四半期報告書-第56期第2四半期(令和4年7月1日-令和4年9月30日)

【提出】
2022/11/11 13:39
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37項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
当社グループでは、従来、クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーション又はカスタマイゼーションのコストについて、その他の非流動資産に計上しておりましたが、前連結会計年度より2021年4月に公表されたIFRS解釈指針委員会のアジェンダ決定に至る議論を踏まえて、サービスを受領したときにそのコストを費用として認識する方法に変更いたしました。当該会計方針の変更は遡及適用され、遡及処理の内容を反映させた前第2四半期連結累計期間の数値との比較、分析を行っております。
(1) 経営成績の分析
当第2四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大により、個人消費の回復基調が弱まり、更なる円安進行による輸入コスト増加や資源価格の高騰等、引続き先行きが不透明な状況であります。海外においては、全体としては経済社会活動の正常化が進む一方で、中国の上海を中心としたロックダウンやロシアによるウクライナ侵攻の長期化、資源・エネルギー価格の高騰、金融資本市場の大幅な変動リスク等、予断を許さない状況が続いております。
医療面におきましては、先進国の高齢化に伴う医療の効率化、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への応用が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。また、グローバルでの新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点とした医療体制の在り方や医療環境自体が大きく変化する可能性もあり、医療アクセスの向上、セルフメディケーションへの注目等、更なる成長機会が見込まれております。
このような状況の下、当社は尿沈渣検査分野における新製品「全自動尿中有形成分分析装置 UF-1500」を発売いたしました。本製品は、全自動尿中有形成分分析装置のフラッグシップモデルの機能や操作性を高いレベルで継承しながら小型化を実現しており、今回のラインアップ拡充により、医療環境に応じたより幅広いソリューションをお届けすると共に、中小規模施設における尿検査の効率化・標準化への貢献が期待されます。
加えて、個別化医療の実現を目指した取り組みとして、FGFR2 ※1融合遺伝子を含む遺伝子再構成を有する進行胆道がんの患者さんに対するコンパニオン診断における遺伝子変異解析セット「OncoGuide™ NCC オンコパネル システム※2」に関して製造販売承認事項の一部変更申請を実施いたしました。これにより、将来的にフチバチニブ※3の適応判定が可能となり、局所進行又は転移性の胆道がんの患者さんへ新たな治療の選択肢を提供できることが期待されます。
また、高度な冷凍輸送が必要となる生化学検査用の精度管理試料の供給において、当社と東邦薬品株式会社は、輸送回数の低減、輸送資材のリユース及び輸送工程全体にて、ドライアイスを使用しないドライアイスフリーを実現する体制を確立いたしました。混載輸送と医薬品卸会社による通常商品の配送を組み合わせた、長時間かつ長距離でのドライアイスフリー輸送は日本国内における診断薬業界初の取り組みであり、環境に配慮したサステナブルなコールドチェーンとしての大きな貢献が見込まれます。
更に、国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori™ サージカルロボットシステム」のグローバル総代理店である当社は、日本の医療機関を対象に製品導入を推進しております。今後は、国内市場導入を基盤として、海外市場導入にむけた薬事・販売体制等の準備を推進してまいります。
※1 FGFR2遺伝子:
FGFR(fibroblast growth factor receptor)はFGFR1-4の4種類が同定されており、細胞の成長や増殖に関わる線維芽細胞増殖因子受容体と呼ばれるタンパク質である。FGFR遺伝子異常には、融合、変異、増幅等があり、これら遺伝子異常により機能が活性化されると、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性等に結び付くと考えられている。
※2 OncoGuide NCC オンコパネル システム:
当社が、がんゲノムプロファイリング検査用のシステムとして日本で初めて、2018年12月25日に先駆け審査対象として医療機器製造販売承認を取得し、2019年6月1日に保険収載されたコンビネーション医療機器。
※3 フチバチニブ(Futibatinib、開発コード:TAS-120):
化学療法等の前治療歴がある胆道がん患者さんを含む、FGFR1-4遺伝子異常を持つ進行固形がんへの治療薬として、大鵬薬品工業株式会社が開発中の新規経口抗がん剤。
<参考>地域別売上高
前第2四半期
連結累計期間
当第2四半期
連結累計期間
前年同期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内25,55715.028,79214.9112.7
米州38,22722.750,26225.9131.5
EMEA49,23829.255,17828.4112.1
中国42,14525.042,86522.1101.7
アジア・パシフィック13,5858.116,9238.7124.6
海外計143,19685.0165,22985.1115.4
合計168,753100.0194,022100.0115.0

国内販売につきましては、主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する免疫検査分野の試薬の売上が増加したことに加え、ヘマトロジー分野及びメディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長いたしました。その結果、国内売上高は28,792百万円(前年同期比12.7%増)となりました。
