四半期報告書-第55期第2四半期(令和3年7月1日-令和3年9月30日)

【提出】
2021/11/12 13:08
【資料】
PDFをみる
【項目】
35項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当第2四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、ワクチンの普及は促進されたものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等が再発令され、引き続き社会活動や個人消費は弱い動きとなりました。海外においては、国や地域によるばらつきを伴いつつも、経済活動の規制緩和により緩やかに景気回復が進みましたが、財政・金融政策の段階的縮小や世界的半導体不足の影響等により、先行きは依然として不透明になっております。
医療面におきましては、高齢化や健康・医療ニーズの多様化といった背景に加え、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点として、医療環境自体が大きく変化しております。国内では感染者増加による医療体制逼迫の解消や必要物資の安定供給、医療分野におけるデジタル化への対応等、ニューノーマルに対応する新たな医療サービスへの期待が高まっております。また海外においても、先進国の高齢化に伴う医療の適正化、新興国の医療需要拡大と医療の質・サービス向上へのニーズ、予防医療の必要性の高まり等を受け、人工知能(AI)やビッグデータ解析等の最先端技術の応用が急速に進展しており、さらなる成長機会が見込まれております。
このような状況の下、当社はヘマトロジー※1分野における製品ポートフォリオの持続的な拡充を目指し、次世代フラッグシップモデル「多項目自動血球分析装置 XRシリーズ」と、白血球3分類コンパクトモデル「多項目自動血球計数装置 XQシリーズ」を日本国内から販売開始しております。今後、各国における許認可取得を経て、グローバルな販売活動を展開してまいります。当社は、地域の特性や施設のニーズに応じた検査室運営の最適化に貢献してまいります。
ライフサイエンス分野においては、がん領域のコンパニオン診断薬※2開発に経験豊富なQIAGEN N.V.(以下、キアゲン)と共同開発・グローバル事業に関する戦略的な業務提携に合意いたしました。キアゲンの有するコンパニオン診断薬開発経験を活用することにより、グローバルに製薬企業との連携を強化し、コンパニオン診断薬の早期開発及び臨床実装に向けて取り組んでまいります。
また、地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立神戸アイセンター病院(以下、神戸アイセンター病院)と共同で開発を進めてきた遺伝子パネル検査「IRDパネル検査システム(仮称)」を用いて行う「遺伝性網膜ジストロフィー※3における遺伝子診断と遺伝カウンセリング」が、先進医療B※4として承認されました。今後、本検査を神戸アイセンター病院にて開始するとともに、患者さんの受診機会拡大を目的に、本検査を実施いただける先進医療協力施設を増やしてまいります。
なお、国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori™ サージカルロボットシステム」のグローバル総代理店である当社は、日本の医療機関を対象に製品導入を推進しております。当社と川崎重工業株式会社が共同出資する株式会社メディカロイドが進める海外における薬事承認の取得活動と連携し、海外市場においても順次製品の導入を推進してまいります。
※1 ヘマトロジー:
前連結会計年度において表記していた「血球計数検査」について、第1四半期連結累計期間より「ヘマトロジー」として表記している。
※2 コンパニオン診断薬:
医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
※3 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。夜盲や視野狭窄、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。
※4 先進医療B:
先進医療とは、効果、安全性等の評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、将来的に保険適用の対象にするかどうかを判断するため有効性、安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が指定したもの。そのうち先進医療Bは、医療技術ごとに施設基準を設定し、その要件を満たす医療機関でのみ実施が認められる。
<参考>地域別売上高
前第2四半期
連結累計期間
当第2四半期
連結累計期間
前年同期比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国内21,27516.125,55715.0120.1
米州29,36622.238,22722.7130.2
EMEA36,88527.949,23829.2133.5
中国33,64225.542,14525.0125.3
アジア・パシフィック10,9138.313,5858.1124.5
海外計110,80783.9143,19685.0129.2
合計132,082100.0168,753100.0127.8

国内販売につきましては、主に尿検査分野における機器の販売伸長に加え、新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬、ライフサイエンス分野における機器及び試薬の売上が増加しました。その結果、国内売上高は25,557百万円(前年同期比20.1%増)となりました。
