有価証券報告書-第36期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/22 15:19
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大により、急激な景気後退に見舞われましたが、先進国の大型財政出動や金融緩和策によって、期中に景気減速から回復への動きがみられました。足もとでは世界の各国で感染症のワクチン接種が急速に進んでおり、感染症の収束期待が高まりつつあるものの、変異型ウイルスの流行による、感染再拡大の動きもあり、不透明な状況が続いています。
わが国経済においても、感染症の影響による製造業における生産活動の停滞や、人の行動制限による消費の落ち込みなど、厳しい状況から持ち直しの動きもみられるものの、感染の再拡大や半導体等一部部材の供給不足等のリスク要因もあり、景気の先行きが見通せない状況で推移しております。
このような状況のもと、当社グループにおいては、従業員及びお客様の安全確保を最優先し、間接部門や営業部門についてはテレワークやリモートによる活動を推進、海外においても各国政府の要請に従い対応を図りながら、販管費の抑制に努めました。
また、経営環境改善時に備えた基盤強化策として、グループにおける事業構造改革を実行しており、引き続き、合理化、効率化を徹底的に進め、事業効率のよい体制への転換や抜本的コスト構造改革を行っています。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高は54,856百万円(前連結会計年度比12.4%減)となり、営業利益689百万円(同25.1%減)、経常利益158百万円(同70.7%減)、感染症関連による休業手当等による特別損失395百万円、事業構造改革による特別損失92百万円等を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は735百万円(前連結会計年度は280百万円の利益)となりました。
今後も経済環境はさらに不透明感を増していく様相ですが、グループ間の事業シナジー創出に加え、事業構造改革により体質を強化し、次年度につながる取り組みを展開してまいります。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
1) HS事業
国内事業については、感染症の影響により減収となりましたが、製造派遣・製造請負事業における自動車関連事業等の回復影響とともに、徹底した経費見直しを行い、国内事業全体における固定費の抑制に努めたことにより、利益が改善しました。海外事業については、経済活動が早期に正常化した中国事業は回復傾向が続いたもののASEANにおける感染症による稼働調整やインドネシア等における事業立ち上げに伴うコストの影響が残りました。
この結果、当セグメントの売上高は、19,135百万円(前連結会計年度比11.8%減)、セグメント利益は、874百万円(同26.1%増)となりました。
2) EMS事業
国内EMS事業は、感染症影響とともに、一昨年から続いている米中貿易摩擦に起因した国内顧客の需要減少による影響がありました。海外EMS事業は、中国・ASEAN・北中米において生産活動を展開しており、前年度から続く戦略投資の実行期にある中、世界規模での感染症拡大に伴う、各国政府方針によるロックダウンや外出禁止令、出入国制限等により、経済活動停滞の影響が大きく、全体としては販売が低調に推移しました。利益面では、重点施策として進めているベトナムおよびメキシコ拠点の先行投資コスト等も圧迫要因となりました。
なお、2021年1月にEMS国内事業体制強化を目的としたグループ再編として、株式会社TKR(2021年1月1日付けで商号を株式会社テーケィアールから変更)を存続会社とし、株式会社テーケィアールマニュファクチャリングジャパンを消滅会社とする吸収合併を行いました。これによりEMS国内事業の経営効率を高めるとともに、国内外拠点連携によるワンストップソリューションの質をさらに上げ、企業価値向上を図っていく体制となりました。
この結果、当セグメントの売上高は、24,054百万円(前連結会計年度比11.1%減)、セグメント損失は、29百万円(前連結会計年度は33百万円の利益)となりました。
3) PS事業
PS事業は、中国の生産拠点における、感染症に伴う生産活動停滞が早期に改善された一方、サプライチェーンの混乱や顧客の生産調整、在庫調整実施の影響を受け、販売が減少しました。しかしながら、前期において行った抜本的コスト構造改革による体質強化の効果に加え、さらなるコスト削減も実行し、利益の確保に努めました。部材価格高騰に伴う価格是正効果があった前連結会計年度に対し大幅減益となったものの、体質強化策による実効もあり、次年度につながる基盤を構築しました。
