有価証券報告書-第101期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 9:22
【資料】
PDFをみる
【項目】
151項目
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、アフターコロナへの移行に伴うインバウンド需要の増加等、社会経済活動の正常化に伴い、緩やかな回復基調にあるものの、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化等により先行き不透明な状況が続いております。
不動産賃貸業界におきましては、働き方改革の進展によるリモートワークは一部で定着化しつつあるものの、企業収益の改善や出社回帰の動きを追い風に足下の空室率は比較的安定的に推移しております。
このような環境の中、当社においては営業活動に注力した結果、当期末時点の空室率は1.87%に留まり、引き続き高い稼働率を維持しております。加えて、当社は首都圏でのアセット強化の一環として、2023年6月に東京都台東区浅草で商業ビルを取得した他、首都圏オフィスビル等へのエクイティ出資を行うなど、次なる成長に向けた新規投資に積極的に取り組むと共に、既存ビルにおいては、自然災害への予防保全や省エネ化推進を図ることで資産価値向上に努めてまいりました。
その結果、当期の連結業績は、新規投資物件の寄与等により、売上高は19,310百万円と前期比431百万円(2.3%)の増収となりました。売上原価においては、租税公課や修繕費等の費用増加により、売上総利益は6,883百万円と前期比201百万円(2.8%)の減益となり、つれて営業利益は5,083百万円と前期比292百万円(5.4%)の減益、経常利益は4,842百万円と前期比198百万円(3.9%)の減益となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、投資有価証券の売却による特別利益の減少等により、3,793百万円と前期比392百万円(9.4%)の減益となりました。
当社グループは、土地建物賃貸を主たる事業としている「土地建物賃貸事業」の単一セグメントであります。なお、当社グループが展開する事業部門別の状況は以下のとおりであります。
前連結会計年度当連結会計年度
売上高(百万円)割合(%)売上高(百万円)割合(%)
オフィスビル事業4,47623.74,44823.0
データセンタービル事業9,90352.510,11052.4
ウインズビル事業3,49818.53,51918.2
商業施設・物流倉庫等事業1,0015.31,2316.4
18,879100.019,310100.0

①オフィスビル事業
当社グループは大阪・東京のビジネス地区を中心に計8棟のオフィスビルを保有・賃貸しております。最新の物件はデータセンタービルの運営ノウハウを活かした高度なBCP機能を有するほか、築年数が経過したビルでも、計画的な設備更新やメンテナンスにより、新築ビルと遜色のない、安全で快適な事業空間の提供に努めています。
都心部で相次ぐ新築オフィスビルの竣工に伴う競争激化には留意を要しますが、現時点では当社グループのオフィスビル事業への影響は軽微で、市場平均よりは高い稼働率を維持しております。
連結売上高は、一部テナント退去による賃料減少等により、前年同期比27百万円(0.6%)減収の4,448百万円となりました。
②データセンタービル事業
当社グループは大阪都心部に計8棟のデータセンタービルを保有・賃貸しております。24時間365日絶えず稼働するデータセンタービルでは、免震構造等の採用による高い防災性能、大型非常用発電機による安定的な電力供給、先進のセキュリティシステム等により、高い信頼性を確保しております。また、30年以上にわたるデータセンタービル賃貸実績に基づく、充実した保守管理サービスも高く評価されております。
連結売上高は、OBPビルの稼働向上等により、前年同期比206百万円(2.1%)増収の10,110百万円となりました。
③ウインズビル事業
ウインズビルは日本中央競馬会(JRA)が主催するレースの投票券を場外で発売する施設で、当社グループは京都・大阪・神戸の都心部に計5棟を保有・賃貸しております。当事業の歴史は創業時にさかのぼり、長年にわたって安定的な収益を生み出す中核事業の一つとなっております。
インターネット投票の普及が進み、ウインズビルでの投票券の売上比率は低下傾向にありますが、固定賃料で賃貸しておりますので業績への影響は軽微であります。
連結売上高は前年同期比21百万円(0.6%)増収の3,519百万円となりました。
④商業施設・物流倉庫等事業
当社グループは、首都圏・関西圏を中心に全国で7棟の商業施設・物流倉庫等を保有・賃貸しております。商業施設はターミナル駅、物流倉庫は幹線道路近くと交通利便性の高い立地をターゲットとし、収益物件の取得に向けて情報収集活動に努めております。長期経営計画においては、住宅やヘルスケア施設等の新たなアセットタイプも含めた物件の取得によるアセットの拡充を目指しております。
連結売上高は、2023年6月に取得した浅草駅前ビルの寄与等もあり、前年同期比230百万円(23.0%)増収の1,231百万円となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループの主な事業は、土地建物賃貸事業であり、①生産実績②受注実績の該当はありません。
③販売実績
主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
日本中央競馬会3,481,80518.43,493,38718.1
エクイニクス・ジャパン㈱3,424,76018.13,491,46718.1
ソフトバンク㈱2,407,04112.72,394,07212.4

