四半期報告書-第54期第1四半期(令和2年4月1日-令和2年6月30日)
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大及び影響長期化の懸念から、経済の急速な減速等、先行きに対する不透明感が強まっております。海外においても、中国では経済の回復が見られるものの、新型コロナウイルス感染症の拡大は継続しており、経済規模が全体的に縮小する見通しとなっております。
医療面におきましては、国内では医療及びヘルスケア分野は高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に、医療関連産業の活性化は、引き続き今後も見込まれております。海外においても先進国の高齢化進展、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大、医療水準の質・サービスの向上が進み、医療の効率化、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)等の最新技術を取り込んだ構造的な変革が見られます。ただし、グローバルでの新型コロナウイルス感染者の増加を受け、今回のようなパンデミックにも対応可能な医療体制の在り方、公衆衛生の見直しを迫られ、医療環境自体が大きく変容する可能性があります。当社においても、各国における不要不急な外出制限措置等により、医療機関における検査数が減少する等、短期的な需要減少が見られております。
このような状況の下、当社は血液凝固検査分野における効率的な検査ワークフローを可能にする「全自動血液凝固測定装置 CN-6500/CN-3500」を日本市場で発売いたします。本製品は、高い生産性・信頼性・操作性・サービス性を有する当社の全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000の特長を継承しつつ、当社の全自動免疫測定装置 HISCL™-5000/HISCL™-800に搭載している化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescence Enzyme Immunoassay 以下、CLEIA法)を測定原理とするユニットを加えた一体機です。これにより、従来の全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000で測定可能な血液凝固項目や血小板凝集能項目に加えCLEIA法を用いた凝固分子マーカー等、血栓・止血領域における幅広い検査オーダーに応じて柔軟に測定することを可能とし、医療現場のニーズに応じた効率的な検査ワークフローを実現いたします。今後もCLEIA法を用いた血液凝固検査・免疫検査に関する研究・開発を推進することで、新たな価値を提供してまいります。
新型コロナウイルス感染症の拡大に備え、神戸市内における新型コロナウイルス感染症向けのPCR検査体制強化に貢献するため、神戸市、当社及びみらかホールディングス株式会社(現 H.U.グループホールディングス株式会社)の子会社である株式会社エスアールエルの3者にて、神戸医療産業都市内の衛生検査所「シスメックスBMAラボラトリー」にPCR検査体制を新たに構築し運用を開始いたしました。本取り組みでは、PCR検査を当社が担当し、検査体制の構築支援及び検体回収・結果報告等を株式会社エスアールエルが担当いたします。なお、必要に応じてPCR検査の実施体制を強化する予定であります。3者は、本取り組みを通じて新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされている地域住民の身体的、精神的負担の軽減を目指してまいります。
また、新型コロナウイルスのヌクレオカプシドタンパク質※1とスパイクタンパク質※2に対して特異的に反応する血中のIgG抗体、IgM抗体を検出可能な4種類の抗体検出技術を確立しました。新型コロナウイルス感染症の既往歴や新型コロナウイルスへの防御能に関する研究や臨床的意義の検討に加え、様々な疫学調査等へも活用いただくために、本検出技術を用いて研究を支援する研究受託サービスを開始しております。さらに、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクや治療効果モニタリングにおいて、有用な指標と示唆されているサイトカイン※3の研究用受託測定サービスを開始いたしました。本受託測定サービスは、研究機関、大学、医療機関、製薬企業等を対象に、重症化リスクや治療効果確認等臨床用途に適応した検査法の確立やワクチン・抗ウイルス剤等の創薬研究に活用可能なデータを提供いたします。当社は、疫学研究等の幅広い臨床エビデンスの蓄積や創薬等の研究促進に貢献することで、新型コロナウイルス感染症の診断・治療に貢献してまいります。
※1 ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原):
ウイルスの基本構造であり、ウイルスの性質に大きく影響するタンパク質
※2 スパイクタンパク質(S抗原):
ウイルスの周りに無数に突き出したタンパク質であり、細胞の受容体と結合することで感染が生じる。
※3 サイトカイン:
細胞から分泌されるタンパク質の総称であり、細胞間の情報を伝達する作用を持つ。
<参考>地域別売上高
国内販売につきましては、血球計数検査分野において試薬の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び臨床検査情報システムに関連するその他分野を中心に機器の売上が減少しました。その結果、国内売上高は9,380百万円(前年同期比7.5%減)となりました。
海外販売につきましては、尿検査分野及びライフサイエンス分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野、尿検査分野及び免疫検査分野を中心に試薬の売上が減少しました。その結果、当社グループの海外売上高は51,130百万円(前年同期比12.4%減)、構成比84.5%(前年同期比0.7ポイント減)となりました。
