四半期報告書-第57期第1四半期(2023/04/01-2023/06/30)

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2023/08/10 14:38
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35項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当第1四半期連結累計期間におけるわが国経済は、経済活動の正常化を背景に緩やかな回復基調が継続しております。一方、継続的な資源・エネルギー価格の高騰や急激な為替変動等、先行きが不透明な状況が続いております。海外においても、物価高や金融引き締めの影響から米欧経済が減速し始めており、中国経済はゼロコロナ政策解除により持ち直しているものの、国内需要の低迷や輸出の伸び悩み等、引き続き不透明な状況が継続しております。
医療面におきましては、国内では高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に、医療及びヘルスケア分野の需要が高まっております。政府も成長戦略の一つとして「次世代ヘルスケア」を挙げており、引き続き活性化が見込まれております。海外においても先進国の高齢化や新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への実装が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。
このような状況の下、当社は海外地域に続き、日本国内において「フローサイトメーター XF-1600」、「検体前処理装置 PS-10」を合わせたクリニカルフローサイトメトリー※1システム、及び抗体試薬等の関連製品を発売いたしました。本システムでクリニカルFCM検査における検体の前処理から測定結果入手に至る測定フロー全体の自動化を実現いたします。これにより、検査の効率化・標準化を実現すると共に、臨床検査技師は作業負担が軽減され、より高い専門性を必要とする測定結果の分析・解析に注力することが可能となります。今後、クリニカルフローサイトメトリーシステムを提供する地域を更に拡大し、ヘマトロジー分野とのシナジーの最大化を目指します。
免疫検査分野では、微量の血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬を日本において発売いたしました。本製品は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を測定原理とする自社の全自動免疫測定装置 HISCL™シリーズを用いて血液中のAβペプチド(1-42ペプチドと1-40ペプチド)の比率を測定することで、脳内Aβの蓄積状態の把握を補助するものであります。今後は、患者さんの受診機会を早期に拡大するため、関連学会・KOL(Key Opinion Leader)との連携を推進し、診断ガイドラインへの収載、及び保険適用に向けた活動を推進いたします。
尿検査分野では、尿路感染症※2が疑われる患者さんの尿検体を用いて、細菌の有無及び抗菌薬の有効性を判定する迅速薬剤感受性検査システムを欧州で発売いたしました。従来の手法では数日を要していた薬剤感受性検査(Antimicrobial Susceptibility Testing: AST)※3について、独自のマイクロ流体技術※4を用いて、測定開始後最短約30分での迅速判定を可能とする本システムにより、患者さんにとって医療の入口となるプライマリケアにおける抗菌薬の適正使用を支援し、世界全体で取り組むべき社会的課題である薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)※5対策に貢献いたします。
ライフサイエンス分野における遺伝子検査では、遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD)※6の疾患原因遺伝子の情報を取得する「PrismGuide™ IRDパネル システム」が、IRDの遺伝子パネル検査※7システムとして国内で初めて製造販売承認を取得いたしました。本システムは、IRDの原因となる82の疾患原因遺伝子の同定を目的として、IRD患者さん又はIRDと疑われる患者さんの血液から包括的なゲノムプロファイル※8を取得いたします。その後、本システムにより取得した測定結果に基づき、関連学会が提示する要件を満たした医療機関のエキスパートパネル※9が、自覚症状、臨床症状及び他の関連する検査結果とあわせて、IRD患者さんの原因遺伝子を総合的に決定いたします。原因遺伝子に応じた治療計画やロービジョンケア※10計画の策定、及び遺伝カウンセリング※11が実施されれば、早期に適切な治療を開始できることに加えて、発症リスクや症状の進行予測を踏まえた就学・就職準備等、患者さんのライフイベントに合わせた事前対応が可能となり、患者さんやそのご家族のQOL向上に大きく貢献することが期待されます。
最後にメディカルロボット事業では、日本発の手術支援ロボットシステム「hinotori™ サージカルロボットシステム」のグローバル総代理店である当社は、日本の医療機関を対象に製品導入を推進しております。国内市場導入を基盤として、海外市場導入に向けた薬事・販売体制等の準備を推進しており、2023年4月28日に当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイドより、シンガポールの Health Sciences Authority(健康科学庁)へ薬事承認申請を行いました。今後も、メディカロイドが進める海外における薬事申請活動と連携し、海外市場においても順次製品の導入を目指します。
※1 フローサイトメトリー(FCM):
微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の粒子を光学的に分析する手法。
主に細胞を個々に観察する際に用いられる。
※2 尿路感染症:
尿路(腎臓から尿の出口まで)に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。日常診療において最も頻度が高いとされる細菌感染症の一つで、女性の約6割が生涯に一度は感染するとされている。
