有価証券報告書-第34期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)営業実績
当連結会計年度における情報通信市場では、クラウドサービスやIoT、ビッグデータ、AI等の急速な進展により、様々なデジタルサービスの利用が進んでいます。それらのサービスの利用を通じて蓄積されたデータを分析・活用(データマネジメント)することで、人々の生活における利便性向上や、ビジネスにおける新たなモデル創出や生産性向上等、より良い方向への変革を実現するデジタルトランスフォーメーションが世界的に進みつつあります。また、高度化・複雑化するサイバー攻撃に対する情報セキュリティ強化、災害対策への取り組み強化や、地球環境保護への貢献等も求められるようになっています。
こうした様々な社会的課題を解決する上で、情報通信の役割はますます重要になっています。
このような事業環境のなか、NTTグループは、2018年11月に新たな中期経営戦略「Your Value Partner 2025」を策定・公表し、「Your Value Partner」としてパートナーの皆さまとともに、社会的課題の解決をめざす取り組みを推進しました。
《お客さまのデジタルトランスフォーメーションをサポート》
B2B2Xモデルの推進による新たな価値創出の支援や、5Gサービスの実現・展開に向けた取り組み、パーソナル化推進によるライフスタイル変革の支援等を進めました。
○ 新たな価値創出の支援として、神奈川県横浜市・横浜市立大学と、超スマート社会の実現に向けた官民データ活用に関する包括連携協定を締結し、市民生活をより豊かにする取り組みを開始しました。また、ラスベガス市においては、迅速な事件・事故対応、AIを用いた予測対応による、公共安全ソリューションの実現に向けた実証実験を、Dell Technologiesとともに実施しました。さらに、デジタルマーケティング支援の強化を目的に、ネットイヤーグループ株式会社との資本業務提携契約を締結しました。このようなB2B2Xモデルの更なる推進に向け、グループの連携を図りながらプロジェクトを拡大するため、当社内にB2B2X戦略委員会を設置しました。
○ 5Gサービスの実現・展開に向け、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」において、幅広いパートナーとともに新たな利用シーン創出に向けた取り組みを拡大しました。また、5Gの屋外実験において、世界で初めて5Gで要求される移動端末への通信速度20Gbpsを超える27Gbpsに成功する等、幅広い環境における5Gの活用に向けた取り組みを推進しました。
○ パーソナル化の推進に向け、多様化するお客さまのライフスタイルに対応するため、NTTドコモによるNTTぷららの子会社化を決定し、映像コンテンツビジネスの強化に取り組みました。また、独自コンテンツの充実を目的として、NTTぷららが番組制作会社大手の株式会社イースト・グループ・ホールディングスへの出資を実施しました。そのほか、利用データ量の少ないお客さまにもご利用いただきやすい「ベーシックシェアパック」「ベーシックパック」や、携帯電話からスマートフォンへ初めて移行するお客さまを対象とした「ウェルカムスマホ割」を提供しました。また、1つの端末を長くご利用になるお客さま向けの割引料金プラン「docomo with」の契約数は500万契約を突破しました。
○ 昨今の働き方改革の流れを受け、NTTグループが提供するRPAツール「WinActor®」の導入企業が3,000社を突破しました。
《自らのデジタルトランスフォーメーションを推進》
グローバル事業の競争力強化に向けた「One NTT」としてのグローバルビジネス成長戦略や、国内事業のデジタルトランスフォーメーション等を推進しました。
○ グローバル事業の競争力強化に向け、当社の傘下に新たにグローバル持株会社(会社名:NTT株式会社)を創設し、NTTコミュニケーションズ、Dimension Data、NTTセキュリティ、NTTデータをその傘下に移管しました。また、グローバル市場で成長が見込めるテクノロジー領域を中心とした投資を活発化するため、グローバルイノベーションファンド(会社名:NTT Venture Capital, L.P.)を設立しました。さらに、グループ各社が共通で購入するハードウェア、ソフトウェア及びサービスについて、世界各国のメーカーや販売会社等と一元的に価格交渉を行い、包括的な契約を締結する調達専門会社(会社名:NTT Global Sourcing, Inc.)を米国に設立しました。なお、本調達の対象に、当社、NTT東日本及びNTT西日本は含みません。
○ 当社、NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本及びNTTコミュニケーションズは自らのデジタルトランスフォーメーションを通じた業務プロセスの更なる効率化や新たな付加価値サービス提供等を推進するため、それぞれCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を設置しました。各社CDOは、5G導入やPSTNマイグレーション等を含む様々な環境変化に迅速かつ柔軟に対応するデジタル戦略策定とその推進を担います。なお、NTTデータは当連結会計年度開始以前にデジタル戦略を牽引する執行役員を配置済です。
○ 24時間自動応答のAI自動対話ロボットと有人チャットによる新たな顧客接点の創出や、音声認識・分析技術を活用したオペレーター支援システムの導入等、コンタクトセンターのデジタルトランスフォーメーションを推進したことで、NTTコミュニケーションズのコンタクトセンター(愛知県名古屋市)では、チャットでの問い合わせ受付数が約4.5倍に増加しました。これらの取り組みが評価され、「コンタクトセンター・アワード2018」において、NTTコミュニケーションズは「最優秀テクノロジー部門賞」を受賞しました。
《人・技術・資産の活用》
不動産利活用、エネルギー供給等の新事業創出、地域社会・経済の活性化に取り組みました。
○ NTTグループの持つ不動産やICT・エネルギー・環境技術等を最大限活用し、従来の不動産開発にとどまらない新たな街づくり事業を推進しました。具体的には、グループ一体となり取り組むための体制強化として、グループの不動産事業の中核を担うNTT都市開発の公開買付け等による完全子会社化等、街づくり事業推進会社(会社名:NTTアーバンソリューションズ株式会社)の創設に向けた準備を進めました。
○ 省エネルギー・脱炭素化推進、災害に強いエネルギー供給等の社会的要請に資する協業事業を創出するとともに、市場・社会の変化に応じた事業展開を推進することを目的に、東京電力ホールディングス株式会社と共同出資会社「TNクロス株式会社」を設立しました。具体的な取り組みの一つとして、災害時の住民生活の早期安定化や平常時の住民サービスの向上を目的とした、新たなエネルギーソリューションの実証に向け、千葉県千葉市と協定を締結しました。
《ESG経営の推進、株主還元の充実による企業価値の向上》
持続的な企業価値の向上と、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけ、環境負荷の低減、多様な人材の活用、セキュリティの強化、株主還元の充実等に取り組みました。
○ 環境への取り組みとして、電気通信事業者としては世界で初めて、国際的なNPO法人「The Climate Group」が運営する国際イニシアティブ「EP100」「EV100」に加盟しました。高効率直流電力設備の導入促進、通信設備の省エネルギー化、環境負荷の低減・車両保有コストの低減に向けたEV化を推進しました。
○ サイバーセキュリティの取り組みとして、安心・安全なデジタル経済に向けた国際評議会(CSDE:Council to Secure the Digital Economy)に参画し、国際ボットネット対策ガイドの発行と、一般社団法人ICT-ISACを通じた日本国内への展開に貢献しました。また、ICTの利用者を守り、サイバー空間の安全性・安定性・強靭性を高めるべく、世界の通信・ITを支える80以上の企業による共同宣言「Cybersecurity Tech Accord」に賛同しました。
○ ダイバーシティ・マネジメントを重要な経営戦略と位置づけ、多様な人材が活躍できるように取り組みました。LGBT等性的マイノリティに対する取り組みとしては、各種手当や福利厚生等、配偶者及びその家族に関わる制度全般を同性パートナーにも適用しました。また、ICT企業として、在宅勤務を含むテレワーク、フレックスタイム制度等を積極的に活用し、多様な働き方を推進しました。2018年7月に実施されたテレワーク・デイズにおいては、NTTグループ全体で1万5千人以上の社員が柔軟な働き方を実践しました。
○ 持続的な企業価値向上に向けた様々な取り組みが評価され、世界の代表的なESG投資指標であるDow Jones Sustainability Indexの「World Index」に初めて選定されました。なお、アジアパシフィック地域の構成銘柄の指標である「Asia Pacific Index」にも5年連続で選定されました。
○ 株主還元については、配当及び機動的な自己株式取得を実施しました。
以上の取り組みの結果、当連結会計年度の営業実績は次のとおりとなりました。
(単位:億円)
営業収益
NTTグループの営業収益は、固定音声関連、移動音声関連、IP系・パケット通信、通信端末機器販売、システムインテグレーション及びその他の6つのサービス分野に区分しております。
2018年度の営業収益は、前期比0.8%増加し、11兆8,798億円となりました。これは、国内及び海外におけるデータ通信事業セグメントの増収、通信端末販売収入の増加及びドコモ光の成長等による移動通信事業セグメントの増収等によるものです。
2018年度における各サービス分野における営業収益の概要は、次のとおりです。
・固定音声関連収入
固定音声関連サービスには、加入電話、INSネット、一般専用、高速ディジタル伝送等、地域通信事業セグメントと長距離・国際通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度における固定音声関連収入は、前期比6.0%減少し、1兆777億円(営業収益の9.1%に相当)となりました。これは、携帯電話や光IP電話の普及、OTT事業者が提供する無料もしくは低価格の通信サービスの増加等により、加入電話やINSネットの契約数が引き続き減少したこと等によるものです。
・移動音声関連収入
移動音声関連サービスには、LTE(Xi)における音声通話サービス等の移動通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度における移動音声関連収入は、前期比1.4%増加し、9,467億円(営業収益の8.0%に相当)となりました。これは、「月々サポート」による割引の縮小に伴う増収影響等によるものです。
・IP系・パケット通信収入
IP系・パケット通信サービスには、「フレッツ光」等の地域通信事業セグメントの一部、Arcstar Universal One、IP-VPN、OCN等の長距離・国際通信事業セグメントの一部、LTE(Xi)におけるパケット通信サービス等の移動通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度におけるIP系・パケット通信収入は、前期比1.0%減少し、3兆7,212億円(営業収益の31.3%に相当)となりました。これは、移動通信事業セグメントにおいて「ドコモ光」契約者数の拡大が進んだものの、地域通信事業セグメントにおける「光コラボレーションモデル」への転用の進展や、移動通信事業セグメントにおけるお客さま還元の強化による収入の減少があったこと等によるものです。
・通信端末機器販売収入
通信端末機器販売には、移動通信事業セグメント、地域通信事業セグメントの一部等が含まれております。
2018年度における通信端末機器販売収入は、前期比5.8%増加し、9,292億円(営業収益の7.8%に相当)となりました。これは、主に移動通信事業セグメントにおいて、スマートフォン価格上昇に伴う端末機器販売収入が増加したこと等によるものです。
・システムインテグレーション収入
システムインテグレーションには、データ通信事業セグメント及び長距離・国際通信事業セグメント、地域通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度のシステムインテグレーション収入は、前期比4.0%増加し、3兆5,941億円(営業収益の30.3%に相当)となりました。これは、データ通信事業セグメントにおける連結拡大影響やビジネス規模の拡大等によるものです。
・その他の営業収入
