四半期報告書-第55期第3四半期(令和3年10月1日-令和3年12月31日)
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルスに対するワクチン接種の普及、及び新規感染者数の低下による全国的な緊急事態宣言の解除により、社会活動や個人消費は持ち直しの傾向が見られたものの、新たな変異株(オミクロン株)の出現により、後半は再び消費マインドの抑制傾向が見受けられました。海外においては、国や地域によるばらつきを伴いつつ、全体的には回復基調にあるものの、米国金融政策の引き締め方向への転換、中国での債務・エネルギー問題に端を発する景気減速懸念等により、先行きは依然として不透明になっております。
医療面におきましては、高齢化や健康・医療ニーズの多様化といった背景に加え、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点として、医療環境自体が大きく変化しております。国内では感染者が増加した際の医療体制逼迫の解消や必要物資の安定供給、医療分野におけるデジタル化への対応等、ニューノーマルに対応する新たな医療サービスへの期待が高まっております。また海外においても、先進国の高齢化に伴う医療の適正化、新興国の医療需要拡大と医療の質・サービス向上へのニーズ、予防医療の必要性の高まり等を受け、人工知能(AI)やビッグデータ解析等の最先端技術の応用が急速に進展しており、さらなる成長機会が見込まれております。
このような状況の下、当社はヘマトロジー※分野における製品ポートフォリオの持続的な拡充を目指し、次世代フラッグシップモデル「多項目自動血球分析装置 XRシリーズ」と、白血球3分類コンパクトモデル「多項目自動血球計数装置 XQシリーズ」を日本国内から販売開始しております。現在、各国における許認可取得を進めており、順次グローバルな販売活動を展開してまいります。当社は、地域の特性や施設のニーズに応じた検査室運営の最適化に貢献してまいります。
また、個別化医療の実現を目指した取り組みとして、自社の全自動免疫測定装置HISCL-5000/HISCL-800を用いた血液中のアミロイドβ測定検査試薬について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ製造販売承認申請を実施いたしました。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳にたまり、神経細胞に障害を与えることが原因とされております。当社は脳内のアミロイドβの蓄積状況把握を補助する検査試薬の提供により、患者さんの負担を減らし、いち早く治療を開始できる環境構築を目指してまいります。
なお、物流面での新たな取り組みとして、当社とヤマト運輸株式会社により、ドライアイスフリーによるマイナス70度超低温帯での遺伝子検査用試薬の混載輸送を開始いたしました。この取り組みは、厳格な品質・温度管理が必要な医薬品等の長距離輸送において、これまで不可欠と考えられていたドライアイスを一切使用しない、環境への配慮と低コストを両立した画期的なモデルであります。今後はこのモデルを活用し、対象品目・配送エリアの拡大に取り組み、持続可能な医薬品コールドチェーンの実現、医療現場への高品質かつ安定した製品供給を行ってまいります。
※ ヘマトロジー:
前連結会計年度において表記していた「血球計数検査」について、第1四半期連結累計期間より「ヘマトロジー」として表記している。
<参考>地域別売上高
国内販売につきましては、主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬、ライフサイエンス分野における機器及び試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、国内売上高は39,283百万円(前年同期比18.0%増)となりました。
海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野及び尿検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は219,618百万円(前年同期比23.0%増)、構成比84.9%(前年同期比0.6ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は、全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、67,256百万円(前年同期比15.6%増)となりました。
この結果、当第3四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は258,901百万円(前年同期比22.2%増)、営業利益は49,870百万円(前年同期比38.9%増)、税引前四半期利益は48,065百万円(前年同期比44.4%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は32,901百万円(前年同期比41.3%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬、ライフサイエンス分野における機器及び試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、売上高は42,170百万円(前年同期比16.6%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、研究開発費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は27,630百万円(前年同期比26.9%増)となりました。
② 米州
北米においては、検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。また、シーメンス社との協業のもと、尿検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。その結果、売上高は55,848百万円(前年同期比31.7%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は2,955百万円(前年同期比208.0%増)となりました。
③ EMEA
検査需要の回復及びロシア、中欧、東欧での入札案件の獲得等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野において機器及び試薬の売上が増加しました。また、新型コロナウイルス抗原検査キットの仕入販売により、関連試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は76,936百万円(前年同期比27.9%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は12,172百万円(前年同期比62.2%増)となりました。
④ 中国
