有価証券報告書-第131期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
海運を取り巻く状況は、コンテナ船部門では、供給は前年に引き続き高い水準で推移し、スポット運賃の回復はやや足踏み状態となりましたが、貨物需要に支えられ荷動きは安定的に推移しました。ドライバルク部門では、未だ船腹過剰状態の解消には至っていませんが、鉄鉱石、石炭、穀物の荷動きが揃って増加し、市況は改善しました。非海運事業では、物流事業は仕入れコストの高止まりなどにより低迷しましたが、航空運送事業は荷動きが全般的に活況を呈しました。
これらの結果、当期の業績につきましては、売上高2兆1,832億円、営業利益278億円、経常利益280億円、親会社株主に帰属する当期純利益は201億円の利益計上となり業績は大幅に改善しました。
なお、為替レートと消費燃料油価格の変動は以下のとおりです。
(注) 為替レート・消費燃料油価格とも、当社社内値です。
<セグメント別概況>当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。
<定期船事業>コンテナ船部門では、北米航路では荷動きは堅調であったものの、大型の新造船の竣工に伴う供給の増加の影響もあり、スポット運賃の回復はやや足踏み状態となりました。欧州航路では上期において荷動きが回復し、需給バランスが改善しましたが、下期には全体的に荷動きが減速しました。
サービス面では、当社を含む5社からなる「ザ・アライアンス」で各サービスの効率化を進め、利便性と競争力の維持、強化に努めました。コスト面では、引き続き積載効率の追求、燃費効率に優れた新造14,000TEU型コンテナ船の投入、航路事情に即した最適経済運航及び配船を軸として船費や運航費の圧縮に努めました。また、効率的なコンテナ運用をはじめとする諸施策により貨物費の削減にも努め、収益性と市況耐性を高めました。国内・海外コンテナターミナルの総取扱量は前連結会計年度比で増加し、定期船事業全体で業績は大幅に改善し、前連結会計年度比増収となり利益を計上しました。
さらに市場における競争力を高めてコンテナ船事業を安定的かつ持続的に運営するため、当社は川崎汽船㈱、㈱商船三井と定期コンテナ船事業の統合を行い、新会社OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.は平成30年4月にサービスを開始しました。
<航空運送事業>航空運送事業は、燃料油価格の上昇、整備費の増加及び機材トラブルなどがあったものの、旺盛な貨物需要により年間を通じて良好なマーケットとなり、運賃は上昇しました。また、コードシェアを活用するなど効率的なオペレーションに努めたことで、輸送量も増加しました。
前連結会計年度には機材の発注をキャンセルしたことに伴う為替差益の計上があったため、前連結会計年度比増収減益となりましたが、一時要因を除くと大幅な改善となりました。
<物流事業>航空貨物取扱事業は、仕入れコストの高止まりが継続しましたが、事業の見直しの結果、特に日本において粗利が改善しました。海上貨物取扱事業は、取扱量は増加したものの、仕入れコスト上昇局面において粗利の改善に時間を要しました。ロジスティクス事業は、米州の内陸輸送の取扱低迷と人件費高騰の影響を受け低調となりました。内航輸送事業は、年間を通じて荷動きは堅調に推移しました。
以上の結果、物流事業全体で前連結会計年度比増収減益となりました。
また、当社は連結子会社である郵船ロジスティクス㈱を平成30年2月1日付で完全子会社としました。なお、同社は平成30年1月29日付で上場廃止となりました。
<不定期専用船事業>自動車輸送部門では、原油価格の低迷を背景として減少した資源国・新興国向け輸送量の回復が遅れていますが、北米、欧州、アジア地域などへの輸送需要は堅調で完成車海上輸送台数は前連結会計年度を上回りました。自動車物流では、中国やインド、欧州を中心とした既存事業は概ね順調に推移し、また、ベルギーの完成車ターミナルに風力発電用風車の設置を決定するなど、環境に優しい「グリーンターミナル」の積極的なグローバル展開を推進しています。
ドライバルク部門は、解撤よりも新造船の竣工数が上回り、船腹過剰の本格的な解消に至らなかったものの、鉄鉱石、石炭、穀物の荷動きが揃って増加し、市況は回復傾向が続いています。このような状況下、引き続き長期契約の獲得に努めるとともに、効率的な運航の徹底を進めるなどのコスト削減に取り組みました。さらに、貨物の組合せや配船の工夫によりバラスト航海を減らすなど、収支の向上を図りました。
リキッド部門では、VLCC(大型原油タンカー)は荷動きは好調であったものの、新造船の供給圧力が需要増を上回ったため市況は悪化しました。石油製品タンカー及びLPG船は新造船の竣工による供給の増加が多く、それぞれ市況は低迷しました。LNG船は安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移し、海洋事業もFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップやシャトルタンカーが順調に稼動しました。
以上の結果、不定期専用船事業全体で業績は改善し、前連結会計年度比増収となり利益を計上しました。
<不動産業、その他の事業>不動産業は、前連結会計年度の出資先による信託受益権売却による一時収益の剥落により、前連結会計年度比減収減益となりましたが、一時要因を除くと業績は安定的に推移しました。
