有価証券報告書-第31期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1) 当期の経営成績に関する説明
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要は以下のとおりです。
① 財政状態の状況
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
a. 流動資産
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末より1,554百万円増加して、20,008百万円となりました。これは主に、現金及び預金が1,122百万円増加したことなどによるものです。
b. 固定資産
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末より214百万円減少して、7,484百万円となりました。これは主に、投資有価証券が373百万円減少したことなどによるものです。
c. 流動負債
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末より216百万円減少して、10,212百万円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が295百万円減少したことなどによるものです。
d. 固定負債
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末より230百万円増加して、1,422百万円となりました。これは主に、リース債務が365百万円増加したことなどによるものです。
e. 純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末より1,324百万円増加して、15,857百万円となりました。これは主に、利益剰余金が1,090百万円増加したことなどによるものです。
② 経営成績の状況
(百万円) (円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 | 1株当たり 当期純利益 | |
2019年3月期 | 50,430 | 2,513 | 2,291 | 1,386 | 70.23 |
2018年3月期 | 49,140 | 2,176 | 2,399 | 1,556 | 79.09 |
増 減 率 | 2.6% | 15.5% | △4.5% | △10.9% | △11.2% |
当連結会計年度の業績につきましては、売上高及び営業利益が過去最高値となりました。
売上高は、クラウドソリューションやセキュリティソリューションが好調に推移した結果、前期比2.6%増の50,430百万円となりました。
営業利益は、注力事業の売上高構成比率が増加したことやストックビジネスの伸長により、前期比15.5%増の2,513百万円となりました。これに加え、低採算な機器販売からの戦略的撤退等により営業利益率は5.0%となり、前期比0.6ポイント向上しました。
経常利益は、前期に営業外収益、当期に営業外損失が一時的に発生したことにより、前期比4.5%減の2,291百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比10.9%減の1,386百万円となりました。
③ サービス区分別の概況
当社グループの報告セグメントは、「ICTサービス事業」の単一セグメントとしており、「ICTサービス事業」を構成する主要なサービスの業績については、次のとおりであります。
ICTサービス事業を構成するサービス区分、ソリューション区分、主要なサービスの内容については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載しております。
・デジタルマーケティング
デジタルマーケティングの売上高は前期比3.1%増の22,656百万円となり、限界利益は前期比7.3%増の3,435百万円となりました。ECサービスは、個人向けのシマンテック事業で高機能製品への切り替えが進んだことやフォントビジネスが好調に推移した結果、増収増益となりました。データアナリティクスは、EC事業者向けのコンサルティングやアクセス解析ツールの受注が減少し、減収減益となりました。
・プラットフォームソリューション
プラットフォームソリューションの売上高は前期比0.6%減の11,483百万円となり、限界利益は前期比10.3%増の5,302百万円となりました。ITインフラソリューションは、低採算な機器の販売を終了した影響で減収減益となりましたが、利益率は前期比6.0ポイント向上しました。セキュリティソリューションは、セキュリティ運用監視サービスや電子認証サービスが堅調に推移し、増収増益となりました。