この結果、当セグメントの売上高は、11,666百万円(前連結会計年度比15.9%減)、セグメント利益は、327百万円(同53.2%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ584百万円増加し4,741百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。また、現金及び現金同等物に係る換算差額が84百万円減少しております。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、943百万円の収入(前年同期は1,816百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、減価償却費1,266百万円(前年同期は1,169百万円)、売上債権の減少額1,329百万円(前年同期は1,062百万円の増加額)、たな卸資産の減少額350百万円(前年同期は245百万円の減少額)等となり、主なマイナス要因は、税金等調整前当期純損失310百万円(前年同期は686百万円の利益)、未払消費税等の減少額487百万円(前年同期は596百万円の増加額)、その他の固定負債の減少額768百万円(前年同期は941百万円の増加額)、法人税等の支払額587百万円(前年同期は344百万円の支払)等によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、919百万円の支出(前年同期は2,833百万円の支出)となりました。主なプラス要因は保険積立金の払戻による収入57百万円(前年同期 - )、定期預金の払戻による収入51百万円(前年同期は74百万円の収入)等となり、主なマイナス要因は、有形固定資産の取得による支出997百万円(前年同期は1,984百万円の支出)等によるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、664百万円の収入(前年同期は976百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、短期借入金の純増額2,268百万円(前年同期は1,236百万円の純減額)等となり、主なマイナス要因は、長期借入金の返済による支出874百万円(前年同期は5,673百万円の支出)、ファイナンス・リース債務の返済による支出403百万円(前年同期は328百万円の支出)、割賦債務の返済による支出106百万円(前年同期は59百万円の支出)、自己株式の取得による支出133百万円(前年同期は0百万円の支出)等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは、製造アウトソーシング事業を主な事業として営んでおります。HS事業につきましては、その大部分が、請負業務・派遣業務であり、重要性が乏しいため、記載を省略しております。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年度比(%)
EMS事業 (千円)22,060,82388.57
PS事業 (千円)9,843,13284.25
合計(千円)31,903,95687.19

(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当社グループは、受注から生産までの期間が短く受注管理を行う必要性が乏しく、受注実績と販売実績の差異が僅少のため、受注実績の記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年度比(%)
HS事業 (千円)19,135,98588.24
EMS事業 (千円)24,054,44688.94
PS事業 (千円)11,666,42684.06
合計(千円)54,856,85887.61

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
Panasonic Appliances
Air-Conditioning Malaysia Sdn.Bhd.
6,401,57310.224,885,0608.91

3.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月22日)現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度においては、感染症拡大による経済活動停滞の影響により減収となったものの、グループ全体における徹底した固定費削減策の実行による成果もあり、営業利益については当初予想を上回る着地となりました。前連結会計年度に対しては、売上高は12.4%減、営業利益は25.1%減となり、経常利益は70.7%減、親会社株主に帰属する当期純損失は新型コロナウイルス感染症関連損失の計上もあり735百万円(前年同期は280百万円の純利益)となりました。
■資産・負債及び純資産
1)資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,963百万円減少の31,507百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,457百万円減少の21,658百万円となりました。これは主に、売上債権が新型コロナウイルス感染症影響による減収により1,512百万円減少したことによるものです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ492百万円減少の9,796百万円となりました。これは主に、EMS事業における設備投資額が減価償却費の範囲内となったことで、有形固定資産が前年度末比170百万円減少したことに加え、ソフトウェアやのれんの償却などにより無形固定資産が212百万円減少したことなどによるものです。