海外販売につきましては、前年同期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、検査需要の回復に伴い、主にヘマトロジー分野及び尿検査分野における試薬の売上が増加したことに加え、為替相場が円安に推移した結果、当社グループの海外売上高は143,196百万円(前年同期比29.2%増)、構成比85.0%(前年同期比1.1ポイント増)となりました。
また、販売費及び一般管理費につきましては、前年同期は、全地域において新型コロナウイルス感染症拡大に伴い活動制限等の影響がありましたが、主に販売・サービス活動の再開に伴い増加し、44,065百万円(前年同期比15.7%増)となりました。
この結果、当第2四半期連結累計期間の連結業績は、売上高は168,753百万円(前年同期比27.8%増)、営業利益は33,711百万円(前年同期比68.5%増)、税引前四半期利益は32,088百万円(前年同期比77.4%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は22,243百万円(前年同期比75.8%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本
主に尿検査分野における機器の販売伸長に加え、新型コロナウイルス感染症の検査に関する血液凝固検査分野及び免疫検査分野の試薬、ライフサイエンス分野における機器及び試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は27,715百万円(前年同期比19.2%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費、研究開発費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は18,957百万円(前年同期比46.4%増)となりました。
② 米州
北米においては、検査需要の回復及び機器販売が伸長したこと等により、ヘマトロジー分野において機器、試薬及び保守サービスの売上が増加しました。また、シーメンス社との協業のもと、尿検査分野において機器及び試薬売上が増加しました。その結果、売上高は35,674百万円(前年同期比31.2%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は1,775百万円(前年同期比372.4%増)となりました。
③ EMEA
検査需要の回復及びロシア、中欧、東欧での入札案件の獲得等により、ヘマトロジー分野、尿検査分野、血液凝固検査分野において機器及び試薬の売上が増加しました。また、新型コロナウイルス抗原検査キットの仕入販売により、関連試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は49,753百万円(前年同期比33.8%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は7,680百万円(前年同期比111.9%増)となりました。
④ 中国
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において試薬の売上が増加しました。その結果、売上高は42,113百万円(前年同期比25.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は4,712百万円(前年同期比289.1%増)となりました。
⑤ アジア・パシフィック
検査需要の回復に伴い、ヘマトロジー分野及び尿検査分野において試薬の売上が増加しました。また、南アジアでは、インドでの入札案件の獲得により、ヘマトロジー分野において機器の販売が伸長した他、インド、東南アジアにおいて血液凝固検査分野における機器及び試薬売上が増加しました。その結果、売上高は13,498百万円(前年同期比24.4%増)となりました。
利益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加しましたが、増収及び売上原価率の改善により売上総利益が増加し、セグメント利益(営業利益)は1,724百万円(前年同期比82.5%増)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて16,718百万円増加し、444,194百万円となりました。この主な要因は、現金及び現金同等物が11,748百万円増加、棚卸資産が9,298百万円増加したものの、営業債権及びその他の債権(流動資産)が5,151百万円減少したこと等によるものであります。
一方、負債合計は、前連結会計年度末と比べて664百万円増加し、119,471百万円となりました。この主な要因は、未払法人所得税が2,222百万円増加したものの、契約負債が1,351百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて16,053百万円増加し、324,722百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が14,720百万円増加、その他の資本の構成要素が905百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の72.0%から1.0ポイント増加して73.0%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物(以下、資金)は、前連結会計年度末より11,748百万円増加し、78,216百万円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>営業活動の結果得られた資金は、37,230百万円(前年同期比13,410百万円増)となりました。