有価証券報告書-第34期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 15:14
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米国を中心に緩やかな回復基調で推移しましたが、米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題、為替相場の動向等、景況感の悪化につながる懸念材料も多く、先行き不透明感が高まる状況で推移しました。
わが国経済においても、企業収益及び雇用情勢の改善傾向は続いているものの、海外経済動向に対する不確実性が増しています。
このような状況のもと、当社グループにおいては、2018年度は将来の成長に資する先行投資期間として、新たな市場進出となる事業譲受や新規事業の立上げ、拠点展開など、積極的な取り組みを実行しました。
また、2018年12月には米国・テキサス州にEМS事業の拠点を設立、2019年3月31日には、2019年4月1日付「当社孫会社における北米事業譲受完了及び当社連結子会社(孫会社)の異動に関するお知らせ」にて公表しておりますとおり、ソニー株式会社から同社米国法人Sony Electronics Inc.の事業部門Sony Service and Operations of Americasの機能及び事業、並びにメキシコ生産拠点を事業譲受するなど、グローバル事業体制の拡充を図っています。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高57,759百万円(前年同期比6.6%増)となり、営業利益においては国内・海外における新規拠点の設立に伴う先行投資コストが発生したことや、EMS事業における海外需要の調整、PS事業における急激な部材調達価格の上昇等による利益圧迫要因などが重なり、548百万円(前年同期比57.5%減)となりました。経常利益は569百万円(前年同期比62.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は773百万円減少し、415百万円(前年同期比65.0%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
1) HS事業(ヒューマンソリューション事業)
当連結会計年度におきましては、国内HS事業の製造派遣・製造請負事業においては、正社員化や外国人技能実習生の活用により、採用力の強化と共に定着率の向上を図ることができましたが、成長戦略としてその施策を進めている技術者派遣事業、外国人技能実習生向け研修事業や、物流3PL(サードパーティー・ロジスティクス)受託・テクニカル流通加工事業会社(nmsロジスティクス&テクニカルソリューション株式会社)設立等による、先行投資コストの発生がありました。
海外HS事業は、中国及びASEANにてその取り組みを展開しています。中国においては、市場環境の変化や人件費の高騰等があるものの、現地における事業拡大の手段として、製造請負の展開を増やすことを進めております。NMS VIETNAM CO.,LTD.・NMS INTERNATIONAL RESOURCES CO., LTD.・nms(Thailand)Co., Ltd.につきましては、グループリソースの活用を行いながら、現地における人材派遣及び製造受託を行う拠点として、収益性向上への取り組みをすすめています。
また、外国人材受け入れ拡大における新たなネットワークとして、PT. NMS CONSULTING INDONESIAを設立、2018年10月より事業を開始しております。
この結果、当セグメントの売上高は、19,331百万円(前年同期比13.3%増)、となりましたが、セグメント利益は先行投資コストや国内新会社の立ち上げコストによる影響が大きく196百万円(前年同期比67.8%減)となりました。
2) EMS事業(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス事業)
EMS事業は、志摩グループ、TKRグループを事業母体として事業展開しております。
当連結会計年度におきましては、国内EMS事業は国内向け既存事業については概ね順調に推移したものの、第2四半期以降、米中貿易摩擦等の影響もあり、工作機械関連需要が減少したことに加え、重点施策として進めているベトナムや米国拠点設立等に係る先行投資コスト発生等による利益圧迫要因がありました。
海外EMS事業におきましては、マレーシアにおいては、主力の白物家電関連が気候等の影響による需要減があった一方、中国においては引き続き堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は25,819百万円(前年同期比1.3%減)、セグメント利益は436百万円(前年同期比32.6%減)となりました。
3) PS事業(パワーサプライ事業)
PS事業は、パワーサプライテクノロジー株式会社(以下、PST)を事業母体として事業展開しております。
当連結会計年度におきましては、既存製品の需要調整や新規分野への製品投入までの端境期を脱し、当期より新規受注の量産化が順次スタートしました。また、「エネルギーマネジメント」という観点で、リチウムイオン電池パックの開発、納入を開始しております。