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野において試薬の売上が増加、円安の影響による増収要因もあり、売上高は62,738百万円(前年同期比11.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は7,389百万円(前年同期比142.1%増)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において試薬の売上が増加しました。また、南アジアでは、インドでの入札案件の獲得により、ヘマトロジー分野において機器の販売が伸長した他、インド、東南アジアにおいて血液凝固検査分野における機器及び試薬売上が増加しました。その結果、売上高は21,208百万円(前年同期比26.0%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は2,993百万円(前年同期比73.6%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて32,300百万円増加し、459,775百万円となりました。この主な要因は、棚卸資産が16,384百万円、無形資産が11,024百万円、現金及び現金同等物が6,977百万円増加したものの、その他の非流動資産が5,866百万円減少したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて9,385百万円増加し、128,191百万円となりました。この主な要因は、営業債務及びその他の債務が3,883百万円、未払法人所得税が3,092百万円、その他の非流動負債が2,611百万円増加したものの、未払賞与が1,935百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて22,915百万円増加し、331,584百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が17,643百万円増加、その他の資本の構成要素が3,729百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末と同水準の72.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より6,977百万円増加し、73,445百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、50,947百万円(前年同期比11,195百万円増)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が48,065百万円(前年同期比14,779百万円増)、減価償却費及び償却費が21,197百万円(前年同期比2,320百万円増)、棚卸資産の増加額が15,946百万円(前年同期比14,668百万円増)、法人所得税の支払額が12,080百万円(前年同期比419百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、26,675百万円(前年同期比3,595百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が10,179百万円(前年同期比3,679百万円増)、無形資産の取得による支出が14,465百万円(前年同期比2,421百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、18,869百万円(前年同期比556百万円減)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が15,258百万円(前年同期比220百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は18,315百万円であります。
また、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第3四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
① 2021年4月 当社は、新型コロナウイルスのRNAを検出するSARS コロナウイルス核酸キット「DetectAmp SARS-CoV-2 RT-PCRキット」について、体外診断用医薬品としての製造販売承認を取得、保険適用を受けました。
② 2021年5月 当社は、シンクサイト株式会社と、AIベースの細胞分析技術の実用化に向けた共同開発及び資本提携に関する契約を締結いたしました。
③ 2021年5月 当社は、2020年6月、神戸医療産業都市内に構築した全国初の官民連携による新型コロナウイルス感染症のPCR検査ラボラトリーをPCR検査数の拡大と機能拡充に向けて当社研究開発センター内に移転、運用を開始いたしました。
④ 2021年5月 当社と国立研究開発法人国立がん研究センターは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけてがん患者と健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査し、その結果を発表いたしました。
⑤ 2021年6月 塩野義製薬株式会社は、当社と共同開発したTh2 ケモカイン・TARC キット「HISCL™ TARC 試薬」について、新型コロナウイルス陽性患者の重症化リスクの判定補助を使用目的とする適応追加承認を取得いたしました。本製品は、当社製の全自動免疫測定装置 HISCL-5000/HISCL-800にて使用いたします。
⑥ 2021年6月 当社は、OSNA™法※1を測定原理とする遺伝子増幅検出試薬「LYNOAMP™ CK19 E」について、欧州における体外診断用医療機器規則(IVDR)※2の認証を取得いたしました。
※1 OSNA法:
当社が開発した直接遺伝子増幅(One-Step Nucleic Acid Amplification)法。リンパ節へのがん転移の有無を判定できる。
※2 体外診断用医療機器規則(IVDR):
In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(Regulation (EU) 2017/746)のことで、欧州市場において体外診断用医療機器を上市・販売・流通する場合に適用される新たな法規制。
⑦ 2021年7月 当社は、QIAGEN N.V.(キアゲン)と、がん領域コンパニオン診断薬※3の共同開発、グローバル事業に関する戦略的な業務提携に合意いたしました。
※3 コンパニオン診断薬:
医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
⑧ 2021年9月 当社と地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立神戸アイセンター病院が、共同で開発を進めてきた遺伝子パネル検査「IRDパネル検査システム(仮称)」を用いて行う「遺伝性網膜ジストロフィー※4における遺伝子診断と遺伝カウンセリング」が、先進医療B※5として承認されました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。夜盲や視野狭窄、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。
※5 先進医療B:
先進医療とは、効果、安全性等の評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、将来的に保険適用の対象にするかどうかを判断するため有効性、安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が指定したもの。そのうち先進医療Bは、医療技術ごとに施設基準を設定し、その要件を満たす医療機関でのみ実施が認められる。
⑨ 2021年12月 当社は全自動免疫測定装置HISCL-5000/HISCL-800を用いて血液中のアミロイドβを測定し、脳内アミロイドβの蓄積状態の把握を補助する検査試薬の製造販売承認申請を実施いたしました。
(1) 経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルスに対するワクチン接種の普及、及び新規感染者数の低下による全国的な緊急事態宣言の解除により、社会活動や個人消費は持ち直しの傾向が見られたものの、新たな変異株(オミクロン株)の出現により、後半は再び消費マインドの抑制傾向が見受けられました。海外においては、国や地域によるばらつきを伴いつつ、全体的には回復基調にあるものの、米国金融政策の引き締め方向への転換、中国での債務・エネルギー問題に端を発する景気減速懸念等により、先行きは依然として不透明になっております。
