有価証券報告書-第15期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/21 15:12
【資料】
PDFをみる
【項目】
173項目
(1)業績等の概要
①業績
当社グループは、日本国内及びアジア・パシフィック(APAC)地域で、人材派遣及び人材紹介を主力として幅広く人材関連サービスを提供しております。
当連結会計年度の国内の事業環境につきましては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再拡大の波がみられたものの年度末にかけて感染防止における行動制限が徐々に緩和され、経済活動の正常化に向けた動きが続きました。日本国内の有効求人倍率(季節調整値)は2023年3月には1.32倍となり、人材需要は継続して堅調な回復を見せております。APAC地域におきましても、一部の地域でCOVID-19の影響は残ったものの、総じて経済は回復基調にあります。
このような事業環境の下、全SBUで増収となった結果、当連結会計年度の連結売上高は1,223,967百万円(前連結会計年度比15.4%増)となりました。利益面では、主に企業の旺盛な採用需要に伴うCareer SBUの増収等により、全体の営業利益は53,061百万円(同10.2%増)となりました。また、経常利益は、53,693百万円(同8.5%増)となったものの国内外の子会社の減損等により、親会社株主に帰属する当期純利益は20,578百万円(同35.5%減)となりました。
セグメントの業績(セグメント間内部取引消去前)は次のとおりであります。
セグメントの名称前連結会計年度当連結会計年度増減
百万円百万円百万円%
Staffing売上高
営業利益
575,743
39,359
618,481
36,180
42,738
△3,179
7.4
△8.1
Career売上高
営業利益
75,279
7,264
104,467
15,532
29,187
8,268
38.8
113.8
Professional
Outsourcing
売上高
営業利益
121,109
6,934
134,085
7,518
12,976
583
10.7
8.4
Solution売上高
営業利益
11,169
△3,058
15,434
△3,837
4,265
△779
38.2
-
Asia Pacific売上高
営業利益
290,138
1,042
367,779
2,517
77,641
1,474
26.8
141.5
その他売上高
営業利益
13,755
△801
16,904
△708
3,148
93
22.9
-
調整額売上高
営業利益
△26,302
△2,598
△33,186
△4,140
△6,883
△1,542
-
-
連結損益計算書
計上額
売上高
営業利益
1,060,893
48,143
1,223,967
53,061
163,073
4,918
15.4
10.2

(注)上記の売上高のうち、調整額及び連結損益計算書計上額に記載の売上高以外の売上高については、セグメント間内部取引消去前の金額であります。
a. Staffing SBU
本セグメントは、国内で事務領域を中心に幅広い業種に対応した人材派遣事業に加え、受託請負のBPO事業、事務職を中心とした人材紹介事業等を展開しています。
当連結会計年度における売上高は、618,481百万円(前連結会計年度比7.4%増)、営業利益は、36,180百万円(同8.1%減)となりました。
売上高は、派遣稼働者数が前連結会計年度比で増加し事務派遣領域が増収したことに加え、BPO領域において需要が堅調に推移した結果、増収となりました。営業利益は、増収効果があったものの、派遣スタッフの有給休暇取得の増加や社会保険料の増加に加え、公共保健にかかる一時的な案件の減少による影響等により減益となりました。
b. Career SBU
本セグメントは、顧客企業の正社員の中途採用活動を支援する人材紹介事業、求人広告事業等を展開しています。
当連結会計年度における売上高は、104,467百万円(前連結会計年度比38.8%増)、営業利益は、15,532百万円(同113.8%増)となりました。
売上高は、人材紹介事業及び求人広告事業において、法人需要の順調な推移の結果増収となりました。営業利益は、広告費、採用費用の増加はみられるものの大幅な増益となりました。
c. Professional Outsourcing SBU
本セグメントは、IT領域やエンジニアリング領域の製造・開発受託請負事業や技術者を専門とした人材派遣事業を展開しています。
当連結会計年度における売上高は、134,085百万円(前連結会計年度比10.7%増)となり、営業利益は、7,518百万円(同8.4%増)となりました。
売上高は、エンジニアリング領域において、製造業で開発等の需要が伸長し、さらにIT領域の堅調な成長
の結果、増収となりました。営業利益は、エンジニアの採用強化によるコストの増加はあるものの、増収効
果により増益となりました。
d. Solution SBU
本セグメントは、人材採用、人材管理等のデジタルソリューションサービスの提供やインキュベーションプログラムを通じた新規事業の創出を行っております。
当連結会計年度における売上高は、15,434百万円(前連結会計年度比38.2%増)、営業損失は、3,837百万円(前連結会計年度は営業損失3,058百万円)となりました。
売上高は、企業の採用に対する需要の伸長や販売促進の取り組みが奏功したこと等により、転職アプリ事業及びクラウドPOS事業が継続して成長した結果、増収となりました。利益面は、将来の成長に向けた投資拡充によるコストの増加の結果、営業損失となりました。
e. Asia Pacific SBU
本セグメントは、アジア地域で人材派遣事業及び人材紹介事業、豪州においてはStaffing事業及びMaintenance事業を展開しております。(アジア地域では主にPERSOLKELLY、豪州では主にProgrammedのブランドで事業を運営しております。)