その他のサービスには、主に建築物の保守、不動産賃貸、システム開発、リース、移動通信事業セグメントにおけるスマートライフ領域等が含まれております。
2018年度のその他の営業収入は、前期比0.1%増加し、1兆6,110億円(営業収益の13.6%に相当)となりました。
営業費用
2018年度の営業費用は前期比0.4%増加し、10兆1,860億円となりました。主な要因は以下のとおりであります。なお、下記の人件費、経費は、連結損益計算書上のサービス原価、通信端末機器原価、システムインテグレーション原価、販売費及び一般管理費に含まれております。
・人件費
2018年度の人件費は、前期比0.1%減少し、2兆3,916億円となりました。これは、地域通信事業セグメントにおける人件費が退職等により減少したものの、データ通信事業セグメントにおける人件費が連結拡大により増加したこと等によるものです。
・経費
2018年度の経費は、前期比1.4%増加し、5兆9,177億円となりました。これは、主にデータ通信事業セグメントにおけるビジネス規模の拡大等や、移動通信事業セグメントにおける端末販売収入に連動する端末機器原価の増加等によるものです。
・減価償却費
2018年度の減価償却費は、前期比1.0%減少し、1兆3,336億円となりました。これは、主に2017年度において移動通信セグメントにて計上した旧世代設備の加速償却を2018年度においては計上していないことなどによるものです。
営業利益
以上の結果、2018年度の営業利益は、前期比3.2%増加し、1兆6,938億円となりました。
金融損益
2018年度の金融損益は、前期の△532億円に対し△119億円となりました。
仲裁裁定金収入
2017年度において発生したTata Sons Limitedから受領した仲裁裁定金は、2018年度においては発生していません。
持分法による投資損益
2018年度の持分法による投資損益は、前期の50億円に対し△101億円となりました。
税引前利益
以上の結果、2018年度の税引前利益は前期比3.9%減少し、1兆6,719億円となりました。
法人税等
2018年度の法人税等は、前期比0.1%減少し、5,332億円となりました。2017年度と2018年度の税負担率は、それぞれ30.67%、31.89%となっております。
当社に帰属する当期利益
以上の結果、2018年度の当期利益は前期比5.6%減少し、1兆1,387億円となりました。また、非支配持分に帰属する当期利益を控除した当社に帰属する当期利益は、前期比4.8%減少し、8,546億円となりました。
(2)セグメント情報
NTTグループの事業は5つのオペレーティング・セグメント、すなわち、移動通信事業セグメント、地域通信事業セグメント、長距離・国際通信事業セグメント、データ通信事業セグメント及びその他の事業セグメントに区分しております。(連結財務諸表 注記6参照)
移動通信事業セグメントには、移動音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、通信端末機器販売、その他が含まれております。
地域通信事業セグメントには、固定音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、通信端末機器販売、システムインテグレーションサービス、その他が含まれております。
長距離・国際通信事業セグメントには、主に固定音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、システムインテグレーションサービス、その他が含まれております。
データ通信事業セグメントには、システムインテグレーションサービスが含まれております。
また、その他の事業セグメントには、主に建築物の保守、不動産賃貸、システム開発、リース、研究開発等に係るその他のサービスが含まれております。
各セグメントの営業実績の概要は、次のとおりです。なお、各セグメントの営業実績の記載における営業収益・営業費用・営業利益は、セグメント間取引を含んでおります。また、当社グループは電気通信事業等の事業を行っており、生産、受注といった区分による表示が困難であるため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産、受注及び販売の状況については各セグメントの営業業績に関連付けて示しております。
①移動通信事業セグメント
移動通信事業では、料金プラン「docomo with」や「ドコモ光」の販売を推進したほか、スマートライフ領域においては、様々な事業者とのコラボレーションを推進し、新たな付加価値の提供に取り組みました。
《主な取り組み内容》
○ バーコードやQRコードを利用した新たなスマートフォン決済サービス「d払い」取扱い店舗の拡大や、国内だけでなく海外における「dポイント」の取扱い店舗の拡大に努めました。その結果、「dポイントクラブ」の会員数は7,015万会員、「dポイントカード」登録数は3,372万人となりました。
○ 来店予約の拡大、説明方法の見直し、Web応対の強化等により、ドコモショップでのお客さまの待ち時間・応対時間の短縮に努めました。
○ スマートフォンから取得した情報を通じてAIがお勧めの保険を提示する仕組みを確立し、「ケータイする保険」から「ケータイに任せる保険」への進化をめざし、東京海上日動火災保険株式会社と「保険レコメンデーションのAI化」「保険プロセスのフルデジタル化」に向けた検討を開始することについて合意しました。
○ 耳の聞こえづらいお客さま向けに、通話相手の発話内容を画面上に文字で表示する「みえる電話」の提供を開始しました。
○ AGC株式会社と共同で、景観を損ねずに既存窓ガラスの室内側から貼り付けができる、電波送受信が可能なガラスアンテナを世界で初めて開発しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
移動通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、お客さま還元強化による減収影響があったものの、「ドコモ光」の契約数拡大によるIP系・パケット通信サービス収入の増加に加え、スマートフォン価格上昇に伴う端末機器販売収入の増加等により4兆8,408億円(前期比1.7%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、「ドコモ光」の拡大に伴う収益連動費用の増加や端末販売収入に連動する端末機器原価の増加があったものの、コスト効率化等により3兆8,272億円(前期比1.4%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1兆136億円(前期比2.7%増)となりました。
移動通信事業セグメントの契約数及び市場シェア (単位:千契約)
(注)1.携帯電話サービス契約数、LTE(Xi)サービス契約数及びFOMAサービス契約数には、通信モジュールサービス契約数を含めて記載しております。
(注)2.他社契約数については、一般社団法人電気通信事業者協会及び各社が発表した数値を基に算出しております。
2019年3月31日現在、NTTドコモの携帯電話サービスの契約数は、7,845万契約と前期末時点の7,637万契約から1年間で208万契約増加いたしました。また、解約率は前期比0.08ポイント減少し、0.57%となりました。
携帯電話サービスにおけるARPU及びMOU
(注)携帯電話サービスにおけるMOUについては「(注)1.MOU(Minutes Of Use)」を、また、ARPUの算定式については「(注)3.ARPUの算定式(b)NTTドコモ」をご参照下さい。
2018年度における携帯電話総合ARPUは4,800円と、前期の4,710円に比べ90円(1.9%)増加しました。これは、モバイルARPUが、「月々サポート」の割引影響の縮小はあるものの、お客さま還元強化による減収影響等により4,360円と前期の4,370円に比べて10円(0.2%)減少したこと、ドコモ光ARPUが、「ドコモ光」契約者数の拡大等により440円と前期の340円に比べて100円(29.4%)増加したことによります。
②地域通信事業セグメント
地域通信事業では、光アクセスサービス等を様々な事業者に卸提供する「光コラボレーションモデル」や、地域社会・経済の活性化に向けたソリューションビジネスの強化を図りました。
○ 「光コラボレーションモデル」において、社会インフラ事業を営む事業者に対し、移転等を契機に電気・ガス・光サービスを一元的にエンドユーザへ提供するモデルを展開する等、異業種との協業が広がりました。こうした取り組みにより、卸サービスを提供している事業者数は当連結会計年度末時点で約750社となり、同モデルによる光アクセスサービスの契約数は1,269万契約となりました。
○ 生産現場を「見える化」できる「工場向けIoTパッケージ」の提供を開始しました。本パッケージの導入により、製造機械の稼働データ蓄積やアラート通知による異常停止の早期発見、異常停止時のネットワークカメラによる映像記録が可能となり、作業工程の見直しや従業員のスキル継承等、現場の生産性向上、作業の省力化、人材育成を実現しました。
○ 「地域創生クラウド」構想の実現に向けた第一歩として、自治体が抱える産業活性化、雇用創出、高齢化対策等への対応や、人手不足に陥りがちな地域企業が求める仕事の効率化等の実現をめざし、日本マイクロソフト株式会社と、自治体向けクラウドサービス基盤の導入・展開における協業を開始しました。
○ 「災害用伝言ダイヤル(171)」「災害用伝言板(web171)」の効果的な利用促進に向け、体験利用期間を設定しました。また、東京都豊島区帰宅困難者対策訓練において、ホテルに避難した外国人に対し、災害情報等を簡単に母国語表示するサービスを、株式会社アクアビットスパイラルズと共同で提供しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
地域通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、固定音声関連サービス収入が減少したこと等に伴い3兆1,523億円(前期比2.5%減)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、メタルケーブル関連の減損損失の計上規模縮小や、退職等による人件費の減少等により2兆7,916億円(前期比3.1%減)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は3,607億円(前期比2.6%増)となりました。
加入電話及びINSネットの契約数 (単位:千加入/回線)
(注)1.加入電話は、一般加入電話とビル電話を合算しております(加入電話・ライトプランを含む)。
2.「INSネット」には、「INSネット64」及び「INSネット1500」が含まれております。「INSネット1500」は、チャネル数、伝送速度、回線使用料(基本料)いずれについても「INSネット64」の10倍程度であることから、「INSネット1500」の1契約を「INSネット64」の10倍に換算しております(INSネット64・ライトを含む)。
加入電話やINSネットについて、お客さまニーズが携帯電話、IP電話、ブロードバンドアクセスサービス、OTT事業者が提供する無料もしくは低価格の通信サービス等へと移行していること等に伴い、2019年3月31日現在の固定電話契約数(固定電話+INSネット)は、前期比1,369千契約減少し、18,500千契約となりました。
フレッツ光(コラボ光含む)、フレッツ・ADSL、ひかり電話、フレッツ・テレビ伝送サービスの契約数
(単位:千契約)
(注)1.「フレッツ光(コラボ光含む)」はNTT東日本の「Bフレッツ」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、NTT西日本の「Bフレッツ」、「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・光マイタウン」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含めて記載しております。
2.「ひかり電話」、「フレッツ・テレビ伝送サービス」は、NTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスを含めて記載しております。
2019年3月31日現在の「フレッツ光(コラボ光含む)」の契約数は、「光コラボレーションモデル」の展開等に取り組んだ結果、21,078千契約(前期比545千契約(2.7%)増)、「ひかり電話」の契約数は、18,244千チャネル(前期比212千チャネル(1.2%)増)、「フレッツ・テレビ」の契約数は、1,716千契約(前期比101千契約(6.2%)増)となりました。
