有価証券報告書-第52期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:25
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【項目】
83項目
1.経営成績等の概要
(1) 経営成績の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済の減速懸念はあるものの、雇用及び所得環境は改善を続け、企業の設備投資も底堅く推移しています。海外経済は、米中貿易摩擦の長期化、関税の引き上げなどの保護主義的な動きや、多くの国における政策の不確実性の高まりなどを背景とした景況感の低下が見られるものの、全体としては緩やかな回復を続けております。
医療面におきましては、国内では、医療及びヘルスケア分野は高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に需要期待が高まっています。政府も成長戦略の一つと位置付けており、医療関連産業の活性化は引き続き今後も見込まれております。海外においては、先進国の高齢化進展、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大、医療水準の質・サービスの向上が進み、医療の効率化、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)などの最新技術を取り込んだ構造的な変革が見られます。
このような状況の下、当社は、コア事業の成長力の更なる強化と新事業の事業化の加速を推進すべく施策を展開しております。主に血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野の事業強化に向け、研究開発の中核拠点テクノパークに隣接する西神工業団地(神戸市西区)に、タンパク質や生物由来の原料を使用した診断薬(以下、バイオ診断薬)の研究開発、原料調達、生産から物流までを一貫して行うバイオ診断薬拠点「テクノパーク イーストサイト」を2019年4月に稼働し、高品質なバイオ診断薬を迅速かつ安定的に供給する体制を整備しております。
血液凝固検査の更なる効率化と質の向上を目指して、「全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000」を2018年12月に発売いたしました。また、検査・医療に携わる方々が取り組む業務効率化、品質強化、患者さんの満足度向上などを支援する新ネットワークソリューション「Caresphere™」の提供を2018年より開始しております。当社関連製品・サービスと連携することで、装置の状態、臨床検査室全体の稼働状況の把握・分析を可能にし、より高度な臨床検査室の運営実現に貢献してまいります。
また、がんクリニカルシークエンシング検査の臨床現場への早期導入に向け、「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」の製造販売承認を2018年12月に取得、2019年1月に発売を開始いたしました(一般的名称:遺伝子変異解析セット(がんゲノムプロファイリング検査用))。それに伴い、子会社である株式会社理研ジェネシスにおいて、本システムと次世代シークエンサー※を組み合わせたアッセイサービスを開始しております。新たながん診断法を患者さんにお届けすることで、医療の発展と進化に貢献してまいります。
※ 次世代シークエンサー:
遺伝子情報を持つDNAの塩基及びこの配列を同時並行で大量に読み取る解析装置。
<参考>地域別売上高
前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内45,01916.044,07115.097.9
米州66,35923.570,51824.0106.3
EMEA73,92426.275,67725.8102.4
中国72,08925.678,21326.7108.5
アジア・パシフィック24,5408.725,0258.5102.0
海外計236,91584.0249,43485.0105.3
合計281,935100.0293,506100.0104.1

国内販売につきましては、主に血球計数検査分野、免疫検査分野及び尿検査分野を中心に試薬の売上が伸長いたしましたが、ビオメリュー社との合弁解消に伴い売上が減少いたしました。その結果、国内売上高は44,071百万円(前期比2.1%減)となりました。
海外販売につきましては、主に血球計数検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野において試薬の売上が伸長いたしました。その結果、海外売上高は249,434百万円(前期比5.3%増)、構成比85.0%(前期比1.0ポイント増)となりました。
この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は293,506百万円(前期比4.1%増)、営業利益は61,282百万円(前期比3.7%増)、税引前利益は57,955百万円(前期比0.3%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は41,224百万円(前期比5.1%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
国内において、主に血球計数検査分野、免疫検査分野及び尿検査分野を中心に試薬の売上が伸長しましたが、ビオメリュー社との合弁解消に伴い売上が減少したこと等により、売上高は47,073百万円(前期比0.7%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、及び研究開発費が増加しましたが、グループ間輸出も合わせた売上伸長による増収効果等により、セグメント利益(営業利益)は38,996百万円(前期比3.0%増)となりました。
② 米州
北米では、主に血球計数検査分野において機器及び試薬の売上が増加したこと、血液凝固検査分野において機器の売上が増加したこと等により、増収となりました。中南米では、主に血球計数検査分野において機器の売上が減少したこと等により、減収となりました。その結果、米州全体での売上高は65,957百万円(前期比5.4%増)となりました。
利益面につきましては、グループ間の商標ロイヤリティー支払の増加等に伴う売上原価の増加により、セグメント利益(営業利益)は3,580百万円(前期比35.3%減)となりました。
③ EMEA