・クラウドシステム
クラウドシステムの売上高は前期比4.3%増の16,290百万円となり、限界利益は前期比0.8%増の5,784百万円となりました。システムインテグレーションは、請負型のシステム開発から運用サービスへのシフトを進めており、スポット開発案件が減少したことに伴い、減収減益となりました。クラウドソリューションは、コミュニケーション基盤のクラウド化や、生産性向上とセキュリティ強化を実現するエンタープライズモビリティサービスが堅調に推移し、増収増益となりました。一方、利益率の低いライセンス販売比率の増加や不採算案件の影響により利益率は低下しました。
(百万円)
2018年3月期 | 2019年3月期 | 増減 | 増減率 | |||
デジタルマーケティング | 売上高 | 21,970 | 22,656 | 685 | 3.1% | |
限界利益 | 3,200 | 3,435 | 234 | 7.3% | ||
利益率 | 14.6% | 15.2% | 0.5ポイント | - | ||
ECサービス | 売上高 | 19,900 | 20,993 | 1,093 | 5.5% | |
限界利益 | 2,408 | 2,860 | 451 | 18.8% | ||
利益率 | 12.1% | 13.6% | 1.5ポイント | - | ||
データアナリティクス | 売上高 | 2,070 | 1,663 | △407 | △19.7% | |
限界利益 | 791 | 574 | △216 | △27.4% | ||
利益率 | 38.2% | 34.6% | △3.6ポイント | - | ||
プラットフォーム ソリューション | 売上高 | 11,555 | 11,483 | △72 | △0.6% | |
限界利益 | 4,805 | 5,302 | 496 | 10.3% | ||
利益率 | 41.6% | 46.2% | 4.5ポイント | - | ||
ITインフラ ソリューション | 売上高 | 7,131 | 5,955 | △1,175 | △16.5% | |
限界利益 | 2,500 | 2,447 | △52 | △2.1% | ||
利益率 | 35.1% | 41.1% | 6.0ポイント | - | ||
セキュリティ ソリューション | 売上高 | 4,424 | 5,527 | 1,103 | 24.9% | |
限界利益 | 2,305 | 2,854 | 548 | 23.8% | ||
利益率 | 52.1% | 51.6% | △0.4ポイント | - | ||
クラウドシステム | 売上高 | 15,614 | 16,290 | 675 | 4.3% | |
限界利益 | 5,737 | 5,784 | 46 | 0.8% | ||
利益率 | 36.7% | 35.5% | △1.2ポイント | - | ||
システム インテグレーション | 売上高 | 8,651 | 8,226 | △424 | △4.9% | |
限界利益 | 3,201 | 3,056 | △144 | △4.5% | ||
利益率 | 37.0% | 37.2% | 0.1ポイント | - | ||
クラウド ソリューション | 売上高 | 6,962 | 8,063 | 1,100 | 15.8% | |
限界利益 | 2,536 | 2,727 | 191 | 7.5% | ||
利益率 | 36.4% | 33.8% | △2.6ポイント | - | ||
計 | 売上高 | 49,140 | 50,430 | 1,289 | 2.6% | |
限界利益 | 13,744 | 14,521 | 777 | 5.7% | ||
利益率 | 28.0% | 28.8% | 0.8ポイント | - |
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末より1,122百万円増加して8,728百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は2,784百万円となりました。これは、法人税等の支払により909百万円の資金使用があったものの、税金等調整前当期純利益が2,255百万円、減価償却費が1,027百万円あったことなどによるものです。
前連結会計年度との比較では、仕入債務の増減額で1,631百万円資金使用が減少したものの、売上債権の増減額で2,470百万円資金回収が減少したことなどにより、得られた資金は292百万円減少しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は1,092百万円となりました。これは、無形固定資産の取得で904百万円の資金使用があったことなどによるものです。