また、販売費及び一般管理費が全地域において主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響による活動制限等により減少し、18,928百万円(前年同期比8.6%減)となりました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は60,511百万円(前年同期比11.7%減)、営業利益は6,957百万円(前年同期比38.3%減)、税引前四半期利益は6,481百万円(前年同期比32.9%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4,487百万円(前年同期比33.0%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
① 日本
国内では、血球計数検査分野において試薬の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び臨床検査情報システムに関連するその他分野において機器の売上が減少しました。また、免疫検査分野においても試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は10,513百万円(前年同期比4.1%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費や研究開発費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント利益(営業利益)は6,194百万円(前年同期比10.1%減)となりました。
② 米州
北米では、血液凝固検査分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が減少し、減収となりました。中南米では、主に尿検査分野において試薬の売上が減少したものの、血球計数検査分野において機器及び試薬の売上が増加し、増収となりました。その結果、米州全体での売上高は12,895百万円(前年同期比12.0%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント損失(営業損失)は404百万円(前年同期はセグメント利益が449百万円)となりました。
③ EMEA
ライフサイエンス分野及び搬送システムに関連するその他分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び尿検査分野において試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は18,231百万円(前年同期比6.9%減)となりました。
利益面につきましては、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少しましたが、販売費及び一般管理費が減少し、セグメント利益(営業利益)は1,663百万円(前年同期比5.9%増)となりました。
④ 中国
尿検査分野及び免疫検査分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野において機器及び試薬の売上が減少しました。また、尿検査分野及び免疫検査分野においても試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は13,809百万円(前年同期比21.8%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント利益(営業利益)は287百万円(前年同期比84.4%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
血球計数検査分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び尿検査分野において試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は5,062百万円(前年同期比10.7%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント利益(営業利益)は284百万円(前年同期比53.1%減)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて20,465百万円減少し、368,826百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が7,857百万円減少、営業債権及びその他の債権(流動資産)が13,906百万円減少しましたが、棚卸資産が5,128百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて18,420百万円減少し、92,523百万円となりました。この主な要因は、営業債務及びその他の債務が8,075百万円減少、未払法人所得税が3,339百万円減少、未払賞与が2,971百万円減少、契約負債が2,087百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて2,044百万円減少し、276,302百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が3,030百万円減少しましたが、その他の資本の構成要素が517百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の71.3%から3.4ポイント増加して74.