有価証券報告書-第53期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/19 15:11
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【項目】
81項目
1.経営成績等の概要
(1) 経営成績の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、製造業においては貿易摩擦をはじめとする海外情勢の不透明感や、円高による収益の悪化、景況感の低下が見られたものの、雇用及び所得環境は緩やかに改善し底堅く推移しておりました。しかし新型コロナウイルスの感染拡大及び影響長期化の懸念から、経済の急速な減速など、先行きに対する不透明感が強まっております。海外においても中国や一部地域において活動の再開が見られるものの、経済規模が全体的に縮小する見通しも強まっており、各国とも積極的な金融財政政策を打ち出しております。
医療面におきましては、国内では医療及びヘルスケア分野は高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に、需要期待が高まっております。政府も成長戦略の一つと位置付けており、医療関連産業の活性化は引き続き今後も見込まれております。海外においても先進国の高齢化進展、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大、医療水準の質・サービスの向上が進み、医療の効率化、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)などの最新技術を取り込んだ構造的な変革が見られます。ただしグローバルでの新型コロナウイルス感染者の増加を受け、今回のようなパンデミックにも対応可能な医療体制の在り方、公衆衛生の見直しを迫られ、医療環境自体が大きく変容する可能性があります。当社においても、各国における不要不急な外出制限措置等により、医療機関における検査数が減少するなど、短期的な需要減少の可能性があります。
このような状況の下、当社は血液凝固検査の更なる効率化と質の向上を目指し「全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000」を発売し、各国における許認可取得を経て、グローバルな販売活動を推進いたしました。またバイオテクノロジーを活用した診断薬(以下、バイオ診断薬)の製品競争力向上及び安定供給を目的に、バイオ診断薬拠点「テクノパーク イーストサイト」を中核研究開発拠点 テクノパーク(神戸市西区)内に開設し、2019年4月より稼動いたしました。これによりバイオ診断薬の原材料から診断薬までの開発、生産、物流までを一貫して行い、世界中のお客様へより高品質・高付加価値の製品を安定的にお届けすることが可能となりました。
ライフサイエンス分野においては、「遺伝子変異解析セット(がんゲノムプロファイリング検査用)OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」が、がんゲノムプロファイリング検査用システムとして日本で初めて保険適用されました。本システムは、固形がんを解析対象とした腫瘍組織の包括的ながんゲノムプロファイルを取得することで、患者さんのがん固有の遺伝子異常を解析し、正確な診断や抗がん剤の選定など、治療方針決定に有用な情報提供に用いられております。今後より多くのがん患者さんに対し受診機会が拡大することが期待されております。
また、エーザイ株式会社と共同開発している血液を用いたアルツハイマー病診断法の創出に関して、第12回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)にて学術報告を行いました。CTADでは、当社のタンパク測定プラットフォームである全自動免疫測定装置HISCL™シリーズを用いて測定した血漿中のアミロイドベータ(Aβ)から、脳内アミロイド病理を把握できる可能性が示唆されたことを発表しました。これにより、現在、脳内アミロイド病理の把握方法として用いられているアミロイドPETや脳脊髄液を用いたAβ測定と比較し、患者さんの検査機会が増加するとともに、金銭的、身体的な負担を軽減することが期待されます。当社とエーザイ株式会社は、引き続き認知症の予防及び治療に対する新しい診断技術の創造に取り組んでまいります。
さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に貢献すべく、国内初となる新型コロナウイルス検査キット(2019-nCOV 検出蛍光リアルタイム RT-PCRキット)の製造販売承認を2020年3月に取得いたしました。本製品はBGI Genomicsにより既に50ヶ国以上へ供給されている実績があり、当社が販売代理店基本契約を締結し、国内臨床現場への供給を実現したものであります。当社は本製品の提供を通じ、新型コロナウイルスに対する臨床検査実施体制の構築に貢献してまいります。
<参考>地域別売上高
前連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内44,07115.046,72515.5106.0
米州70,51824.071,03723.5100.7
EMEA75,67725.877,25025.6102.1
中国78,21326.780,04826.5102.3
アジア・パシフィック25,0258.526,9198.9107.6
海外計249,43485.0255,25584.5102.3
合計293,506100.0301,980100.0102.9

国内販売につきましては、主に血球計数検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野を中心に機器及び試薬の売上が伸長いたしました。その結果、国内売上高は46,725百万円(前期比6.0%増)となりました。
海外販売につきましては、主に血液凝固検査分野において試薬の売上が減少いたしましたが、血球計数検査分野において試薬の売上が伸長いたしました。その結果、海外売上高は255,255百万円(前期比2.3%増)、構成比84.5%(前期比0.5ポイント減)となりました。
この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は301,980百万円(前期比2.9%増)、営業利益は55,284百万円(前期比9.8%減)、税引前利益は49,433百万円(前期比14.7%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は34,883百万円(前期比15.4%減)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
国内では、主に血球計数検査分野及び血液凝固検査分野において機器及び試薬の売上が増加したこと、免疫検査分野において試薬の売上が増加したこと等により、売上高は50,540百万円(前期比7.4%増)となりました。