固定通信サービスにおける固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)及びフレッツ光ARPU (単位:円)
(注)各ARPUについては、「(注)2.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit)」「(注)3.ARPUの算定式 (a)NTT東日本、NTT西日本」をご参照下さい。
2018年度における固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)は、前期に比べ、NTT東日本が40円(1.6%)減少し2,540円、NTT西日本が20円(0.8%)減少し2,520円となりました。これらの原因は、移動体通話への移行、高利用者層のIP電話への移行等によるものです。
2018年度におけるフレッツ光ARPUは、前期に比べ、NTT東日本が170円(3.3%)減少し4,910円、NTT西日本が170円(3.3%)減少し4,930円となりました。これは、「光コラボレーションモデル」の進展に伴う単金減等によるものです。
③長距離・国際通信事業セグメント
長距離・国際通信事業では、ネットワーク、セキュリティ等を組み合わせたICTソリューションの提供力を強化したほか、クラウドサービスやITアウトソーシングといった成長分野でのサービス提供力の強化を図りました。
《主な取り組み内容》
○ 対話型自然言語解析AIエンジン「COTOHA® Virtual Assistant」をはじめとする対話型AIや、「WinActor®」等のRPAを組み合わせ、コンタクトセンターの応対から事務処理までのプロセス全体を自動化し、生産性を大幅に向上させる「コンタクトセンターDXソリューション」を提供しました。これにより、従来の「ヒト」が主体となって対応するコンタクトセンターに代わり、「AI+RPA」が主体で対応し業務を完結できる環境を実現しました。
○ お客さまのセキュリティニーズに包括的に対応するため、アプリケーションセキュリティの先進的事業者である、米国のWhiteHat Security, Inc.を完全子会社化する契約を締結しました。
○ 世界各地でのクラウドサービスやデータセンターの需要に対応するため、市場拡大の続く各国において、サービス提供体制の拡充を進めました。また、NTTグループのデータセンターの建設・保有・設備卸提供をグローバルで一元的に実施することを目的に、投資子会社を設立しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
長距離・国際通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、固定音声関連サービス収入の減少があったものの、海外ビジネスの拡大等によるシステムインテグレーションサービス収入の増加、「Arcstar Universal One」の拡大によるIP系・パケット通信サービス収入の増加や、連結拡大影響等により2兆2,787億円(前期比1.6%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、2018年度においては前年度発生した減損損失が生じていないものの、海外ビジネスの拡大に伴う収益連動費用の増加等により2兆1,785億円(前期比1.3%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1,001億円(前期比10.6%増)となりました。
長距離・国際通信事業セグメントにおけるIP系・パケット通信関連サービスの契約数 (単位:千契約)
(注)「ぷらら」及び「ひかりTV」に係る収入は、その他の営業収入に含まれております。
④データ通信事業セグメント
データ通信事業では、グローバルでのデジタルトランスフォーメーション等の加速や、ニーズの多様化・高度化に対応するため、グローバル市場でビジネス拡大を図るとともに、市場の変化に対応したデジタル化の提案、システムインテグレーション等の多様なITサービスの拡大と安定的な提供に取り組みました。
《主な取り組み内容》
○ 地方公共団体や自治体とともに、「WinActor®」を活用した業務効率化や働き方改革に向けた研究・検証を実施しました。その結果、特に個人住民税・法人市民税業務に係る定型作業の軽減効果や、AI-OCRによる様々な帳票の読取制度の高さを確認し、当該ソリューションの実用性について公表しました。
○ 国内最大の決済プラットフォームである「CAFIS」において、国内外の一次元バーコードやQRコードといった各種コード決済を、小売業者が1台の決済端末又は1つのインターフェースで対応が可能となるサービスの開始を決定しました。また、地方公共団体向けに、スマートフォンによるクレジットカード払いが可能となる「モバイルレジ公金クレジット収納サービス」を開始しました。さらに、APAC地域への電子決済事業の拡大に向け、インドのAtom Technologies Limitedを子会社化することに合意する等、国内外に利便性・先進性の高い決済関連サービスを提供する取り組みを推進しました。
○ デジタル領域を中心にサービス提供力の更なる強化に向けて、英国のMagenTys Holdings LimitedやドイツのSybit GmbH、カナダのSierra Systems Group, Inc.等を子会社化しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
データ通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、国内における法人・ソリューション分野及び公共・社会基盤分野、海外におけるEMEA・中南米を中心としたビジネス規模拡大等により2兆1,636億円(前期比5.8%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、収益連動費用の増加等により2兆159億円(前期比4.9%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1,477億円(前期比19.9%増)となりました。
⑤その他の事業セグメント
その他の事業では、主に不動産事業、金融事業、建築・電力事業、システム開発事業に係るサービスを提供しました。
《主な取り組み内容》
○ 不動産事業
国際ビジネスセンターとしての機能強化を推進している東京都千代田区大手町に、国内最高水準の通信環境や、国際会議にも対応可能な大規模ホール等を備えた「大手町プレイス」を開業しました。また、NTTグループの不動産事業を一元的に担う、街づくり事業推進会社の創設に向けた準備を進めました。
○ 金融事業
ICT機器の普及や、環境・教育・医療分野を中心とした社会的課題の解決に向け、リース・ファイナンス等の金融サービスを展開しました。また、通信サービス料金等の請求・回収、クレジットカードの決済サービスの提供を行いました。
○ 建築・電力事業
ICT・エネルギー・建築の技術を最大限に融合・活用し、南相馬川房発電・メガソーラー発電所をはじめとした太陽光発電所を竣工する等、自然エネルギーの活用や限りあるエネルギーを効率的にムダなく使う街づくり、自然災害等のリスクに強い安心・安全な街づくりに取り組みました。
○ システム開発事業
最適で高品質なICTサービスを提供するため、ネットワークの運用システムやアプリケーションサービスの開発等に取り組んだほか、IoT、ビッグデータ、AI等、先端技術を活用したソリューション開発等に取り組みました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
その他の事業セグメントにおいては、不動産事業において前年度の一過性の収益計上による反動減があったものの、金融事業の増収等により、当連結会計年度の営業収益は1兆2,403億円(前期比2.1%増)となりました。一方、当連結会計年度における営業費用は、金融事業の収益連動経費の増加等により、1兆1,546億円(前期比3.5%増)となりました。この結果、営業利益は856億円(前期比13.2%減)となりました。
(参考)国内売上高及び海外売上高に関する情報
(単位:億円)
(注)営業収益は、製品及びサービスの提供先別に国内・海外を分類しております。
国内における当連結会計年度の営業収益は、移動通信事業セグメントにおける増収等により9兆6,327億円(前期比0.3%増)となりました。海外における当連結会計年度の営業収益は、データ通信事業セグメントにおけるビジネス規模拡大等などにより2兆2,472億円(前期比3.0%増)となりました。
(注)
1.MOU(Minutes Of Use):1利用者当たり月間平均通話時間
2.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit):1契約者(利用者)当たり月間平均収入
契約者(利用者)当たりの月間平均収入(ARPU)は、契約者(利用者)1人当たりの平均的な月間営業収益を計るために使われます。固定通信事業の場合、ARPUは、地域通信事業セグメントの営業収益のうち、固定電話(加入電話およびINSネット)並びに「フレッツ光」の提供により毎月発生する収入を、当該サービスの稼動契約数で除して計算されます。移動通信事業の場合、ARPUは、移動通信事業セグメントの営業収益のうち、携帯電話(LTE(Xi))、携帯電話(FOMA)、及び「ドコモ光」のサービス提供により発生する通信サービス収入(一部除く)を、当該サービスの稼動利用者数で除して計算されます。これら数字の計算からは、各月の平均的な利用状況を表さない端末機器販売、契約事務手数料、ユニバーサルサービス料などは除いています。こうして得られたARPUは各月のお客さまの平均的な利用状況を把握する上で有用な情報を提供するものであると考えております。なお、ARPUの分子に含まれる収入はIFRSによる連結決算値を構成する財務数値により算定しております。
3.ARPUの算定式
(a) NTT東日本、NTT西日本
NTT東日本およびNTT西日本のARPUは、以下の2種類に分けて計算をしております。
・音声伝送収入(IP系除く)に含まれる加入電話とINSネットの基本料、通信・通話料、およびIP系収入に含まれる「フレッツ・ADSL」、「フレッツ・ISDN」からの収入に基づいて計算される固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)。
・IP系収入に含まれる「フレッツ光」、「フレッツ光」のオプションサービスからの収入、「ひかり電話」における基本料・通信料・機器利用料、および附帯事業営業収益に含まれる「フレッツ光」のオプションサービス収入に基づいて計算されるフレッツ光ARPU。
※1 「フレッツ光」は、NTT東日本の「Bフレッツ」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」および「フレッツ 光WiFiアクセス」、NTT西日本の「Bフレッツ」、「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・光マイタウン」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含めて記載しております。「フレッツ光」のオプションサービスは、NTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスを含めて記載しております。
※2 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)およびフレッツ光ARPUには相互接続通話料が含まれておりません。
※3 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)の算定上の契約数は、固定電話(加入電話及びINSネット)の契約数であります。
※4 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)の算定上、INSネット1500の契約数は、チャネル数、伝送速度、回線使用料(基本料)いずれについてもINSネット64の10倍程度であることから、INSネット1500の1契約をINSネット64の10倍に換算しております。
※5 フレッツ光ARPU算定上の契約数は、「フレッツ光」の契約数(「フレッツ光」は、NTT東日本の「Bフレッツ」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、NTT西日本の「Bフレッツ」、「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・光マイタウン」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含む)であります。