前連結会計年度との比較では、投資有価証券の売却による収入が184百万円増加したものの、差入保証金の差入による支出が202百万円増加したことなどにより、使用した資金は95百万円増加しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は567百万円となりました。これは、非支配株主からの払込みによる収入で280百万円の資金の増加があったものの、自己株式の取得による支出で337百万円、長期借入金の返済で320百万円、配当金の支払で297百万円の資金使用があったことなどによるものです。
前連結会計年度との比較では、非支配株主からの払込みによる収入が280百万円増加したものの、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入が407百万円減少したことなどにより、使用した資金は19百万円増加しております。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 20,403 | 103.1 |
合計(百万円) | 20,403 | 103.1 |
(注) 金額はサービス売上原価によっており、消費税等は含まれておりません。
b. 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 21,773 | 102.6 |
合計(百万円) | 21,773 | 102.6 |
(注) 金額は仕入価額によっており、消費税等は含まれておりません。
c. 受注実績
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 49,393 | 102.1 | 14,203 | 93.2 |
合計(百万円) | 49,393 | 102.1 | 14,203 | 93.2 |
(注) 金額は売上価額によっており、消費税等は含まれておりません。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前期比(%) |
ICTサービス事業(百万円) | 50,430 | 102.6 |
合計(百万円) | 50,430 | 102.6 |
(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
ソフトバンク㈱ | 5,647 | 11.5 | 5,272 | 10.5 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析
第2次中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)においては、“お客様のビジネスパートナーへ”をスローガンに、[クラウドへの集約][IoTビジネスの開発][強固な収益基盤確立]を基本戦略と定め、これに基づいた重点テーマの達成に取り組みながら事業運営にあたってきました。
その中で、第1次中期経営計画(2014年3月期~2016年3月期)で設定した3つの注力事業(クラウド、セキュリティ、ビッグデータ)を融合してお客様に付加価値を提供することを目標に掲げ、「3つの注力事業の合計売上高」を経営の最重要指標の一つに設定しました。また、労働集約型のビジネスから脱却することを目的に事業のサービス化を推進しており、本業の収益性を図る「営業利益及び営業利益率」についても最重要指標に設定しました。
<ア.経営環境の認識>多くの産業・業種において、サイバー攻撃対策の必要性、ITを活用した働き方改革の推進、クラウドサービスの利活用、これらを推進するIT人材の不足を経営課題と捉えはじめたことを背景に、クラウドとセキュリティの需要は拡大したと考えております。また、ビッグデータやAI、IoT(モノのインターネット)を利用した事業の創出や、競争力強化を目的とした戦略的なIT投資の需要も増加基調にありました。
一方、あらゆる企業でシステムエンジニアやセキュリティ人材の需要が高まっていることを受け、優秀なIT人材の獲得コストも増加傾向にあります。当社グループにおいても、業務負荷の削減・平準化、メンタルケアや柔軟な働き方が可能な環境の整備、ワークライフバランスの向上など、社員満足度向上に対する取り組みの重要性が一層高まっていると認識しております。