当連結会計年度における売上高は、367,779百万円(前連結会計年度比26.8%増)、営業利益は、2,517百万円(同141.5%増)となりました。
売上高は、多くの事業展開地域でCOVID-19の感染拡大による影響からの回復や成長が進んだことに加え、為替影響により増収となりました。営業利益は、増収効果により増益となりました。
なお、当社及び国内連結子会社において、当連結会計年度より、資産除去債務の会計処理等会計方針の変更を行っており、遡及処理の内容を反映させた数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (会計方針の変更)及び(会計上の見積りの変更)」をご参照ください。
②生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは、Staffing、Career、Professional Outsourcing、Solution、Asia Pacific等のセグメント区分にて国内及びAPAC地域において人材関連事業を行っており、提供するサービスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、省略しております。
b.受注実績
生産実績の記載と同様に、受注状況の記載に馴染まないため省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
売上高
(百万円)
構成比
(%)
前年同期比増減
(%)
Staffing613,94350.27.3
Career102,2108.438.5
Professional Outsourcing118,4059.79.7
Solution14,7191.240.2
Asia Pacific367,77930.026.8
全社及びその他の事業6,9070.611.8
合 計1,223,967100.015.4

(注)セグメント間の取引は、相殺消去しております。
(2)財政状態の分析
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ17,048百万円増加し、442,159百万円となりました。流動資産は17,384百万円増加し、304,281百万円となりました。これは主に、現金及び預金が7,788百万円減少した一方、売掛金が10,806百万円及び契約資産が7,292百万円増加したことによるものであります。固定資産は336百万円減少し、137,877百万円となりました。これは主に、繰延税金資産が3,416百万円及び投資有価証券が3,393百万円増加した一方、のれんが9,329百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ20,683百万円増加し、241,426百万円となりました。流動負債は27,527百万円増加し、195,421百万円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が11,243百万円減少した一方、短期借入金が11,199百万円、未払金が10,121百万円及び1年内償還予定の社債が10,000百万円増加したことによるものであります。固定負債は6,844百万円減少し、46,005百万円となりました。これは主に社債が10,000百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,634百万円減少し、200,732百万円となりました。これは主に、剰余金の配当9,971百万円の支払、親会社株主に帰属する当期純利益20,578百万円の計上等により、利益剰余金が10,607百万円増加、為替換算調整勘定が6,669百万円増加した一方、PERSOL Asia Pacific Pte. Ltd.がPERSOLKELLY PTE. LTD.の株式を追加取得したこと等により、非支配株主持分が6,103百万円及び資本剰余金が5,712百万円減少したことによるものであります。
以上の結果、財務指標としては、流動比率が前連結会計年度末の170.9%から155.7%に下降し、自己資本比率が前連結会計年度末の43.1%から42.0%に下降いたしました。
前連結会計年度当連結会計年度
総資産当期純利益率(ROA)8.6%5.3%
自己資本当期純利益率(ROE)18.9%11.2%
売上高営業利益率4.5%4.3%
売上高経常利益率4.7%4.4%
流動比率170.9%155.7%
固定比率75.5%74.3%
自己資本比率43.1%42.0%
ROIC14.2%15.3%
D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)0.280.28
Net cash/EBITDA倍率0.820.62
総資産425,110百万円442,159百万円
自己資本183,048百万円185,517百万円
投下資本269,376百万円273,110百万円
現金及び現金同等物の期末残高106,558百万円99,658百万円

※当社及び国内連結子会社において、当連結会計年度より、資産除去債務の会計処理を変更しました。これに伴い、前連結会計年度については、当該会計方針を遡って適用した後の指標等となっております。
(3)経営成績の分析
当連結会計年度における売上高は、1,223,967百万円と前連結会計年度に比べ163,073百万円の増収となりました。利益面では、売上総利益において、282,643百万円と前連結会計年度に比べ41,806百万円の増益、営業利益において、53,061百万円と前連結会計年度に比べ4,918百万円の増益、経常利益において、53,693百万円と前連結会計年度に比べ4,208百万円の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益においては、国内外の子会社の減損損失計上等により、20,578百万円と前連結会計年度に比べ11,327百万円の減益となりました。
