有価証券報告書-第134期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
(概況)
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が世界経済に影響を及ぼす中、第1四半期においては、当社の各事業で前連結会計年度比荷動きが減少しました。第2四半期以降は想定以上に需要が回復し、特に定期船事業、航空運送事業及び物流事業における旺盛な荷況に支えられ、当社の業績は好調に推移しました。
コンテナ船部門では、医療関連物資や巣ごもり需要による消費財の需要が増加したことにより旺盛な輸送需要が継続しました。航空運送事業と物流事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により国際旅客便の運航数は想定を下回り、需給が逼迫しました。また海上輸送の混乱から航空輸送に切り替えられた貨物も一部見受けられました。ドライバルク輸送部門では、鉄鉱石・穀物の堅調な荷動きに伴い、第4四半期に市況は高い水準で推移したものの、年初に低迷した市況が尾を引きました。エネルギー輸送部門では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりエネルギー需要が後退し、需給バランスが崩れたことから市況は不安定な動きとなりました。燃料油価格は前期比較下落しました。
このような環境下、定期船事業では、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD. (“ONE社”)は積高・消席率が高い水準で推移する中、港湾・内陸部での混雑に伴うスケジュール遅延やコンテナ不足等の課題解消・安定化に努めました。不定期専用船事業では、中期経営計画の施策であるドライバルク輸送部門の構造改革を更に進め、自動車輸送部門では配船の工夫等による効率運航に取り組みました。エネルギー輸送部門では、第4四半期にドリルシップの契約更改に伴い損失を計上しましたが、LNG船を中心に中長期の安定契約に支えられ、堅調に推移しました。
これらの結果、当連結会計年度の業績につきましては、売上高1兆6,084億円、営業利益715億円、経常利益2,153億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,392億円となり、大幅な増益となりました。なお、当社持分法適用会社ONE社の損益改善等により、営業外収益で持分法による投資利益として1,559億円を計上しました。うち、同社からの持分法による投資利益計上額は当連結会計年度において1,400億円、第4四半期連結会計期間では744億円となります。
<セグメント別概況>当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。
<定期船事業>コンテナ船部門では、ONE社は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、第1四半期は前連結会計年度比で積高が大きく減少しました。その後、第2四半期にかけて北米航路を中心にロックダウン解除以降急速に需要が回復し、積高は前年並みまで回復した後、例年のピークシーズンを迎え運賃及び消席率は上昇しました。また第3四半期には需要はさらに増加し、昨年を上回る水準まで回復しました。加えて、新型コロナウイルス感染症再拡大による活動制限により労働力不足が生じ、荷役効率の低下や港湾混雑が発生しました。これらによるスケジュール遅延も影響し輸送スペースが不足、さらにはコンテナバンの滞留による不足も需給逼迫に拍車を掛けました。第4四半期も中国旧正月による貨物量減少の影響は限定的で、北米の港湾混雑も継続したことから、運賃及び消席率は前年を上回る水準となりました。このような状況下でONE社は臨時便の運航やコンテナの追加調達等を実施し、スケジュール遅延を最小限とし、輸送スペースを最大限提供できるよう課題の解消に努めました。
国内ターミナルは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により取扱量が減少しましたが、第3四半期より取扱量は回復しました。海外ターミナルではアジア域内は前期比取扱量が減少した一方、北米地域は当連結事業会計年度後半から取扱量が反転して増加しました。
以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比減収となりましたが、業績は大幅に改善し増益となりました。
<航空運送事業>航空運送事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国際旅客便の減便・運休が継続し、航空貨物輸送スペースの供給が大きく減少しました。この状況下、第3四半期からは自動車部品及び半導体・電子機器を中心に荷動きが回復、需給が急速に引き締まり、貨物搭載率・運賃ともに高い水準で推移しました。またコンテナ船の輸送スペース不足による影響で、海上貨物の一部が航空輸送に切り替わったことも追い風となりました。
以上の結果、前連結会計年度比で業績は大きく改善し、利益を計上しました。
<物流事業>航空貨物取扱事業は、国際旅客便の大幅な減便・運休による供給スペースの減少及び海上貨物の航空輸送への切り替えにより、取扱高が増加しました。海上貨物取扱事業は、仕入価格が高騰したものの、経済活動の再開に合わせて取扱量は復調しました。ロジスティクス事業は、巣ごもり需要により、e-Commerce関連を中心に荷量が増加しました。内航輸送事業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、取扱量は減少しました。
以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比増収増益となりました。