主に血球計数検査分野において機器の売上が増加したこと、ライフサイエンス分野において試薬の売上が増加したこと等により、売上高は77,600百万円(前期比2.7%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収効果や売上原価率の改善による売上総利益の増加により、セグメント利益(営業利益)は7,091百万円(前期比42.6%増)となりました。
④ 中国
主に血球計数検査分野及び血液凝固検査分野において機器の売上が減少しましたが、血球計数検査分野、血液凝固検査分野及び免疫検査分野において試薬の売上が伸長したこと等により、売上高は78,114百万円(前期比8.5%増)となりました。
利益面につきましては、増収効果及びその他の営業収益の増加により、セグメント利益(営業利益)は9,125百万円(前期比9.6%増)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
東南アジアでは、前年同期にインド及びバングラデシュで大型の政府入札案件の獲得があったことによる反動のため減収となりましたが、韓国において血球計数検査分野を中心に、売上が伸長したこと等により、売上高は24,759百万円(前期比1.4%増)となりました。
利益面につきましては、グループ間取引価格の変更による売上原価の増加及び販売費及び一般管理費の増加等により、セグメント利益(営業利益)は3,112百万円(前期比1.7%減)となりました。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて24,795百万円増加し、346,775百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が10,382百万円減少しましたが、営業債権及びその他の債権(流動資産)が11,679百万円増加したこと、有形固定資産が8,661百万円増加したこと、その他の短期金融資産が7,430百万円増加したこと、無形資産が3,271百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,056百万円増加し、81,592百万円となりました。この主な要因は、営業債務及びその他の債務が1,199百万円増加したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて23,739百万円増加し、265,182百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が26,492百万円増加したこと、その他の資本の構成要素が3,377百万円減少したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の74.8%から1.5ポイント増加して76.3%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より10,382百万円減少し、51,062百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、44,743百万円(前期比7,497百万円減)となりました。この主な要因は、税引前利益が57,955百万円(前期比162百万円減)、減価償却費及び償却費が15,842百万円(前期比1,199百万円増)、営業債権の増加額が11,988百万円(前期比4,646百万円増)、棚卸資産の減少額が471百万円(前期は1,962百万円の増加)、営業債務の増加額が269百万円(前期比3,261百万円減)、法人所得税の支払額が17,305百万円(前期比4,808百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、40,128百万円(前期比2,299百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が18,726百万円(前期比2,153百万円増)、無形資産の取得による支出が10,252百万円(前期比1,130百万円増)、定期預金の預入による支出が7,737百万円(前期比7,695百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、14,090百万円(前期比2,544百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が14,600百万円(前期比2,106百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本133,37490.0
米州7,15885.0
EMEA12,191103.1
中国3,295102.6
アジア・パシフィック1,45482.2
合計157,47390.8

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本47,07399.3
米州65,957105.4
EMEA77,600102.7
中国78,114108.5
アジア・パシフィック24,759101.4
合計293,506104.1

(注)1.セグメント間の内部売上高は相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成に関する重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 3.重要な会計方針」に記載しておりますので、ご参照ください。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は前期比11,571百万円増加(4.1%増)の293,506百万円、営業利益は前期比2,203百万円増加(3.7%増)の61,282百万円、税引前利益は前期比162百万円減少(0.3%減)の57,955百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比2,001百万円増加(5.1%増)の41,224百万円となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の17.4%から当連結会計年度は16.3%へと低下しました。
当社グループは、前中期経営計画において2020年3月期を最終年度として、連結売上高350,000百万円、連結営業利益72,000百万円を達成することを目指し、2019年3月期の目標数値を、連結売上高300,000百万円、連結営業利益59,000百万円としておりました。その結果、当連結会計年度の売上高は、計画を下回るも増収を達成しており、営業利益は安定的な試薬売上を背景に、計画を達成し、営業利益率20%以上を継続しております。
