四半期報告書-第56期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

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2022/08/10 14:11
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文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
当社グループでは、従来、クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーションまたはカスタマイゼーションのコストについて、その他の非流動資産に計上しておりましたが、前連結会計年度より2021年4月に公表されたIFRS解釈指針委員会のアジェンダ決定に至る議論を踏まえて、サービスを受領したときにそのコストを費用として認識する方法に変更いたしました。当該会計方針の変更は遡及適用され、遡及処理の内容を反映させた前第1四半期連結累計期間の数値との比較、分析を行っております。
(1) 経営成績の分析
当第1四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和され、経済活動の再開により、企業収益、設備投資、個人消費において持ち直しの動きも一部見られましたが、一段の資源高や円安進行による輸入コスト増加等、依然として先行きは不透明な状況が続いております。海外においても、国や地域によるばらつきはあるものの、全体的には回復基調にありましたが、地政学リスクの増大を背景とするエネルギー・原材料価格の高騰や米国金融政策の引き締め方向への転換等により、経済の減速が懸念されております。
医療面におきましては、先進国の高齢化に伴う医療の効率化、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への応用が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。また、グローバルでの新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点とした医療体制の在り方や医療環境自体が大きく変化する可能性もあり、医療アクセスの向上、セルフメディケーションへの注目等、更なる成長機会が見込まれております。
このような状況の下、当社はヘマトロジー分野における製品ポートフォリオの持続的な進化を目指し、次世代フラッグシップモデル「多項目自動血球分析装置XR™ シリーズ」と接続可能な新たな検体搬送システム商品群を発売いたしました。ヘマトロジー分野の装置として、世界で初めて搭載した精度管理物質の自動測定機能※1に加え、検体並べ替え、検体保管、洗浄用マテリアルの自動搬送等の機能を備えた各モジュールにより、検査業務の更なる自動化と効率化が可能となります。地域の特性や施設のニーズに応じた検査室運営の最適化に貢献すべく、ヘマトロジー分野における製品ポートフォリオの進化に引き続き取り組んでまいります。
加えて、尿路感染症※2を対象とした迅速な薬剤感受性検査※3の臨床実装を加速させるため、持分法適用関連会社であるアストレゴ ダイアグノスティックス エービーの株式を追加取得し、当社の完全子会社といたしました。今後、薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)※4対策への取り組み等、医療課題の解決に貢献してまいります。
また、個別化医療の実現を目指した取り組みとして、遺伝性網膜ジストロフィー※5における遺伝子パネル検査システムについて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ製造販売承認申請を実施いたしました。これは、遺伝性網膜ジストロフィーの患者さんの血液から、関連遺伝子を対象とした複数の遺伝子変異情報を次世代シークエンサー※6を用いて検出・解析し、原因遺伝子に応じた治療計画やロービジョンケア※7計画の策定及び科学的根拠に基づく遺伝カウンセリングを補助するもので、発症リスクや症状の進行予測が明確になった患者さんのQOL向上に大きく貢献することが期待されます。
更に、国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori™ サージカルロボットシステム」のグローバル総代理店である当社は、日本の医療機関を対象に製品導入を推進しております。今後は、国内市場導入を基盤として、海外市場導入にむけた薬事・販売体制等の準備を推進してまいります。
※1 自社調べ
※2 尿路感染症:
腎臓から尿の出口までを「尿路」と言い、尿路に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。
※3 薬剤感受性検査:
検体から検出された病原菌に対する各種抗菌薬の効能を調べる検査。
※4 薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance):
生物が自分に対してなんらかの作用をもった薬剤に対して抵抗性を持つことで、これらの薬剤が効かない、もしくは効きにくくなる現象。この薬剤耐性を獲得した細菌のことを薬剤耐性菌という。
※5 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。頻度は4,000~8,000人に1人とされ、代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)である。
※6 次世代シークエンサー(NGS):
DNAの塩基配列を、同時並行で大量に読み取る解析装置。
※7 ロービジョンケア:
視覚に障害があるため、生活上何らかの支障がある方に対し、よりよく見るための工夫や機器の紹介、進路や就労を含むさまざまな相談・情報提供、福祉制度の利用等、多岐にわたる支援を行う。
<参考>地域別売上高
前第1四半期
連結累計期間
当第1四半期
連結累計期間
前年同期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内12,22615.412,96315.1106.0
米州18,16022.923,09226.8127.2
EMEA25,24431.827,25431.7108.0
中国17,36321.914,54316.983.8
アジア・パシフィック6,3688.08,1749.5128.4
海外計67,13684.673,06584.9108.8
合計79,363100.086,029100.0108.4

国内販売につきましては、主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、国内売上高は12,963百万円(前年同期比6.0%増)となりました。
海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野、尿検査分野及び血液凝固検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は73,065百万円(前年同期比8.8%増)、構成比84.9%(前年同期比0.3ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は、全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、25,157百万円(前年同期比15.6%増)となりました。加えて、研究開発費につきましては、積極的な開発投資に伴い増加し6,916百万円(前年同期比25.9%増)となりました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は86,029百万円(前年同期比8.4%増)、営業利益は11,053百万円(前年同期比25.3%減)、税引前四半期利益は12,847百万円(前年同期比10.1%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は8,030百万円(前年同期比18.2%減)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野、免疫検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、売上高は13,524百万円(前年同期比0.6%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化、販売費及び一般管理費及び研究開発費の増加により、セグメント利益(営業利益)は8,151百万円(前年同期比27.5%減)となりました。