(2) 財政状態
当連結会計年度末における総資産は166,616百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,294百万円(9.4%)増加しました。現金及び預金は3,355百万円増加したほか、2023年6月に浅草駅前ビルの信託受益権を取得したことにより信託土地、信託建物が計5,940百万円増加したこと、また、首都圏オフィスビル等へのエクイティ出資や株式相場の上昇に伴う保有有価証券の時価増加により投資有価証券が7,775百万円増加したことが主な要因であります。
負債合計は91,741百万円となり、前連結会計年度末比10,291百万円(12.6%)増加しました。固定資産の取得に要する資金調達を行ったこと等により有利子負債が8,373百万円増加したことが主な要因であります。
純資産合計は74,874百万円となり、前連結会計年度末比4,003百万円(5.6%)増加しました。その他有価証券評価差額金は2,052百万円増加したほか、利益剰余金が2,022百万円増加したことが主な要因であります。
(3) キャッシュ・フローの状況
科目前連結会計年度当連結会計年度
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)8,9178,221
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△12,104△11,273
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△1,3766,407
現金及び現金同等物の増減額(百万円)△4,5633,355
現金及び現金同等物の期末残高(百万円)5,3128,668

①現金及び現金同等物
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は8,668百万円となり、前期末比3,355百万円増加しました。
②営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は8,221百万円(前連結会計年度は8,917百万円の収入)となりました。税金等調整前当期純利益5,476百万円、減価償却費3,976百万円、預り敷金の受入れなどの営業債務の増加1,321百万円により主要な資金を得ましたが、法人税等の支払額1,277百万円や未払消費税等の減少855百万円のほか、投資有価証券売却益236百万円の特別利益の控除要因がありました。
③投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により使用した資金は11,273百万円(前連結会計年度は12,104百万円の支出)となりました。投資有価証券の売却により297百万円、工事負担金等受入により312百万円の資金を得ましたが、浅草駅前ビルの信託土地、信託建物取得を主体に有形固定資産の取得により6,931百万円の支出があったほか、首都圏オフィスビルなどへのエクイティ出資を行ったことで投資有価証券の取得による支出4,919百万円がありました。
④財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により得られた資金は6,407百万円(前連結会計年度は1,376百万円の支出)となりました。固定資産取得資金やエクイティ出資資金として、長期借入れにより6,300百万円、社債で5,000百万円を調達しましたが、配当金の支払額1,761百万円、自己株式の取得167百万円、長期借入金の返済2,626百万円、短期借入金の返済300百万円の支出がありました。
⑤資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要の主なものは、新たなビルの取得、開発及び所有ビルの改修工事等の設備投資に係る資金であります。その所要資金は自己資金、金融機関からの借入及び社債の発行により調達しております。また、当社の事業は資金回収に長期間を要するため、返済・償還期限を長めに設定しております。当連結会計年度末の有利子負債の内訳については、連結附属明細表の「社債明細表」及び「借入金等明細表」に記載のとおりであります。
当社グループは、2023年5月策定の長期経営計画(2024年3月期から2033年3月期の10ヵ年を対象)において、財務バランスの健全性を維持するため自己資本比率は30%以上、ネット有利子負債はEBITDA(償却前営業利益)の10倍程度の堅持を掲げております。
2024年3月期を初年度とする長期経営計画の進捗は下表の通りであります。
指標2023年3月期
(参考)
2024年3月期
(初年度)
長期経営計画
フェーズⅠ2024年3月期~2028年3月期フェーズⅡ2029年3月期~2033年3月期
事業利益
(営業利益+投資事業組合運用損益等)
53億円51億円70億円(2028年3月期)140億円(2033年3月期)
償却前事業利益
(事業利益+減価償却費)
91億円91億円110億円(同上)180億円(同上)
自己資本比率46.5%44.9%30%以上 ※
ネット有利子負債
/EBITDA倍率
6.7倍7.4倍10倍程度
ROA
(事業利益/総資産)
3.6%3.2%4.0%以上5.0%以上
ROE
(当期純利益/自己資本)
5.9%5.2%6.0%以上8.0%以上
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
ネット有利子負債/EBITDA倍率:ネット有利子負債/償却前営業利益(営業利益+減価償却費)
ROA(事業利益/総資産):事業利益/((前連結会計年度末総資産+当連結会計年度末総資産)/2)
ROE(当期純利益/自己資本):
当期純利益/((前連結会計年度末自己資本+当連結会計年度末自己資本)/2)