<不定期専用船事業>自動車輸送部門では、前連結会計年度比で上期に大きく減少した完成車の海上輸送台数が徐々に回復する中、配船の工夫等によるコスト削減に取り組みました。また当面の温暖化ガス抑制策として本邦初のLNG燃料自動車専用船が10月に稼働を開始し、後続するLNG燃料新造船竣工に向けて安全性と品質向上の知見蓄積に努めました。自動車物流も、国・地域ごとに需給バランスに差がある中、中国・ロシア・インドをはじめとして各国でコスト削減や事業合理化を進める一方、エジプト・トルコでの完成車ターミナル建設や開業に向けたトライアル、中国-中央アジア間の鉄道貨物輸送実現に向けた検討等、事業ポートフォリオ再編を進めました。
ドライバルク輸送部門では、ケープサイズは、第4四半期は鉄鉱石の荷動きの回復や中国での寒波に伴う滞船増加により船腹需給が引き締まったものの、市況への影響度が大きいブラジル出しの鉄鉱石の出荷が昨年初めの雨期の長期化で低迷したこと等により、第3四半期までの市況は前年同期を下回り、収支に大きく影響を与えました。パナマックスは、第3四半期から米国出し中国向けの大豆・コーンの荷動きが堅調に推移し、中国での感染防止の水際対策による滞船や南米出し大豆の活発な荷動き等の要因もあり、船腹需給が引き締まりましたが、年前半の市況低迷が収支を押し下げました。このような環境下、市況変動による収支影響を抑えるために先物取引を用い収入を固定化するほか、長期契約獲得による収入の安定化と効率的な運航によるコスト削減に努めました。また、第2四半期と第3四半期に構造改革を実施し、将来発生が見込まれる費用を特別損失として計上しました。
エネルギー輸送部門では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響でエネルギー需要が後退し、原油価格が大きく下落、その後貯蔵目的での船腹需要が高まりVLCC(大型タンカー)と石油製品タンカーの市況は一時高騰したものの、産油国による協調減産や原油価格持ち直しの影響を受け次第に沈静化、第2四半期以降は需給が緩み低迷しました。また洋上備蓄を取り崩す動きも相まって船腹供給が増加、需給バランスはさらに悪化し、第4四半期以降の市況は歴史的な低迷となりました。VLGC(大型LPGタンカー)については、第1四半期は船腹需要の減少により市況が一時低迷した後、第2四半期以降ドック入渠や滞船日数の増加等による船腹供給の減少と北米出し荷量増加によるトンマイル延伸、パナマ運河での滞船により好市況となりましたが、第4四半期では急速に下落しました。LNG船は安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。また海洋事業はFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)が順調に稼働した一方、ドリルシップは契約更改に伴う損失を第4四半期に計上しました。
以上の結果、不定期専用船事業全体で前連結会計年度比減収減益となりました。
<不動産業、その他の事業>不動産業は堅調に推移し、売上高、経常利益ともにほぼ前年同期並みとなりました。
その他の事業では、燃料油販売や化学製品製造販売事業は前連結会計年度比で低調に推移しました。また、新型コロナウイルス感染症拡大による顧客需要の減退や工期遅延等により、技術サービス業や船用品販売等が影響を受けました。客船事業は、同感染症拡大の予防措置として上期は中止していたクルーズを昨年11月から再開しましたが、1月の定期的な入渠等を挟み、3月27日からの運航再開となりました。
以上の結果、その他の事業全体では、前連結会計年度比減収減益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて265億円増の1,035億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,704億円、減価償却費988億円、持分法による投資損益△1,559億円、利息及び配当金の受取額420億円などにより1,593億円(前年同期1,169億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却などにより△168億円(前年同期△548億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金やコマーシャル・ペーパーの減少、社債の償還やリース債務返済等により△1,254億円(前年同期△617億円)となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。
①販売実績
当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。
2.上記金額には消費税等は含まれていません。
②主要航路及び就航実績
海運業における当社の各航路の就航状況は次のとおりです。
不定期船部門
(注) ( )内はLNG船及びLPG船の延航海数です。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績等の分析
当連結会計年度末の総資産は、受取手形及び営業未収入金の増加やONE社等の持分法適用会社の利益計上に伴う投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,922億円増加し、2兆1,254億円となりました。社債、長期借入金等の減少により、有利子負債は前連結会計年度末比で987億円減少しましたが、ドライバルク構造改革の実施に伴う契約損失引当金の増加に加え、支払手形及び営業未払金が増加したこと等により、負債合計額は前連結会計年度末に比べ236億円増加し1兆4,580億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,329億円増加したこと等により、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が6,253億円となり、これに非支配株主持分420億円を加えた純資産の合計は、6,674億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は1.52に、また自己資本比率は29.4%となりました。なお、D/Eレシオ算定上の有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、借入金、社債、コマーシャル・ペーパー及びリース債務を対象としています。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。