※6 NTT東日本およびNTT西日本におけるARPU算出時の稼動契約数の計算式は以下のとおりであります。
通期実績:4月~3月までの各月稼動契約数{(前月末契約数+当月末契約数)/2}の合計
(b) NTTドコモ
NTTドコモのARPUの計算式は、以下のとおりであります。
・総合ARPU:モバイルARPU+ドコモ光ARPU
※1 ・モバイルARPU:モバイルARPU関連収入(音声関連収入(基本使用料、通話料)+パケット関連収入(月額定額料、通信料))/稼動利用者数
・ドコモ光ARPU:ドコモ光ARPU関連収入(基本使用料、通話料)/稼動利用者数
なお、パケットARPUとドコモ光ARPUの合算値をデータARPUと称します。
※2 NTTドコモにおけるARPU算出時の稼動利用者数の計算式は以下のとおりであります。
当該期間の各月稼動利用者数{(前月末利用者数+当月末利用者数)/2}の合計
※3 利用者数は、以下のとおり、契約数を基本としつつ、一定の契約数を除外して算定しています。
利用者数 = 契約数
-通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る契約数
-Xi契約及びFOMA契約と同一名義のデータプラン契約数
なお、通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る収入は、ARPUの算定上、収入に含まれておりません。
(3)流動性及び資金の源泉
前連結会計年度及び当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(単位:億円)
(注)1.前期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒しとなった影響
2,319億円。
2.前期末日及び当期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒し となった影響83億円。
3.当期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒しとなった影響 2,237億円。
資金調達及び資金の源泉と使途
当連結会計年度の休日影響を除いた場合の営業活動によって得たキャッシュ・フローは、2兆3,979億円となり、前連結会計年度の2兆7,732億円から3,753億円減少しております。これは前期における仲裁裁定金収入や、当期における営業債権等の回収の減少などによるものであります。なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2兆4,062億円であります。
NTTグループは、営業活動によって得たキャッシュ・フローを主に設備の取得、配当金の支払、自己株式の取得等に充てました。
当連結会計年度の投資活動に充てたキャッシュ・フローは、1兆7,741億円となり、前連結会計年度の1兆7,462億円から支出が280億円増加しております。これは、有形固定資産、無形資産に対する投資が現金支出ベースで758億円減少した一方で、子会社の支配獲得による支出が982億円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度の有形固定資産、無形資産に対する投資の減少は、地域通信事業においてアクセス系設備整備の効率化等により投資が減少したこと等によります。なお、当連結会計年度の発生主義に基づく設備投資額1兆6,970億円の主な内訳は移動通信事業が5,937億円、地域通信事業が5,410億円でした。
当連結会計年度の財務活動に充てたキャッシュ・フローは、5,843億円となり、前連結会計年度の9,683億円から支出が3,840億円減少しております。これは、短期借入債務及び長期借入債務の増加による収入が純額で4,827億円増加したこと等によります。なお、当連結会計年度の長期借入による資金調達額の内訳は、社債による調達が156億円、金融機関借入による調達が4,193億円となっております。
また、2019年3月31日現在のNTTグループの有利子負債残高は4兆2,627億円であり、2018年3月31日現在の3兆9,716億円から2,911億円増加しました。2019年3月31日現在の有利子負債の株主資本に対する比率は46.0%(2018年3月31日現在は43.9%)となりました。
NTTグループは、営業活動によって得られるキャッシュ・フロー、銀行やその他の金融機関からの借入金、あるいは、資本市場における株式や債券の発行により、将来にわたって現在予測される設備投資とその他の支出や負債の支払に必要な財源が確保できると確信しております。
翌連結会計年度は、移動通信事業において既存のネットワーク投資の効率化等により投資が減少することに加え、地域通信事業においてアクセス系設備整備や開通関連工程の効率化等により投資が減少する一方で、長距離・国際通信事業においてデータセンター関連工程の増等により投資が増加すること等により、発生主義に基づく設備投資額を1兆7,500億円と見込んでおります。その内訳は、移動通信事業が5,700億円、地域通信事業が5,200億円等となっております。設備投資は確実な予測が困難な需要動向、競争環境及びその他の要因に影響を受けるため、予想とは異なることもありえます。なお、NTTグループの実際の資金調達額は、将来の事業運営、市場状況、その他の要因によって変化するため、正確に予測することは困難であります。
流動性
2019年3月31日現在の休日影響を除いた場合のNTTグループの現金及び現金同等物残高は1兆1,698億円であり、2018年3月31日現在の1兆1,269億円から429億円増加しました。現金同等物とは、負債の返済や投資等に利用される予定の一時的な余剰金のことで、運転資金として使用されます。したがって、現金同等物の残高は、その時点の資金調達や運転資金の状況に応じて毎年度変化します。なお、2019年3月31日現在の現金及び現金同等物残高は9,461億円であります。
契約上の債務
下記の表は、2019年3月31日現在におけるNTTグループの契約上の債務をまとめたものであります。
(注)1.長期借入債務には1年以内に返済予定のものを含めて表示しております。長期借入債務の詳細については、
連結財務諸表 注記19参照。
2.ファイナンス・リース債務には利息相当額を含んでおります。
3.購入コミットメントは主に有形固定資産その他の資産の購入に関する契約債務であります。なお、残余期間が1年内の購入コミットメントを含んでおりますが、解約可能な購入コミットメントを除いております。
4.その他の固定負債は重要性がない、あるいは支払時期が不確実であるため、上表に金額を記載しておりません。なお、連結財務諸表 注記23に記載のとおり、NTTグループの年金制度に対して、翌連結会計年度に合計17,743百万円の拠出を見込んでおります。
2019年3月31日現在、NTTグループの有形固定資産及びその他資産の購入等に係る契約債務残高は約773億円となっており、営業活動によって得たキャッシュ・フローによりこれらの売買契約代金の支払をする予定であります。
(4)重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
連結財務諸表 注記4参照
(1)営業実績
当連結会計年度における情報通信市場では、クラウドサービスやIoT、ビッグデータ、AI等の急速な進展により、様々なデジタルサービスの利用が進んでいます。それらのサービスの利用を通じて蓄積されたデータを分析・活用(データマネジメント)することで、人々の生活における利便性向上や、ビジネスにおける新たなモデル創出や生産性向上等、より良い方向への変革を実現するデジタルトランスフォーメーションが世界的に進みつつあります。また、高度化・複雑化するサイバー攻撃に対する情報セキュリティ強化、災害対策への取り組み強化や、地球環境保護への貢献等も求められるようになっています。
こうした様々な社会的課題を解決する上で、情報通信の役割はますます重要になっています。
このような事業環境のなか、NTTグループは、2018年11月に新たな中期経営戦略「Your Value Partner 2025」を策定・公表し、「Your Value Partner」としてパートナーの皆さまとともに、社会的課題の解決をめざす取り組みを推進しました。
《お客さまのデジタルトランスフォーメーションをサポート》
B2B2Xモデルの推進による新たな価値創出の支援や、5Gサービスの実現・展開に向けた取り組み、パーソナル化推進によるライフスタイル変革の支援等を進めました。
○ 新たな価値創出の支援として、神奈川県横浜市・横浜市立大学と、超スマート社会の実現に向けた官民データ活用に関する包括連携協定を締結し、市民生活をより豊かにする取り組みを開始しました。また、ラスベガス市においては、迅速な事件・事故対応、AIを用いた予測対応による、公共安全ソリューションの実現に向けた実証実験を、Dell Technologiesとともに実施しました。さらに、デジタルマーケティング支援の強化を目的に、ネットイヤーグループ株式会社との資本業務提携契約を締結しました。このようなB2B2Xモデルの更なる推進に向け、グループの連携を図りながらプロジェクトを拡大するため、当社内にB2B2X戦略委員会を設置しました。
○ 5Gサービスの実現・展開に向け、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」において、幅広いパートナーとともに新たな利用シーン創出に向けた取り組みを拡大しました。また、5Gの屋外実験において、世界で初めて5Gで要求される移動端末への通信速度20Gbpsを超える27Gbpsに成功する等、幅広い環境における5Gの活用に向けた取り組みを推進しました。
○ パーソナル化の推進に向け、多様化するお客さまのライフスタイルに対応するため、NTTドコモによるNTTぷららの子会社化を決定し、映像コンテンツビジネスの強化に取り組みました。また、独自コンテンツの充実を目的として、NTTぷららが番組制作会社大手の株式会社イースト・グループ・ホールディングスへの出資を実施しました。そのほか、利用データ量の少ないお客さまにもご利用いただきやすい「ベーシックシェアパック」「ベーシックパック」や、携帯電話からスマートフォンへ初めて移行するお客さまを対象とした「ウェルカムスマホ割」を提供しました。また、1つの端末を長くご利用になるお客さま向けの割引料金プラン「docomo with」の契約数は500万契約を突破しました。
○ 昨今の働き方改革の流れを受け、NTTグループが提供するRPAツール「WinActor®」の導入企業が3,000社を突破しました。
《自らのデジタルトランスフォーメーションを推進》
グローバル事業の競争力強化に向けた「One NTT」としてのグローバルビジネス成長戦略や、国内事業のデジタルトランスフォーメーション等を推進しました。
○ グローバル事業の競争力強化に向け、当社の傘下に新たにグローバル持株会社(会社名:NTT株式会社)を創設し、NTTコミュニケーションズ、Dimension Data、NTTセキュリティ、NTTデータをその傘下に移管しました。また、グローバル市場で成長が見込めるテクノロジー領域を中心とした投資を活発化するため、グローバルイノベーションファンド(会社名:NTT Venture Capital, L.P.)を設立しました。さらに、グループ各社が共通で購入するハードウェア、ソフトウェア及びサービスについて、世界各国のメーカーや販売会社等と一元的に価格交渉を行い、包括的な契約を締結する調達専門会社(会社名:NTT Global Sourcing, Inc.)を米国に設立しました。なお、本調達の対象に、当社、NTT東日本及びNTT西日本は含みません。
○ 当社、NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本及びNTTコミュニケーションズは自らのデジタルトランスフォーメーションを通じた業務プロセスの更なる効率化や新たな付加価値サービス提供等を推進するため、それぞれCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を設置しました。各社CDOは、5G導入やPSTNマイグレーション等を含む様々な環境変化に迅速かつ柔軟に対応するデジタル戦略策定とその推進を担います。なお、NTTデータは当連結会計年度開始以前にデジタル戦略を牽引する執行役員を配置済です。
○ 24時間自動応答のAI自動対話ロボットと有人チャットによる新たな顧客接点の創出や、音声認識・分析技術を活用したオペレーター支援システムの導入等、コンタクトセンターのデジタルトランスフォーメーションを推進したことで、NTTコミュニケーションズのコンタクトセンター(愛知県名古屋市)では、チャットでの問い合わせ受付数が約4.5倍に増加しました。これらの取り組みが評価され、「コンタクトセンター・アワード2018」において、NTTコミュニケーションズは「最優秀テクノロジー部門賞」を受賞しました。