今後においては、2018年1月11日付でEV分野の開発・製造を行う拠点として設立した「松阪工場」(三重県松阪市)において、リチウムイオン二次電池パックをはじめとするEV分野の製品開発・量産を加速させるとともに、現在の主軸である電源製品の生産技術開発を進め、「基盤強化」と「新製品開発・製造・拡販」の両輪で、新規受注の上乗せを図ります。
この結果、当セグメントの売上高は12,608百万円(前年同期比15.3%増)となりましたが、セグメント利益は海外における部材価格の急激な高騰に加え、売価是正対応の遅れにより443百万円(前年同期比5.6%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ253百万円減少し4,195百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。また、現金及び現金同等物に係る換算差額が129百万円減少しております。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、1,272百万円の支出(前年同期は2,266百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、税金等調整前当期純利益694百万円(前年同期は1,664百万円の利益)、減価償却費828百万円(前年同期は716百万円)、未払金の増加額412百万円(前年同期は235百万円の減少額)、仕入債務の増加額243百万円(前年同期は954百万円の増加額)等となり、主なマイナス要因は、たな卸資産の増加額1,210百万円(前年同期は323百万円の増加額)、売上債権の増加額885百万円(前年同期は763百万円の増加額)、法人税等の支払額782百万円(前年同期は398百万円の支出)、未払消費税等の減少額509百万円(前年同期は469百万円の増加額)等によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、2,100百万円の支出(前年同期は87百万円の支出)となりました。主なマイナス要因は、有形固定資産の取得による支出2,171百万円(前年同期は849百万円の支出)、長期前払費用の取得による支出227百万円(前年同期は - )、無形固定資産の取得による支出83百万円(前年同期は39百万円の支出)等となり、主なプラス要因は、有形固定資産の売却による収入311百万円(前年同期は284百万円の収入)、定期預金の払戻による収入113百万円(前年同期は410百万円の収入)、投資有価証券の売却による収入78百万円(前年同期は232百万円の収入)等によるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、3,154百万円の収入(前年同期は1,133百万円の支出)となりました。主なプラス要因は、短期借入金の純増額3,164百万円(前年同期は3,487百万円の純減額)、長期借入れによる収入1,235百万円(前年同期は4,000百万円の収入)等となり、主なマイナス要因は、長期借入金の返済による支出722百万円(前年同期は1,628百万円の支出)、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出247百万円(前年同期は - )等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは、製造アウトソーシング事業を主な事業として営んでおります。HS事業(ヒューマンソリューション事業)につきましては、その大部分が、請負業務・派遣業務であり、重要性が乏しいため、記載を省略しております。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比(%)
EMS事業(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス事業)(千円)23,988,08899.52
PS事業(パワーサプライ事業)(千円)10,757,560121.90
合計(千円)34,745,649105.52

(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当社グループは、受注から生産までの期間が短く受注管理を行う必要性が乏しく、また、前連結会計年度まで記載をしておりましたPS事業(パワーサプライ事業)につきましても、受注実績と販売実績の差異が僅少のため、当連結会計年度より記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
前年同期比(%)
HS事業(ヒューマンソリューション事業)(千円)19,331,366113.25
EMS事業(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス事業)(千円)25,819,50598.68
PS事業(パワーサプライ事業)(千円)12,608,492115.28
合計(千円)57,759,364106.62

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
Panasonic Appliances
Air-Conditioning Malaysia Sdn.Bhd.