(2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、2018年4月から開始する5カ年の中期経営計画として“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しました。“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標並びに2020年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの不定期専用船事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては船舶・航空機投資や物流設備・ターミナル設備等への投資があります。当連結会計年度中に1,017億円の設備投資を行っています。
新型コロナウイルス感染症の拡大による影響については、当社の投資計画は世界金融危機(リーマンショック)時とは異なり抑制的ですが、フリーキャッシュ・フローの確保をより優先し、新規投資案件は従来以上に選別、厳選していきます。また、以前より進めている資産の流動化を継続、促進します。
③ 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶・航空機に関してはリース等を活用しています。
当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金やコミットメントライン(借入枠)の活用、内部留保した資金も投入しています。このほか物流・ターミナル施設等設備投資についても同様に将来のキャッシュ・フローにあわせた安定的な資金等を投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2021年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,219億円で、通貨は円のみならず米ドル、ユーロ等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2021年3月31日現在1,320億円となっています。
当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2021年6月18日現在1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。
なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2021年6月18日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「A-」、格付投資情報センター(R&I):「BBB+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Ba2」となっています。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 収益の認識
当社グループの海運業収益は、コンテナ船に関しては複合輸送進行基準、それ以外は主として航海完了基準によっています。海運業以外の事業に関しては、役務が提供された時点で収益を認識することを基本とした合理的な基準を採用しています。
② 貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資の評価について
当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。
④ 減価償却資産の償却
当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。
⑤ 退職給付
従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。
会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
(5)今後の見通し
新型コロナウイルス感染症が世界経済に与える影響や、その収束時期は依然として不透明です。当期に最も大きな影響を受けたコンテナ船部門では、輸送需要や港湾混雑が継続していますが、正常化する時期は不透明なため、第1四半期後半以降に徐々に正常化に向かう前提で見通しを策定しています。国内ターミナルは取扱量の復調を見込む一方、海外ターミナルは北米におけるコンテナ需要の落ち着きと共に取扱量は減少する見通しです。航空運送事業は、国際旅客便の市場復帰が徐々に進むことを想定していますが、世界経済の回復に合わせて荷動きは堅調に推移すると見ています。物流事業では、航空貨物取扱事業は取扱量の減少は想定されるものの、市況は例年よりも高い水準で推移すると見ています。海上貨物取扱事業は需要に応じた機動的なマーケティングを継続し、ロジスティクス事業は価格改定等契約の見直しやコスト削減等により収益安定化への転換を図ります。自動車輸送部門は、半導体生産不足による輸送台数への影響が懸念がされるものの、荷量は前年度比で回復を見込んでいます。ドライバルク輸送部門は、期初から堅調な市況推移となりましたが、通期でも各船型において前期比高い水準を見込んでいます。エネルギー輸送部門では、VLCC(大型タンカー)やVLGC(大型LPGタンカー)は低迷した市況が継続しますが、LNG船や海洋事業における中長期の安定契約に支えられ堅調に推移する見通しです。