《人・技術・資産の活用》
不動産利活用、エネルギー供給等の新事業創出、地域社会・経済の活性化に取り組みました。
○ NTTグループの持つ不動産やICT・エネルギー・環境技術等を最大限活用し、従来の不動産開発にとどまらない新たな街づくり事業を推進しました。具体的には、グループ一体となり取り組むための体制強化として、グループの不動産事業の中核を担うNTT都市開発の公開買付け等による完全子会社化等、街づくり事業推進会社(会社名:NTTアーバンソリューションズ株式会社)の創設に向けた準備を進めました。
○ 省エネルギー・脱炭素化推進、災害に強いエネルギー供給等の社会的要請に資する協業事業を創出するとともに、市場・社会の変化に応じた事業展開を推進することを目的に、東京電力ホールディングス株式会社と共同出資会社「TNクロス株式会社」を設立しました。具体的な取り組みの一つとして、災害時の住民生活の早期安定化や平常時の住民サービスの向上を目的とした、新たなエネルギーソリューションの実証に向け、千葉県千葉市と協定を締結しました。
《ESG経営の推進、株主還元の充実による企業価値の向上》
持続的な企業価値の向上と、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけ、環境負荷の低減、多様な人材の活用、セキュリティの強化、株主還元の充実等に取り組みました。
○ 環境への取り組みとして、電気通信事業者としては世界で初めて、国際的なNPO法人「The Climate Group」が運営する国際イニシアティブ「EP100」「EV100」に加盟しました。高効率直流電力設備の導入促進、通信設備の省エネルギー化、環境負荷の低減・車両保有コストの低減に向けたEV化を推進しました。
○ サイバーセキュリティの取り組みとして、安心・安全なデジタル経済に向けた国際評議会(CSDE:Council to Secure the Digital Economy)に参画し、国際ボットネット対策ガイドの発行と、一般社団法人ICT-ISACを通じた日本国内への展開に貢献しました。また、ICTの利用者を守り、サイバー空間の安全性・安定性・強靭性を高めるべく、世界の通信・ITを支える80以上の企業による共同宣言「Cybersecurity Tech Accord」に賛同しました。
○ ダイバーシティ・マネジメントを重要な経営戦略と位置づけ、多様な人材が活躍できるように取り組みました。LGBT等性的マイノリティに対する取り組みとしては、各種手当や福利厚生等、配偶者及びその家族に関わる制度全般を同性パートナーにも適用しました。また、ICT企業として、在宅勤務を含むテレワーク、フレックスタイム制度等を積極的に活用し、多様な働き方を推進しました。2018年7月に実施されたテレワーク・デイズにおいては、NTTグループ全体で1万5千人以上の社員が柔軟な働き方を実践しました。
○ 持続的な企業価値向上に向けた様々な取り組みが評価され、世界の代表的なESG投資指標であるDow Jones Sustainability Indexの「World Index」に初めて選定されました。なお、アジアパシフィック地域の構成銘柄の指標である「Asia Pacific Index」にも5年連続で選定されました。
○ 株主還元については、配当及び機動的な自己株式取得を実施しました。
以上の取り組みの結果、当連結会計年度の営業実績は次のとおりとなりました。
(単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 117,821 | 118,798 | 977 | 0.8% |
固定音声関連収入 | 11,469 | 10,777 | △692 | △6.0% |
移動音声関連収入 | 9,333 | 9,467 | 135 | 1.4% |
IP系・パケット通信収入 | 37,574 | 37,212 | △362 | △1.0% |
通信端末機器販売 | 8,783 | 9,292 | 509 | 5.8% |
システムインテグレーション収入 | 34,574 | 35,941 | 1,367 | 4.0% |
その他の営業収入 | 16,089 | 16,110 | 21 | 0.1% |
営業費用 | 101,411 | 101,860 | 449 | 0.4% |
営業利益 | 16,411 | 16,938 | 527 | 3.2% |
金融損益 | △532 | △119 | 413 | 77.6% |
仲裁裁定金収入 | 1,476 | - | △1,476 | - |
持分法による投資損益 | 50 | △101 | △150 | - |
税引前利益 | 17,405 | 16,719 | △686 | △3.9% |
法人税等 | 5,338 | 5,332 | △6 | △0.1% |
当期利益 | 12,067 | 11,387 | △680 | △5.6% |
控除:非支配持分に帰属する当期利益 | 3,088 | 2,841 | △247 | △8.0% |
当社に帰属する当期利益 | 8,979 | 8,546 | △433 | △4.8% |
営業収益
NTTグループの営業収益は、固定音声関連、移動音声関連、IP系・パケット通信、通信端末機器販売、システムインテグレーション及びその他の6つのサービス分野に区分しております。
2018年度の営業収益は、前期比0.8%増加し、11兆8,798億円となりました。これは、国内及び海外におけるデータ通信事業セグメントの増収、通信端末販売収入の増加及びドコモ光の成長等による移動通信事業セグメントの増収等によるものです。
2018年度における各サービス分野における営業収益の概要は、次のとおりです。
・固定音声関連収入
固定音声関連サービスには、加入電話、INSネット、一般専用、高速ディジタル伝送等、地域通信事業セグメントと長距離・国際通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度における固定音声関連収入は、前期比6.0%減少し、1兆777億円(営業収益の9.1%に相当)となりました。これは、携帯電話や光IP電話の普及、OTT事業者が提供する無料もしくは低価格の通信サービスの増加等により、加入電話やINSネットの契約数が引き続き減少したこと等によるものです。
・移動音声関連収入
移動音声関連サービスには、LTE(Xi)における音声通話サービス等の移動通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度における移動音声関連収入は、前期比1.4%増加し、9,467億円(営業収益の8.0%に相当)となりました。これは、「月々サポート」による割引の縮小に伴う増収影響等によるものです。
・IP系・パケット通信収入
IP系・パケット通信サービスには、「フレッツ光」等の地域通信事業セグメントの一部、Arcstar Universal One、IP-VPN、OCN等の長距離・国際通信事業セグメントの一部、LTE(Xi)におけるパケット通信サービス等の移動通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度におけるIP系・パケット通信収入は、前期比1.0%減少し、3兆7,212億円(営業収益の31.3%に相当)となりました。これは、移動通信事業セグメントにおいて「ドコモ光」契約者数の拡大が進んだものの、地域通信事業セグメントにおける「光コラボレーションモデル」への転用の進展や、移動通信事業セグメントにおけるお客さま還元の強化による収入の減少があったこと等によるものです。
・通信端末機器販売収入
通信端末機器販売には、移動通信事業セグメント、地域通信事業セグメントの一部等が含まれております。
2018年度における通信端末機器販売収入は、前期比5.8%増加し、9,292億円(営業収益の7.8%に相当)となりました。これは、主に移動通信事業セグメントにおいて、スマートフォン価格上昇に伴う端末機器販売収入が増加したこと等によるものです。
・システムインテグレーション収入
システムインテグレーションには、データ通信事業セグメント及び長距離・国際通信事業セグメント、地域通信事業セグメントの一部が含まれております。
2018年度のシステムインテグレーション収入は、前期比4.0%増加し、3兆5,941億円(営業収益の30.3%に相当)となりました。これは、データ通信事業セグメントにおける連結拡大影響やビジネス規模の拡大等によるものです。
・その他の営業収入
その他のサービスには、主に建築物の保守、不動産賃貸、システム開発、リース、移動通信事業セグメントにおけるスマートライフ領域等が含まれております。
2018年度のその他の営業収入は、前期比0.1%増加し、1兆6,110億円(営業収益の13.6%に相当)となりました。
営業費用
2018年度の営業費用は前期比0.4%増加し、10兆1,860億円となりました。主な要因は以下のとおりであります。なお、下記の人件費、経費は、連結損益計算書上のサービス原価、通信端末機器原価、システムインテグレーション原価、販売費及び一般管理費に含まれております。
・人件費
2018年度の人件費は、前期比0.1%減少し、2兆3,916億円となりました。これは、地域通信事業セグメントにおける人件費が退職等により減少したものの、データ通信事業セグメントにおける人件費が連結拡大により増加したこと等によるものです。
・経費
2018年度の経費は、前期比1.4%増加し、5兆9,177億円となりました。これは、主にデータ通信事業セグメントにおけるビジネス規模の拡大等や、移動通信事業セグメントにおける端末販売収入に連動する端末機器原価の増加等によるものです。
・減価償却費
2018年度の減価償却費は、前期比1.0%減少し、1兆3,336億円となりました。これは、主に2017年度において移動通信セグメントにて計上した旧世代設備の加速償却を2018年度においては計上していないことなどによるものです。
営業利益
以上の結果、2018年度の営業利益は、前期比3.2%増加し、1兆6,938億円となりました。
金融損益
2018年度の金融損益は、前期の△532億円に対し△119億円となりました。
仲裁裁定金収入
2017年度において発生したTata Sons Limitedから受領した仲裁裁定金は、2018年度においては発生していません。
持分法による投資損益
2018年度の持分法による投資損益は、前期の50億円に対し△101億円となりました。
税引前利益
以上の結果、2018年度の税引前利益は前期比3.9%減少し、1兆6,719億円となりました。
法人税等
2018年度の法人税等は、前期比0.1%減少し、5,332億円となりました。2017年度と2018年度の税負担率は、それぞれ30.67%、31.89%となっております。
当社に帰属する当期利益
以上の結果、2018年度の当期利益は前期比5.6%減少し、1兆1,387億円となりました。また、非支配持分に帰属する当期利益を控除した当社に帰属する当期利益は、前期比4.8%減少し、8,546億円となりました。
(2)セグメント情報
NTTグループの事業は5つのオペレーティング・セグメント、すなわち、移動通信事業セグメント、地域通信事業セグメント、長距離・国際通信事業セグメント、データ通信事業セグメント及びその他の事業セグメントに区分しております。(連結財務諸表 注記6参照)
移動通信事業セグメントには、移動音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、通信端末機器販売、その他が含まれております。
地域通信事業セグメントには、固定音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、通信端末機器販売、システムインテグレーションサービス、その他が含まれております。
長距離・国際通信事業セグメントには、主に固定音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、システムインテグレーションサービス、その他が含まれております。
データ通信事業セグメントには、システムインテグレーションサービスが含まれております。
また、その他の事業セグメントには、主に建築物の保守、不動産賃貸、システム開発、リース、研究開発等に係るその他のサービスが含まれております。
各セグメントの営業実績の概要は、次のとおりです。なお、各セグメントの営業実績の記載における営業収益・営業費用・営業利益は、セグメント間取引を含んでおります。また、当社グループは電気通信事業等の事業を行っており、生産、受注といった区分による表示が困難であるため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産、受注及び販売の状況については各セグメントの営業業績に関連付けて示しております。