戦略投資は当社グループの次なる成長を生み出すものであり、その方針は変わらないものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業環境が変化しており、投資における実行タイミングの見極めを行うとともに、運転資金の圧縮及び収益力の向上に努めてまいります。
2)負債及び純資産
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ815百万円減少し、26,804百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ1,170百万円増加し、17,460百万円となりました。これは主に、短期借入金が2,018百万円増加したことなどによるものです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ1,986百万円減少し、9,344百万円となりました。これは主に、長期借入金が801百万円減少したことと、その他の固定負債が916百万円減少したことなどによるものです。
純資産は、1,147百万円減少の4,702百万円となりました。主に感染症影響による当期純損失の計上及び配当支払等を反映した利益剰余金の減少821百万円、及び為替換算調整勘定の減少190百万円などによるものです。
以上の結果、自己資本比率は、2.5ポイント低下し14.9%となりました。
当連結会計年度は、感染症影響による損失計上により、自己資本比率が低下しましたが、いずれも一過性のものとなります。今後もコスト構造改革などによる基盤強化を行うとともに、投資・資金効率の向上に努め、有利子負債の圧縮及び投資効果の早期発現に努めてまいります。
(単位:百万円)前連結会計年度末当連結会計年度末増減
流動資産23,11521,658△1,457
固定資産10,2889,796△492
有形固定資産8,0607,890△170
無形固定資産1,095883△212
投資その他の資産1,1331,022△110
繰延資産6652△13
資産合計33,47031,507△1,963
負債合計27,62026,804△815
流動負債16,29017,4601,170
固定負債11,3309,344△1,986
純資産合計5,8494,702△1,147
負債・純資産合計33,47031,507△1,963

■売上高・利益
1)売上高
売上高は、感染症の影響により、すべての事業セグメントにおいて減収となり、前連結会計年度比12.4%減の54,856百万円となりました。
国内売上高は、前年度比7.1%減の25,499百万円、海外売上高は前年度比16.5%減の29,357百万円となりました。経済活動が早期に正常化した中国事業は回復傾向が続いたものの北中米やASEANにおいて世界規模での感染症拡大に伴う、各国政府方針によるロックダウンや外出禁止令、出入国制限等により、経済活動停滞の影響が大きく、全体としては販売が低調に推移しました。海外売上高比率については前連結会計年度の56.2%から2.7ポイント減少し、53.5%となりました。
2)売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益
売上原価は、売上高の減少に伴い前年度比11.8%減少し、48,110百万円となりました。また、売上原価対売上高比率は前年度比0.6ポイント増の87.7%となり、売上総利益は前年度比16.6%減の6,746百万円となりました。
販売費及び一般管理費は減価償却費の増加があったものの、徹底した経費の見直しを行ったことにより、前年度比15.5%減の6,056百万円となり、販売費及び一般管理費対売上高比率は、前期比0.4ポイント減の11.0%となりました。
この結果、営業利益は前年度比25.1%減(231百万円減)の689百万円となりました。
3)経常利益、税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の経常利益は158百万円(前年度比70.7%減)となりました。
受取利息及び受取配当金から支払利息、社債関連費用を控除した金融収支の純額費用は、前連結会計年度から27百万円費用が減少し、224百万円の負担となりました。
また、営業外収益においては、前連結会計年度においてはPS事業の本社移転に係る助成金収入等があり、当連結会計年度はその計上がないため、前年度比78百万円減の196百万円となりました。
営業外費用については、為替差損が前年度比で増加したこと等により、前年度比73百万円増加の726百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失としてコロナ関連費用(395百万円)、構造改革費用(92百万円)等の計上により、△735百万円となり、前連結会計年度に対し1,015百万円の減益となりました。
当社グループは新設及び立ち上げ期にある子会社が多い状況にありますが、引き続き売上増加につながる施策の実行とともに、コスト構造改革も行い、当期純利益の増加につなげてまいります。
(単位:百万円)前連結
会計年度
当連結会計年度
実績前年度比主なポイント
売上高62,61154,856△12.4%[売上高]
HS事業 :前連結会計年度に対し減収となったものの国内事業の半導体・電子部品関連分野の需要が堅調に推移
EMS事業:感染症拡大影響によるベトナム拠点の新製品量産の後ろ倒しや、メキシコ拠点も現地ロックダウン影響で減収