その他の事業は、客船事業は5月の大型連休前後の集客が低迷したものの、夏場以降の国内外クルーズ販売が総じて堅調でした。また、舶用燃料油販売事業の業績が回復し、化学品製造販売や石油備蓄基地における海技活用事業、電気・機械工事事業も好調であったため、前連結会計年度比で増収となり利益を計上しました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて341億円減の1,032億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益420億円、減価償却費878億円、利息の支払額△174億円等により890億円(前年同期279億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△1,379億円(前年同期△1,446億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入や社債の発行等により175億円(前年同期19億円)となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。
①販売実績
当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。
2.上記金額には消費税等は含まれていません。
②主要航路及び就航実績
海運業における当社の各航路の就航状況は次のとおりです。
定期船部門(コンテナ船)
不定期船部門
(注) ( )内はLNG船及びLPG船の延航海数です。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 収益の認識
当社グループの海運業収益は、コンテナ船に関しては複合輸送進行基準、それ以外は主として航海完了基準によっています。海運業以外の事業に関しては、役務が提供された時点で収益を認識することを基本とした合理的な基準を採用しています。
② 貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資の評価について
当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。
④ 減価償却資産の償却
当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。
⑤ 退職給付
従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、原則として事業用資産においては管理会計上の区分でありかつ投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。
(2)経営成績の分析
「1.経営成績等の状況の概要 (1)経営成績の状況」をご参照ください。
当社グループは、平成30年4月から開始する5カ年の新しい経営計画として “Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しています。当連結会計年度においては、経営計画の達成状況を判断するための客観的な指標等がないため、平成29年度の達成・進捗状況を記載していません。“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標」をご参照ください。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ277億円増加し、2兆719億円となりました。負債合計額は、社債の発行などにより前連結会計年度末に比べ314億円増加し1兆4,837億円となりました。純資産の部では、第130期定時株主総会の決議に基づいた資本剰余金から利益剰余金への振替えもあり、資本剰余金は1,203億円減少した一方、利益剰余金が1,429億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が5,518億円となり、これに非支配株主持分363億円を加えた純資産の合計は、5,882億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は1.78となりました。なお、D/Eレシオ算定上の有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、借入金、社債及びリース債務を対象としています。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの定期船事業や不定期専用船事業運営に関する海運業費用です。この中には貨物費・燃料費・港費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては船舶・航空機投資や物流設備・ターミナル設備等への投資があります。当連結会計年度中に2,004億円の設備投資を行っています。
③ 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶・航空機に関してはリース等を活用しています。
当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。このほか物流・ターミナル施設等設備投資についても同様に将来のキャッシュ・フローにあわせた安定的な資金等を投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。平成30年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,963億円で、通貨は円のみならず米ドル、ユーロ等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、平成30年3月31日現在1,750億円となっています。
当社グループは、資金の流動性確保に努めており、平成30年6月20日現在1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、シンジケーション方式等による金融機関からの円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。
なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。平成30年6月20日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「A」、格付投資情報センター(R&I):「BBB+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。