以上を踏まえ、翌連結会計年度は減収減益を見込んでいますが、前年度に続き、業績は好調な水準で推移すると見ています。
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
| (単位:億円) |
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | |
| 売上高 | 16,683 | 16,084 | △599 | △3.6% |
| 売上原価 | 14,614 | 13,752 | △862 | △5.9% |
| 販売費及び一般管理費 | 1,682 | 1,616 | △65 | △3.9% |
| 営業損益 | 386 | 715 | 328 | 84.9% |
| 経常損益 | 444 | 2,153 | 1,708 | 384.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純損益 | 311 | 1,392 | 1,080 | 347.2% |
| 平均為替レート | 109.13円/US$ | 105.79円/US$ | 3.34円 円高 |
| 平均消費燃料油価格 | US$454.97/MT | US$362.95/MT | US$92.03 安 |
(概況)
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が世界経済に影響を及ぼす中、第1四半期においては、当社の各事業で前連結会計年度比荷動きが減少しました。第2四半期以降は想定以上に需要が回復し、特に定期船事業、航空運送事業及び物流事業における旺盛な荷況に支えられ、当社の業績は好調に推移しました。
コンテナ船部門では、医療関連物資や巣ごもり需要による消費財の需要が増加したことにより旺盛な輸送需要が継続しました。航空運送事業と物流事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により国際旅客便の運航数は想定を下回り、需給が逼迫しました。また海上輸送の混乱から航空輸送に切り替えられた貨物も一部見受けられました。ドライバルク輸送部門では、鉄鉱石・穀物の堅調な荷動きに伴い、第4四半期に市況は高い水準で推移したものの、年初に低迷した市況が尾を引きました。エネルギー輸送部門では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりエネルギー需要が後退し、需給バランスが崩れたことから市況は不安定な動きとなりました。燃料油価格は前期比較下落しました。
このような環境下、定期船事業では、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD. (“ONE社”)は積高・消席率が高い水準で推移する中、港湾・内陸部での混雑に伴うスケジュール遅延やコンテナ不足等の課題解消・安定化に努めました。不定期専用船事業では、中期経営計画の施策であるドライバルク輸送部門の構造改革を更に進め、自動車輸送部門では配船の工夫等による効率運航に取り組みました。エネルギー輸送部門では、第4四半期にドリルシップの契約更改に伴い損失を計上しましたが、LNG船を中心に中長期の安定契約に支えられ、堅調に推移しました。
これらの結果、当連結会計年度の業績につきましては、売上高1兆6,084億円、営業利益715億円、経常利益2,153億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,392億円となり、大幅な増益となりました。なお、当社持分法適用会社ONE社の損益改善等により、営業外収益で持分法による投資利益として1,559億円を計上しました。うち、同社からの持分法による投資利益計上額は当連結会計年度において1,400億円、第4四半期連結会計期間では744億円となります。
<セグメント別概況>当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。
| (単位:億円) |
| 売上高 | 経常損益 | |||||||
| 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減額 | 増減率 | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減額 | ||
| 一般貨物 輸送事業 | 定期船事業 | 2,022 | 1,705 | △317 | △15.7% | 134 | 1,408 | 1,273 |
| 航空運送事業 | 751 | 1,224 | 473 | 62.9% | △155 | 332 | 488 | |
| 物流事業 | 4,763 | 5,612 | 849 | 17.8% | 47 | 270 | 223 | |
| 不定期専用船事業 | 8,198 | 6,815 | △1,382 | △16.9% | 441 | 186 | △255 | |
| その他事業 | 不動産業 | 73 | 68 | △4 | △6.3% | 25 | 25 | 0 |
| その他の事業 | 1,656 | 1,297 | △359 | △21.7% | 17 | △22 | △40 | |