※3 薬剤感受性検査(Antimicrobial Susceptibility Testing: AST):
検体から検出された病原菌に対する各種抗菌薬の有効性を調べる検査。
※4 マイクロ流体技術:
ナノメートルからマイクロメートル単位で加工した微細な流路により、液体中に複数存在する細菌を個別に捕捉し、微細流路内で単方向に菌を培養することで迅速な薬剤感受性検査を可能とする、Sysmex Astrego独自の技術を指す。
※5 薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR):
生物が自分に対して何らかの作用をもった薬剤に対して抵抗性を持つことで、これらの薬剤が効かない、もしくは効きにくくなる現象。この薬剤耐性を獲得した細菌のことを薬剤耐性菌という。
※6 遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)であり、頻度は4,000~8,000人に1人とされている。
※7 遺伝子パネル検査:
関連する複数の遺伝子の変異状況を一度に調べる検査法。
※8 包括的なゲノムプロファイル:
疾患の診療上重要な、検体中の複数の遺伝子の変異を同時に解析して得られる情報。
※9 エキスパートパネル:
関連学会が提示する要件を満たした医療機関において、IRDに関する専門家(眼科医)、遺伝医学に関する専門家(臨床遺伝専門医)、分子遺伝学やゲノム医療に関する専門家等各分野の専門家が集い、遺伝子パネル検査の解析結果の意義づけと治療法及びロービジョンケア方針の検討・提案を行う会議。
※10 ロービジョンケア:
視覚に障害があるため、生活上何らかの支障がある方に対するすべての支援の総称であり、医療的なケアから教育的、職業的、社会的、福祉的、心理的ケアまで、広い範囲にわたる支援を意味する。
※11 遺伝カウンセリング:
日本医学会によると、疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理学的影響及び家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセスであり、リスクや状況に対するインフォームド・チョイス(十分な情報を得た上での自律的選択)と適応を促進するためのカウンセリング等が含まれるとされている。
<参考>地域別売上高
前第1四半期
連結累計期間
当第1四半期
連結累計期間
前年同期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内12,96315.113,03613.7100.6
米州23,09226.827,02128.3117.0
EMEA27,25431.729,19430.6107.1
中国14,54316.916,72217.6115.0
アジア・パシフィック8,1749.59,3769.8114.7
海外計73,06584.982,31586.3112.7
合計86,029100.095,351100.0110.8

国内販売につきましては、新型コロナウイルス感染症に関する検査需要の低下により免疫検査分野における試薬の売上が減少いたしましたが、ヘマトロジー分野における機器及び試薬、ライフサイエンス分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、国内売上高は13,036百万円(前年同期比0.6%増)となりました。
海外販売につきましては、ヘマトロジー分野における試薬及び保守サービス、尿検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、海外売上高は82,315百万円(前年同期比12.7%増)、構成比86.3%(前年同期比1.4ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は一部地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴う活動制限の影響が残っていたものの、当年度は販売・サービス活動が再開したこと等により増加した結果、30,148百万円(前年同期比19.8%増)となりました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は95,351百万円(前年同期比10.8%増)、営業利益は13,277百万円(前年同期比20.1%増)、税引前四半期利益は13,160百万円(前年同期比2.4%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は8,621百万円(前年同期比7.4%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
新型コロナウイルス感染症に関する検査需要の低下により免疫検査分野における試薬の売上が減少いたしましたが、ヘマトロジー分野における機器及び試薬、ライフサイエンス分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は13,917百万円(前年同期比2.9%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率が改善いたしましたが、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は6,987百万円(前年同期比14.3%減)となりました。
② 米州
北米においては、ヘマトロジー分野及び尿検査分野における機器、試薬及び保守サービスの売上が増加いたしました。南米においては、ヘマトロジー分野及び尿検査分野における機器及び試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は25,545百万円(前年同期比15.5%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、増収及び売上原価率の改善により、セグメント利益(営業利益)は2,058百万円(前年同期比871.4%増)となりました。
③ EMEA
ヘマトロジー分野における試薬及び保守サービス、ライフサイエンス分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は29,859百万円(前年同期比7.6%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は1,352百万円(前年同期比60.9%減)となりました。