PS事業 :中国の生産拠点は早期に稼働改善したものの、サプライチェーンの混乱や顧客の生産調整等の影響あり販売が減少
[営業利益]
HS事業 :徹底した経費見直しを実行、海外事業は中国の需要回復が継続、事業全体で増益
EMS事業:米国・メキシコのロックダウン影響に加え、立ち上げ期にあるベトナム、メキシコ拠点の先行投資負担もあり減益
PS事業 :中国拠点の稼働改善や抜本的コスト構造改革を実行、第2四半期以降、利益が改善
[経常利益]
営業外収益 196百万円(前年同期比 78百万円減)
営業外費用 726百万円(前年同期比 73百万円増)
[特別利益] 28百万円(前年同期比 164百万円減)
[特別損失] 497百万円(前年同期比 449百万円増)
営業利益920689△25.1%
経常利益541158△70.7%
親会社株主に帰属する当期純利益280△735

■当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
感染症による影響は経営環境の変化をもたらす新たな要因と認識しています。
当連結会計年度においては、主として感染症拡大による国内外経済活動の停滞及び為替変動における影響があり、翌連結会計年度においても、感染症による事業活動への影響は残るものと認識しております。
感染症は未だ世界の国・地域で終息に至っておらず、再拡大の動きを見せており、顧客・取引先の生産変動やサプライチェーンの停滞、人の往来制限による需要減少等が想定されます。これに対し、当社はグループ内相互生産サポート体制や人材リソースの多様化等を図るとともに、事業運営における生産性向上に向け、リモートワークや業務の電子化対応等の取り組みを継続推進し、一層の基盤強化を進めます。
また、不要不急の外出抑制による巣ごもり需要やリモートワーク勤務への取り組みが進む中、IT・AV機器分野では旺盛な需要継続に加え、新製品・新機種の市場投入もあり繁忙を維持する一方、自動車生産の回復により、半導体不足の問題が顕在化しています。グローバルで半導体供給網の見直しが進められているものの、幅広い業界における減産潜在リスクに加え、周辺部材の価格高騰にも波及するものと認識しております。この影響を最小限に抑えるため、部材調達リソースの多様化、顧客の生産変動に即応する当社グループのサプライチェーンマネジメントを強化し、グループ全体で機動的かつ柔軟に対応できる体制を整えてまいります。
翌連結会計年度も不透明な事業環境が続く様相ですが、当社グループにおいては、当連結会計年度に実行した基盤強化策の効果に加え、HS事業における請負比率拡大やEMS事業の新規量産立ち上げ、PS事業の殺菌・滅菌機器への電源製品需要拡大等を背景に、すべての事業セグメントで業績回復に転ずる見込みです。
引き続き、グループ全体で事業基盤の強化を進めるとともに、戦略投資の立ち上げや新規事業、新市場への参入も進め、売上・利益の確保に努めてまいります。
■セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
HS事業
国内事業については、感染症の影響により減収となりましたが、製造派遣・製造請負事業における自動車関連事
業等の回復影響と共に、徹底した経費見直しを行い、国内事業全体における固定費の抑制に努めたことにより、利
益が改善しました。海外事業については、経済活動が早期に正常化した中国事業は回復傾向が続いたもののASE
ANにおける感染症による稼働調整やインドネシア等における事業立ち上げに伴うコストの影響が残りました。
この結果、当セグメントの売上高は、19,135百万円(前年同期比11.8%減)、セグメント利益は、874百万円(前
年同期比26.1%増)となりました。
2018年労働者派遣法改正により2020年4月1日から「同一労働同一賃金」が施行となり、人材ビジネスの大変革期となるものと認識しています。しかしながら、当社HS事業は、人材派遣だけでなく早くから「請負・受託」の比率を拡大させてきました。今後、製造業のファブレス化が進む中、人材ソリューションと製造受託ノウハウを有する当社HS事業はそのメリットを活かせるものと認識しています。
当事業は大きな設備投資を行うことなく、機動的に拠点展開ができる特長があります。当連結会計年度では、前連結会計年度に立ち上げた新会社の業績が着実に改善しており、「請負・受託」の比率拡大とあわせ、翌連結会計年度以降は本格的な業績寄与となるよう、その取り組みを進めます。
EMS事業
国内EMS事業は、感染症影響とともに、一昨年から続いている米中貿易摩擦に起因した国内顧客の需要減少による影響がありました。海外EMS事業は、中国・ASEAN・北中米において生産活動を展開しており、前年度から続く戦略投資の実行期にある中、世界規模での感染症拡大に伴う、各国政府方針によるロックダウンや外出禁止令、出入国制限等による経済活動停滞の影響が大きく、全体としては販売が低調に推移しました。
特に、ベトナム拠点の新製品量産立ち上げが想定以上に後ろ倒しになったことに加え、米国・メキシコ拠点の事業活動が現地ロックダウンにより大幅な停滞を余儀なくされ、先行投資コストもあり、セグメント損失を計上しました。
この結果、当セグメントの売上高は、24,054百万円(前年同期比11.1%減)、セグメント利益は、△29百万円(前年同期は33百万円の利益)となりました。ベトナム及びメキシコ拠点については稼働が徐々に上がってくる中で、立ち上げコストの解消がなされてくるものと認識していますが、本格的な業績寄与は翌連結会計年度以降となる見込みです。
