有価証券報告書-第138期(2024/04/01-2025/03/31)
1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
(概況)
当連結会計年度の業績は、売上高2兆5,887億円、営業利益2,108億円、経常利益4,908億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,777億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として2,933億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は2,471億円となりました。
<セグメント別概況>当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。
当社グループにおける経営管理体制の一部見直しに伴い、報告セグメントについて再考した結果、当連結会計年度より、従来の「不定期専用船事業」を、「自動車事業」「ドライバルク事業」「エネルギー事業」に分割して表示する方法に変更しています。また、「不動産業」については、その相対的な事業規模を勘案し、「その他事業」に含めて表示する方法に変更しています。
これに伴い、前連結会計年度の数値を変更後の区分に合わせて組替再表示しています。
<定期船事業>コンテナ船部門:新造船竣工による船舶供給量の増加は続いたものの、堅調な荷動きや紅海情勢及び港湾混雑等に起因する需給の逼迫がみられ、市況は第3四半期まで好調に推移しました。第4四半期の市況は低調で推移しましたが、通年では前連結会計年度の水準を上回りました。ONE社においても、前連結会計年度比で運賃が上昇した結果、利益水準は前連結会計年度を上回りました。
ターミナル関連部門:国内ターミナルでは前連結会計年度比で取扱量が増加しました。
海外ターミナルでは、2023年9月末に北米西岸ターミナルの関係会社株式を売却した影響により、前連結会計年度比で取扱量が減少しました。
以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。
<航空運送事業>主としてアジア発欧米向けの旺盛なEコマース需要や、半導体製造装置、自動車関連貨物の需要に支えられ、貨物取扱量は前連結会計年度比で増加しました。また、需給の引き締まりにより運賃単価も高い水準で推移しました。他方、燃料単価は前連結会計年度比で下落しました。
以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で増収増益となりました。
<物流事業>航空貨物取扱事業:アジア発の活発な荷動きに加え、第3四半期にはスポット貨物需要もあり、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。
海上貨物取扱事業:アジア域内航路を中心とした堅調な荷動きに加え、米国における関税引き上げに伴う出荷の前倒し需要により、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。
ロジスティクス事業:北米や東南アジアにおいて事業は堅調だったものの、欧州と東アジアにおいては減速しました。また、前連結会計年度に実施した成長投資に関連する一時的な費用が発生し、利益水準は前連結会計年度を下回りました。
以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で増収減益となりました。
<自動車事業>海上輸送においては、中東情勢の影響等による港湾混雑や航路変更が継続する中、最適な配船計画と本船運航により、堅調な輸送需要を取り込みました。
自動車物流においては、ターミナル事業を中心に旺盛な需要を取り込むことで業績は堅調に推移しました。
以上の結果、自動車事業全体では前連結会計年度比で増収増益となりました。
<ドライバルク事業>ケープサイズの市況は第1四半期及び第2四半期には好調を維持しましたが、12月から季節的調整局面に入りました。パナマックスサイズ以下の市況は年末に向かって軟化しましたが、好調だった第1四半期及び第2四半期に支えられました。
以上の結果、ドライバルク事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。
<エネルギー事業>VLCC(大型原油タンカー):中国での需要減退や米国からアジア地域への長距離輸送が減少したことを受け、市況は前連結会計年度を下回りました。また入渠船増加により稼働率が低下しました。
VLGC(大型LPGタンカー):新造船の竣工やパナマ運河の渇水の影響が緩和したことに伴う船腹供給の増加により、市況は前連結会計年度を下回りました。
石油製品タンカー:中国等での景気減速による需要減退を受け、市況は前連結会計年度を下回りました。
LNG船:安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。
海洋事業:FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが安定的に推移しました。
以上の結果、エネルギー事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。
<その他事業>船舶・技術事業:船用品・船用資材販売事業等は好調でしたが、燃料油販売事業は販売数量が減少しました。
客船事業:世界一周クルーズを6年ぶりに催行しました。また、夏季および第3四半期のクルーズを中心に全体として前連結会計年度比で高い乗船率を維持しました。
以上の結果、その他事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて50億円増加し、1,498億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益5,154億円、減価償却費1,546億円、持分法による投資損益△2,933億円、利息及び配当金の受取額1,892億円等により5,107億円(前年同期4,014億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△597億円(前年同期△2,856億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期及び長期借入金の返済、自己株式の取得や配当金の支払い等により△4,277億円(前年同期△1,634億円)となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。
当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績等の分析
