訂正有価証券報告書-第33期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1) 当期の経営成績に関する説明
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要は以下のとおりです。
① 財政状態の状況
a. 流動資産
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末より4,785百万円増加して、29,135百万円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が4,714百万円増加したことなどによるものです。
b. 固定資産
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末より1,525百万円増加して、9,661百万円となりました。これは主に、のれんが716百万円増加したことなどによるものです。
c. 繰延資産
当連結会計年度末における繰延資産は、前連結会計年度末より1百万円増加して、1百万円となりました。これは、株式交付費が1百万円増加したことによるものです。
d. 流動負債
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末より3,378百万円増加して、16,907百万円となりました。これは主に、買掛金が903百万円増加したことなどによるものです。
e. 固定負債
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末より972百万円増加して、2,313百万円となりました。これは主に、長期借入金が1,133百万円増加したことなどによるものです。
f. 純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末より1,960百万円増加して、19,577百万円となりました。これは主に、利益剰余金が1,722百万円増加したことなどによるものです。
② 経営成績の状況
(百万円) (円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 | 1株当たり 当期純利益 | |
2021年3月期 | 70,451 | 3,855 | 3,981 | 2,428 | 120.25 |
2020年3月期 | 58,324 | 3,035 | 3,033 | 1,856 | 92.56 |
増 減 率 | 20.8% | 27.0% | 31.3% | 30.8% | 29.9% |
当連結会計年度の業績につきまして、売上高、限界利益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高となりました。
売上高は、ソフトバンク㈱のIT領域におけるベンダーマネジメント案件が拡大及び第2四半期より㈱電縁を連結した結果、前期比20.8%増の70,451百万円となりました。
営業利益は、マイクロソフト社のAzureを利用したシステム開発案件及びテレワークなどの働き方の変化にあわせたセキュリティ構築が伸長したことから、前期比27.0%増の3,855百万円となりました。
経常利益は、一時的な営業外収入の発生により、前期比31.3%増の3,981百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比30.8%増の2,428百万円となりました。
③ ソリューション区分別の概況
当社グループの報告セグメントは、「ICTサービス事業」の単一セグメントとしており、「ICTサービス事業」を構成する主要なソリューションの業績については、次のとおりであります。
ICTサービス事業を構成するソリューション区分、主要なソリューションの内容については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載しております。

なお、各ソリューション区分の前期の金額は現在の計上方法に則して算出しています。
・ビジネスITソリューション
ビジネスITソリューションは、ソフトバンク㈱における事業部門向けのシステム開発やIoT案件などが拡大しました。また、2020年3月期に受注した政府DXにおける農林水産省向け電子申請基盤の開発案件も完了したほか、厚生労働省向け日本版O-NET保守運営などにより、増収増益となりました。
・コーポレートITソリューション
コーポレートITソリューションでは、ソフトバンク㈱のグループ会社における大型クラウドシステム開発の反動減がありましたが、DX推進の一環として法人向けのゼロトラストセキュリティの構築や公共案件のヘルプデスク運用、また自社サービスであるclouXion(クラウジョン)やマネージドセキュリティサービスが伸長し、増収増益となりました。
・テクニカルソリューション
オンプレミス環境のソリューションを提供するテクニカルソリューションでは、ソフトバンク㈱のIT領域におけるベンダーマネジメント案件が増収を牽引したほか、第2四半期より㈱電縁を連結したことによる効果もあり増収増益となりました。
・ECソリューション
ECソリューションでは、ノートンストアのEC運営代行ビジネスが堅調に推移しました。
(百万円)
2020年3月期 | 2021年3月期 | 増減 | 増減率 | |||
ビジネスIT ソリューション | 売上高 | 4,659 | 6,386 | 1,727 | 37.1% | |
限界利益 | 1,756 | 2,259 | 502 | 28.6% | ||