利益面につきましては、グループ間輸出も合わせた売上伸長による増収効果がありましたが、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費の増加により、セグメント利益(営業利益)は36,282百万円(前期比7.0%減)となりました。
② 米州
北米では、主に血球計数検査分野において機器の売上が減少いたしましたが、血球計数検査分野において試薬の売上が増加したこと等により、増収となりました。中南米では、主に血球計数検査分野において機器の売上が減少したこと等により、減収となりました。その結果、米州全体での売上高は66,189百万円(前期比0.4%増)となりました。
利益面につきましては、売上原価、販売費及び一般管理費の増加により、セグメント利益(営業利益)は2,856百万円(前期比20.2%減)となりました。
③ EMEA
主に血球計数検査分野において機器の売上が減少いたしましたが、血球計数検査分野において試薬の売上が増加したこと、イギリス、フランスにおける直接販売による尿検査分野の伸長等により、売上高は78,596百万円(前期比1.3%増)となりました。
利益面につきましては、増収効果や売上原価率の改善による売上総利益の増加により、セグメント利益(営業利益)は8,347百万円(前期比17.7%増)となりました。
④ 中国
主に血液凝固検査分野において試薬の売上が減少いたしましたが、血液凝固検査分野において機器の売上が伸長したこと、血球計数検査分野及び免疫検査分野において試薬の売上が伸長したこと等により、売上高は79,966百万円(前期比2.4%増)となりました。
利益面につきましては、グループ間取引価格の変更等による売上原価の増加により、セグメント利益(営業利益)は5,726百万円(前期比37.3%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
主に血球計数検査分野、尿検査分野及び血液凝固検査分野において機器の売上が減少いたしましたが、東南アジア、南アジアにおいてデング熱の流行が長期化したこと、インドの販売体制変更等により、血球計数検査分野において試薬の売上が伸長したこと等により、売上高は26,687百万円(前期比7.8%増)となりました。
利益面につきましては、グループ間の商標ロイヤリティー支払の増加等による売上原価の増加及び販売費及び一般管理費の増加がありましたが、増収による売上総利益の増加により、セグメント利益(営業利益)は3,119百万円(前期比0.2%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて42,516百万円増加し、389,291百万円となりました。この主な要因は、その他の短期金融資産が7,223百万円減少、現金及び現金同等物が5,530百万円増加、棚卸資産が8,071百万円増加、有形固定資産が20,527百万円増加、無形資産が6,506百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて29,351百万円増加し、110,944百万円となりました。この主な要因は、リース負債(非流動)が16,935百万円増加、リース負債(流動)が5,701百万円増加、営業債務及びその他の債務が4,138百万円増加したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて13,164百万円増加し、278,347百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が19,876百万円増加いたしましたが、その他の資本の構成要素が7,471百万円減少したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の76.3%から5.0ポイント減少して71.3%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より5,530百万円増加し、56,592百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、53,182百万円(前期比8,439百万円増)となりました。この主な要因は、税引前利益が49,433百万円(前期比8,521百万円減)、減価償却費及び償却費が23,955百万円(前期比8,112百万円増)、営業債権の増加額が4,423百万円(前期比7,564百万円減)、棚卸資産の増加額が9,807百万円(前期は471百万円の減少)、営業債務の増加額が2,762百万円(前期比2,492百万円増)、契約負債の増加額3,292百万円(前期は703百万円の減少)、法人所得税の支払額が16,208百万円(前期比1,096百万円減)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、25,906百万円(前期比14,221百万円減)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が13,629百万円(前期比5,096百万円減)、無形資産の取得による支出が12,843百万円(前期比2,590百万円増)、資本性金融商品の取得による支出が4,554百万円(前期比2,238百万円増)、定期預金の払戻による収入が7,327百万円(前期比7,232百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、20,597百万円(前期比6,507百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が15,028百万円(前期比428百万円増)、リース負債の返済による支出が5,913百万円となったこと等によるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本169,909127.4
米州7,565105.7
EMEA11,95498.1
中国2,97790.4
アジア・パシフィック1,44499.4
合計193,852123.1

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
日本50,540107.4
米州66,189100.4
EMEA78,596101.3
中国79,966102.4
アジア・パシフィック26,687107.8
合計301,980102.9

(注)1.セグメント間の内部売上高は相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は前期比8,474百万円増加(2.9%増)の301,980百万円、営業利益は前期比5,997百万円減少(9.8%減)の55,284百万円、税引前利益は前期比8,522百万円減少(14.7%減)の49,433百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比6,340百万円減少(15.4%減)の34,883百万円となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率は前連結会計年度の16.3%から当連結会計年度は12.9%へと低下しました。