<定期船事業>コンテナ船部門では、ONE社は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、第1四半期は前連結会計年度比で積高が大きく減少しました。その後、第2四半期にかけて北米航路を中心にロックダウン解除以降急速に需要が回復し、積高は前年並みまで回復した後、例年のピークシーズンを迎え運賃及び消席率は上昇しました。また第3四半期には需要はさらに増加し、昨年を上回る水準まで回復しました。加えて、新型コロナウイルス感染症再拡大による活動制限により労働力不足が生じ、荷役効率の低下や港湾混雑が発生しました。これらによるスケジュール遅延も影響し輸送スペースが不足、さらにはコンテナバンの滞留による不足も需給逼迫に拍車を掛けました。第4四半期も中国旧正月による貨物量減少の影響は限定的で、北米の港湾混雑も継続したことから、運賃及び消席率は前年を上回る水準となりました。このような状況下でONE社は臨時便の運航やコンテナの追加調達等を実施し、スケジュール遅延を最小限とし、輸送スペースを最大限提供できるよう課題の解消に努めました。
国内ターミナルは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により取扱量が減少しましたが、第3四半期より取扱量は回復しました。海外ターミナルではアジア域内は前期比取扱量が減少した一方、北米地域は当連結事業会計年度後半から取扱量が反転して増加しました。
以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比減収となりましたが、業績は大幅に改善し増益となりました。
<航空運送事業>航空運送事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国際旅客便の減便・運休が継続し、航空貨物輸送スペースの供給が大きく減少しました。この状況下、第3四半期からは自動車部品及び半導体・電子機器を中心に荷動きが回復、需給が急速に引き締まり、貨物搭載率・運賃ともに高い水準で推移しました。またコンテナ船の輸送スペース不足による影響で、海上貨物の一部が航空輸送に切り替わったことも追い風となりました。
以上の結果、前連結会計年度比で業績は大きく改善し、利益を計上しました。
<物流事業>航空貨物取扱事業は、国際旅客便の大幅な減便・運休による供給スペースの減少及び海上貨物の航空輸送への切り替えにより、取扱高が増加しました。海上貨物取扱事業は、仕入価格が高騰したものの、経済活動の再開に合わせて取扱量は復調しました。ロジスティクス事業は、巣ごもり需要により、e-Commerce関連を中心に荷量が増加しました。内航輸送事業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、取扱量は減少しました。
以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比増収増益となりました。
<不定期専用船事業>自動車輸送部門では、前連結会計年度比で上期に大きく減少した完成車の海上輸送台数が徐々に回復する中、配船の工夫等によるコスト削減に取り組みました。また当面の温暖化ガス抑制策として本邦初のLNG燃料自動車専用船が10月に稼働を開始し、後続するLNG燃料新造船竣工に向けて安全性と品質向上の知見蓄積に努めました。自動車物流も、国・地域ごとに需給バランスに差がある中、中国・ロシア・インドをはじめとして各国でコスト削減や事業合理化を進める一方、エジプト・トルコでの完成車ターミナル建設や開業に向けたトライアル、中国-中央アジア間の鉄道貨物輸送実現に向けた検討等、事業ポートフォリオ再編を進めました。
ドライバルク輸送部門では、ケープサイズは、第4四半期は鉄鉱石の荷動きの回復や中国での寒波に伴う滞船増加により船腹需給が引き締まったものの、市況への影響度が大きいブラジル出しの鉄鉱石の出荷が昨年初めの雨期の長期化で低迷したこと等により、第3四半期までの市況は前年同期を下回り、収支に大きく影響を与えました。パナマックスは、第3四半期から米国出し中国向けの大豆・コーンの荷動きが堅調に推移し、中国での感染防止の水際対策による滞船や南米出し大豆の活発な荷動き等の要因もあり、船腹需給が引き締まりましたが、年前半の市況低迷が収支を押し下げました。このような環境下、市況変動による収支影響を抑えるために先物取引を用い収入を固定化するほか、長期契約獲得による収入の安定化と効率的な運航によるコスト削減に努めました。また、第2四半期と第3四半期に構造改革を実施し、将来発生が見込まれる費用を特別損失として計上しました。
エネルギー輸送部門では、新型コロナウイルス感染症拡大による影響でエネルギー需要が後退し、原油価格が大きく下落、その後貯蔵目的での船腹需要が高まりVLCC(大型タンカー)と石油製品タンカーの市況は一時高騰したものの、産油国による協調減産や原油価格持ち直しの影響を受け次第に沈静化、第2四半期以降は需給が緩み低迷しました。また洋上備蓄を取り崩す動きも相まって船腹供給が増加、需給バランスはさらに悪化し、第4四半期以降の市況は歴史的な低迷となりました。VLGC(大型LPGタンカー)については、第1四半期は船腹需要の減少により市況が一時低迷した後、第2四半期以降ドック入渠や滞船日数の増加等による船腹供給の減少と北米出し荷量増加によるトンマイル延伸、パナマ運河での滞船により好市況となりましたが、第4四半期では急速に下落しました。LNG船は安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。また海洋事業はFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)が順調に稼働した一方、ドリルシップは契約更改に伴う損失を第4四半期に計上しました。
以上の結果、不定期専用船事業全体で前連結会計年度比減収減益となりました。
<不動産業、その他の事業>不動産業は堅調に推移し、売上高、経常利益ともにほぼ前年同期並みとなりました。
その他の事業では、燃料油販売や化学製品製造販売事業は前連結会計年度比で低調に推移しました。また、新型コロナウイルス感染症拡大による顧客需要の減退や工期遅延等により、技術サービス業や船用品販売等が影響を受けました。客船事業は、同感染症拡大の予防措置として上期は中止していたクルーズを昨年11月から再開しましたが、1月の定期的な入渠等を挟み、3月27日からの運航再開となりました。