7,076,97313.065,449,7959.44

3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月27日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりです。連結財務諸表の作成においては、過去の実績やその時点で合理的と考えられる情報に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、見積りには不確実性が伴い実際の結果は異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度においては、将来の成長に向けた先行投資期間として新規事業の立ち上げを行ったこともあり売上高は前年対比で増収となりましたが、この先行投資負担により営業利益は前年対比で減益となりました。
この結果、事業の拡大により総資産は増加、純資産は為替換算調整勘定の影響もあり減少したことにより、自己資本比率は19.5%と前年対比で2.3%減少しております。
当社グループは今後の取り組みをより一層確実なものとするため、「新中期経営計画」(2019年2月8日公表)を策定し、アクションプランの確実な実行と投資効果の刈り取りにより、さらなる事業規模の拡大を図り、経営基盤の安定化を実現させてまいります。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は57,759百万円(前年同期比6.6%増)となり、EMS事業において中国の景気減速により受注が減少した影響はありましたが、HS事業における新事業の立上げやPS事業が既存製品の需要調整、新規分野への製品投入までの端境期を脱したことにより、前連結会計年度に比べて3,587百万円増加しました。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は7,962百万円(前年同期比2.2%増)となり、前連結会計年度に比べて168百万円増加しました。また、売上総利益率は、EMS事業における中国向け受注の減少やPS事業における部材価格の高騰もあり、前連結会計年度に比べ0.6%減少の13.8%となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は548百万円(前年同期比57.5%減)となり、前連結会計年度に比べて743百万円減少致しました。主な要因としては、HS事業における国内3事業会社の設立、EMS事業におけるベトナムや米国拠点の設立等、成長戦略としての施策による国内外における先行投資コストの発生によるものです。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は569百万円(前年同期比62.2%減)となり、為替差損が当連結会計年度において増加したこと等により営業外収支が悪化、前連結会計年度に比べて936百万円減少しました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、415百万円(前年同期比65.0%減)となり、前連結会計年度に比べ773百万円の減少となりました。主な要因としては特別利益として固定資産の売却益が発生したものの、特別損失として国内外の構造改革コストが発生したことによるものです。
財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の資産合計は29,462百万円となり、前連結会計年度末に比べ、2,966百万円増加いたしました。
流動資産合計は22,082百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,647百万円増加いたしました。これは主に受取手形及び売掛金が699百万円、製品が341百万円、原材料及び貯蔵品が643百万円増加したものの、現金及び預金が290百万円減少したことによるものです。
固定資産合計は7,380百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,318百万円増加いたしました。これは有形固定資産が1,107百万円、無形固定資産が36百万円、投資その他の資産が174百万円増加したことによるものです。
(負債の部)
負債合計は23,717百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,371百万円増加いたしました。
流動負債合計は21,744百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,159百万円増加いたしました。これは主に短期借入金が8,278百万円、未払金が384百万円増加したものの、未払法人税等が277百万円、未払消費税等が417百万円減少したことによるものです。
固定負債合計は1,973百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,787百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が4,627百万円減少したことによるものです。
(純資産の部)
純資産合計は5,744百万円となり、前連結会計年度末に比べ405百万円減少いたしました。これは主に利益剰余金が262百万円増加したものの、為替換算調整勘定が366百万円、非支配株主持分が363百万円減少したことによるものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
資本の財源及び資金の流動性の分析
当社の資金需要の主なものは運転資金、設備資金及び法人税等の支払です。これに対しては、営業キャッシュ・フローから産み出した内部資金の活用を優先し、内部資金では不足する場合に外部からの借入や資本性の資金調達で対応することを原則としています。
借入を行なう場合は、低コスト、長短のバランスの勘案、安定的な資金確保を方針としています。長短のバランスについては、運転資金等の短期資金需要については短期借入金で、設備資金やM&Aなどの長期資金需要については長期借入金で調達を行なうこととしています。また、安定的な資金確保のために、コミットメントライン40億円、タームローン40億円とする組成金額80億円のシンジケートローン契約等、十分な借入枠の契約をしています。
資本性の資金調達においては、新株予約権を発行しております。現在まで本予約権の行使はされておりませんが、行使時には、既に当社が保有している自己株式を割当ていたします。
なお、2020年3月期における重要な資本的支出については現在未確定ではありますが、発生した際には、上述のとおりの原則・方針で資金対応の予定です。