② 米州
北米においては、検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。その結果、売上高は22,111百万円(前年同期比31.8%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化及び販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は211百万円(前年同期比64.5%減)となりました。
③ EMEA
検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野及び凝固検査分野において機器、試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は27,748百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
利益面につきましては、増収により売上総利益は増加しましたが、販売費及び一般管理費が増加し、セグメント利益(営業利益)は3,460百万円(前年同期比4.9%減)となりました。
④ 中国
中国各地において大規模なロックダウンが実施され検査数が減少したこと等により、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において機器及び試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は14,529百万円(前年同期比16.2%減)となりました。
利益面につきましては、減収による売上総利益の減少及び販売費及び一般管理費の増加によりセグメント利益(営業利益)は1,165百万円(前年同期比40.0%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において機器、試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は8,115百万円(前年同期比28.1%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は998百万円(前年同期比43.9%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて3,948百万円増加し、487,656百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が18,911百万円減少したものの、棚卸資産が11,649百万円、のれんが6,772百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて9,786百万円減少し、124,867百万円となりました。この主な要因は、その他の長期金融負債が2,884百万円増加したものの、未払賞与が5,869百万円、未払法人所得税が5,715百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて13,735百万円増加し、362,788百万円となりました。この主な要因は、その他の資本の構成要素が13,842百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の72.0%から2.2ポイント増加して74.2%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より18,911百万円減少し、54,840百万円となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、3,833百万円(前年同期比10,839百万円減)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が12,847百万円(前年同期比1,448百万円減)、減価償却費及び償却費が7,440百万円(前年同期比723百万円増)、営業債権の減少額が4,672百万円(前年同期比4,607百万円減)、棚卸資産の増加額が8,095百万円(前年同期比737百万円増)、法人所得税の支払額が10,728百万円(前年同期比5,202百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、16,687百万円(前年同期比6,952百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が3,274百万円(前年同期比620百万円増)、無形資産の取得による支出が5,616百万円(前年同期比646百万円増)、資本性金融商品の取得による支出が5,046百万円(前年同期比3,885百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、10,040百万円(前年同期比907百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が8,159百万円(前年同期比635百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は6,916百万円であります。
また、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第1四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
① 2022年5月 当社は、尿路感染症※1を対象とした迅速な薬剤感受性検査※2の臨床実装を加速させると共に、薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)※3対策への取り組み等、医療課題の解決に貢献するべく、持分法適用関連会社であるアストレゴ ダイアグノスティックス エービーの株式を追加取得し、当社の完全子会社といたしました。
※1 尿路感染症:
腎臓から尿の出口までを「尿路」と言い、尿路に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。
※2 薬剤感受性検査:
検体から検出された病原菌に対する各種抗菌薬の効能を調べる検査。
※3 薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance):
生物が自分に対してなんらかの作用をもった薬剤に対して抵抗性を持つことで、これらの薬剤が効かない、もしくは効きにくくなる現象。この薬剤耐性を獲得した細菌のことを薬剤耐性菌という。
② 2022年5月 当社は、全自動免疫測定装置HISCL™-5000/HISCL-800を用いて血液中のアミロイドβを測定し、脳内アミロイドβの蓄積状態の把握を補助する検査試薬について、欧州の体外診断用医療機器指令(IVD指令)の自己宣言を完了いたしました。
③ 2022年6月 当社は、遺伝性網膜ジストロフィー※4の患者さんの血液から、関連遺伝子を対象とした複数の遺伝子変異情報を次世代シークエンサー※5を用いて検出・解析し、原因遺伝子に応じた治療計画やロービジョンケア※6計画の策定及び科学的根拠に基づく遺伝カウンセリングを補助する遺伝子パネル検査システムについて、製造販売承認申請を実施いたしました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy:IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。頻度は4,000~8,000人に1人とされ、代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)である。
※5 次世代シークエンサー(NGS):
DNAの塩基配列を、同時並行で大量に読み取る解析装置。
※6 ロービジョンケア:
視覚に障害があるため、生活上何らかの支障がある方に対し、よりよく見るための工夫や機器の紹介、進路や就労を含む様々な相談・情報提供、福祉制度の利用等、多岐にわたる支援を行う。