一方、当連結会計年度を基盤再構築実行の年と位置づけ、国内EMS事業の抜本的構造改革を実施しました、具体的には、2021年1月にEMS国内事業体制強化を目的としたグループ再編として、株式会社TKR(2021年1月1日付けで商号を株式会社テーケィアールから変更)を存続会社とし、株式会社テーケィアールマニュファクチャリングジャパンを消滅会社とする吸収合併を行いました。これによりEMS国内事業の経営効率を高めるとともに、国内外拠点連携によるワンストップソリューションの質をさらに上げ、企業価値向上を図っていく体制となりました。
また、新規事業としてシェアビジネス事業を立ち上げました。これまで、発展途上国において大量生産品を日本品質でより低価格で実現する「メガEMS」、熟成したマーケットにおける「オーダーメイド型EMS」を基本とし事業展開してきましたが、シェアビジネス事業は、その双方を連動させ新たな価値創出を担う位置づけとなります。グローバルで展開するEMS事業体制を活用し、お客様から設計、 調達、生産、物流などの業務の一部をお任せいただくことにより、固定費の大幅削減を可能とするサービスであり、長年培ってきた設計、製造、製造サービスのノウハウとインフラが整っているからこそできるサービスです。必要なものをより良い形で提案、提供することで、多くのお客様と強固なパートナーシップを築いてまいります。
PS事業
中国の生産拠点における感染症に伴う生産活動停滞が早期に改善されたものの、サプライチェーンの混乱や顧客の生産調整、在庫調整実施の影響を受け、前連結会計年度に対し販売が減少しました。一方、これまでの抜本的コスト構造改革による体質強化の効果に加え、さらなるコスト削減も実行し、利益の確保に努めました。部材価格高騰に伴う価格是正効果があった前連結会計年度に対し大幅減益となったものの、体質強化策による実効もあり、次期につながる基盤を構築しました。
この結果、当セグメントの売上高は、11,666百万円(前年同期比15.9%減)、セグメント利益は、327百万円(前年同期比53.2%減)となりました。
PS事業は、2018年1月11日付で「松阪工場」(松阪本社敷地内)を開設し、開発・製造が一体となったマザー拠点機能を強化し、新製品開発・製造・拡販を機動的に行う体制で事業を展開しております。
加えて、感染症が拡大する中、産業機器メーカーによる殺菌・滅菌機器の開発・市場投入が進められており、電源製品の需要拡大につながっています。PS事業は、これまで複写機・複合機を中心としたドキュメント業界が主要市場となっており、新規市場への参入が課題となっておりましたが、この需要拡大を背景に、売上成長を伴った製品ポートフォリオの見直しを進めてまいります。
また、PS事業の販売体制一本化を目的として、2020年7月1日にPower Supply Technology(Hong Kong)Co.,Limitedを設立、TKR HONG KONG LIMITEDからPS事業の販売機能及び資産を譲受し、2021年1月より事業を開始しております。
一方、当事業は原材料・部材の外部調達を行っており、その価格の変動による影響を受ける可能性があります。そのため、在庫水準の適正管理を徹底するとともに、引き続き抜本的コスト構造改革を継続実行いたします。
開発、設計、試作から量産、市場投入までのさらなるスピードアップを図り、市場やお客様の新たなニーズに機動的に対応できる体制を構築し、事業全体の収益性向上を図ります。
翌連結会計年度も、感染症による国内外経済への影響は続く様相ですが、当連結会計年度に実行した基盤強化策の効果に加え、HS事業における請負比率拡大やEMS事業の新規量産立ち上げ、PS事業の殺菌・滅菌機器への電源製品需要拡大等を背景に、すべての事業セグメントで増収増益となる見込みです。
今後も不透明な事業環境が続く見込みですが、引き続き、抜本的コスト構造改革の実行及び売上成長につながるアクションプランの確実な実行を進め、経営基盤の安定化を図ります。
(単位:百万円)前連結会計年度当連結会計年度前年度比
HS事業売上高21,68519,135△11.8%
セグメント利益69387426.1%
EMS事業売上高27,04624,054△11.1%
セグメント利益33△29
PS事業売上高13,87911,666△15.9%
セグメント利益698327△53.2%
調整額セグメント利益△505△482
合計売上高62,61154,856△12.4%
セグメント利益920689△25.1%

設備投資及び減価償却費
当社グループは、グローバル市場における次の成長機会の創出及び事業競争力強化向け、戦略投資を行っています。
当連結会計年度の設備投資額は、前年度比57.0%減の1,116百万円となりました。これは、主にEMS事業において重点施策として進めているベトナム拠点およびメキシコ拠点における新規受注獲得を目的とした設備投資によるものです。
また、当連結会計年度の減価償却費は、前年度比13.0%増の1,299百万円となりました。セグメント別では、HS事業43百万円(前年度比13.6%減)、EMS事業932百万円(前年度比20.8%増)、PS事業317百万円(前年度比1.2%減)となりました。
