有価証券報告書-第8期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当期の経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、消費増税や気候変動の影響等により企業の景況感が一部停滞しましたが、各種政策の効果もあり個人消費や設備投資が上向き、景気は緩やかな回復基調となりました。一方で、米中貿易摩擦の長期化による国際経済の不確実性や英国のEU離脱問題、中東地域の不安定な地政学リスクが与える影響の懸念等もあり、景気の先行きは依然不透明な状態が続きました。
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
当連結会計年度におきましては、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、開発リソースの戦略的配置等、経営効率向上に注力しております。
その結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、Candera GmbHの子会社化もあり5,381,272千円(前年同期比42.0%増)となりましたが、Candera GmbHののれん償却費等350,700千円が発生したことにより、営業利益は241,957千円(前年同期比35.5%減)となりました。
また、経常利益につきましては、支払利息4,910千円、為替差損2,906千円を計上したこと等により、230,167千円の経常利益(前年同期比35.6%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、顧客関連資産等の償却費に係る法人税等調整額が発生したこと等により、241,469千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比27.7%減)となりました。
事業別セグメントにつきましては、以下のとおりであります。
<クリエイターサポート事業>当連結会計年度においては、子会社株式会社セルシス(以下「セルシス」という)が提供するマンガ・イラスト・アニメ制作ソフトウェア「CLIP STUDIO PAINT」シリーズのiPad対応等により、2012年発売開始からの全世界における累計出荷本数が600万本を超えました。
また、「CLIP STUDIO PAINT」シリーズが「BCN AWARD 2019」 のグラフィックソフト部門において、年間販売台数1位のベンダーとして表彰されました。セルシスの同部門での受賞は、2年ぶり4度目となりました。
この他、創作ノウハウを共有できるサービス「CLIP STUDIO TIPS」のリニューアルにあわせて、従来日本語で400種ほど提供していた創作をサポートする「使い方コンテンツ」を、英語、中国語(繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の6言語での翻訳を完了して提供を開始する等、海外向けサービスの充実を図っております。
この様なワールドワイドに向けた施策により、セルシスが主催した国際コミック・マンガスクールコンテストにおいては、「贈りもの」をテーマにしたイラスト、マンガ作品を全世界から広く募集し、67の国・地域の639校からの参加校登録と合計1,400点を超える力のこもったイラスト、マンガが集まりました。
ワールドワイドに向けた施策は、電子書籍ソリューション「CLIP STUDIO READER」でも行いました。近年、影響力を増しつつあるWEBTOON作品(スマートフォンやパソコンでの閲覧向けに描かれた縦長画像形式の作品)の配信に対応し、国内電子書籍市場でトップクラスの利用者数を誇る電子書籍配信サービス「めちゃコミック」を運営する株式会社アムタスのサービス等にも採用されております。また、株式会社講談社のコミックが「CLIP STUDIO READER」の縦スクロール・コマ表示での配信を開始しました。
「CLIP STUDIO PAINT」の最新バージョンでは、機械学習(AI)の技術を活用した「ポーズスキャナー」を搭載しました。これにより、ポーズスキャナーを使用して写真に写っている人物のポーズを読み取り、3Dデッサン人形や 3Dキャラクター素材に適用することが可能となりました。今後も、機械学習を活用した機能の強化に積極的に取り組んでまいります。
また、全世界のクリエイター向けペンタブレット分野で定評のある株式会社ワコムとグローバルでのパートナーシップを強化し、イラスト、マンガ、ファインアートに適した「Wacom Cintiq」シリーズの2機種に、「CLIP STUDIO PAINT PRO 12か月ライセンス版」をバンドル提供するキャンペーンを開始しました。