当連結会計年度末の総資産は、投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ654億円増加し、4兆3,202億円となりました。有利子負債は、短期借入金の減少等により1,753億円減少して7,384億円となり、負債合計額も2,111億円減少し、1兆3,502億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,877億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が2兆9,188億円となり、これに非支配株主持分510億円を加えた純資産の合計は、2兆9,699億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.25に、また自己資本比率は67.6%となりました。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。
(2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2024年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの自動車事業、ドライバルク事業及びエネルギー事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には2,078億円の設備投資を行いました。
③ 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。
当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2025年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は5,202億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2025年3月31日現在990億円となっています。
当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2025年3月31日現在2,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。
なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2025年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 収益の認識
当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。
② 貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資の評価について
当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。
④ 減価償却資産の償却
当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。
⑤ 退職給付
従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。
(5)今後の見通し
<定期船事業>コンテナ船部門:紅海情勢に起因する喜望峰ルートの利用が継続することを想定していますが、引き続き新造船の竣工が予想され、船腹需給の軟化を見込んでいます。
<航空運送事業>2025年5月19日の適時開示のとおり、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換の実行時期を2025年7月1日と予定しています。2026年3月期第1四半期連結会計期間の実績および今後の業績予想につきましては、同株式交換の実行時期をふまえ適切に開示する予定です。
<物流事業>航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加するものの、運賃の低下により利益水準は低下することを見込んでいます。
ロジスティクス事業:北米や東南アジアを中心に堅調な需要を見込んでいます。一方で、当連結会計年度に引き続き成長投資に伴う一時的な費用が発生することを想定しています。
<自動車事業>新造船の竣工が継続する中で、現在の非常に引き締まった船腹需給が若干軟化することを見込んでいます。
<ドライバルク事業>全船型について、船腹需給の環境は大きく変わらず、市況は概ね当連結会計年度と同水準となることを見込んでいます。
<エネルギー事業>VLCC:新造船の竣工量が限定的であることを想定し、市況は当連結会計年度の水準を若干上回ることを見込んでいます。
VLGC:堅調な北米での生産や極東地域での需要はあるものの、先行きの不透明感から市況は当連結会計年度の水準を下回ることを見込んでいます。
LNG船:中長期契約による安定収益に支えられ、堅調に推移する見通しです。
以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で減収減益を見込んでいます。
なお、各事業において米国をはじめとする各国の関税措置や、米国の新たな海事政策等の外部環境の変化に伴う影響を注視しています。
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
(単位:億円) |
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | |
売上高 | 23,872 | 25,887 | 2,014 | 8.4% |
売上原価 | 19,739 | 21,193 | 1,453 | 7.4% |
販売費及び一般管理費 | 2,385 | 2,585 | 199 | 8.4% |
営業利益 | 1,746 | 2,108 | 361 | 20.7% |
経常利益 | 2,613 | 4,908 | 2,295 | 87.8% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,286 | 4,777 | 2,491 | 109.0% |
平均為替レート | 143.82円/US$ | 152.73円/US$ | 8.91円 円安 |
平均消費燃料油価格 | US$620.83/MT | US$618.78/MT | US$2.05安 |
(概況)
当連結会計年度の業績は、売上高2兆5,887億円、営業利益2,108億円、経常利益4,908億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,777億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として2,933億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は2,471億円となりました。