翌連結会計年度以降の設備投資額(新規・拡充)は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により、事業環境が先行き不透明となっており、戦略投資を継続する方針を維持するものの、投資内容及び投資実行のタイミングについては見極めを行う予定です。そのうえで、既存・新規を問わず、実行していく投資案件については、投下資本利益率(ROI)の引き上げを行い、投資効果の早期発現をめざします。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループにおける営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動の資金需要、設備投資資金のための基本的財源となっております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ584百万円増加し4,741百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループのキャッシュ・フローの状況に影響を与える事項として、売上債権及びたな卸資産等による運転資金の変動、また、戦略投資の実行があります。
営業キャッシュ・フローにおいては、前連結会計年度は、税金等調整前当期純利益の計上や在庫水準の適正化によるたな卸資産の減少もあり運転資金が減少、減価償却費等によるプラス要因もあり、営業キャッシュ・フローは大きく改善しましたが、当連結会計年度は、税金等調整前当期純損失の計上となったこともあり、前連結会計年度に比べて873百万円減少しました。その結果、当連結会計年度の営業キャッシュ・フロー・マージンは1.2ポイント悪化し1.7%となりました。
今後も収益性の改善とともに適正な売掛債権、在庫水準管理に取り組む体制を強化し、営業キャッシュ・フロー・マージンの向上を図ってまいります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主にEMS事業における戦略投資の実行により、919百万円の支出(前年度は2,833百万円の支出)となり、財務活動によるキャッシュ・フローは、664百万円の収入(前年度は976百万円の収入)となりました。
今後も、運転資金の圧縮、投資の見極め及び投資効果の早期刈り取り等を行い、キャッシュマネジメントを強化してまいります。
(単位:百万円)前連結会計年度当連結会計年度
税金等調整前当期純利益686△310
減価償却費1,1691,266
運転資金の増減△8611,348
その他822△1,361
営業キャッシュ・フロー1,816943
固定資産の取得・売却△2,002△1,014
その他△83095
投資キャッシュ・フロー△2,833△919
フリーキャッシュ・フロー△1,01624
借入金の増減△4841,394
配当金支払 他1,461△729
財務キャッシュ・フロー976664
現金及び現金同等物期末残高4,1564,741

資本の財源及び資金の流動性の分析
当社の資金需要の主なものは運転資金、設備資金及び法人税等の支払です。これに対しては、営業キャッシュ・フローから産み出した内部資金の活用を優先し、内部資金では不足する場合に外部からの借入や資本性の資金調達で対応することを原則としています。
借入を行なう場合は、低コスト、長短のバランスの勘案、安定的な資金確保を方針としています。長短のバランスについては、運転資金等の短期資金需要については短期借入金で、設備資金やM&Aなどの長期資金需要については長期借入金で調達を行なうこととしています。
当連結会計年度においては、設備投資資金等の発生もあり1,217百万円の資金調達(純増額)を行っており、十分な借入枠を有しています。
なお、当連結会計年度末の手元流動性残高は、現金及び現金同等物4,741百万円となりました。
また、当連結会計年度において自己株式の取得を行っており、当社が保有している自己株式は133百万円増加しております。
グループにおける資金調達は当社(持株会社)に一元化し効率を高めるとともに、グループ会社の事業戦略に基づき、必要と判断した資金を取締役会で決議の上、貸付を行っています。当社グループは2019年3月期から戦略投資を実行しており、2022年3月期も投資の実行を計画しています。これにより、借入は増加する見込ですが、2023年3月期から新規事業の立ち上げなどによる投資の回収が始まり、借入金は減少に転じ、これによる自己資本比率の改善を見込んでいます。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりです。連結財務諸表の作成においては、過去の実績やその時点で合理的と考えられる情報に基づき、会計上の見積りを行っております。重要な資産の評価基準及び評価方法、重要な減価償却資産の減価償却の方法、重要な引当金の計上基準等において、継続性・網羅性・厳格性を重視して処理計上しており、繰延税金資産につきましては、将来の回収可能性を十分に検討したうえで計上しております。新型コロナウイルス感染症の影響等についても不確実性が大きくその見積りと実際の結果は異なる場合がありますが、現時点においては経営成績等に大きな影響を与えるものではないと判断しております。
特に、有形固定資産及び無形固定資産の減損損失については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。