医療面におきましては、高齢化や健康・医療ニーズの多様化といった背景に加え、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点として、医療環境自体が大きく変化しております。国内では感染者が増加した際の医療体制逼迫の解消や必要物資の安定供給、医療分野におけるデジタル化への対応等、ニューノーマルに対応する新たな医療サービスへの期待が高まっております。また海外においても、先進国の高齢化に伴う医療の適正化、新興国の医療需要拡大と医療の質・サービス向上へのニーズ、予防医療の必要性の高まり等を受け、人工知能(AI)やビッグデータ解析等の最先端技術の応用が急速に進展しており、さらなる成長機会が見込まれております。
このような状況の下、当社はヘマトロジー※分野における製品ポートフォリオの持続的な拡充を目指し、次世代フラッグシップモデル「多項目自動血球分析装置 XRシリーズ」と、白血球3分類コンパクトモデル「多項目自動血球計数装置 XQシリーズ」を日本国内から販売開始しております。現在、各国における許認可取得を進めており、順次グローバルな販売活動を展開してまいります。当社は、地域の特性や施設のニーズに応じた検査室運営の最適化に貢献してまいります。
また、個別化医療の実現を目指した取り組みとして、自社の全自動免疫測定装置HISCL-5000/HISCL-800を用いた血液中のアミロイドβ測定検査試薬について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ製造販売承認申請を実施いたしました。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳にたまり、神経細胞に障害を与えることが原因とされております。当社は脳内のアミロイドβの蓄積状況把握を補助する検査試薬の提供により、患者さんの負担を減らし、いち早く治療を開始できる環境構築を目指してまいります。
なお、物流面での新たな取り組みとして、当社とヤマト運輸株式会社により、ドライアイスフリーによるマイナス70度超低温帯での遺伝子検査用試薬の混載輸送を開始いたしました。この取り組みは、厳格な品質・温度管理が必要な医薬品等の長距離輸送において、これまで不可欠と考えられていたドライアイスを一切使用しない、環境への配慮と低コストを両立した画期的なモデルであります。今後はこのモデルを活用し、対象品目・配送エリアの拡大に取り組み、持続可能な医薬品コールドチェーンの実現、医療現場への高品質かつ安定した製品供給を行ってまいります。
※ ヘマトロジー:
前連結会計年度において表記していた「血球計数検査」について、第1四半期連結累計期間より「ヘマトロジー」として表記している。
<参考>地域別売上高
前第3四半期 連結累計期間 | 当第3四半期 連結累計期間 | 前年同期比 (%) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | |||
国内 | 33,295 | 15.7 | 39,283 | 15.1 | 118.0 | |
米州 | 45,637 | 21.6 | 59,275 | 22.9 | 129.9 | |
EMEA | 59,589 | 28.1 | 76,184 | 29.4 | 127.8 | |
中国 | 56,393 | 26.6 | 62,792 | 24.3 | 111.3 | |
アジア・パシフィック | 16,933 | 8.0 | 21,366 | 8.3 | 126.2 | |
海外計 | 178,553 | 84.3 | 219,618 | 84.9 | 123.0 | |
合計 | 211,848 | 100.0 | 258,901 | 100.0 | 122.2 |
国内販売につきましては、主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬、ライフサイエンス分野における機器及び試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、国内売上高は39,283百万円(前年同期比18.0%増)となりました。
海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野及び尿検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は219,618百万円(前年同期比23.0%増)、構成比84.9%(前年同期比0.6ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は、全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、67,256百万円(前年同期比15.6%増)となりました。
この結果、当第3四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は258,901百万円(前年同期比22.2%増)、営業利益は49,870百万円(前年同期比38.9%増)、税引前四半期利益は48,065百万円(前年同期比44.4%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は32,901百万円(前年同期比41.3%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
主に新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬、ライフサイエンス分野における機器及び試薬の売上が増加したことに加え、メディカルロボット事業分野における機器の販売が伸長しました。その結果、売上高は42,170百万円(前年同期比16.6%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、研究開発費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は27,630百万円(前年同期比26.9%増)となりました。
② 米州
北米においては、検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。また、シーメンス社との協業のもと、尿検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。その結果、売上高は55,848百万円(前年同期比31.7%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は2,955百万円(前年同期比208.0%増)となりました。
③ EMEA
検査需要の回復及びロシア、中欧、東欧での入札案件の獲得等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野において機器及び試薬の売上が増加しました。また、新型コロナウイルス抗原検査キットの仕入販売により、関連試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は76,936百万円(前年同期比27.9%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は12,172百万円(前年同期比62.2%増)となりました。
④ 中国