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より7,857百万円減少し、48,734百万円となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、9,904百万円(前年同期比2,168百万円増)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が6,481百万円(前年同期比3,179百万円減)、減価償却費及び償却費が6,198百万円(前年同期比436百万円増)、営業債権の減少額が13,916百万円(前年同期比9,327百万円増)、棚卸資産の増加額が4,461百万円(前年同期比823百万円増)、営業債務の減少額が4,148百万円(前年同期比2,020百万円増)、未収消費税等の減少額が3,366百万円(前年同期比424百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、8,619百万円(前年同期比8,053百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が1,915百万円(前年同期比1,342百万円減)、無形資産の取得による支出が4,625百万円(前年同期比2,251百万円増)、長期前払費用の増加を伴う支出が1,170百万円(前年同期比790百万円増)、定期預金の払戻による収入が前年同期比で7,187百万円減となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、9,085百万円(前年同期比206百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が7,517百万円(前年同期比4百万円増)、リース負債の返済による支払額が1,704百万円(前年同期比263百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」中の「中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は4,915百万円であります。
また、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第1四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は次のとおりであります。
① 2020年4月 2019年6月に国内で初めて保険適用を受けた「遺伝子変異解析セット(がんゲノムプロファイリング検査用)OncoGuide™NCCオンコパネル システム」について、当該システムを用いて行う“固形がん患者における初回治療時の包括的ゲノムプロファイル検査の実現性と治療選択への有用性を評価する前向き研究”が先進医療として適用されました。
② 2020年6月 当社と株式会社オプティムは、デジタル医療に関するオープンプラットフォームとアプリケーションを活用したソリューションサービスの企画、開発、運営を担う「ディピューラメディカルソリューションズ株式会社」を共同で設立し、活動を開始いたしました。
③ 2020年6月 2020年3月に国内で初めて新型コロナウイルス検査キットの体外診断用医薬品製造販売承認を取得した「2019-nCoV検出蛍光リアルタイムRT-PCRキット」について、唾液が検体種として追加承認されました。なお、唾液についても保険適用の対象となりました。
④ 2020年6月 当社は、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)を引き起こすウイルス(以下、SARS-CoV-2)のヌクレオカプシドタンパク質※1(以下、N抗原)とスパイクタンパク質※2(以下、S抗原)に対して、特異的に反応する血中のIgG抗体※3及びIgM抗体※4を検出可能な4つの研究用抗体検出試薬を開発し、受託サービスの提供を開始いたしました。なお、当社、国立研究開発法人国立がん研究センター及び国立研究開発法人国立国際医療研究センターにおいて、SARS-CoV-2の抗原・抗体検査法に関する共同研究を実施しており、当社が開発した前述の試薬を用いた「SARS-CoV-2陰性群」と「退院時のSARS-CoV-2患者群」間における血中のN抗原、S抗原に対するIgG抗体の濃度の比較において、明らかな弁別性能を示す結果を得ました。
※1 ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原):
ウイルスの基本構造であり、ウイルスの性質に大きく影響するタンパク質
※2 スパイクタンパク質(S抗原):
ウイルスの周りに無数に突き出したタンパク質であり、細胞の受容体と結合することで感染が生じる。
※3 IgG抗体:
血中に最も多く存在し、強い中和作用等を有するとされる抗体
※4 IgM抗体:
異物が体内に侵入することで最初に生産され一定期間増加する抗体
⑤ 2020年6月 当社及び地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院は、当社が開発した新たな検査方法である、SARS-CoV-2抗原・抗体検査、免疫学的な病態生理検査法※5の評価を共同で開始いたしました。
※5 病態生理検査法:
生体機能の破綻により症状や疾病が引きおこされる機序や経過を検査する方法。今回の免疫学的な病態生理検査法は、例えば、COVID-19の重症化を引き起こす免疫関連物質の量を測定すること示す。
⑥ 2020年6月 当社は、北米にて「Flow Cytometer XF-1600」を発売いたしました。2019年8月に発売した検体の前処理工程を自動化する「Sample Preparation System PS-10」と抗体試薬、データ解析ソフトを含めたフローサイトメーターシステムとして活用いただくことで、フローサイトメトリー(FCM)検査における検体の前処理から測定結果入手までの測定フロー全体の自動化を実現いたします。
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大及び影響長期化の懸念から、経済の急速な減速等、先行きに対する不透明感が強まっております。海外においても、中国では経済の回復が見られるものの、新型コロナウイルス感染症の拡大は継続しており、経済規模が全体的に縮小する見通しとなっております。