① 売上高
売上高は、主力のStaffing SBUが堅調に推移したことに加え、全てのSBUで売上成長を実現した結果、全体として15.4%の増収となりました。
② 売上総利益
売上総利益は、企業からの強い採用需要を受け主にCareer SBUが大きく伸長し、全体として17.4%の増益となりました。
③ 営業利益
将来の競争力強化に向けた広告宣伝費や人件費が前連結会計年度に比べ大きく増加しましたが、売上総利益が順調に推移した結果、全体の営業利益は10.2%の増益となりました。
④ 経常利益
経常利益は、営業利益の増加により8.5%の増益となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が増益であったものの、国内外の子会社の減損損失を計上したこと等により、△35.5%の減益となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ6,899百万円減少し、99,658百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度より2,103百万円増加し、52,796百万円となりました。これは主に、法人税等の支払額が24,640百万円、売上債権の増加額が12,611百万円となった一方、税金等調整前当期純利益が40,716百万円、減価償却費が16,059百万円、減損損失が12,239百万円なったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度より15,446百万円増加し、22,504百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が10,108百万円、有形固定資産の取得による支出が3,331百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が3,321百万円となったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度より17,123百万円増加し、38,268百万円となりました。これは主に、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出が13,764百万円、自己株式の取得による支出が9,999百万円、配当金の支払額が9,969百万円となったことによるものであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の主な運転資金需要は、派遣スタッフ及び従業員に対する給与支払いであります。事業構造上、現金及び現金同等物が資産の中で占める割合が高くなっております。短期運転資金は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保する基本方針を踏まえて、事業収益から得られる自己資金を基本としており、特に多額の資金が必要となる企業買収等については、安定した財務基盤を活かし、銀行借入、社債発行など最適な資金調達手段を通じて行うことを基本としております。
なお、当連結会計年度における現金及び預金の残高は99,757百万円、有利子負債の残高は、51,539百万円となっております。また、有利子負債の残高のうち、シンジケートローンを含む協調融資による借入額は、総額30,000百万円となっております。
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(8)経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、2024年3月期を初年度とする3カ年の「中期経営計画2026」を2023年5月に発表しました。“はたらくWell-being”創造カンパニーとして、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現を目指してまいります。
詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

(参考)資本効率性を重視する経営に向けた取り組み
当社グループは、資本効率性の指標として、主にROICとROEをモニタリングしております。各事業領域において、それぞれのROIC(資本効率性)を考慮し、事業の運営にあたっております。
2023年3月期のROICは、15.3%となり、前年度と比較し上昇しました。要因はCareer SBUで大幅な営業利益の増益を実現したことに加えてAsia pacific SBUにおいて収益性の改善が進んだことによるものです。
2023年3月期のROEにつきましては、国内外の子会社で減損損失を計上したことから11.2%と前年度比較で低下しました。しかし、当該影響を除けば17.2%と高い水準を維持しております。
■ ROIC、ROEの推移(日本基準)
0102010_010.jpgROIC = のれん等償却前税引後営業利益 ÷ 投下資本(事業資産-事業負債)
(2023年3月期)
のれん等償却前税引後営業利益 418億円
投下資本 2,731億円(事業資産4,629億円 事業負債1,898億円)
(2022年3月期)
のれん等償却前税引後営業利益 381億円
投下資本 2,693億円(事業資産4,386億円 事業負債1,692億円)
ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本
(2023年3月期)
親会社株主に帰属する当期純利益 205億円(国内外子会社の減損損失約120億円含む)
自己資本 1,855億円
(2022年3月期)
親会社株主に帰属する当期純利益 319億円
自己資本 1,830億円
なお、中期経営計画2026(2024年3月期~2026年3月期)では、グループ全体でROICおよびROEの目標値を設定しております。詳細は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。