①移動通信事業セグメント
移動通信事業では、料金プラン「docomo with」や「ドコモ光」の販売を推進したほか、スマートライフ領域においては、様々な事業者とのコラボレーションを推進し、新たな付加価値の提供に取り組みました。
《主な取り組み内容》
○ バーコードやQRコードを利用した新たなスマートフォン決済サービス「d払い」取扱い店舗の拡大や、国内だけでなく海外における「dポイント」の取扱い店舗の拡大に努めました。その結果、「dポイントクラブ」の会員数は7,015万会員、「dポイントカード」登録数は3,372万人となりました。
○ 来店予約の拡大、説明方法の見直し、Web応対の強化等により、ドコモショップでのお客さまの待ち時間・応対時間の短縮に努めました。
○ スマートフォンから取得した情報を通じてAIがお勧めの保険を提示する仕組みを確立し、「ケータイする保険」から「ケータイに任せる保険」への進化をめざし、東京海上日動火災保険株式会社と「保険レコメンデーションのAI化」「保険プロセスのフルデジタル化」に向けた検討を開始することについて合意しました。
○ 耳の聞こえづらいお客さま向けに、通話相手の発話内容を画面上に文字で表示する「みえる電話」の提供を開始しました。
○ AGC株式会社と共同で、景観を損ねずに既存窓ガラスの室内側から貼り付けができる、電波送受信が可能なガラスアンテナを世界で初めて開発しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 47,623 | 48,408 | 786 | 1.7% |
移動音声関連サービス | 9,428 | 9,562 | 134 | 1.4% |
IP系・パケット通信サービス | 21,372 | 21,593 | 221 | 1.0% |
通信端末機器販売 | 7,898 | 8,444 | 546 | 6.9% |
その他 | 8,924 | 8,809 | △115 | △1.3% |
営業費用 | 37,753 | 38,272 | 519 | 1.4% |
営業利益 | 9,870 | 10,136 | 267 | 2.7% |
移動通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、お客さま還元強化による減収影響があったものの、「ドコモ光」の契約数拡大によるIP系・パケット通信サービス収入の増加に加え、スマートフォン価格上昇に伴う端末機器販売収入の増加等により4兆8,408億円(前期比1.7%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、「ドコモ光」の拡大に伴う収益連動費用の増加や端末販売収入に連動する端末機器原価の増加があったものの、コスト効率化等により3兆8,272億円(前期比1.4%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1兆136億円(前期比2.7%増)となりました。
移動通信事業セグメントの契約数及び市場シェア (単位:千契約)
サービスの種類 | 2018年3月31日現在 | 2019年3月31日現在 | 増減 | 増減率 |
携帯電話サービス | 76,370 | 78,453 | 2,083 | 2.7% |
(再掲)カケホーダイ&パケあえる | 41,964 | 45,793 | 3,829 | 9.1% |
LTE(Xi)サービス | 50,097 | 55,872 | 5,775 | 11.5% |
FOMAサービス | 26,273 | 22,581 | △3,692 | △14.1% |
携帯電話市場シェア | 45.3% | 44.7% | △0.6ポイント | - |
spモードサービス | 38,998 | 41,797 | 2,799 | 7.2% |
iモードサービス | 12,111 | 9,098 | △3,014 | △24.9% |
(注)1.携帯電話サービス契約数、LTE(Xi)サービス契約数及びFOMAサービス契約数には、通信モジュールサービス契約数を含めて記載しております。
(注)2.他社契約数については、一般社団法人電気通信事業者協会及び各社が発表した数値を基に算出しております。
2019年3月31日現在、NTTドコモの携帯電話サービスの契約数は、7,845万契約と前期末時点の7,637万契約から1年間で208万契約増加いたしました。また、解約率は前期比0.08ポイント減少し、0.57%となりました。
携帯電話サービスにおけるARPU及びMOU
区分 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | 増減率 |
総合ARPU(円) | 4,710 | 4,800 | 90 | 1.9% |
モバイルARPU(LTE(Xi)+FOMA)(円) | 4,370 | 4,360 | △10 | △0.2% |
ドコモ光ARPU(円) | 340 | 440 | 100 | 29.4% |
MOU(分) | 136 | 134 | △2 | △1.5% |
(注)携帯電話サービスにおけるMOUについては「(注)1.MOU(Minutes Of Use)」を、また、ARPUの算定式については「(注)3.ARPUの算定式(b)NTTドコモ」をご参照下さい。
2018年度における携帯電話総合ARPUは4,800円と、前期の4,710円に比べ90円(1.9%)増加しました。これは、モバイルARPUが、「月々サポート」の割引影響の縮小はあるものの、お客さま還元強化による減収影響等により4,360円と前期の4,370円に比べて10円(0.2%)減少したこと、ドコモ光ARPUが、「ドコモ光」契約者数の拡大等により440円と前期の340円に比べて100円(29.4%)増加したことによります。
②地域通信事業セグメント
地域通信事業では、光アクセスサービス等を様々な事業者に卸提供する「光コラボレーションモデル」や、地域社会・経済の活性化に向けたソリューションビジネスの強化を図りました。
○ 「光コラボレーションモデル」において、社会インフラ事業を営む事業者に対し、移転等を契機に電気・ガス・光サービスを一元的にエンドユーザへ提供するモデルを展開する等、異業種との協業が広がりました。こうした取り組みにより、卸サービスを提供している事業者数は当連結会計年度末時点で約750社となり、同モデルによる光アクセスサービスの契約数は1,269万契約となりました。
○ 生産現場を「見える化」できる「工場向けIoTパッケージ」の提供を開始しました。本パッケージの導入により、製造機械の稼働データ蓄積やアラート通知による異常停止の早期発見、異常停止時のネットワークカメラによる映像記録が可能となり、作業工程の見直しや従業員のスキル継承等、現場の生産性向上、作業の省力化、人材育成を実現しました。
○ 「地域創生クラウド」構想の実現に向けた第一歩として、自治体が抱える産業活性化、雇用創出、高齢化対策等への対応や、人手不足に陥りがちな地域企業が求める仕事の効率化等の実現をめざし、日本マイクロソフト株式会社と、自治体向けクラウドサービス基盤の導入・展開における協業を開始しました。
○ 「災害用伝言ダイヤル(171)」「災害用伝言板(web171)」の効果的な利用促進に向け、体験利用期間を設定しました。また、東京都豊島区帰宅困難者対策訓練において、ホテルに避難した外国人に対し、災害情報等を簡単に母国語表示するサービスを、株式会社アクアビットスパイラルズと共同で提供しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 32,316 | 31,523 | △792 | △2.5% |
固定音声関連サービス | 11,431 | 10,852 | △579 | △5.1% |
IP系・パケット通信サービス | 15,237 | 15,007 | △230 | △1.5% |
通信端末機器販売 | 767 | 766 | △1 | △0.1% |
システムインテグレーションサービス | 1,666 | 1,689 | 23 | 1.4% |
その他 | 3,214 | 3,209 | △5 | △0.2% |
営業費用 | 28,800 | 27,916 | △884 | △3.1% |
営業利益 | 3,516 | 3,607 | 91 | 2.6% |
地域通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、固定音声関連サービス収入が減少したこと等に伴い3兆1,523億円(前期比2.5%減)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、メタルケーブル関連の減損損失の計上規模縮小や、退職等による人件費の減少等により2兆7,916億円(前期比3.1%減)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は3,607億円(前期比2.6%増)となりました。
加入電話及びINSネットの契約数 (単位:千加入/回線)
サービスの種類 | 2018年3月31日現在 | 2019年3月31日現在 | 増減 | 増減率 |
(NTT東日本) | ||||
加入電話 | 8,707 | 8,119 | △588 | △6.8% |
INSネット | 1,188 | 1,086 | △102 | △8.6% |
(NTT西日本) | ||||
加入電話 | 8,832 | 8,244 | △588 | △6.7% |
INSネット | 1,143 | 1,052 | △91 | △8.0% |
(注)1.加入電話は、一般加入電話とビル電話を合算しております(加入電話・ライトプランを含む)。
2.「INSネット」には、「INSネット64」及び「INSネット1500」が含まれております。「INSネット1500」は、チャネル数、伝送速度、回線使用料(基本料)いずれについても「INSネット64」の10倍程度であることから、「INSネット1500」の1契約を「INSネット64」の10倍に換算しております(INSネット64・ライトを含む)。
加入電話やINSネットについて、お客さまニーズが携帯電話、IP電話、ブロードバンドアクセスサービス、OTT事業者が提供する無料もしくは低価格の通信サービス等へと移行していること等に伴い、2019年3月31日現在の固定電話契約数(固定電話+INSネット)は、前期比1,369千契約減少し、18,500千契約となりました。
フレッツ光(コラボ光含む)、フレッツ・ADSL、ひかり電話、フレッツ・テレビ伝送サービスの契約数
(単位:千契約)
サービスの種類 | 2018年3月31日現在 | 2019年3月31日現在 | 増減 | 増減率 |
(NTT東日本) | ||||
フレッツ光(コラボ光含む) | 11,491 | 11,880 | 389 | 3.4% |
(再掲)コラボ光 | 6,602 | 7,470 | 868 | 13.1% |
フレッツ・ADSL | 342 | 258 | △84 | △24.5% |
ひかり電話(千チャネル) | 9,558 | 9,759 | 201 | 2.1% |
フレッツ・テレビ伝送サービス | 992 | 1,033 | 41 | 4.1% |
(NTT西日本) | ||||
フレッツ光(コラボ光含む) | 9,041 | 9,197 | 156 | 1.7% |
(再掲)コラボ光 | 4,515 | 5,220 | 705 | 15.6% |
フレッツ・ADSL | 438 | 344 | △94 | △21.4% |
ひかり電話(千チャネル) | 8,474 | 8,485 | 11 | 0.1% |
フレッツ・テレビ伝送サービス | 624 | 684 | 60 | 9.6% |
(注)1.「フレッツ光(コラボ光含む)」はNTT東日本の「Bフレッツ」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、NTT西日本の「Bフレッツ」、「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・光マイタウン」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含めて記載しております。
2.「ひかり電話」、「フレッツ・テレビ伝送サービス」は、NTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスを含めて記載しております。