この主な要因は、税引前四半期利益が32,088百万円(前年同期比13,997百万円増)、減価償却費及び償却費が13,799百万円(前年同期比1,261百万円増)、営業債権の減少額が6,062百万円(前年同期比2,407百万円減)、棚卸資産の増加額が9,527百万円(前年同期比7,940百万円増)、法人所得税の支払額が6,986百万円(前年同期比303百万円増)となったこと等によるものであります。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>投資活動の結果使用した資金は、15,258百万円(前年同期比154百万円増)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出が4,132百万円(前年同期比67百万円増)、無形資産の取得による支出が9,309百万円(前年同期比922百万円増)となったこと等によるものであります。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>財務活動の結果使用した資金は、10,650百万円(前年同期比156百万円増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額が7,523百万円(前年同期比6百万円増)となったこと等によるものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」内の「優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」の記載について重要な変更はありません。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「重要な会計方針及び見積り」の記載について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は11,610百万円であります。
また、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
なお、当第2四半期連結累計期間における、主な研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
① 2021年4月 当社は、新型コロナウイルスのRNAを検出するSARS コロナウイルス核酸キット「DetectAmp SARS-CoV-2 RT-PCRキット」について、体外診断用医薬品としての製造販売承認を取得、保険適用を受けました。
② 2021年5月 当社は、シンクサイト株式会社と、AIベースの細胞分析技術の実用化に向けた共同開発及び資本提携に関する契約を締結いたしました。
③ 2021年5月 当社は、2020年6月、神戸医療産業都市内に構築した全国初の官民連携による新型コロナウイルス感染症のPCR検査ラボラトリーを当社研究開発センター内に移転、運用を開始いたしました。
④ 2021年5月 当社と国立研究開発法人国立がん研究センターは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけてがん患者と健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査し、その結果を発表いたしました。
⑤ 2021年6月 塩野義製薬株式会社は、当社と共同開発したTh2 ケモカイン・TARC キット「HISCL™ TARC 試薬」について、新型コロナウイルス陽性患者の重症化リスクの判定補助を使用目的とする適応追加承認を取得いたしました。本製品は、当社製の全自動免疫測定装置 HISCL-5000/HISCL-800にて使用いたします。
⑥ 2021年6月 当社は、OSNA™法※1を測定原理とする遺伝子増幅検出試薬「LYNOAMP™ CK19 E」について、欧州における体外診断用医療機器規則(IVDR)※2の認証を取得いたしました。
※1 OSNA法:
当社が開発した直接遺伝子増幅(One-Step Nucleic Acid Amplification)法。リンパ節へのがん転移の有無を判定できる。
※2 体外診断用医療機器規則(IVDR):
In Vitro Diagnostic Medical Devices Regulation(Regulation (EU) 2017/746)のことで、欧州市場において体外診断用医療機器を上市・販売・流通する場合に適用される新たな法規制。
⑦ 2021年7月 当社は、QIAGEN N.V.(キアゲン)と、がん領域コンパニオン診断薬※3の共同開発、グローバル事業に関する戦略的な業務提携に合意いたしました。
※3 コンパニオン診断薬:
医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
⑧ 2021年9月 当社と地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立神戸アイセンター病院が、共同で開発を進めてきた遺伝子パネル検査「IRDパネル検査システム(仮称)」を用いて行う「遺伝性網膜ジストロフィー※4における遺伝子診断と遺伝カウンセリング」が、先進医療B※5として承認されました。
※4 遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy: IRD):
遺伝子変異が原因と考えられる遺伝性進行性の疾患。夜盲や視野狭窄、視力低下が主な症状であり、進行すると場合によっては失明に至ることもある。類似の症状を示すいくつかの疾患を総じて遺伝性網膜ジストロフィーと呼ぶ。
※5 先進医療B:
先進医療とは、効果、安全性等の評価が定まっていない新しい試験的な医療技術のうち、将来的に保険適用の対象にするかどうかを判断するため有効性、安全性の評価を行う医療技術として厚生労働省が指定したもの。そのうち先進医療Bは、医療技術ごとに施設基準を設定し、その要件を満たす医療機関でのみ実施が認められる。