<イ.経営成績の分析>このような経営環境の中、当期はクラウドソリューションが堅調な結果となりました。モバイルやタブレット端末でセキュアにクラウドを使用するための統合モバイル管理ソリューションの需要が拡大しました。加えて、セキュリティソリューションにおいては、セキュリティアナリスト不足やサイバー攻撃の早期発見と復旧のためのセキュリティ運用監視サービスの需要が増加基調となりました。またECサービスでは、一般ユーザーがランサムウェアやサイバー攻撃に備えるための高機能セキュリティ製品への切り替えが進んだことや、フォント需要の高まりにより好調に推移したと考えております。
一方で、システムインテグレーションにおいては、運用サービスへの移行が進んでいることもあり、請負型のスポット開発が減少傾向となりました。ITインフラソリューションにおけるサーバーやネットワーク機器の需要は継続してありますが、当社は前期に低採算な特定機器の販売終了を決定し、より利益率の高い案件に注力してまいりました。またデータアナリティクスでは、コンシューマ向けのECサイトにおいて個人の嗜好や行動に合わせてサービスを最適化するパーソナライズの需要が高まっているものの、広告代理店のシェア拡大など外部環境の変化もあったことから、当社グループにおいては縮小傾向となっております。
3つの注力事業の合計売上高
第2次中期経営計画においては、2014年3月期の注力事業の合計売上高を起点に、CAGR(年平均成長率)20%以上の成長に向けて取り組んでまいりました。当期においては、注力事業のうちクラウド及びセキュリティソリューションの伸長が、過去最高の売上高及び営業利益の達成を牽引したと考えております。
クラウドソリューションにおいては、コミュニケーション基盤のクラウド化やクラウド活用ソリューションが好調に推移しましたが、顧客の事業成長に貢献するビジネスIT領域で発生した不採算案件が収益に影響を与えました。セキュリティソリューションにおいては、セキュリティ運用監視サービスが好調に推移しました。データアナリティクスは、戦略転換をしたことにより減収となりましたが、注力事業合計の売上高は16,141百万円、限界利益は6,515百万円となりました。
この結果、2014年3月期から当期までの注力事業合計の売上高CAGRは34.8%となり、当期における注力事業合計の売上高構成比率は32.0%、限界利益構成比率は44.9%となりました。
営業利益及び営業利益率
営業利益及び営業利益率の成長に向けては、クラウド・セキュリティソリューションの増収と売上高構成比率の拡大、低採算な機器販売の戦略的撤退、ストック売上高の伸長により、営業利益率が改善しました。この結果、第4四半期偏重のバランスも緩和され、当期は営業利益目標である2,500百万円を達成できたと考えております。
また、不採算案件の抑制に向け、プロジェクト管理体制の強化を進めてまいりました。プロジェクト管理専門部署の設置や、当社単体の技術職社員における業界標準のプロジェクト管理資格(PMP)取得保有率は23%となりました。加えて、IoT市場における独自の立ち位置を早期に確立するため、積極的に先端技術を用いた実証実験に投資してまいりました。
一方、今後益々旺盛になると見込んでいるビジネスIT領域に挑戦してまいりましたが、複数の不採算案件が発生し、業績への影響があったと認識しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要の主なものは、運転資金面では、顧客からの受託開発案件の長期大型化によって生じる回収と支払のギャップ増大によるものであり、また設備投資の面では、独自のクラウドサービスや、セキュリティ監視システムへの開発投資といったものであります。さらに事業戦略上必要であれば、他社の株式を取得するための資金需要が生じることもあります。
当社グループは、企業体質の強化を図りながら持続的な企業価値の向上を進めるにあたり、前述の資金需要に対応するための資金は、自己資金を中心として進めることを基本方針としております。そのためグループ内の資金効率を向上させるべく、当社は極度借入契約を通じて、資金余剰が生じている子会社から借り入れる一方、資金需要のある子会社に対しては、貸付を行うことがあります。
また、上記によっても賄えない短期運転資金需要が生じた場合に備えて、取引銀行との間で極度貸越契約を締結しております。
当連結会計年度末における連結ベースの流動比率は195.9%、現金及び現金同等物の期末残高8,728百万円に対し、有利子負債(リース債務含む)残高は479百万円と、高い流動性及び自己資金での投資余力を維持しておりますが、不測の事態に備えて、取引銀行との良好な関係の維持に努めております。
(3) 今後の中期的な戦略及び対処すべき課題等
① 第2次中期経営計画の総括
当社グループでは、第2次中期経営計画において3つの重点テーマに取り組んでまいりました。
a. クラウドへの集約
b. IoTビジネスの開発
c. 強固な収益基盤確立
a. クラウドへの集約