2019年3月31日現在の「フレッツ光(コラボ光含む)」の契約数は、「光コラボレーションモデル」の展開等に取り組んだ結果、21,078千契約(前期比545千契約(2.7%)増)、「ひかり電話」の契約数は、18,244千チャネル(前期比212千チャネル(1.2%)増)、「フレッツ・テレビ」の契約数は、1,716千契約(前期比101千契約(6.2%)増)となりました。
固定通信サービスにおける固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)及びフレッツ光ARPU (単位:円)
サービスの種類 | 2018年3月31日現在 | 2019年3月31日現在 | 増減 | 増減率 |
(NTT東日本) | ||||
固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット) | 2,580 | 2,540 | △40 | △1.6% |
フレッツ光ARPU | 5,080 | 4,910 | △170 | △3.3% |
基本利用料ARPU | 3,630 | 3,520 | △110 | △3.0% |
付加サービスARPU | 1,450 | 1,390 | △60 | △4.1% |
(NTT西日本) | ||||
固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット) | 2,540 | 2,520 | △20 | △0.8% |
フレッツ光ARPU | 5,100 | 4,930 | △170 | △3.3% |
基本利用料ARPU | 3,500 | 3,380 | △120 | △3.4% |
付加サービスARPU | 1,600 | 1,550 | △50 | △3.1% |
(注)各ARPUについては、「(注)2.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit)」「(注)3.ARPUの算定式 (a)NTT東日本、NTT西日本」をご参照下さい。
2018年度における固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)は、前期に比べ、NTT東日本が40円(1.6%)減少し2,540円、NTT西日本が20円(0.8%)減少し2,520円となりました。これらの原因は、移動体通話への移行、高利用者層のIP電話への移行等によるものです。
2018年度におけるフレッツ光ARPUは、前期に比べ、NTT東日本が170円(3.3%)減少し4,910円、NTT西日本が170円(3.3%)減少し4,930円となりました。これは、「光コラボレーションモデル」の進展に伴う単金減等によるものです。
③長距離・国際通信事業セグメント
長距離・国際通信事業では、ネットワーク、セキュリティ等を組み合わせたICTソリューションの提供力を強化したほか、クラウドサービスやITアウトソーシングといった成長分野でのサービス提供力の強化を図りました。
《主な取り組み内容》
○ 対話型自然言語解析AIエンジン「COTOHA® Virtual Assistant」をはじめとする対話型AIや、「WinActor®」等のRPAを組み合わせ、コンタクトセンターの応対から事務処理までのプロセス全体を自動化し、生産性を大幅に向上させる「コンタクトセンターDXソリューション」を提供しました。これにより、従来の「ヒト」が主体となって対応するコンタクトセンターに代わり、「AI+RPA」が主体で対応し業務を完結できる環境を実現しました。
○ お客さまのセキュリティニーズに包括的に対応するため、アプリケーションセキュリティの先進的事業者である、米国のWhiteHat Security, Inc.を完全子会社化する契約を締結しました。
○ 世界各地でのクラウドサービスやデータセンターの需要に対応するため、市場拡大の続く各国において、サービス提供体制の拡充を進めました。また、NTTグループのデータセンターの建設・保有・設備卸提供をグローバルで一元的に実施することを目的に、投資子会社を設立しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 22,422 | 22,787 | 365 | 1.6% |
固定音声関連サービス | 2,399 | 2,203 | △196 | △8.2% |
IP系・パケット通信サービス | 4,102 | 4,275 | 173 | 4.2% |
通信端末機器販売 | 147 | 115 | △32 | △21.7% |
システムインテグレーションサービス | 14,040 | 14,391 | 351 | 2.5% |
その他 | 1,734 | 1,803 | 69 | 4.0% |
営業費用 | 21,516 | 21,785 | 269 | 1.3% |
営業利益 | 906 | 1,001 | 96 | 10.6% |
長距離・国際通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、固定音声関連サービス収入の減少があったものの、海外ビジネスの拡大等によるシステムインテグレーションサービス収入の増加、「Arcstar Universal One」の拡大によるIP系・パケット通信サービス収入の増加や、連結拡大影響等により2兆2,787億円(前期比1.6%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、2018年度においては前年度発生した減損損失が生じていないものの、海外ビジネスの拡大に伴う収益連動費用の増加等により2兆1,785億円(前期比1.3%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1,001億円(前期比10.6%増)となりました。
長距離・国際通信事業セグメントにおけるIP系・パケット通信関連サービスの契約数 (単位:千契約)
サービスの種類 | 2018年3月31日現在 | 2019年3月31日現在 | 増減 | 増減率 |
OCN(ISP) | 7,521 | 7,305 | △216 | △2.9% |
ぷらら(ISP) | 3,145 | 3,234 | 89 | 2.8% |
ひかりTV | 3,016 | 3,001 | △14 | △0.5% |
(注)「ぷらら」及び「ひかりTV」に係る収入は、その他の営業収入に含まれております。
④データ通信事業セグメント
データ通信事業では、グローバルでのデジタルトランスフォーメーション等の加速や、ニーズの多様化・高度化に対応するため、グローバル市場でビジネス拡大を図るとともに、市場の変化に対応したデジタル化の提案、システムインテグレーション等の多様なITサービスの拡大と安定的な提供に取り組みました。
《主な取り組み内容》
○ 地方公共団体や自治体とともに、「WinActor®」を活用した業務効率化や働き方改革に向けた研究・検証を実施しました。その結果、特に個人住民税・法人市民税業務に係る定型作業の軽減効果や、AI-OCRによる様々な帳票の読取制度の高さを確認し、当該ソリューションの実用性について公表しました。
○ 国内最大の決済プラットフォームである「CAFIS」において、国内外の一次元バーコードやQRコードといった各種コード決済を、小売業者が1台の決済端末又は1つのインターフェースで対応が可能となるサービスの開始を決定しました。また、地方公共団体向けに、スマートフォンによるクレジットカード払いが可能となる「モバイルレジ公金クレジット収納サービス」を開始しました。さらに、APAC地域への電子決済事業の拡大に向け、インドのAtom Technologies Limitedを子会社化することに合意する等、国内外に利便性・先進性の高い決済関連サービスを提供する取り組みを推進しました。
○ デジタル領域を中心にサービス提供力の更なる強化に向けて、英国のMagenTys Holdings LimitedやドイツのSybit GmbH、カナダのSierra Systems Group, Inc.等を子会社化しました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 20,452 | 21,636 | 1,184 | 5.8% |
システムインテグレーションサービス | 20,452 | 21,636 | 1,184 | 5.8% |
営業費用 | 19,220 | 20,159 | 939 | 4.9% |
営業利益 | 1,232 | 1,477 | 245 | 19.9% |
データ通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、国内における法人・ソリューション分野及び公共・社会基盤分野、海外におけるEMEA・中南米を中心としたビジネス規模拡大等により2兆1,636億円(前期比5.8%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、収益連動費用の増加等により2兆159億円(前期比4.9%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1,477億円(前期比19.9%増)となりました。
⑤その他の事業セグメント
その他の事業では、主に不動産事業、金融事業、建築・電力事業、システム開発事業に係るサービスを提供しました。
《主な取り組み内容》
○ 不動産事業
国際ビジネスセンターとしての機能強化を推進している東京都千代田区大手町に、国内最高水準の通信環境や、国際会議にも対応可能な大規模ホール等を備えた「大手町プレイス」を開業しました。また、NTTグループの不動産事業を一元的に担う、街づくり事業推進会社の創設に向けた準備を進めました。
○ 金融事業
ICT機器の普及や、環境・教育・医療分野を中心とした社会的課題の解決に向け、リース・ファイナンス等の金融サービスを展開しました。また、通信サービス料金等の請求・回収、クレジットカードの決済サービスの提供を行いました。
○ 建築・電力事業
ICT・エネルギー・建築の技術を最大限に融合・活用し、南相馬川房発電・メガソーラー発電所をはじめとした太陽光発電所を竣工する等、自然エネルギーの活用や限りあるエネルギーを効率的にムダなく使う街づくり、自然災害等のリスクに強い安心・安全な街づくりに取り組みました。
○ システム開発事業
最適で高品質なICTサービスを提供するため、ネットワークの運用システムやアプリケーションサービスの開発等に取り組んだほか、IoT、ビッグデータ、AI等、先端技術を活用したソリューション開発等に取り組みました。
セグメント業績の概要(2018年4月1日~2019年3月31日) (単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 12,146 | 12,403 | 257 | 2.1% |
営業費用 | 11,159 | 11,546 | 387 | 3.5% |
営業利益 | 987 | 856 | △131 | △13.2% |
その他の事業セグメントにおいては、不動産事業において前年度の一過性の収益計上による反動減があったものの、金融事業の増収等により、当連結会計年度の営業収益は1兆2,403億円(前期比2.1%増)となりました。一方、当連結会計年度における営業費用は、金融事業の収益連動経費の増加等により、1兆1,546億円(前期比3.5%増)となりました。この結果、営業利益は856億円(前期比13.2%減)となりました。
(参考)国内売上高及び海外売上高に関する情報
(単位:億円)
前連結会計年度 (2017年4月1日から 2018年3月31日まで) | 当連結会計年度 (2018年4月1日から 2019年3月31日まで) | 増減 | 増減率 | |
営業収益 | 117,821 | 118,798 | 977 | 0.8% |
国内 | 95,997 | 96,327 | 330 | 0.3% |
海外 | 21,825 | 22,472 | 647 | 3.0% |
(注)営業収益は、製品及びサービスの提供先別に国内・海外を分類しております。
国内における当連結会計年度の営業収益は、移動通信事業セグメントにおける増収等により9兆6,327億円(前期比0.3%増)となりました。海外における当連結会計年度の営業収益は、データ通信事業セグメントにおけるビジネス規模拡大等などにより2兆2,472億円(前期比3.0%増)となりました。
(注)
1.MOU(Minutes Of Use):1利用者当たり月間平均通話時間
2.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit):1契約者(利用者)当たり月間平均収入