(1)経営成績の状況
(単位:億円) |
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 | 増減率 | |
売上高 | 19,238 | 21,832 | 2,593 | 13.5% |
売上原価 | 17,367 | 19,524 | 2,156 | 12.4% |
販売費及び一般管理費 | 2,052 | 2,029 | △22 | △1.1% |
営業利益 | △180 | 278 | 459 | - |
経常利益 | 10 | 280 | 269 | - |
親会社株主に帰属する当期純利益 | △2,657 | 201 | 2,859 | - |
平均為替レート | 108.76円/US$ | 111.19円/US$ | 2.43円 円安 |
平均消費燃料油価格 | US$253.75/MT | US$341.41/MT | US$87.66 高 |
海運を取り巻く状況は、コンテナ船部門では、供給は前年に引き続き高い水準で推移し、スポット運賃の回復はやや足踏み状態となりましたが、貨物需要に支えられ荷動きは安定的に推移しました。ドライバルク部門では、未だ船腹過剰状態の解消には至っていませんが、鉄鉱石、石炭、穀物の荷動きが揃って増加し、市況は改善しました。非海運事業では、物流事業は仕入れコストの高止まりなどにより低迷しましたが、航空運送事業は荷動きが全般的に活況を呈しました。
これらの結果、当期の業績につきましては、売上高2兆1,832億円、営業利益278億円、経常利益280億円、親会社株主に帰属する当期純利益は201億円の利益計上となり業績は大幅に改善しました。
なお、為替レートと消費燃料油価格の変動は以下のとおりです。
(注) 為替レート・消費燃料油価格とも、当社社内値です。
<セグメント別概況>当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。
(単位:億円) |
売上高 | 経常利益 | |||||||
前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減額 | 増減率 | 前連結 会計年度 | 当連結 会計年度 | 増減額 | ||
一般貨物 輸送事業 | 定期船事業 | 5,859 | 6,914 | 1,055 | 18.0% | △127 | 108 | 235 |
航空運送事業 | 819 | 978 | 159 | 19.4% | 26 | 18 | △8 | |
物流事業 | 4,613 | 5,123 | 509 | 11.0% | 76 | 23 | △52 | |
不定期専用船事業 | 7,177 | 7,956 | 778 | 10.9% | △41 | 96 | 138 | |
その他事業 | 不動産業 | 94 | 79 | △14 | △15.9% | 120 | 26 | △94 |
その他の事業 | 1,466 | 1,723 | 256 | 17.5% | △14 | 31 | 46 |
<定期船事業>コンテナ船部門では、北米航路では荷動きは堅調であったものの、大型の新造船の竣工に伴う供給の増加の影響もあり、スポット運賃の回復はやや足踏み状態となりました。欧州航路では上期において荷動きが回復し、需給バランスが改善しましたが、下期には全体的に荷動きが減速しました。
サービス面では、当社を含む5社からなる「ザ・アライアンス」で各サービスの効率化を進め、利便性と競争力の維持、強化に努めました。コスト面では、引き続き積載効率の追求、燃費効率に優れた新造14,000TEU型コンテナ船の投入、航路事情に即した最適経済運航及び配船を軸として船費や運航費の圧縮に努めました。また、効率的なコンテナ運用をはじめとする諸施策により貨物費の削減にも努め、収益性と市況耐性を高めました。国内・海外コンテナターミナルの総取扱量は前連結会計年度比で増加し、定期船事業全体で業績は大幅に改善し、前連結会計年度比増収となり利益を計上しました。
さらに市場における競争力を高めてコンテナ船事業を安定的かつ持続的に運営するため、当社は川崎汽船㈱、㈱商船三井と定期コンテナ船事業の統合を行い、新会社OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.は平成30年4月にサービスを開始しました。
<航空運送事業>航空運送事業は、燃料油価格の上昇、整備費の増加及び機材トラブルなどがあったものの、旺盛な貨物需要により年間を通じて良好なマーケットとなり、運賃は上昇しました。また、コードシェアを活用するなど効率的なオペレーションに努めたことで、輸送量も増加しました。
前連結会計年度には機材の発注をキャンセルしたことに伴う為替差益の計上があったため、前連結会計年度比増収減益となりましたが、一時要因を除くと大幅な改善となりました。
<物流事業>航空貨物取扱事業は、仕入れコストの高止まりが継続しましたが、事業の見直しの結果、特に日本において粗利が改善しました。海上貨物取扱事業は、取扱量は増加したものの、仕入れコスト上昇局面において粗利の改善に時間を要しました。ロジスティクス事業は、米州の内陸輸送の取扱低迷と人件費高騰の影響を受け低調となりました。内航輸送事業は、年間を通じて荷動きは堅調に推移しました。
以上の結果、物流事業全体で前連結会計年度比増収減益となりました。
また、当社は連結子会社である郵船ロジスティクス㈱を平成30年2月1日付で完全子会社としました。なお、同社は平成30年1月29日付で上場廃止となりました。
<不定期専用船事業>自動車輸送部門では、原油価格の低迷を背景として減少した資源国・新興国向け輸送量の回復が遅れていますが、北米、欧州、アジア地域などへの輸送需要は堅調で完成車海上輸送台数は前連結会計年度を上回りました。自動車物流では、中国やインド、欧州を中心とした既存事業は概ね順調に推移し、また、ベルギーの完成車ターミナルに風力発電用風車の設置を決定するなど、環境に優しい「グリーンターミナル」の積極的なグローバル展開を推進しています。