医療面におきましては、国内では医療及びヘルスケア分野は高齢化や健康・医療ニーズの多様化を背景に、医療関連産業の活性化は、引き続き今後も見込まれております。海外においても先進国の高齢化進展、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大、医療水準の質・サービスの向上が進み、医療の効率化、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)等の最新技術を取り込んだ構造的な変革が見られます。ただし、グローバルでの新型コロナウイルス感染者の増加を受け、今回のようなパンデミックにも対応可能な医療体制の在り方、公衆衛生の見直しを迫られ、医療環境自体が大きく変容する可能性があります。当社においても、各国における不要不急な外出制限措置等により、医療機関における検査数が減少する等、短期的な需要減少が見られております。
このような状況の下、当社は血液凝固検査分野における効率的な検査ワークフローを可能にする「全自動血液凝固測定装置 CN-6500/CN-3500」を日本市場で発売いたします。本製品は、高い生産性・信頼性・操作性・サービス性を有する当社の全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000の特長を継承しつつ、当社の全自動免疫測定装置 HISCL™-5000/HISCL™-800に搭載している化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescence Enzyme Immunoassay 以下、CLEIA法)を測定原理とするユニットを加えた一体機です。これにより、従来の全自動血液凝固測定装置 CN-6000/CN-3000で測定可能な血液凝固項目や血小板凝集能項目に加えCLEIA法を用いた凝固分子マーカー等、血栓・止血領域における幅広い検査オーダーに応じて柔軟に測定することを可能とし、医療現場のニーズに応じた効率的な検査ワークフローを実現いたします。今後もCLEIA法を用いた血液凝固検査・免疫検査に関する研究・開発を推進することで、新たな価値を提供してまいります。
新型コロナウイルス感染症の拡大に備え、神戸市内における新型コロナウイルス感染症向けのPCR検査体制強化に貢献するため、神戸市、当社及びみらかホールディングス株式会社(現 H.U.グループホールディングス株式会社)の子会社である株式会社エスアールエルの3者にて、神戸医療産業都市内の衛生検査所「シスメックスBMAラボラトリー」にPCR検査体制を新たに構築し運用を開始いたしました。本取り組みでは、PCR検査を当社が担当し、検査体制の構築支援及び検体回収・結果報告等を株式会社エスアールエルが担当いたします。なお、必要に応じてPCR検査の実施体制を強化する予定であります。3者は、本取り組みを通じて新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされている地域住民の身体的、精神的負担の軽減を目指してまいります。
また、新型コロナウイルスのヌクレオカプシドタンパク質※1とスパイクタンパク質※2に対して特異的に反応する血中のIgG抗体、IgM抗体を検出可能な4種類の抗体検出技術を確立しました。新型コロナウイルス感染症の既往歴や新型コロナウイルスへの防御能に関する研究や臨床的意義の検討に加え、様々な疫学調査等へも活用いただくために、本検出技術を用いて研究を支援する研究受託サービスを開始しております。さらに、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクや治療効果モニタリングにおいて、有用な指標と示唆されているサイトカイン※3の研究用受託測定サービスを開始いたしました。本受託測定サービスは、研究機関、大学、医療機関、製薬企業等を対象に、重症化リスクや治療効果確認等臨床用途に適応した検査法の確立やワクチン・抗ウイルス剤等の創薬研究に活用可能なデータを提供いたします。当社は、疫学研究等の幅広い臨床エビデンスの蓄積や創薬等の研究促進に貢献することで、新型コロナウイルス感染症の診断・治療に貢献してまいります。
※1 ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原):
ウイルスの基本構造であり、ウイルスの性質に大きく影響するタンパク質
※2 スパイクタンパク質(S抗原):
ウイルスの周りに無数に突き出したタンパク質であり、細胞の受容体と結合することで感染が生じる。
※3 サイトカイン:
細胞から分泌されるタンパク質の総称であり、細胞間の情報を伝達する作用を持つ。
<参考>地域別売上高
前第1四半期 連結累計期間 | 当第1四半期 連結累計期間 | 前年同期比 (%) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | |||
国内 | 10,140 | 14.8 | 9,380 | 15.5 | 92.5 | |
米州 | 15,808 | 23.1 | 13,975 | 23.1 | 88.4 | |
EMEA | 19,200 | 28.0 | 18,214 | 30.1 | 94.9 | |
中国 | 17,679 | 25.8 | 13,843 | 22.9 | 78.3 | |
アジア・パシフィック | 5,710 | 8.3 | 5,096 | 8.4 | 89.2 | |
海外計 | 58,399 | 85.2 | 51,130 | 84.5 | 87.6 | |
合計 | 68,540 | 100.0 | 60,511 | 100.0 | 88.3 |
国内販売につきましては、血球計数検査分野において試薬の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び臨床検査情報システムに関連するその他分野を中心に機器の売上が減少しました。その結果、国内売上高は9,380百万円(前年同期比7.5%減)となりました。