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野、免疫検査分野において試薬の売上が増加、円安の影響による増収要因もあり、売上高は62,738百万円(前年同期比11.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は7,389百万円(前年同期比142.1%増)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において試薬の売上が増加しました。また、南アジアでは、インドでの入札案件の獲得により、ヘマトロジー分野において機器の販売が伸長した他、インド、東南アジアにおいて血液凝固検査分野における機器及び試薬売上が増加しました。その結果、売上高は21,208百万円(前年同期比26.0%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は2,993百万円(前年同期比73.6%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて32,300百万円増加し、459,775百万円となりました。この主な要因は、棚卸資産が16,384百万円、無形資産が11,024百万円、現金及び現金同等物が6,977百万円増加したものの、その他の非流動資産が5,866百万円減少したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて9,385百万円増加し、128,191百万円となりました。この主な要因は、営業債務及びその他の債務が3,883百万円、未払法人所得税が3,092百万円、その他の非流動負債が2,611百万円増加したものの、未払賞与が1,935百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて22,915百万円増加し、331,584百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が17,643百万円増加、その他の資本の構成要素が3,729百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末と同水準の72.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より6,977百万円増加し、73,445百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、50,947百万円(前年同期比11,195百万円増)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が48,065百万円(前年同期比14,779百万円増)、減価償却費及び償却費が21,197百万円(前年同期比2,320百万円増)、棚卸資産の増加額が15,946百万円(前年同期比14,668百万円増)、法人所得税の支払額が12,080百万円(前年同期比419百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、26,675百万円(前年同期比3,595百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が10,179百万円(前年同期比3,679百万円増)、無形資産の取得による支出が14,465百万円(前年同期比2,421百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、18,869百万円(前年同期比556百万円減)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が15,258百万円(前年同期比220百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は18,315百万円であります。
また、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第3四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
① 2021年4月 当社は、新型コロナウイルスのRNAを検出するSARS コロナウイルス核酸キット「DetectAmp SARS-CoV-2 RT-PCRキット」について、体外診断用医薬品としての製造販売承認を取得、保険適用を受けました。
② 2021年5月 当社は、シンクサイト株式会社と、AIベースの細胞分析技術の実用化に向けた共同開発及び資本提携に関する契約を締結いたしました。
③ 2021年5月 当社は、2020年6月、神戸医療産業都市内に構築した全国初の官民連携による新型コロナウイルス感染症のPCR検査ラボラトリーをPCR検査数の拡大と機能拡充に向けて当社研究開発センター内に移転、運用を開始いたしました。
④ 2021年5月 当社と国立研究開発法人国立がん研究センターは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけてがん患者と健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査し、その結果を発表いたしました。
⑤ 2021年6月 塩野義製薬株式会社は、当社と共同開発したTh2 ケモカイン・TARC キット「HISCL™ TARC 試薬」について、新型コロナウイルス陽性患者の重症化リスクの判定補助を使用目的とする適応追加承認を取得いたしました。本製品は、当社製の全自動免疫測定装置 HISCL-5000/HISCL-800にて使用いたします。
⑥ 2021年6月 当社は、OSNA™法※1を測定原理とする遺伝子増幅検出試薬「LYNOAMP™ CK19 E」について、欧州における体外診断用医療機器規則(IVDR)※2の認証を取得いたしました。
※1 OSNA法:
当社が開発した直接遺伝子増幅(One-Step Nucleic Acid Amplification)法。リンパ節へのがん転移の有無を判定できる。
※2 体外診断用医療機器規則(IVDR):
In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(Regulation (EU) 2017/746)のことで、欧州市場において体外診断用医療機器を上市・販売・流通する場合に適用される新たな法規制。
⑦ 2021年7月 当社は、QIAGEN N.V.(キアゲン)と、がん領域コンパニオン診断薬※3の共同開発、グローバル事業に関する戦略的な業務提携に合意いたしました。
※3 コンパニオン診断薬:
医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
⑧ 2021年9月 当社と地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立神戸アイセンター病院が、共同で開発を進めてきた遺伝子パネル検査「IRDパネル検査システム(仮称)」を用いて行う「遺伝性網膜ジストロフィー※4における遺伝子診断と遺伝カウンセリング」が、先進医療B※5として承認されました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。夜盲や視野狭窄、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。
※5 先進医療B:
先進医療とは、効果、安全性等の評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、将来的に保険適用の対象にするかどうかを判断するため有効性、安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が指定したもの。そのうち先進医療Bは、医療技術ごとに施設基準を設定し、その要件を満たす医療機関でのみ実施が認められる。
⑨ 2021年12月 当社は全自動免疫測定装置HISCL-5000/HISCL-800を用いて血液中のアミロイドβを測定し、脳内アミロイドβの蓄積状態の把握を補助する検査試薬の製造販売承認申請を実施いたしました。