以上の結果、その他の事業全体では、前連結会計年度比減収減益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて265億円増の1,035億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,704億円、減価償却費988億円、持分法による投資損益△1,559億円、利息及び配当金の受取額420億円などにより1,593億円(前年同期1,169億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却などにより△168億円(前年同期△548億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金やコマーシャル・ペーパーの減少、社債の償還やリース債務返済等により△1,254億円(前年同期△617億円)となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。
①販売実績
当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 定期船事業 | 170,537 | 84.3 |
| 航空運送事業 | 122,459 | 162.9 |
| 物流事業 | 561,234 | 117.8 |
| 不定期専用船事業 | 681,564 | 83.1 |
| 不動産業 | 6,884 | 93.7 |
| その他の事業 | 129,789 | 78.3 |
| 計 | 1,672,469 | 95.8 |
| 消去 | (64,055) | 81.9 |
| 合計 | 1,608,414 | 96.4 |
(注)1.売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。
2.上記金額には消費税等は含まれていません。
②主要航路及び就航実績
海運業における当社の各航路の就航状況は次のとおりです。
不定期船部門
| 航路 | 積荷 | 延航海数 | |
| 前事業年度 | 当事業年度 | ||
| 米州方面 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、塩、コークス、その他 | 418 | 301 |
| アフリカ方面 | 自動車、チップ、鉄鉱石、その他 | 47 | 42 |
| 中東方面 | 自動車、その他 | 153 | 132 |
| インド方面 | 石炭、鉄鉱石、その他 | 2 | 7 |
| アジア方面 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、その他 | 479 | 451 |
| オセアニア方面 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、その他 | 559 | 520 |
| 欧州方面 | 自動車、石炭、その他 | 145 | 100 |
| ロシア方面 | 石炭、その他 | 28 | 24 |
| 三国間 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、塩、その他 | 732 | 700 |
| 合計 | 2,563 | 2,277 | |
| タンカー部門 | 定期貸船・他社運航共有船 | |||||
| 航路 | 延航海数 | 延隻数 | ||||
| 前事業年度 | 当事業年度 | 前事業年度 | 当事業年度 | |||
| アラビア湾/日本 | 252 (110) | 223 (123) | 定期貸船に供した社船 | 29 | 20 | |
| 東南アジア/日本 | 23 (23) | 14 (14) | 共有先の運航または 定期貸船に供した共有船 | 9 | 29 | |
| 西・北豪州/日本 | 65 (65) | 54 (54) | 定期貸船に供した他社船 | 356 | 402 | |
| 中国/日本 | - (-) | 8 (-) | 合計 | 394 | 451 | |
| 三国間 | 165 (102) | 152 (80) | ||||
| その他 | 34 (25) | 32 (25) | ||||
| 合計 | 539 (325) | 483 (296) | ||||
(注) ( )内はLNG船及びLPG船の延航海数です。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績等の分析
当連結会計年度末の総資産は、受取手形及び営業未収入金の増加やONE社等の持分法適用会社の利益計上に伴う投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,922億円増加し、2兆1,254億円となりました。社債、長期借入金等の減少により、有利子負債は前連結会計年度末比で987億円減少しましたが、ドライバルク構造改革の実施に伴う契約損失引当金の増加に加え、支払手形及び営業未払金が増加したこと等により、負債合計額は前連結会計年度末に比べ236億円増加し1兆4,580億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,329億円増加したこと等により、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が6,253億円となり、これに非支配株主持分420億円を加えた純資産の合計は、6,674億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は1.52に、また自己資本比率は29.4%となりました。なお、D/Eレシオ算定上の有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、借入金、社債、コマーシャル・ペーパー及びリース債務を対象としています。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。