海外販売につきましては、尿検査分野及びライフサイエンス分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野、尿検査分野及び免疫検査分野を中心に試薬の売上が減少しました。その結果、当社グループの海外売上高は51,130百万円(前年同期比12.4%減)、構成比84.5%(前年同期比0.7ポイント減)となりました。
また、販売費及び一般管理費が全地域において主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響による活動制限等により減少し、18,928百万円(前年同期比8.6%減)となりました。
この結果、当第1四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は60,511百万円(前年同期比11.7%減)、営業利益は6,957百万円(前年同期比38.3%減)、税引前四半期利益は6,481百万円(前年同期比32.9%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は4,487百万円(前年同期比33.0%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
① 日本
国内では、血球計数検査分野において試薬の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び臨床検査情報システムに関連するその他分野において機器の売上が減少しました。また、免疫検査分野においても試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は10,513百万円(前年同期比4.1%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費や研究開発費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント利益(営業利益)は6,194百万円(前年同期比10.1%減)となりました。
② 米州
北米では、血液凝固検査分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が減少し、減収となりました。中南米では、主に尿検査分野において試薬の売上が減少したものの、血球計数検査分野において機器及び試薬の売上が増加し、増収となりました。その結果、米州全体での売上高は12,895百万円(前年同期比12.0%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント損失(営業損失)は404百万円(前年同期はセグメント利益が449百万円)となりました。
③ EMEA
ライフサイエンス分野及び搬送システムに関連するその他分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び尿検査分野において試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は18,231百万円(前年同期比6.9%減)となりました。
利益面につきましては、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少しましたが、販売費及び一般管理費が減少し、セグメント利益(営業利益)は1,663百万円(前年同期比5.9%増)となりました。
④ 中国
尿検査分野及び免疫検査分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野において機器及び試薬の売上が減少しました。また、尿検査分野及び免疫検査分野においても試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は13,809百万円(前年同期比21.8%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント利益(営業利益)は287百万円(前年同期比84.4%減)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
血球計数検査分野において機器の売上が増加しましたが、主に新型コロナウイルス感染症の拡大影響により血球計数検査分野及び尿検査分野において試薬の売上が減少しました。その結果、売上高は5,062百万円(前年同期比10.7%減)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が減少しましたが、減収及び売上原価率の悪化により売上総利益が減少し、セグメント利益(営業利益)は284百万円(前年同期比53.1%減)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて20,465百万円減少し、368,826百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が7,857百万円減少、営業債権及びその他の債権(流動資産)が13,906百万円減少しましたが、棚卸資産が5,128百万円増加したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて18,420百万円減少し、92,523百万円となりました。この主な要因は、営業債務及びその他の債務が8,075百万円減少、未払法人所得税が3,339百万円減少、未払賞与が2,971百万円減少、契約負債が2,087百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて2,044百万円減少し、276,302百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が3,030百万円減少しましたが、その他の資本の構成要素が517百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の71.3%から3.4ポイント増加して74.