<セグメント別概況>当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。
(単位:億円) |
売上高 | 経常利益 | |||||||
前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減額 | 増減率 | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減額 | ||
ロラ ジイ スナ テ| ィ& ク ス 事 業 | 定期船事業 | 1,923 | 1,804 | △119 | △6.2% | 678 | 2,743 | 2,064 |
航空運送事業 | 1,611 | 1,857 | 245 | 15.2% | 57 | 210 | 153 | |
物流事業 | 7,022 | 8,121 | 1,098 | 15.6% | 259 | 212 | △46 | |
自動車事業 | 4,909 | 5,323 | 414 | 8.5% | 1,058 | 1,133 | 75 | |
ドライバルク事業 | 5,733 | 6,072 | 339 | 5.9% | 180 | 181 | 0 | |
エネルギー事業 | 1,733 | 1,785 | 51 | 3.0% | 463 | 461 | △2 | |
その他事業 | 2,226 | 2,046 | △180 | △8.1% | 36 | 69 | 33 |
当社グループにおける経営管理体制の一部見直しに伴い、報告セグメントについて再考した結果、当連結会計年度より、従来の「不定期専用船事業」を、「自動車事業」「ドライバルク事業」「エネルギー事業」に分割して表示する方法に変更しています。また、「不動産業」については、その相対的な事業規模を勘案し、「その他事業」に含めて表示する方法に変更しています。
これに伴い、前連結会計年度の数値を変更後の区分に合わせて組替再表示しています。
<定期船事業>コンテナ船部門:新造船竣工による船舶供給量の増加は続いたものの、堅調な荷動きや紅海情勢及び港湾混雑等に起因する需給の逼迫がみられ、市況は第3四半期まで好調に推移しました。第4四半期の市況は低調で推移しましたが、通年では前連結会計年度の水準を上回りました。ONE社においても、前連結会計年度比で運賃が上昇した結果、利益水準は前連結会計年度を上回りました。
ターミナル関連部門:国内ターミナルでは前連結会計年度比で取扱量が増加しました。
海外ターミナルでは、2023年9月末に北米西岸ターミナルの関係会社株式を売却した影響により、前連結会計年度比で取扱量が減少しました。
以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。
<航空運送事業>主としてアジア発欧米向けの旺盛なEコマース需要や、半導体製造装置、自動車関連貨物の需要に支えられ、貨物取扱量は前連結会計年度比で増加しました。また、需給の引き締まりにより運賃単価も高い水準で推移しました。他方、燃料単価は前連結会計年度比で下落しました。
以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で増収増益となりました。
<物流事業>航空貨物取扱事業:アジア発の活発な荷動きに加え、第3四半期にはスポット貨物需要もあり、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。
海上貨物取扱事業:アジア域内航路を中心とした堅調な荷動きに加え、米国における関税引き上げに伴う出荷の前倒し需要により、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。
ロジスティクス事業:北米や東南アジアにおいて事業は堅調だったものの、欧州と東アジアにおいては減速しました。また、前連結会計年度に実施した成長投資に関連する一時的な費用が発生し、利益水準は前連結会計年度を下回りました。
以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で増収減益となりました。
<自動車事業>海上輸送においては、中東情勢の影響等による港湾混雑や航路変更が継続する中、最適な配船計画と本船運航により、堅調な輸送需要を取り込みました。
自動車物流においては、ターミナル事業を中心に旺盛な需要を取り込むことで業績は堅調に推移しました。
以上の結果、自動車事業全体では前連結会計年度比で増収増益となりました。
<ドライバルク事業>ケープサイズの市況は第1四半期及び第2四半期には好調を維持しましたが、12月から季節的調整局面に入りました。パナマックスサイズ以下の市況は年末に向かって軟化しましたが、好調だった第1四半期及び第2四半期に支えられました。
以上の結果、ドライバルク事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。
<エネルギー事業>VLCC(大型原油タンカー):中国での需要減退や米国からアジア地域への長距離輸送が減少したことを受け、市況は前連結会計年度を下回りました。また入渠船増加により稼働率が低下しました。
VLGC(大型LPGタンカー):新造船の竣工やパナマ運河の渇水の影響が緩和したことに伴う船腹供給の増加により、市況は前連結会計年度を下回りました。
石油製品タンカー:中国等での景気減速による需要減退を受け、市況は前連結会計年度を下回りました。
LNG船:安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。
海洋事業:FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが安定的に推移しました。
以上の結果、エネルギー事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。
<その他事業>船舶・技術事業:船用品・船用資材販売事業等は好調でしたが、燃料油販売事業は販売数量が減少しました。
客船事業:世界一周クルーズを6年ぶりに催行しました。また、夏季および第3四半期のクルーズを中心に全体として前連結会計年度比で高い乗船率を維持しました。