ドライバルク部門は、解撤よりも新造船の竣工数が上回り、船腹過剰の本格的な解消に至らなかったものの、鉄鉱石、石炭、穀物の荷動きが揃って増加し、市況は回復傾向が続いています。このような状況下、引き続き長期契約の獲得に努めるとともに、効率的な運航の徹底を進めるなどのコスト削減に取り組みました。さらに、貨物の組合せや配船の工夫によりバラスト航海を減らすなど、収支の向上を図りました。
リキッド部門では、VLCC(大型原油タンカー)は荷動きは好調であったものの、新造船の供給圧力が需要増を上回ったため市況は悪化しました。石油製品タンカー及びLPG船は新造船の竣工による供給の増加が多く、それぞれ市況は低迷しました。LNG船は安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移し、海洋事業もFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップやシャトルタンカーが順調に稼動しました。
以上の結果、不定期専用船事業全体で業績は改善し、前連結会計年度比増収となり利益を計上しました。
<不動産業、その他の事業>不動産業は、前連結会計年度の出資先による信託受益権売却による一時収益の剥落により、前連結会計年度比減収減益となりましたが、一時要因を除くと業績は安定的に推移しました。
その他の事業は、客船事業は5月の大型連休前後の集客が低迷したものの、夏場以降の国内外クルーズ販売が総じて堅調でした。また、舶用燃料油販売事業の業績が回復し、化学品製造販売や石油備蓄基地における海技活用事業、電気・機械工事事業も好調であったため、前連結会計年度比で増収となり利益を計上しました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて341億円減の1,032億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益420億円、減価償却費878億円、利息の支払額△174億円等により890億円(前年同期279億円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△1,379億円(前年同期△1,446億円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入や社債の発行等により175億円(前年同期19億円)となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。
①販売実績
当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
定期船事業 | 691,433 | 118.0 |
航空運送事業 | 97,826 | 119.4 |
物流事業 | 512,332 | 111.0 |
不定期専用船事業 | 795,606 | 110.9 |
不動産業 | 7,941 | 84.1 |
その他の事業 | 172,300 | 117.5 |
計 | 2,277,440 | 113.7 |
消去 | (94,238) | 119.2 |
合計 | 2,183,201 | 113.5 |
(注)1.売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。
2.上記金額には消費税等は含まれていません。
②主要航路及び就航実績
海運業における当社の各航路の就航状況は次のとおりです。
定期船部門(コンテナ船)
航路 | 延航海数 | |
前事業年度 | 当事業年度 | |
アジア/欧州 | 304 | 408 |
アジア/北米西岸 | 518 | 556 |
アジア/北米東岸(スエズ経由) | 231 | 154 |
アジア/北米東岸(パナマ経由) | 61 | 149 |
アジア/北米西岸/北米東岸/欧州 | 193 | 97 |
北米東岸/欧州 | 152 | 404 |
アジア/豪州 | 49 | 49 |
アジア/ニュージーランド | 52 | 51 |
アジア/豪州/ニュージーランド | 143 | 176 |
アジア/ハワイ/中南米西岸 | 232 | 189 |
中米西岸/北米西岸 | 64 | 53 |
アジア/南米東岸 | 123 | 91 |
アジア/アフリカ | 93 | 96 |
南米東岸/北米東岸 | 59 | 52 |
アジア域内(東アジア) | 1,642 | 1,487 |
アジア域内(西アジア) | 666 | 795 |
合計 | 4,582 | 4,807 |
不定期船部門
航路 | 積荷 | 延航海数 | |
前事業年度 | 当事業年度 | ||
米州方面 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、塩、コークス、その他 | 385 | 434 |
アフリカ方面 | 自動車、チップ、鉄鉱石、その他 | 54 | 47 |
中東方面 | 自動車、その他 | 166 | 143 |
インド方面 | 石炭、鉄鉱石、その他 | 5 | 4 |
アジア方面 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、その他 | 393 | 472 |
オセアニア方面 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、その他 | 680 | 695 |
欧州方面 | 自動車、その他 | 112 | 114 |
ロシア方面 | 石炭、その他 | 18 | 18 |
三国間 | 自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、塩、その他 | 758 | 810 |
合計 | 2,571 | 2,737 |
タンカー部門 | 定期貸船・他社運航共有船 | |||||
航路 | 延航海数 | 延隻数 | ||||