当社グループは、2019年4月より2022年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画において、2022年3月期の経営指標(連結売上高380,000百万円、連結営業利益78,000百万円)を達成することを目指し、2020年度3月期の目標数値を連結売上高310,000百万円、営業利益60,000百万円としておりました。その結果、当連結会計年度の売上高は、計画は下回るも全地域において増収を達成しました。営業利益については、増収により粗利が増加したものの、原価率の上昇や新製品開発を主とした研究開発費の増加などにより、計画未達となりました。2021年3月期については、引き続きコアビジネスの収益力の強化を目指し、新製品開発力と地域販売体制の強化を推進し事業を拡大するとともに、ライフサイエンス事業の事業化スピードを加速し、早期の利益貢献を目指します。
① 売上高
当連結会計年度は、国内販売につきましては、主に血球計数検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野及びライフサイエンス分野を中心に機器及び試薬の売上が伸長いたしました。海外販売につきましては、主に血液凝固検査分野において試薬の売上が減少いたしましたが、血球計数検査分野において試薬の売上が伸長いたしました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べて8,474百万円増加(2.9%増)の301,980百万円となりました。
国内での売上高は46,725百万円と2,653百万円の増加(6.0%増)となり、海外での売上高は255,255百万円と5,820百万円の増加(2.3%増)となった結果、海外売上高比率は前期比0.5ポイント減少の84.5%となりました。
海外の地域別では、米州が71,037百万円(前期比518百万円増、0.7%増)、EMEAが77,250百万円(前期比1,573百万円増、2.1%増)、中国が80,048百万円(前期比1,834百万円増、2.3%増)、アジア・パシフィックが26,919百万円(前期比1,893百万円増、7.6%増)となりました。
② 売上原価
売上原価は、前期比10,274百万円増加(7.8%増)の142,173百万円となりました。また、売上原価率は、47.1%(前期比2.2ポイント増加)となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、販売体制の強化等により、前期比2,315百万円増加(2.9%増)の83,545百万円となりました。また、売上高に対する比率は前連結会計年度と同じく27.7%でありました。
④ 研究開発費
研究開発費は、商品ポートフォリオ充実のために新商品の開発及びライフサイエンス分野を中心に研究開発を推進したこと等により、前期比2,183百万円増加(11.1%増)の21,761百万円となりました。また、売上高に対する比率は、前連結会計年度の6.7%から7.2%へと0.5ポイント増加いたしました。
⑤ 損益の状況
営業利益は、売上高が伸張したものの、原価率の悪化、販売費及び一般管理費や研究開発費の増加により、前期比5,997百万円減少(9.8%減)の55,284百万円、売上高営業利益率は前連結会計年度の21.0%から18.3%へと2.7ポイント減少いたしました。なお、為替の影響は、前連結会計年度と比較して5,289百万円の減益要因となりました。
税引前利益は、営業利益が減益となったこと、持分法による投資損失が前期比605百万円増加したこと及び為替差損が前期比1,431百万円増加したこと等によって、前期比8,521百万円減少(14.7%減)の49,433百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用が前期2,169百万円減少(12.9%減)の14,619百万円となり、前期比6,340百万円減少(15.4%減)の34,883百万円となりました。
(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが事業を展開していく上で、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性のある事項については、「2 事業等のリスク」に記載しておりますので、ご参照ください。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金調達と流動性マネジメント
運転資金は必要に応じて短期銀行借入等で調達します。各連結子会社については、運転資金確保のために必要に応じて銀行借入を行いますが、国内の子会社については、2003年10月より当社と各社との資金決済にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、資金の調達・運用を一元化して効率化を図っております。
また、当社は、現在、株式会社格付投資情報センター(R&I)よりAA-(ダブルAマイナス)の発行体格付を取得しており、毎年レビューを受けて格付を更新しております。高い格付は資本市場から資金調達する際の調達コストを低減するだけではなく、ステークホルダーや世間一般からの信用向上にも貢献します。今後も格付を維持・向上していくために、売上高・利益と資産及び負債・資本のバランスに考慮してまいります。
設備投資等の長期資金需要に関しては、投資回収期間とリスクを勘案したうえで調達方法を決定しております。なお、当連結会計年度は、設備投資及び研究開発活動等の資金について、主に営業活動の結果得られた資金から充当しております。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「1.経営成績等の概要 (2) 財政状態の分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「1.経営成績等の概要 (3) キャッシュ・フローの分析」に記載しておりますので、ご参照ください。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成に関する重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 3.重要な会計方針」に記載しておりますので、ご参照ください。
なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルスの影響に関して、新型コロナウイルスの感染が終息に向かい、経済活動も徐々に再開し、翌連結会計年度第2四半期の売上高が対前年同期で微減程度まで回復すると想定しております。その前提に基づき、当連結会計年度において会計上の見積りを行った結果、当連結会計年度における連結財務諸表に及ぼす影響は軽微なものと判断しております。