有価証券報告書-第9期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/31 11:02
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【項目】
146項目
(経営成績等の状況の概要)
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
当連結会計年度におきましては、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、開発リソースの戦略的配置等、経営効率向上に注力しております。
その結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は6,373,808千円(前年同期比18.4%増)、営業利益はCandera GmbHののれん等の償却費366,606千円等がありましたが、クリエイターサポート事業が好調に推移したことにより773,273千円(前年同期比219.6%増)となりました。
また、経常利益につきましては、為替差損22,139千円を計上したこと等により、747,669千円の経常利益(前年同期比224.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失につきましては、のれんの減損損失1,065,863千円を特別損失として計上したこと、税金等調整により、475,407千円の親会社株主に帰属する当期純損失(前年同期は241,469千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
事業別セグメントにつきましては、以下のとおりであります。
<クリエイターサポート事業>当連結会計年度においては、子会社の株式会社セルシスが提供する、マンガ・イラスト・アニメ制作ソフトウェア「CLIP STUDIO PAINT」シリーズの、2012年発売開始からの全世界における累計出荷本数が、1,000万本を超えました。なお、全体の60%以上が日本国外向けに出荷されています。
同社のマンガ・イラスト・アニメ制作ソフトウェア「CLIP STUDIO PAINT」において、iPad版及びiPhone版で従来より提供していたサブスクリプションモデルの課金システムを、新たにWindows及びMacOSといったPC環境でも2020年4月より提供を開始し、サービスの継続性を担保しながら収益化を図る環境が整いました。
8月には、モバイル製品の世界的ブランドであるGalaxyシリーズに対応した「CLIP STUDIO PAINT for Galaxy」を全世界同時にGalaxy Storeで提供開始し、併せて、前作の2.5倍の事前予約数を集め好評のサムスン社のフラッグシップAndroidタブレットである、Galaxy TabS7シリーズに、「CLIP STUDIO PAINT」が全世界でプリインストールされて出荷が開始されました。Galaxyに提供する「CLIP STUDIO PAINT」は、いずれもサブスクリプション課金モデルを採用しております。これを受けまして、Galaxy及びGalaxyにペン技術を提供する株式会社ワコムと共同で、「国際イラストレーションコンテスト2020」を開催しております。
また、東映アニメーション株式会社のデジタル作画ソフトウェアとして「CLIP STUDIO PAINT for iPad」が採用されました。併せて、iPad版「CLIP STUDIO PAINT」の企業向けボリュームライセンスプランの提供も開始しています。
さらに、12月には「CLIP STUDIO PAINT」のAndroid版をサブスクリプション課金モデルを採用してリリース、ChromeOSにも対応しており教育分野等で利用が進むChromebookでも利用可能となり、本格的なグラフィックコンテンツの制作をあらゆるデバイスで行えるようになりました。クラウド経由で作品データを別のデバイスと共有することも可能なため、いつでも気軽に、自由なスタイルで創作活動を行える環境を実現しました。Android版リリースに併せ、利用者拡大及びブランド認知率向上を目的に、クリスマスシーズンにタレントの中川翔子さんなどを起用して国内外で大規模なプロモーションをインターネット上で実施しております。
この他、海外では8月に、米国カリフォルニア州教育局を通じ、同州の1,600の高等学校、200万人の学生・教員の希望者全員に、「CLIP STUDIO PAINT DEBUT 6か月版」を無償で提供する等、利用者拡大に向けた施策を実施しております。国内では11月に、大磯町(神奈川県)、株式会社ワコム、株式会社セルシスと株式会社アイネットの4者間で、大磯町の初等、中等教育の質のさらなる向上を目指す「ニューノーマル・デジタル・クリエイティブ教育」を推進するため、相互連携を強化するパートナーシップ協定を締結しました。
なお、電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」のメジャーバージョンアップも行いカスタマイズ性が向上、サービス内容に合わせた機能追加をサービス事業者側で自由に行えることによりニーズに合わせた利用が可能となりました。また、テキストコンテンツ対応の強化も行い、画面サイズに合わせた最適な表示や、配信ファイルの軽量化を実現しました。さらに、新規に開発した電子書籍制作ツール「CLIP STUDIO LAYOUT」もリリースし、拡大を続ける電子書籍マーケットに向け、継続的な投資を行いました。
以上の結果、売上高は4,806,760千円(前年同期比32.9%増)、営業利益は1,463,087千円(前年同期比111.3%増)となりました。
UI/UX事業では、自動車(四輪・二輪)関連分野を筆頭に、車載向けソフトウェア開発プラットフォーム「CGI Studio」(シージーアイスタジオ)、及び、HMIの基盤であるUIオーサリングソフトウェア群「exbeans UI Conductor」(エックスビーンズユーアイコンダクター)を中心とする自社IP製品の開発に注力しております。
UI/UX事業の主要な取引先である自動車業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響による世界規模での生産台数の減少や、設備投資の低下の影響により厳しい状況となりました。完成車の生産もメーカーにより回復傾向にあるものの、自動車業界における新たな設備投資には慎重な姿勢が見られ依然として厳しい状況が続くものと予想されます。このような状況の中、当社グループでは、UI/UX事業の一層の強化を目的に技術開発、新規顧客開拓を推進しております。
当連結会計年度では、CGI Studio 3.9をリリース、革新的なAI Importerを機能追加しユーザビリティが向上しております。また、世界最大のタイプファウンドリー Monotype社のiType®をCGI Studioに実装しました。
この他、「CGI Studio」が、Cypress社の車載MCU「TraveoⅡ」の最新シリーズである「TraveoⅡグラフィック MCU」において、マルチコアのような優れたデバイスの全てで利用可能なレンダリング処理を正式にサポートしました。11月には、Candera GmbHとLGエレクトロニクス株式会社が、車載用のヘッドアップディスプレイ(HUD)やセンターインフォメーションディスプレイ(CID)等、様々なディスプレイをサポートする革新的な拡張現実(AR)ソリューションを共同開発しました。
イベントでは、欧州最大級の組込み関連技術の国際展示会「Embedded World 2020」に出展し、組込みHMI設計の分野で革新的なHMIソリューションとテクノロジーを組み合わせ、自動車向けの統合コックピットソリューションや、新たに開発された家電ソリューションの「スマートオーブンUI」を展示、中国・上海で開催された「electronica China 2020」にて、富士通エレクトロニクス株式会社が、ソシオネクスト社製のハードウェアに実装した「CGI Studio」のデモ展示を行いました。
以上の結果、売上高は1,587,626千円(前年同期比11.3%減)、営業損失はのれん等の償却費366,606千円を含め、812,242千円(前年同期は436,225千円の営業損失)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,014,902千円増加し、2,895,350千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,820,864千円(前連結会計年度は988,658千円の獲得)となりました。これは
主として、税金等調整前当期純損失317,574千円の計上や売上債権の増加額10,428千円等の資金の減少要因があったものの、減価償却費の計上808,665千円、のれん償却額の計上228,399千円、減損損失1,065,863千円の計上等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、778,846千円(前連結会計年度は2,425,091千円の使用)となりました。これは
主として、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出729,233千円、有形固定資産の取得による支出48,422千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、46,282千円(前連結会計年度は728,621千円の獲得)となりました。これは主として、株式の発行による収入4,002千円等があったものの、配当金の支払額48,902千円等があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、2,895,350千円となりました。
(3) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
クリエイターサポート事業2,406,307121.4
UI/UX事業1,400,170122.2
合計3,806,478121.7