前事業年度 | 当事業年度 | 前事業年度 | 当事業年度 | |||
アラビア湾/日本 | 290 (126) | 260 (110) | 定期貸船に供した社船 | 25 | 26 | |
東南アジア/日本 | 38 (38) | 49 (49) | 共有先の運航または 定期貸船に供した共有船 | 6 | 7 | |
西・北豪州/日本 | 51 (50) | 54 (54) | 定期貸船に供した他社船 | 237 | 207 | |
中国/日本 | 4 (3) | - (-) | 合計 | 268 | 240 | |
三国間 | 132 (54) | 118 (57) | ||||
その他 | 23 (16) | 38 (28) | ||||
合計 | 538 (287) | 519 (298) |
(注) ( )内はLNG船及びLPG船の延航海数です。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 収益の認識
当社グループの海運業収益は、コンテナ船に関しては複合輸送進行基準、それ以外は主として航海完了基準によっています。海運業以外の事業に関しては、役務が提供された時点で収益を認識することを基本とした合理的な基準を採用しています。
② 貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
③ 投資の評価について
当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。
④ 減価償却資産の償却
当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。
⑤ 退職給付
従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。
⑦ 固定資産の減損
当社グループは、原則として事業用資産においては管理会計上の区分でありかつ投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。
(2)経営成績の分析
「1.経営成績等の状況の概要 (1)経営成績の状況」をご参照ください。
当社グループは、平成30年4月から開始する5カ年の新しい経営計画として “Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しています。当連結会計年度においては、経営計画の達成状況を判断するための客観的な指標等がないため、平成29年度の達成・進捗状況を記載していません。“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標」をご参照ください。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ277億円増加し、2兆719億円となりました。負債合計額は、社債の発行などにより前連結会計年度末に比べ314億円増加し1兆4,837億円となりました。純資産の部では、第130期定時株主総会の決議に基づいた資本剰余金から利益剰余金への振替えもあり、資本剰余金は1,203億円減少した一方、利益剰余金が1,429億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が5,518億円となり、これに非支配株主持分363億円を加えた純資産の合計は、5,882億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は1.78となりました。なお、D/Eレシオ算定上の有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、借入金、社債及びリース債務を対象としています。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの定期船事業や不定期専用船事業運営に関する海運業費用です。この中には貨物費・燃料費・港費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては船舶・航空機投資や物流設備・ターミナル設備等への投資があります。当連結会計年度中に2,004億円の設備投資を行っています。
③ 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶・航空機に関してはリース等を活用しています。
当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。このほか物流・ターミナル施設等設備投資についても同様に将来のキャッシュ・フローにあわせた安定的な資金等を投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。平成30年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,963億円で、通貨は円のみならず米ドル、ユーロ等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、平成30年3月31日現在1,750億円となっています。
当社グループは、資金の流動性確保に努めており、平成30年6月20日現在1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、シンジケーション方式等による金融機関からの円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。
なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。平成30年6月20日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「A」、格付投資情報センター(R&I):「BBB+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。