こうした中、2019年4月より2022年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画をスタートしており、長期ビジョンに基づくポジショニング目標達成に向けて引き続き重要な課題に取り組み、2022年3月期の経営指標(連結売上高380,000百万円、連結営業利益78,000百万円)を達成することを目指します。
① 売上高
当連結会計年度は、国内販売につきましては、主に血球計数検査分野、免疫検査分野及び尿検査分野を中心に試薬の売上が伸長しましたが、ビオメリュー社との合弁解消に伴い売上が減少いたしました。
海外販売につきましては、主に血球計数検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野において試薬の売上が伸長しました。
この結果、売上高は前連結会計年度に比べて11,571百万円増加(4.1%増)の293,506百万円となりました。国内での売上高は44,071百万円と948百万円の減少(2.1%減)となり、海外での売上高は249,434百万円と12,519百万円の増加(5.3%増)となった結果、海外売上高比率は前期比1.0ポイント増加の85.0%となりました。
海外の地域別では、米州が70,518百万円(前期比4,158百万円増、6.3%増)、EMEAが75,677百万円(前期比1,752百万円増、2.4%増)、中国が78,213百万円(前期比6,123百万円増、8.5%増)、アジア・パシフィックが25,025百万円(前期比484百万円増、2.0%増)となりました。
② 売上原価
売上原価は、前期比8,913百万円増加(7.2%増)の131,899百万円となりました。また、売上原価率は、44.9%(前期比1.3ポイント増加)となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、販売費及び一般管理費の抑制効果及び前年同期の厚生年金基金解散の特殊要因があり、前期比1,314百万円減少(1.6%減)の81,230百万円となりました。また、売上高に対する比率は前連結会計年度の29.3%から27.7%へと1.6ポイント減少いたしました。
④ 研究開発費
商品ポートフォリオ充実のための新商品の開発とともに、臨床検査分野及びライフサイエンス分野を中心に研究開発を推進した結果、研究開発費は、前期比2,823百万円増加(16.9%増)の19,578百万円となりました。また、売上高に対する比率は、前連結会計年度の5.9%から6.7%へと0.8ポイント増加しました。
⑤ 損益の状況
営業利益は、原価率の悪化及び研究開発費の増加があったものの、増収効果による売上総利益の増加及び販売費及び一般管理費の抑制効果によって前期比2,203百万円増加(3.7%増)の61,282百万円、売上高営業利益率は前年同期と同じ21.0%となりました。なお、為替の影響は、前連結会計年度と比較して182百万円の増益要因となりました。
税引前利益は、主に営業利益が増益となったのの、前期に関連会社株式売却益が1,221百万円発生したこと、持分法による投資損失が前期比733百万円増加したこと、為替差損が前期比313百万円増加したこと等によって、前期比162百万円減少(0.3%減)の57,955百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用が前期2,251百万円減少(11.8%減)の16,789百万円となったことにより、前期比2,001百万円増加(5.1%増)の41,224百万円となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが事業を展開していく上で、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性のある事項については、「2 事業等のリスク」に記載しておりますので、ご参照ください。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金調達と流動性マネジメント
運転資金は必要に応じて短期銀行借入等で調達します。各連結子会社については、運転資金確保のために必要に応じて銀行借入を行いますが、国内の子会社については、2003年10月より当社と各社との資金決済にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金の調達・運用を一元化して効率化を図っております。
また、当社は、現在、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりAA-(ダブルAマイナス)の発行体格付を取得しており、毎年レビューを受けて格付を更新しております。高い格付は資本市場から資金調達する際の調達コストを低減するだけではなく、ステークホルダーや世間一般からの信用向上にも貢献します。今後も格付を維持・向上していくために、売上高・利益と資産及び負債・資本のバランスに考慮してまいります。
設備投資等の長期資金需要に関しては、投資回収期間とリスクを勘案したうえで調達方法を決定しております。なお、当連結会計年度は、設備投資及び研究開発活動等の資金について、主に営業活動の結果得られた資金から充当しております。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「1.経営成績等の概要 (2) 財政状態の分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「1.経営成績等の概要 (3) キャッシュ・フローの分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
当連結会計年度におけるIFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんを償却しておりましたが、IFRSでは、非償却とし毎年一定の時期及び減損の兆候がある場合にはその時点で、減損テストを実施しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が462百万円減少しております。
(研究開発費)
日本基準では、研究及び開発における支出は、全て発生時に費用処理しておりましたが、IFRSでは、資産計上の要件を満たすものを無形資産として認識しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価が963百万円増加し、研究開発費が2,633百万円減少し、その他の営業費用が556百万円増加しております。