(2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、2018年4月から開始する5カ年の中期経営計画として“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しました。“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標並びに2020年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの不定期専用船事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては船舶・航空機投資や物流設備・ターミナル設備等への投資があります。当連結会計年度中に1,017億円の設備投資を行っています。
新型コロナウイルス感染症の拡大による影響については、当社の投資計画は世界金融危機(リーマンショック)時とは異なり抑制的ですが、フリーキャッシュ・フローの確保をより優先し、新規投資案件は従来以上に選別、厳選していきます。また、以前より進めている資産の流動化を継続、促進します。
③ 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶・航空機に関してはリース等を活用しています。
当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金やコミットメントライン(借入枠)の活用、内部留保した資金も投入しています。このほか物流・ターミナル施設等設備投資についても同様に将来のキャッシュ・フローにあわせた安定的な資金等を投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2021年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,219億円で、通貨は円のみならず米ドル、ユーロ等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2021年3月31日現在1,320億円となっています。
当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2021年6月18日現在1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。
なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2021年6月18日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「A-」、格付投資情報センター(R&I):「BBB+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Ba2」となっています。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 収益の認識
当社グループの海運業収益は、コンテナ船に関しては複合輸送進行基準、それ以外は主として航海完了基準によっています。海運業以外の事業に関しては、役務が提供された時点で収益を認識することを基本とした合理的な基準を採用しています。
② 貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資の評価について
当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。
④ 減価償却資産の償却
当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。
⑤ 退職給付
従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。
会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
(5)今後の見通し
新型コロナウイルス感染症が世界経済に与える影響や、その収束時期は依然として不透明です。当期に最も大きな影響を受けたコンテナ船部門では、輸送需要や港湾混雑が継続していますが、正常化する時期は不透明なため、第1四半期後半以降に徐々に正常化に向かう前提で見通しを策定しています。国内ターミナルは取扱量の復調を見込む一方、海外ターミナルは北米におけるコンテナ需要の落ち着きと共に取扱量は減少する見通しです。航空運送事業は、国際旅客便の市場復帰が徐々に進むことを想定していますが、世界経済の回復に合わせて荷動きは堅調に推移すると見ています。物流事業では、航空貨物取扱事業は取扱量の減少は想定されるものの、市況は例年よりも高い水準で推移すると見ています。海上貨物取扱事業は需要に応じた機動的なマーケティングを継続し、ロジスティクス事業は価格改定等契約の見直しやコスト削減等により収益安定化への転換を図ります。自動車輸送部門は、半導体生産不足による輸送台数への影響が懸念がされるものの、荷量は前年度比で回復を見込んでいます。ドライバルク輸送部門は、期初から堅調な市況推移となりましたが、通期でも各船型において前期比高い水準を見込んでいます。エネルギー輸送部門では、VLCC(大型タンカー)やVLGC(大型LPGタンカー)は低迷した市況が継続しますが、LNG船や海洋事業における中長期の安定契約に支えられ堅調に推移する見通しです。
以上を踏まえ、翌連結会計年度は減収減益を見込んでいますが、前年度に続き、業績は好調な水準で推移すると見ています。