利益率 | 37.7% | 35.4% | △2.3ポイント | - | ||
コーポレートIT ソリューション | 売上高 | 16,270 | 17,672 | 1,401 | 8.6% | |
限界利益 | 6,553 | 7,353 | 800 | 12.2% | ||
利益率 | 40.3% | 41.6% | 1.3ポイント | - | ||
テクニカル ソリューション | 売上高 | 15,371 | 24,425 | 9,053 | 58.9% | |
限界利益 | 4,953 | 7,189 | 2,235 | 45.1% | ||
利益率 | 32.2% | 29.4% | △2.8ポイント | - | ||
ECソリューション | 売上高 | 22,022 | 21,966 | △55 | △0.3% | |
限界利益 | 3,198 | 3,124 | △73 | △2.3% | ||
利益率 | 14.5% | 14.2% | △0.3ポイント | - | ||
計 | 売上高 | 58,324 | 70,451 | 12,126 | 20.8% | |
限界利益 | 16,461 | 19,926 | 3,465 | 21.0% | ||
利益率 | 28.2% | 28.3% | 0.1ポイント | - |
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末より177百万円減少して9,648百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は1,900百万円となりました。これは、売上債権の増加が4,321百万円あったものの、税金等調整前当期純利益が3,880百万円、減価償却費が1,152百万円あったことなどによるものです。
前連結会計年度との比較では、税金等調整前当期純利益で906百万円増加したものの、仕入債務の増減額で1,969百万円資金使用が増加したことなどにより、得られた資金は1,429百万円減少しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は2,410百万円となりました。これは、無形固定資産の取得で1,545百万円の資金使用があったことなどによるものです。
前連結会計年度との比較では、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が692百万円増加したことなどにより、使用した資金は656百万円増加しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、得られた資金は329百万円となりました。これは、配当金の支払で704百万円の資金使用があったものの、長期借入れによる収入で1,530百万円の資金増加があったことなどによるものです。
前連結会計年度との比較では、長期借入金の返済による支出が477百万円増加したものの、長期借入れによる収入が1,530百万円増加したことなどにより、得られた資金は807百万円増加しております。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 35,698 | 136.3 |
合計(百万円) | 35,698 | 136.3 |
(注) 金額はサービス売上原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b. 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 23,412 | 100.5 |
合計(百万円) | 23,412 | 100.5 |
(注) 金額は仕入価額によっており、消費税等は含まれておりません。
c. 受注実績
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 79,148 | 128.8 | 26,003 | 150.3 |
合計(百万円) | 79,148 | 128.8 | 26,003 | 150.3 |
(注) 金額は売上価額によっており、消費税等は含まれておりません。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 70,451 | 120.8 |
合計(百万円) | 70,451 | 120.8 |
(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
ソフトバンク㈱ | 9,417 | 16.1 | 17,099 | 24.3 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析
<ア.当期におけるICTサービス市場の動向>当期におけるICT関連市場は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け先行きが極めて不透明な状況が続きましたが、社会的に外出自粛や非接触などが求められる中で、多くの企業はニューノーマル時代に対応するためにクラウドを活用したテレワークやリモートワークを前提とした働き方改革の推進を行いました。また、テレワークが浸透する中でサイバー攻撃なども増え、テレワーク時代に即したセキュリティ投資も求められております。
このような激しい変化の中において、企業は守りのIT投資だけではなくAIやIoT等の先端技術を用いた戦略的事業領域の強化や競争優位確保に向けた攻めのDX投資が増加基調であり、さらにDX戦略を推進する人材の不足を補うために、情報システム部門業務のクラウドサービスへの置き換えやアウトソースのニーズも一層高まりました。また、民間だけではなく官公庁においてもデジタルガバメント実現に向けたデジタル庁の創設や、各省庁や地方自治体においてDX戦略が加速した1年となりました。