以上の結果、その他事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて50億円増加し、1,498億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益5,154億円、減価償却費1,546億円、持分法による投資損益△2,933億円、利息及び配当金の受取額1,892億円等により5,107億円(前年同期4,014億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△597億円(前年同期△2,856億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期及び長期借入金の返済、自己株式の取得や配当金の支払い等により△4,277億円(前年同期△1,634億円)となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。
当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
定期船事業 | 180,424 | 93.8 |
航空運送事業 | 185,723 | 115.2 |
物流事業 | 812,148 | 115.6 |
自動車事業 | 532,392 | 108.5 |
ドライバルク事業 | 607,256 | 105.9 |
エネルギー事業 | 178,565 | 103.0 |
その他事業 | 204,634 | 91.9 |
計 | 2,701,145 | 107.4 |
消去 | (112,444) | 87.2 |
合計 | 2,588,700 | 108.4 |
(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績等の分析
当連結会計年度末の総資産は、投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ654億円増加し、4兆3,202億円となりました。有利子負債は、短期借入金の減少等により1,753億円減少して7,384億円となり、負債合計額も2,111億円減少し、1兆3,502億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,877億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が2兆9,188億円となり、これに非支配株主持分510億円を加えた純資産の合計は、2兆9,699億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.25に、また自己資本比率は67.6%となりました。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。
(2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2024年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの自動車事業、ドライバルク事業及びエネルギー事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には2,078億円の設備投資を行いました。
③ 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。
当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2025年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は5,202億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2025年3月31日現在990億円となっています。
当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2025年3月31日現在2,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。
なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2025年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 収益の認識
当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。
② 貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資の評価について
当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。
④ 減価償却資産の償却
当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。
⑤ 退職給付
従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。
(5)今後の見通し
<定期船事業>コンテナ船部門:紅海情勢に起因する喜望峰ルートの利用が継続することを想定していますが、引き続き新造船の竣工が予想され、船腹需給の軟化を見込んでいます。
<航空運送事業>2025年5月19日の適時開示のとおり、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換の実行時期を2025年7月1日と予定しています。2026年3月期第1四半期連結会計期間の実績および今後の業績予想につきましては、同株式交換の実行時期をふまえ適切に開示する予定です。
<物流事業>航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加するものの、運賃の低下により利益水準は低下することを見込んでいます。
ロジスティクス事業:北米や東南アジアを中心に堅調な需要を見込んでいます。一方で、当連結会計年度に引き続き成長投資に伴う一時的な費用が発生することを想定しています。
<自動車事業>新造船の竣工が継続する中で、現在の非常に引き締まった船腹需給が若干軟化することを見込んでいます。
<ドライバルク事業>全船型について、船腹需給の環境は大きく変わらず、市況は概ね当連結会計年度と同水準となることを見込んでいます。
<エネルギー事業>VLCC:新造船の竣工量が限定的であることを想定し、市況は当連結会計年度の水準を若干上回ることを見込んでいます。
VLGC:堅調な北米での生産や極東地域での需要はあるものの、先行きの不透明感から市況は当連結会計年度の水準を下回ることを見込んでいます。
LNG船:中長期契約による安定収益に支えられ、堅調に推移する見通しです。
以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で減収減益を見込んでいます。
なお、各事業において米国をはじめとする各国の関税措置や、米国の新たな海事政策等の外部環境の変化に伴う影響を注視しています。