契約者(利用者)当たりの月間平均収入(ARPU)は、契約者(利用者)1人当たりの平均的な月間営業収益を計るために使われます。固定通信事業の場合、ARPUは、地域通信事業セグメントの営業収益のうち、固定電話(加入電話およびINSネット)並びに「フレッツ光」の提供により毎月発生する収入を、当該サービスの稼動契約数で除して計算されます。移動通信事業の場合、ARPUは、移動通信事業セグメントの営業収益のうち、携帯電話(LTE(Xi))、携帯電話(FOMA)、及び「ドコモ光」のサービス提供により発生する通信サービス収入(一部除く)を、当該サービスの稼動利用者数で除して計算されます。これら数字の計算からは、各月の平均的な利用状況を表さない端末機器販売、契約事務手数料、ユニバーサルサービス料などは除いています。こうして得られたARPUは各月のお客さまの平均的な利用状況を把握する上で有用な情報を提供するものであると考えております。なお、ARPUの分子に含まれる収入はIFRSによる連結決算値を構成する財務数値により算定しております。
3.ARPUの算定式
(a) NTT東日本、NTT西日本
NTT東日本およびNTT西日本のARPUは、以下の2種類に分けて計算をしております。
・音声伝送収入(IP系除く)に含まれる加入電話とINSネットの基本料、通信・通話料、およびIP系収入に含まれる「フレッツ・ADSL」、「フレッツ・ISDN」からの収入に基づいて計算される固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)。
・IP系収入に含まれる「フレッツ光」、「フレッツ光」のオプションサービスからの収入、「ひかり電話」における基本料・通信料・機器利用料、および附帯事業営業収益に含まれる「フレッツ光」のオプションサービス収入に基づいて計算されるフレッツ光ARPU。
※1 「フレッツ光」は、NTT東日本の「Bフレッツ」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」および「フレッツ 光WiFiアクセス」、NTT西日本の「Bフレッツ」、「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・光マイタウン」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含めて記載しております。「フレッツ光」のオプションサービスは、NTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスを含めて記載しております。
※2 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)およびフレッツ光ARPUには相互接続通話料が含まれておりません。
※3 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)の算定上の契約数は、固定電話(加入電話及びINSネット)の契約数であります。
※4 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)の算定上、INSネット1500の契約数は、チャネル数、伝送速度、回線使用料(基本料)いずれについてもINSネット64の10倍程度であることから、INSネット1500の1契約をINSネット64の10倍に換算しております。
※5 フレッツ光ARPU算定上の契約数は、「フレッツ光」の契約数(「フレッツ光」は、NTT東日本の「Bフレッツ」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、NTT西日本の「Bフレッツ」、「フレッツ・光プレミアム」、「フレッツ・光マイタウン」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「フレッツ 光WiFiアクセス」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含む)であります。
※6 NTT東日本およびNTT西日本におけるARPU算出時の稼動契約数の計算式は以下のとおりであります。
通期実績:4月~3月までの各月稼動契約数{(前月末契約数+当月末契約数)/2}の合計
(b) NTTドコモ
NTTドコモのARPUの計算式は、以下のとおりであります。
・総合ARPU:モバイルARPU+ドコモ光ARPU
※1 ・モバイルARPU:モバイルARPU関連収入(音声関連収入(基本使用料、通話料)+パケット関連収入(月額定額料、通信料))/稼動利用者数
・ドコモ光ARPU:ドコモ光ARPU関連収入(基本使用料、通話料)/稼動利用者数
なお、パケットARPUとドコモ光ARPUの合算値をデータARPUと称します。
※2 NTTドコモにおけるARPU算出時の稼動利用者数の計算式は以下のとおりであります。
当該期間の各月稼動利用者数{(前月末利用者数+当月末利用者数)/2}の合計
※3 利用者数は、以下のとおり、契約数を基本としつつ、一定の契約数を除外して算定しています。
利用者数 = 契約数
-通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る契約数
-Xi契約及びFOMA契約と同一名義のデータプラン契約数
なお、通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る収入は、ARPUの算定上、収入に含まれておりません。
(3)流動性及び資金の源泉
前連結会計年度及び当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 25,413 | 24,062 |
営業活動によるキャッシュ・フロー (休日影響(注)1,2を除く) | 27,732 | 23,979 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △17,462 | △17,741 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △9,683 | △5,843 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 8,950 | 9,461 |
現金及び現金同等物の期末残高 (休日影響(注)1,3を除く) | 11,269 | 11,698 |
(注)1.前期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒しとなった影響
2,319億円。
2.前期末日及び当期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒し となった影響83億円。
3.当期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒しとなった影響 2,237億円。
資金調達及び資金の源泉と使途
当連結会計年度の休日影響を除いた場合の営業活動によって得たキャッシュ・フローは、2兆3,979億円となり、前連結会計年度の2兆7,732億円から3,753億円減少しております。これは前期における仲裁裁定金収入や、当期における営業債権等の回収の減少などによるものであります。なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2兆4,062億円であります。
NTTグループは、営業活動によって得たキャッシュ・フローを主に設備の取得、配当金の支払、自己株式の取得等に充てました。
当連結会計年度の投資活動に充てたキャッシュ・フローは、1兆7,741億円となり、前連結会計年度の1兆7,462億円から支出が280億円増加しております。これは、有形固定資産、無形資産に対する投資が現金支出ベースで758億円減少した一方で、子会社の支配獲得による支出が982億円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度の有形固定資産、無形資産に対する投資の減少は、地域通信事業においてアクセス系設備整備の効率化等により投資が減少したこと等によります。なお、当連結会計年度の発生主義に基づく設備投資額1兆6,970億円の主な内訳は移動通信事業が5,937億円、地域通信事業が5,410億円でした。
当連結会計年度の財務活動に充てたキャッシュ・フローは、5,843億円となり、前連結会計年度の9,683億円から支出が3,840億円減少しております。これは、短期借入債務及び長期借入債務の増加による収入が純額で4,827億円増加したこと等によります。なお、当連結会計年度の長期借入による資金調達額の内訳は、社債による調達が156億円、金融機関借入による調達が4,193億円となっております。
また、2019年3月31日現在のNTTグループの有利子負債残高は4兆2,627億円であり、2018年3月31日現在の3兆9,716億円から2,911億円増加しました。2019年3月31日現在の有利子負債の株主資本に対する比率は46.0%(2018年3月31日現在は43.9%)となりました。
NTTグループは、営業活動によって得られるキャッシュ・フロー、銀行やその他の金融機関からの借入金、あるいは、資本市場における株式や債券の発行により、将来にわたって現在予測される設備投資とその他の支出や負債の支払に必要な財源が確保できると確信しております。
翌連結会計年度は、移動通信事業において既存のネットワーク投資の効率化等により投資が減少することに加え、地域通信事業においてアクセス系設備整備や開通関連工程の効率化等により投資が減少する一方で、長距離・国際通信事業においてデータセンター関連工程の増等により投資が増加すること等により、発生主義に基づく設備投資額を1兆7,500億円と見込んでおります。その内訳は、移動通信事業が5,700億円、地域通信事業が5,200億円等となっております。設備投資は確実な予測が困難な需要動向、競争環境及びその他の要因に影響を受けるため、予想とは異なることもありえます。なお、NTTグループの実際の資金調達額は、将来の事業運営、市場状況、その他の要因によって変化するため、正確に予測することは困難であります。
流動性
2019年3月31日現在の休日影響を除いた場合のNTTグループの現金及び現金同等物残高は1兆1,698億円であり、2018年3月31日現在の1兆1,269億円から429億円増加しました。現金同等物とは、負債の返済や投資等に利用される予定の一時的な余剰金のことで、運転資金として使用されます。したがって、現金同等物の残高は、その時点の資金調達や運転資金の状況に応じて毎年度変化します。なお、2019年3月31日現在の現金及び現金同等物残高は9,461億円であります。
契約上の債務
下記の表は、2019年3月31日現在におけるNTTグループの契約上の債務をまとめたものであります。
(単位:百万円) |
負債・債務の内訳 | 支払い期限ごとの債務額 | |||
総 額 | 1年以内 | 1年超 5年以内 | 5年超 | |
契約上の債務 | ||||
長期借入債務 (注)1 | ||||
社債 | 1,034,056 | 275,478 | 661,693 | 96,885 |
銀行からの借入金 | 2,337,703 | 231,100 | 1,164,881 | 941,722 |
長期借入債務に係る支払利息 | 178,626 | 39,322 | 88,372 | 50,932 |
ファイナンス・リース債務 (注)2 | 61,733 | 16,198 | 26,023 | 19,512 |
オペレーティング・リース債務 | 225,824 | 52,826 | 115,214 | 57,784 |
購入コミットメント (注)3 | 77,280 | 36,161 | 31,316 | 9,801 |
その他の固定負債 (注)4 | - | - | - | - |
(注)1.長期借入債務には1年以内に返済予定のものを含めて表示しております。長期借入債務の詳細については、
連結財務諸表 注記19参照。
2.ファイナンス・リース債務には利息相当額を含んでおります。
3.購入コミットメントは主に有形固定資産その他の資産の購入に関する契約債務であります。なお、残余期間が1年内の購入コミットメントを含んでおりますが、解約可能な購入コミットメントを除いております。
4.その他の固定負債は重要性がない、あるいは支払時期が不確実であるため、上表に金額を記載しておりません。なお、連結財務諸表 注記23に記載のとおり、NTTグループの年金制度に対して、翌連結会計年度に合計17,743百万円の拠出を見込んでおります。
2019年3月31日現在、NTTグループの有形固定資産及びその他資産の購入等に係る契約債務残高は約773億円となっており、営業活動によって得たキャッシュ・フローによりこれらの売買契約代金の支払をする予定であります。
(4)重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断
連結財務諸表 注記4参照