当社グループは大手企業や官公庁のお客様に対して、マイクロソフトソリューションの導入実績を積み上げてまいりました。その中で、クラウド環境ならではのセキュリティ課題、データの分析・見える化、クラウドサービス同士の連携、UI/UXの改善対応などを通じてさまざまなノウハウを蓄積してきました。
当該期間において、これらの蓄積したノウハウをサービス化し、自社クラウドサービスのブランドとして「clouXion(クラウジョン)」を立ち上げたことは、一つの成果と考えております。
また、セキュリティ対策製品の販売・導入・保守に加え、運用監視まで行う「マネージドセキュリティサービス」の提供を開始しました。このサービスと連携する独自のログ分析基盤をクラウド上に構築し、セキュリティアナリストの分析アルゴリズムをAI化することで、品質向上と作業効率化も実現しました。さらにグローバル監視センターを開設し、国内企業における海外拠点のセキュリティ運用監視をタイムリーに対応するための準備が整ったことも、大きな成果と考えております。
b. IoTビジネスの開発
お客様やパートナー企業との実証実験や共同研究を推進した結果、当社グループはデバイスからクラウドまで一気通貫したIoTソリューションを提供するための土台を作り上げたことが、大きな成果と考えております。
デバイスの領域では、IoTデバイスのライフサイクルをセキュアに管理可能な「セキュアIoTプラットフォーム」や極小画面デバイス向けフォントの提供を開始しました。
クラウドの領域では、IoT機器のデータ管理や可視化、AI等と連携が可能な「IoT Core Connect(アイオーティーコアコネクト)」の提供を開始しました。
一方で、IoTビジネスは大きな収益貢献には至っておらず、今後更なる事業拡大を推進してまいります。
c. 強固な収益基盤確立
大型不採算案件を抑止するために、プロジェクト管理体制の強化を推進してまいりました。
主に社内システムを扱う情報システム部門を対象としたコーポレートIT領域におけるウォーターフォール型の開発案件では、大型不採算案件を抑制するプロジェクト管理を実現することができました。
一方、事業部門を対象としたビジネスIT領域における開発案件では、変化の速いビジネス環境に対応するために要件等の変更が発生しました。これにより、当該領域で不採算案件が発生しました。
今後は、ビジネスIT領域においては、スクラム型の開発手法に移行準備を進めるなどの対応が必要だと考えております。
また、クラウド・セキュリティ・IoTの各分野において自社サービスを開発しましたが、販売チャネルが整備段階である事から、今後はサービスの拡大に向けて販売体制を強化してまいります。
第2次中期経営計画においては、エンタープライズ向けのクラウドとセキュリティのナレッジを蓄積し、当社グループはシステムエンジニアやネットワークエンジニアの集団から、クラウドとセキュリティの専門家集団に進化することができました。
② 第3次中期経営計画
a. 新たな経営の基本方針
当社グループが属するソフトバンクグループは、ソフトバンクグループ㈱が掲げる「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、企業価値の最大化を図るとともに、世界の人々が最も必要とするテクノロジーやサービスを提供する企業グループを目指しております。
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに ~技術の力で、未来をつくる~」ことを使命に掲げ、多様な働き方と挑める環境で先進技術と創造性を磨き、社会に新しい価値を提供し続ける企業を目指しております。そしてこの経営理念の下、「日本企業の競争力を高めるクラウドコンサル&サービスカンパニー」となることを長期ビジョンとして定めました。当社グループは、ICTサービスの提供を通じて豊かな情報化社会を実現することを経営方針としております。
b. 第3次中期経営計画の重点施策
当社グループでは、「サービスプロバイダーへの進化」と「コンサルティング&ビジネスITの創出」を重要テーマに位置付け、第3次中期経営計画を推進してまいります。
ア.サービスプロバイダーへの進化
・ サービス化につながるシステム開発に集中
・ クラウド&セキュリティのサービス化推進
・ パートナーセールスの確立と強化
イ.コンサルティング&ビジネスITの創出
・ 既存ビジネスのクラウド・DX推進
・ IoTや先端技術を活用した新ビジネスの協創
・ スクラム開発の浸透
また、優秀な人材の獲得及び意欲や生産性が高い状態で働くことのできる環境作りと働き方改革についても、継続して推進してまいります。専門技能向上のための機会提供、配置転換やメンター制度による長期的な教育、モバイルと先端IT技術の活用及び新しいワークスタイルに適した制度改編、学習やライフイベントに柔軟に対応できる休暇制度の設置など、さまざまな施策に取り組んでまいります。