※ 財務規律を維持する上での下限値として設定しておりますが、長期経営計画最終年度の2033年3月期末の自己資本比率は40%程度を計画しているなど健全な財務体質を堅持していく方針です。
(補足)
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
3.ネット有利子負債は、有利子負債残高から現金及び預金残高を減算しております。
2024年3月期
(初年度)
長期経営計画
フェーズⅠ2024年3月期~2028年3月期(累計)フェーズⅡ2029年3月期~2033年3月期(累計)合計
不動産投資収益物件の取得55億円500億円1,300億円1,800億円
エクイティ投資47億円80億円80億円160億円
海外投資1億円50億円200億円250億円
既存物件の
建替え
-40億円50億円90億円
更新修繕投資既存物件の
大規模修繕
25億円100億円100億円200億円
130億円770億円1,730億円2,500億円
投資回収収益物件の売却--800億円800億円
ネット投資額-770億円930億円1,700億円

新規投資
不動産賃貸事業浅草駅前にて商業ビル(浅草駅前ビル)を取得
国内外の環境客でにぎわう浅草駅前に立地
・改修工事等によるバリューアップを通じた資産回転型事業
・安定した賃料収入による不動産賃貸事業
⇒どちらの事業でも活かせる物件
資産回転型事業
エクイティ投資東京都心のオフィスビル、兵庫県のヘルスケア施設にエクイティ投資を実施
海外投資・今後も経済成長が見込まれ、不動産マーケットでの法的な透明性が確保されている米国を最初の投資先に選定
・ファンドへの投資を通じて、現地の情報やノウハウを吸収

サステナビリティ
環境投資人財投資
・GHG排出量の長期削減目標(2051/3期までにScope1、2、3ネットゼロ)を策定
・オフィスビル7棟と一部データセンタービルで、再生可能エネルギーの利用開始
・グリーンビル認証を新たに2棟で取得
・人員拡大と生産性向上のため大阪本社オフィスを拡張
・経験者・新卒採用を強化
・従業員のスキルアップのため職務・階層別研修を大幅拡充

株主還元
2024年3月期長期経営計画
配当性向47.8%45%程度


(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 固定資産の減損
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 資産除去債務
当社グループは、一部の借地について、不動産賃貸借契約に基づく退去時の原状回復に係る債務等を有しておりますが、当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、また、現時点において将来退去する予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積もることができません。そのため、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりません。
将来の退去時期が明らかになるなど、当該債務額を合理的に見積もることが可能になった場合には、その時点で当該債務に見合う資産除去債務を計上することになります。