国内におけるIT投資は、新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前と比べて成長は鈍化したものの、ニューノーマル対応あるいはDX推進といった戦略的なIT投資の需要は堅調であったと考えております。
<イ.重点テーマの進捗>このような経営環境の下、当社はお客様のニーズを満たし本業の成長に貢献することを通じて、お客様と共に事業成長及び企業価値の向上を目指すべく、2020年3月期より第3次中期経営計画として以下を重点テーマとし、事業を推進しております。
・サービスプロバイダーへの進化
持続的により高い価値を広く社会に提供するために、当社の技術や知見をサービスあるいはプラットフォームとして提供していくことが肝要だと考えております。
当社はクラウド黎明期の2009年からいち早くクラウドビジネスを開始しており、大手法人向けの個別開発で得た知見やプロセス資産をもとにマイクロソフトのクラウドサービスの利活用を補完する認証サービスやワークフローサービス等を複数開発してきました。これらお客様のDXを推進するクラウドサービス群を『clouXion(クラウジョン)』のブランドで展開しています。
また、各地方自治体のセキュリティ強化を目的に市町村を対象とした「自治体情報システムの強靱性の向上」と、都道府県を対象とした「自治体情報セキュリティクラウドの構築」が開始され、当社は1つのITベンダーとしては最多となる4県の自治体情報セキュリティクラウドの構築と4年間の運用を行いました。自治体情報セキュリティクラウドの構築・運用は各自治体が求めるシステムやサービス要件が違い、個別仕様への対応が必要であったことから、当社はセキュリティ製品・サービス、また県と市区町村の運用効率を上げるサポートなどの、自治体におけるハード面、ソフト面のさまざまなノウハウを蓄積しています。この実績を通じて、サイバー攻撃に対するセキュリティ対策に加え、自治体の効率性・利便性の向上などの総務省の標準要件を満たし、エリアを問わない複数県の共同調達に対応するサービス型の自治体情報セキュリティクラウドの構築を開始しています。
サービス拡販はこれまで直販を中心に行ってきましたが、広く社会に価値を提供するためにソフトバンクグループ企業やその他のパートナー企業と協力し、間接販売をしやすい仕組みやサービス開発を行っていきます。
当社は「サービスプロバイダーへの進化」を実現することで、より多くのお客様のDX推進を支えてまいります。
・コンサルティング&ビジネスITの創出
お客様の競争力強化のためのクラウドや先端技術の活用、政府全体のデジタルガバメント推進を大きな機会と捉えており、積極的な研究開発や新サービス開発、開発体制の強化などを進めております。
これまではエンタープライズや官公庁のお客様の情報システム部門を対象とした間接的なDX支援を主軸にしておりましたが、この領域はサービスあるいはプラットフォームを通じた支援にシフトを進めています。今後はコンサルティングを通じ、より直接的にお客様の競争力強化に貢献することに注力していきたいと考えております。
本業貢献の一例として、2016年3月期に農地台帳のクラウド化を行った「全国農地ナビ」から始まり、申請をデジタル化する共通申請サービスの開発、また後続の申請を効率的にデジタル化するための実証実験など、農林水産省の掲げるDX戦略を支援してきた実績があります。当期においても、共通申請サービスの追加開発・運用案件やデジタル地図案件を受注しており、今後もデジタルガバメント実現に向けた共創を進めてまいります。
また、当社は注力業界全体のDX推進に取り組んでおります。建設業界においては、建設作業所のICT活用を促進し、いわゆる協調領域におけるサービス開発にも取り組んでいます。オンライン会議の実施や作業所以外の場所からのリモートでの業務遂行など、ITツールを使った新しい働き方への移行が加速していますが、多くの関係者が出入りするため、ID管理やセキュリティの確保が課題になっています。これに対して当社独自の認証基盤を活用したID統合管理を軸に、現場ニーズに応じた機能を実装したサービス『Con-Bridge(コンブリッジ)』を、大手ゼネコンとの共創モデルで開発しました。今後はサービスの機能拡充や、その他外部のITサービスとの連携等を図っていく予定です。
当社は新しいビジネスの共創に挑むために先端技術と創造性を磨き、お客様のビジネス変革のパートナーとしてDX支援を推進してまいります。
<ウ.経営成績の分析及び経営指標の進捗>2022年3月期において、企業のクラウドファースト戦略を実現するコーポレートITソリューション及びビジネスITソリューションの売上高構成比率を50%まで引き上げるとともに、「連結営業利益43億円(2019年3月期を起算にCAGR(年平均成長率)20%成長)」、「株主資本利益率(ROE)13%」を達成することを経営指標に掲げております。
これに対して、当連結会計年度におけるコーポレートITソリューション及びビジネスITソリューションの売上高は前期比14.9%増の24,059百万円となりました。同売上高の売上高構成比率はテクニカルソリューションの売上増加の影響を受け、前期比1.8ポイント減の34.1%となりました。