c. 新ソリューション区分
当社グループの報告セグメントは、「ICTサービス事業」の単一セグメントです。これまで「ICTサービス事業」を構成する主要なサービスの業績を「サービス区分」として、サービス区分を構成する主要なソリューションの業績を「ソリューション区分」として開示しておりました。
次期からは、第3次中期経営計画で設定した重点施策の進捗を確認できるようにするため、サービス区分を廃止し、下記のとおり新しいソリューション区分で開示する予定です。
ソリューション区分 | ソリューション内容 | 主な事業会社の名称 |
ビジネスIT ソリューション | ・顧客の事業成長に貢献するためのコンサルティング及び ITソリューション ・IoTサービス | ・ソフトバンク・テクノロジー㈱ ・フォントワークス㈱ ・サイバートラスト㈱ ・リデン㈱ |
コーポレートIT ソリューション | ・クラウドサービス、セキュリティ運用監視サービス ・働き方改革等のクラウド&セキュリティコンサルティング ・クラウドインテグレーション、セキュリティ対策製品販売 | ・ソフトバンク・テクノロジー㈱ ・サイバートラスト㈱ ・アソラテック㈱ |
テクニカル ソリューション | ・クラウドを除くシステムインテグレーション ・機器販売、構築、運用保守サービス ・Linux/OSS関連製品の販売、組込開発 | ・ソフトバンク・テクノロジー㈱ ・サイバートラスト㈱ ・M-SOLUTIONS㈱ ・㈱環 |
ECソリューション | ・ECサイトの運営代行等 | ・ソフトバンク・テクノロジー㈱ |
③ 第3次中期経営計画で目標とする経営指標
当社グループは、2020年3月期から2022年3月期までの第3次中期経営計画において、ビジネスITソリューション及びコーポレートITソリューションを注力事業に設定し、事業の拡大と企業価値のさらなる向上を図ってまいります。当期における当注力事業の売上構成比率は35%ですが、「注力事業の売上高構成比率50%」まで引き上げるとともに、「連結営業利益43億円(2019年3月期を起算にCAGR20%成長)」を最重要指標に掲げ、取り組みを推進してまいります。また、2022年3月期における株主資本利益率(ROE)は13%を目標に経営を進めてまいります。
④ 2020年3月期連結業績予想
次期においては、国内労働人口の減少や少子高齢化及びIT人材・セキュリティ人材不足を背景に、企業の働き方改革への取り組み強化や生産性向上に向けたクラウド利活用の需要、サイバー攻撃対策やセキュリティ運用監視サービスの需要が継続すると考えております。
加えて、2019年7月及び2020年1月におけるマイクロソフト社提供の一部のサーバーのサポート終了により、マイグレーション(新サーバーへのアップグレードとデータ移行)の需要が高まることが予想されております。また、サポート終了後も、「延長セキュリティ更新プログラム」を3年間利用できることがメーカーよりアナウンスされていることから、サーバーのクラウド化需要についても高まると予想しております。
このような動向が予測される状況において、お客様に代わってコーポレートIT機能の提供と、それらの運用・監視を担うことに注力してまいります。当社グループは、第2次中期経営計画で準備を進めてきた自社サービスの販売を一気に加速させ、マイグレーションやクラウド化、これに伴い高まるクラウドセキュリティの需要にも対応してまいります。
また、ビジネスIT領域における開発案件はスクラム開発へのシフトを進めることで、お客様の期待するスピード感とリクエストに応えてまいります。
以上により、次期の連結業績は、売上高54,000百万円、営業利益3,000百万円、経常利益2,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,700百万円を見込んでおります。
以上の見通し及び方針に基づく2020年3月期の連結業績予想は次のとおりです。
(百万円) (円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に 帰属する 当期純利益 | 1株当たり 当期純利益 | |
2020年3月期予想 | 54,000 | 3,000 | 2,900 | 1,700 | 86.09 |
2019年3月期実績 | 50,430 | 2,513 | 2,291 | 1,386 | 70.23 |
増 減 率 | 7.1% | 19.3% | 26.6% | 22.6% | 22.6% |
業績予想は現時点で入手可能な情報に基づいておりますが、実際の数値は今後さまざまな要因によって、予想数値と異なる可能性があります。