海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野、尿検査分野及び血液凝固検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は165,229百万円(前年同期比15.4%増)、構成比85.1%(前年同期比0.1ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は、全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、52,982百万円(前年同期比19.0%増)となりました。加えて、研究開発費につきましては、積極的な開発投資に伴い増加し14,528百万円(前年同期比25.1%増)となりました。
この結果、当第2四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は194,022百万円(前年同期比15.0%増)、営業利益は33,150百万円(前年同期比0.3%減)、税引前四半期利益は34,546百万円(前年同期比9.2%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は23,989百万円(前年同期比9.4%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する免疫検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長いたしました。その結果、売上高は30,966百万円(前年同期比11.7%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、研究開発費が増加いたしましたが、増収及び売上原価率の改善により、セグメント利益(営業利益)は23,878百万円(前年同期比29.1%増)となりました。
② 米州
北米においては、検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加いたしました。その結果、売上高は47,302百万円(前年同期比32.6%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化及び販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は1,289百万円(前年同期比27.4%減)となりました。
③ EMEA
検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野及びライフサイエンス分野において機器及び試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は56,108百万円(前年同期比12.8%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価率の悪化及び販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は6,117百万円(前年同期比20.4%減)となりました。
④ 中国
中国各地において大規模なロックダウンが実施されたこと等により、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において機器の売上が減少いたしましたが、血液凝固検査分野において試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は42,819百万円(前年同期比1.7%増)となりました。
利益面につきましては、増収及び売上原価率が改善いたしましたが、販売費及び一般管理費の増加によりセグメント利益(営業利益)は4,300百万円(前年同期比8.7%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において機器及び試薬の売上が増加いたしました。その結果、売上高は16,824百万円(前年同期比24.6%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、増収及び売上原価率の改善により、セグメント利益(営業利益)は2,521百万円(前年同期比46.3%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて27,523百万円増加し、511,230百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が4,533百万円減少したものの、棚卸資産が12,665百万円、無形資産が7,132百万円、のれんが6,868百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて3,812百万円減少し、130,841百万円となりました。この主な要因は、その他の長期金融負債が2,329百万円増加したものの、営業債務及びその他の債務が3,440百万円、その他の非流動負債が3,056百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて31,335百万円増加し、380,388百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が15,830百万円、その他の資本の構成要素が15,444百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の72.0%から2.3ポイント増加して74.3%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より4,533百万円減少し、69,219百万円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、28,269百万円(前年同期比8,243百万円減)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が34,546百万円(前年同期比2,917百万円増)、減価償却費及び償却費が15,440百万円(前年同期比1,899百万円増)、営業債権の減少額が11,087百万円(前年同期比5,024百万円増)、棚卸資産の増加額が9,828百万円(前年同期比301百万円増)、法人所得税の支払額が13,490百万円(前年同期比6,504百万円増)と
なったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、25,831百万円(前年同期比11,290百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が7,123百万円(前年同期比2,990百万円増)、無形資産の取得による支出が10,791百万円(前年同期比2,199百万円増)、資本性金融商品の取得による支出が5,081百万円(前年同期比5,081百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、11,946百万円(前年同期比1,295百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が8,159百万円(前年同期比635百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は14,528百万円であります。
また、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第2四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
① 2022年5月 当社は、尿路感染症※1を対象とした迅速な薬剤感受性検査※2の臨床実装を加速させると共に、薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)※3対策への取り組み等、医療課題の解決に貢献するべく、持分法適用関連会社であるアストレゴ ダイアグノスティックス エービーの株式を追加取得し、当社の完全子会社といたしました。
※1 尿路感染症:
腎臓から尿の出口までを「尿路」と言い、尿路に細菌が進入し炎症が生じたものを尿路感染症という。膀胱では膀胱炎、腎臓では腎盂腎炎を引き起こす。
※2 薬剤感受性検査:
検体から検出された病原菌に対する各種抗菌薬の効能を調べる検査。
※3 薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance):
生物が自分に対してなんらかの作用をもった薬剤に対して抵抗性を持つことで、これらの薬剤が効かない、もしくは効きにくくなる現象。この薬剤耐性を獲得した細菌のことを薬剤耐性菌という。
② 2022年5月 当社は、全自動免疫測定装置HISCL™-5000/HISCL-800を用いて血液中のアミロイドβを測定し、脳内アミロイドβの蓄積状態の把握を補助する検査試薬について、欧州の体外診断用医療機器指令(IVD指令)の自己宣言を完了いたしました。
③ 2022年6月 当社は、遺伝性網膜ジストロフィー※4の患者さんの血液から、関連遺伝子を対象とした複数の遺伝子変異情報を次世代シークエンサー※5を用いて検出・解析し、原因遺伝子に応じた治療計画やロービジョンケア※6計画の策定及び科学的根拠に基づく遺伝カウンセリングを補助する遺伝子パネル検査システムについて、製造販売承認申請を実施いたしました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy:IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。夜盲(暗いところでものが見えにくなる)や視野狭窄(視野が狭くなる)、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。頻度は4,000~8,000人に1人とされ、代表的な疾患は網膜色素変性症(指定難病:告示番号90)である。
※5 次世代シークエンサー(NGS):
DNAの塩基配列を、同時並行で大量に読み取る解析装置。
※6 ロービジョンケア:
視覚に障害があるため、生活上何らかの支障がある方に対し、よりよく見るための工夫や機器の紹介、進路や就労を含む様々な相談・情報提供、福祉制度の利用等、多岐にわたる支援を行う。
④ 2022年7月 当社は、ヘマトロジー分野におけるフラッグシップモデル「多項目自動血球分析装置 XR™ シリーズ」と接続可能な新たな検体搬送システム商品群「バーコードターミナル BT-50」、「検体並び替え装置 TS-01」、「検体保管装置 TA-01」を発売いたしました。
⑤ 2022年8月 当社は、ソフトウェアの設計開発機能の強化により、開発スピード向上に取り組むべく、ソフトウェア開発会社である株式会社ピロートの株式を取得し、当社の完全子会社といたしました。
⑥ 2022年9月 当社は、遺伝子変異解析セット「OncoGuide™ NCC オンコパネル システム」に関して、FGFR2 ※7融合遺伝子を含む遺伝子再構成を有する進行胆道がんの患者さんに対するコンパニオン診断として、製造販売承認事項の一部変更申請を実施いたしました。
※7 FGFR2遺伝子:
FGFR(fibroblast growth factor receptor)はFGFR1-4の4種類が同定されており、細胞の成長や増殖に関わる線維芽細胞増殖因子受容体と呼ばれるタンパク質である。FGFR遺伝子異常には、融合、変異、増幅等があり、これら遺伝子異常により機能が活性化されると、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性等に結び付くと考えられている。
※8 OncoGuide NCC オンコパネル システム:
当社が、がんゲノムプロファイリング検査用のシステムとして日本で初めて、2018年12月25日に先駆け審査対象として医療機器製造販売承認を取得し、2019年6月1日に保険収載されたコンビネーション医療機器。
⑦ 2022年9月 当社は、尿沈渣検査分野における新製品「全自動尿中有形成分分析装置 UF-1500」を発売いたしました。