また、当期におけるROEは14.0%となり、2022年3月期における経営指標を1年前倒しで達成しましたが、次期においても同水準を目指してまいります。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要の主なものは、運転資金面では、顧客からの受託開発案件の長期大型化によって生じる回収と支払のギャップ増大によるものであり、設備投資の面では、独自のクラウドサービスや、セキュリティ監視システムへの開発投資といったものであります。さらには資本提携を目的とした他社株式取得のための資金需要が生じることもあります。
当社グループは、企業体質の強化を図りながら持続的な企業価値の向上を進めるにあたり、前述の資金需要に対応するための資金は、自己資金を中心として進めることを基本方針としております。そのためグループ内の資金効率を向上させるべく、当社は極度借入契約を通じて、資金余剰が生じている子会社から借り入れる一方、資金需要のある子会社に対しては、貸付を行うことがあります。
しかしながら、自己資金で賄えない短期運転資金需要が生じた場合に備えて、予め取引銀行との間で極度貸越契約を締結しております。また、M&Aの実施によって、大規模な投資資金が必要になる場合には、個別に銀行借入により資金調達を行うことがあります。
株主還元については、毎期の連結業績、投資計画、手元資金の状況等を総合的に勘案しながら、安定的かつ継続的な配当の実施を行うことが基本方針ではありますが、第3次中期経営計画にて、2022年3月期における株主資本利益率(ROE)13%を目標にしていることを踏まえ、景気動向、金融情勢及び株式市場の状況等の経営環境並びに手元資金の状況などを総合的に勘案しながら、自己株式の取得も検討してまいります。
当連結会計年度末における連結ベースの流動比率は172.3%(前期末比7.7ポイント減)、現金及び現金同等物の期末残高9,648百万円(前期末比177百万円減)に対し、有利子負債(リース債務含む)残高は1,894百万円(前期末比1,515百万円増)と、当期中に実施した㈱電縁の子会社化に伴う資金需要の発生によって、全般的に前期比で悪化したものの、依然として比較的高い流動性及び自己資金での投資余力を維持しております。今後もM&Aの実施や不測の事態の発生に備えて、取引銀行との良好な関係の維持に努めてまいります。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積り及び仮定を必要としています。経営者は、これらの見積り及び仮定について過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって、用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
そのうち、特に補足する情報が必要と判断しているのは、以下の項目であります。
(工事進行基準及び受注損失引当金)
当社グループでは、顧客に対して、システムの設計・構築サービスなどを提供しており、そのうち成果の確実性が認められる部分については、工事進行基準を適用することで、工事進捗度に応じた工事収益及び工事原価を認識しております。
工事進行基準の適用には、その進捗部分について成果の確実性が認められる必要があり、そのためには、工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度、以上3つの要素について、信頼性をもって見積ることが求められます。その中でも、とりわけ工事原価総額については、見積りの要素が強く、また、プロジェクト(工事)の進行に伴い、変動する性格を有しております。
当社は、プロジェクトの現場責任者による工事原価総額の見積りに対して、社内のプロジェクト管理部門が、第三者的な視点から異常値の有無を確認する体制を構築、運用することによって、信頼性のある見積りを実施できていると考え、工事進行基準を適用しております。
工事原価総額の見積り(見積総工事原価の算定)は、以下の前提によっております。
・顧客に納めるべき成果物の仕様、作業範囲など、当社が負っている役務提供義務の認識が、当社と顧客との間において一致していること
・過去に実施した経験のあるプロジェクトにおいては、見積総工事原価の算出は比較的容易であること
・実施した経験のない新しい技術要素を含むプロジェクトであっても、現場責任者やプロジェクト管理部門は、IT専門家として、必要に応じて外部パートナーの助力を得るなどして、成果物を完成させるために必要とされる作業工数を、一定程度の信頼性をもって見積ることが可能であること
しかし、実際には、さまざまな理由から、当社と顧客との間において、成果物の仕様、作業範囲の認識に相違が生じ、突発的なアクシデントによって想定外の追加工数が必要になり、さらには、未経験の技術要素の影響を予測しきれず、結果として見積りの修正が必要になるケースもあります。
そのため、決算日以降、見積総工事原価は大きく変動している可能性があり、当該見積りの変更による影響は、変更が行われた期に損益として計上するため、結果的に、翌期以降の財務諸表に重要な影響を与えることがあります。
なお、工事進行基準によって当期に認識した収益は2,280百万円であり、そのうち期末時点において進行中であるプロジェクトに係る金額は484百万円であります。
また、工事進行基準の適用有無を問わず、見積総工事原価が受注金額を上回る場合には、損失発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることが可能なケースであれば、当該超過部分につき、受注損失引当金を計上しております。
従いまして、当期末に計上しております受注損失引当金309百万円についても、工事進行基準と同様に、決算日以降、見積総工事原価の修正が必要になる可能性があり、引当金の過不足が生じることによって、翌期以降の財務諸表に重要な影響を与えることがあります。