期発見などを可能とする診断システムの創出を目指します。
※4 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構:
神戸医療産業都市の中核的支援機関として、産官学医の連携・融合を促進する総合調整機能を担うとともに、先端医療の実現に資する研究開発及び臨床応用の支援、次世代の医療システムの構築を通じて、革新的医療技術の創出と医療関連産業の集積形成に寄与することが基本的なミッション。2018年4月より「公益財団法人先端医療振興財団」から、「公益財団法人神戸医療産業都市推進機構」と名称を変更。
※5 創薬イノベーションプログラム:
神戸医療産業都市に集積する研究機関や基盤施設などの研究開発機能を結集・連携させたプログラムを国内外の製薬会社などへ提案し、神戸医療産業都市推進機構との共同研究体制により、創薬の開発に必要な研究者、設備、臨床開発などの研究環境を一元的に提供。
※6 自己免疫疾患:
本来、外部から体内へ侵入した異物を認識し排除する役割を持つ免疫細胞が、自身の体内に存在する物質を攻撃することで生じる疾患の総称。
⑤ 2018年8月 当社は免疫検査分野の全自動免疫測定装置 HISCL™-5000/2000i/800で使用可能な細菌性敗血症の主要検査項目プレセプシンの測定試薬「HISCL™ プレセプシン試薬」を発売いたしました。従来の敗血症バイオマーカーと比較し、より早期かつ高精度な診断を補助するプレセプシンの測定試薬を試薬ラインアップに加えることにより、細菌性敗血症の早期診断への貢献を目指します。
⑥ 2018年8月 当社と凸版印刷株式会社、株式会社理研ジェネシスは、がん組織内の遺伝子変異を検出する検査を全自動化する「研究用遺伝子測定装置LW-100」及び関連試薬群を共同で開発いたしました。3者は、本システムの研究用としての提供を開始し、臨床用途での早期実用化に向けて、本システムの臨床的有用性の検証を積極的に進め、がん組織標本を用いた遺伝子検査の標準化を目指します。
⑦ 2018年12月 当社は血液凝固検査分野の「全自動血液凝固測定装置 CS-5100/CS-2500/CS-2400、CS-2100i/CS-2000i/CS-1600」で使用可能な新たな凝固第Ⅸ因子測定キット「レボヘムFIX 合成基質」の発売を開始することを発表いたしました。血友病B※7の診断・治療補助として用いられる本製品は、合成基質法を測定原理とした血漿中の凝固第Ⅸ因子測定キットとして国内で初の市場導入となります。
※7 血友病:
血友病には血友病Aと血友病Bの2種類が存在し、11種類の凝固因子のうち、8番目の因子(血液凝固第Ⅷ因子)の欠乏又は機能低下による疾患が血友病A、9番目の因子(血液凝固第Ⅸ因子)の欠乏又は機能低下による疾患が血友病Bである。第Ⅷ因子及び第Ⅸ因子の活性が40%未満の場合に血友病と診断され、活性が1%未満は重症、1%以上から5%未満は中等症、5%以上は軽症と分類される。
⑧ 2018年12月 当社は生産性・信頼性・操作性を向上させた血液凝固検査分野の新製品「全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000」の発売を開始することを発表いたしました。
⑨ 2018年12月 当社は国立研究開発法人国立がん研究センターと共同で開発を進めてきた「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」について、がんゲノムプロファイリング検査用のシステムとして2018年12月に日本で初めて製造販売承認を取得いたしました。
⑩ 2018年12月 当社はイメージングFCM技術※8を活用し、血液中の細胞を用いて染色体異常を調べるFISH検査※9を自動化する「イメージングフローサイトメーター MI-1000」及び「ソフトウェア MI FISH Master」を開発し、研究用として市場導入を開始することを発表いたしました。研究市場において自動化されたFISH検査の有用性検証を推進することにより、臨床用として活用可能なフローFISH検査を早期に確立し、FISH検査の効率化・標準化を目指します。
※8 イメージングFCM:
フローサイトメトリー(FCM)は、微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して個々の粒子を光学的に分析する手法のことで、主に細胞を個々に観察する際に用いられる。
イメージングFCMは、大量の細胞を処理できるFCMと、細胞形態・蛍光画像の高速撮像及びそれら画像を自動分析する能力を兼ね備えたメルク社独自の技術。
※9 FISH検査:
特定の遺伝子にだけ結合する蛍光物質を使って染色体の中にある目的の遺伝子を検出する方法。通常のFISH検査は、スライドを顕微鏡で観察する必要があるが、フローFISH検査はイメージングフローサイトメーターで撮像し、自動解析を行うことが可能。