(注)1. 金額は、当期製造費用によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称仕入高(千円)前年同期比(%)
クリエイターサポート事業93,55490.2
UI/UX事業71,627
合計165,181159.2

(注)1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 受注実績
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
クリエイターサポート事業4,806,760132.9
UI/UX事業1,587,62688.7
調整額△20,579
合計6,373,808118.4

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.調整額△20,579千円は、主に内部取引の消去によるものであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
株式会社アムタス690,48412.8753,95711.8

4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、たな卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて172,883千円減少し5,638,279千円となりました。この主な要因は、現金及び預金が1,018,504千円、ソフトウエアが125,365千円増加した一方で、減損損失の計上等によりのれんが1,294,262千円、償却により顧客関連資産が27,609千円、技術資産が102,311千円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて335,237千円増加し1,617,602千円となりました。この主な要因は、未払費用が29,804千円、繰延税金負債が32,913千円減少した一方で未払金が77,893千円、前受金が146,074千円、未払法人税等が178,588千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて508,121千円減少し4,020,676千円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等により利益剰余金が524,309千円減少したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、71.2%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの計画の達成状況は以下のとおりです。
指標計画数値実績計画比
連結売上高5,826,000千円6,373,808千円547,808千円増
(9.4%増)
連結営業利益304,000千円773,273千円469,273千円増
(154.4%増)

当連結会計年度における連結売上高は計画比547,808千円増(9.4%増)となりました。また、連結営業利益は計画比469,273千円増(154.4%増)となりました。
2020年12月期では、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した環境下において、クリエイターサポート事業を展開している当社子会社株式会社セルシスが提供する、デジタル技術でコンテンツの制作から閲覧までを支援する製品・ソリューションへの需要が全世界で高まった結果、国内・海外双方とも販売が好調に推移し、会社予想を上回りました。利益面につきましては、上記のとおり、売上が好調に推移した他、「CLIP STUDIO PAINT」のiPad版及びiPhone版で従来から提供していたサブスクリプションモデルの課金システムを、新たにWindows及びMacOSといったPC環境向けにも第2四半期より提供を開始したこと等、収益性の高い売上が計上されたことにより、会社予想を上回りました。
一方、UI/UX事業では、同事業の主要な取引先である自動車業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響による世界規模での生産台数の減少や、設備投資の低下の影響により厳しい状況となりました。完成車の生産もメーカーにより回復傾向にあるものの、今後も自動車業界における新たな設備投資には慎重な姿勢が見られ依然として厳しい状況が続くものと予想されます。こういった状況をふまえ、当連結会計年度において、同事業に係るのれんの減損損失1,065,863千円を特別損失として計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は475,407千円となりました。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては新株予約権の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,895,350千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
当連結会計年度におきましては、連結売上高は目標5,826,000千円に対して6,373,808千円の実績となり、目標に対して547,808千円上回りました。また、連結営業利益は目標304,000千円に対して773,273千円の実績となり、目標に対して469,273千円上回りました。当初見込んでいたクリエイターサポート事業が堅調に推移しましたが、一方UI/UXで、新型コロナウイルス感染症の影響による世界規模での生産台数の減少や、設備投資の低下の影響により厳しい状況となったことにより、同事業では売上、営業利益とも2019年12月期を下回る結果となりました。完成車の生産もメーカーにより回復傾向にあるものの、自動車業界における新たな設備投資には慎重な姿勢が見られ依然として厳しい状況が続き、同業界の回復には時間を要するものと予想されます。 当連結会計年度において、同事業に係るのれんの減損損失1,065,863千円を特別損失として計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は475,407円となりましたが、本件特別損失は一過性のものであり、双方の事業状況を勘案しますと、当社グループ全体としては順調に推移しております。
今後も当指標を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。