④ 中国
ヘマトロジー分野における機器及び試薬、尿検査分野及び血液凝固検査分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は16,689百万円(前年同期比14.9%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は690百万円(前年同期比40.8%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
ヘマトロジー分野及び免疫検査分野における試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は9,339百万円(前年同期比15.1%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、増収及び売上原価率の改善により、セグメント利益(営業利益)は1,580百万円(前年同期比58.2%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて4,425百万円増加し、535,500百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が6,548百万円、営業債権及びその他の債権が7,741百万円減少したものの、棚卸資産が8,447百万円、有形固定資産が5,050百万円、無形資産が2,621百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて9,926百万円減少し、132,791百万円となりました。この主な要因は、営業債務及びその他の債務が4,871百万円、未払法人所得税が7,717百万円、未払賞与が5,770百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて14,351百万円増加し、402,708百万円となりました。この主な要因は、その他の資本の構成要素が14,229百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の73.0%から2.1ポイント増加して75.1%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より6,548百万円減少し、62,911百万円となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、11,343百万円(前年同期比7,510百万円増)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が13,160百万円(前年同期比312百万円増)、営業債権の減少額が12,462百万円(前年同期比7,789百万円増)、法人所得税の支払額が12,435百万円(前年同期比1,707百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、10,293百万円(前年同期比6,393百万円減)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が4,724百万円(前年同期比1,450百万円増)、無形資産の取得による支出が5,350百万円(前年同期比265百万円減)、資本性金融商品の取得による支出が69百万円(前年同期比4,976百万円減)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、10,579百万円(前年同期比539百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が8,788百万円(前年同期比629百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は7,131百万円であります。
また、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第1四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
① 2023年5月 当社は、日本国内において、「フローサイトメーター XF-1600」、「検体前処理装置 PS-10」を合わせたクリニカルフローサイトメトリー※1システム、及び抗体試薬等の関連製品を発売いたしました。
※1 フローサイトメトリー(FCM):
微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の粒子を光学的に分析する手法のこと。主に細胞を個々に観察する際に用いられる。
② 2023年5月 当社は、遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD)※2の疾患原因遺伝子の情報を取得する「PrismGuide™ IRDパネルシステム」について、IRDの遺伝子パネル検査※3システムとして国内で初めて製造販売承認を取得いたしました。
※2 遺伝性網膜ジストロフィ(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)であり、頻度は4,000~8,000人に1人とされている。
※3 遺伝子パネル検査:
関連する複数の遺伝子の変異状況を一度に調べる検査法。
③ 2023年6月 当社は、血液からアルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ(Aβ)の蓄積状態を調べる検査試薬「HISCL™ β-アミロイド 1-42 試薬」及び「HISCL™ β-アミロイド 1-40 試薬」を日本で発売いたしました。
④ 2023年6月 当社は、尿路感染症※4が疑われる患者さんの尿検体を用いて、測定開始後最短約30分で細菌の有無及び抗菌薬の有効性を判定する迅速薬剤感受性検査システムを欧州で発売いたしました。
※4 尿路感染症:
尿路(腎臓から尿の出口まで)に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。日常診療において最も頻度が高いとされる細菌感染症の一つで、女性の約6割が生涯に一度は感染するとされている。