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より7,857百万円減少し、48,734百万円となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、9,904百万円(前年同期比2,168百万円増)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が6,481百万円(前年同期比3,179百万円減)、減価償却費及び償却費が6,198百万円(前年同期比436百万円増)、営業債権の減少額が13,916百万円(前年同期比9,327百万円増)、棚卸資産の増加額が4,461百万円(前年同期比823百万円増)、営業債務の減少額が4,148百万円(前年同期比2,020百万円増)、未収消費税等の減少額が3,366百万円(前年同期比424百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、8,619百万円(前年同期比8,053百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が1,915百万円(前年同期比1,342百万円減)、無形資産の取得による支出が4,625百万円(前年同期比2,251百万円増)、長期前払費用の増加を伴う支出が1,170百万円(前年同期比790百万円増)、定期預金の払戻による収入が前年同期比で7,187百万円減となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、9,085百万円(前年同期比206百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が7,517百万円(前年同期比4百万円増)、リース負債の返済による支払額が1,704百万円(前年同期比263百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」中の「中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は4,915百万円であります。
また、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第1四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は次のとおりであります。
① 2020年4月 2019年6月に国内で初めて保険適用を受けた「遺伝子変異解析セット(がんゲノムプロファイリング検査用)OncoGuide™NCCオンコパネル システム」について、当該システムを用いて行う“固形がん患者における初回治療時の包括的ゲノムプロファイル検査の実現性と治療選択への有用性を評価する前向き研究”が先進医療として適用されました。
② 2020年6月 当社と株式会社オプティムは、デジタル医療に関するオープンプラットフォームとアプリケーションを活用したソリューションサービスの企画、開発、運営を担う「ディピューラメディカルソリューションズ株式会社」を共同で設立し、活動を開始いたしました。
③ 2020年6月 2020年3月に国内で初めて新型コロナウイルス検査キットの体外診断用医薬品製造販売承認を取得した「2019-nCoV検出蛍光リアルタイムRT-PCRキット」について、唾液が検体種として追加承認されました。なお、唾液についても保険適用の対象となりました。
④ 2020年6月 当社は、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)を引き起こすウイルス(以下、SARS-CoV-2)のヌクレオカプシドタンパク質※1(以下、N抗原)とスパイクタンパク質※2(以下、S抗原)に対して、特異的に反応する血中のIgG抗体※3及びIgM抗体※4を検出可能な4つの研究用抗体検出試薬を開発し、受託サービスの提供を開始いたしました。なお、当社、国立研究開発法人国立がん研究センター及び国立研究開発法人国立国際医療研究センターにおいて、SARS-CoV-2の抗原・抗体検査法に関する共同研究を実施しており、当社が開発した前述の試薬を用いた「SARS-CoV-2陰性群」と「退院時のSARS-CoV-2患者群」間における血中のN抗原、S抗原に対するIgG抗体の濃度の比較において、明らかな弁別性能を示す結果を得ました。
※1 ヌクレオカプシドタンパク質(N抗原):
ウイルスの基本構造であり、ウイルスの性質に大きく影響するタンパク質
※2 スパイクタンパク質(S抗原):
ウイルスの周りに無数に突き出したタンパク質であり、細胞の受容体と結合することで感染が生じる。
※3 IgG抗体:
血中に最も多く存在し、強い中和作用等を有するとされる抗体
※4 IgM抗体:
異物が体内に侵入することで最初に生産され一定期間増加する抗体
⑤ 2020年6月 当社及び地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院は、当社が開発した新たな検査方法である、SARS-CoV-2抗原・抗体検査、免疫学的な病態生理検査法※5の評価を共同で開始いたしました。
※5 病態生理検査法:
生体機能の破綻により症状や疾病が引きおこされる機序や経過を検査する方法。今回の免疫学的な病態生理検査法は、例えば、COVID-19の重症化を引き起こす免疫関連物質の量を測定すること示す。
⑥ 2020年6月 当社は、北米にて「Flow Cytometer XF-1600」を発売いたしました。2019年8月に発売した検体の前処理工程を自動化する「Sample Preparation System PS-10」と抗体試薬、データ解析ソフトを含めたフローサイトメーターシステムとして活用いただくことで、フローサイトメトリー(FCM)検査における検体の前処理から測定結果入手までの測定フロー全体の自動化を実現いたします。