さらに、「CLIP STUDIO PAINT」のすべての機能を搭載し、Windows / macOS / iPad 版と同じ機能が利用できる、iPhone版の「CLIP STUDIO PAINT」を全世界同時にリリースしました。新たに開発したスマートフォンに最適化したUIを搭載し、本格的なグラフィックコンテンツの制作環境を、iPhone上で実現しており、App Store 無料App エンターテインメントカテゴリランキングで、初登場1位を獲得しました。iPhone版は、既に2007年にリリースされ、App Store エンターテインメントカテゴリトップセールスランキングで1位を継続しているiPad版と同様に、サブスクリプションモデルの課金システムを採用しており、サービスの継続性を担保しながら収益化を図ってまいります。
今後も、創作から流通・閲覧に関わる全ての分野で、クリエイター向けの施策に積極的に取り組み、業容拡大に努めてまいります。
以上の結果、売上高は3,617,277千円(前年同期比22.3%増)、営業利益は692,569千円(前年同期比46.7%増)となりました。
UI/UX事業では、自動車(四輪・二輪)関連分野を筆頭に、車載向けソフトウェア開発プラットフォーム「CGI Studio」(シージーアイスタジオ)、及び、HMIの基盤であるUIオーサリングソフトウェア群「exbeans UI Conductor」(エックスビーンズユーアイコンダクター)を中心とする自社IP製品の開発に注力しております。
当連結会計年度では、UI/UX事業における開発力と販売力の強化を目的として、2019年1月、オーストリアの現地法人Candera GmbHの全株式を取得し子会社化いたしました。
Candera GmbHは、独自の技術で開発し、欧州の大手自動車メーカーを中心に多数の採用実績がある製品「CGI Studio」を中心に顧客に提供しており、HMI開発及び組込みソフトウェアの分野におけるソフトウェアサービスの提供とCGI Studioの環境で、自動車のメータークラスター周辺、ヘッド・アップ・ディスプレイ(HuD)やカーナビゲーションを始めとしたIVI SYSTEM等を開発されるお客様をサポートしてまいります。
なお、Candera GmbHの日本及びアジア地区における営業、開発及びサポートを目的とした子会社「株式会社カンデラジャパン」を2019年6月に設立し、当連結会計年度から活動を開始しております。
さらに、Candera GmbHは、アメリカにおける高級車の販売数増加と、自動車HMI機能に対する顧客のニーズの高まりや、家電、RV車、農業部門等の業種における需要傾向を受け、北アメリカのデトロイト地域に、Candera America Inc.(アートスパークホールディングス株式会社の孫会社)を2019年12月に設立いたしました。これにより、欧州・日本・北米といった、世界の主要な自動車開発地域に拠点を設け、グローバルに活動を行う基盤が整いました。
製品では、Candera GmbHが2019年10月に「CGI Studio」の最新バージョン3.8を公開しております。
なお、ドイツ大手トラックメーカーMANグループのMAN CitE Truckのプロジェクトパートナーに選ばれ、MAN Truckのフルデジタルのメイン制御パネルに「CGI Studio」が実装されております。
イベントでは、ドイツのベルリンで開催された「CAR HMI Europe」や、フランスのサン=カンタン・アン・イブリーヌで開催された、自動車関連業界においてアプリケーションを使用するテクノロジープロバイダーや業者向けのイベント「Automotive Connection 2019」に出展、中国の上海で開催された「第2回中国自動車HMIとインテリジェント コックピットサミット」に協賛・出展し、包括的HMIソリューション「CLUSTER + IVI SYSTEM」を始め、Cypress社製ハードウェアに「CGI Studio」を組込んだメータークラスターや、「CGI Studio」を組込んだAndroidOS上で作動するカーナビゲーションのデモ展示を行い、自動車及び組込みHMI設計の最新技術を紹介しました。
さらに、東京ビッグサイトにて開催された「第12回 オートモーティブワールド」に出展し、自社開発製品「Candera Link」のデモを初公開しました。「Candera Link」は、プラットフォームに依存しないデータとサービスを、複数のクライアント(IVI SYSTEM、CLUSTER、AR HuD、スマートフォン等)で共有することを可能にする、リモート・レンダリング・サービスです。
この他では、「exbeans UI Conductor」が、プリンター分野において、セイコーエプソン株式会社のプリンターへの搭載台数が累計で600万台を超えました。
また、2015年8月より大手OEMの車載機器向けサービスソフトウェアに採用されている当社製品は、北米市場を中心とした出荷台数が累計で430万台を超えております。今後も UI/UX事業の業容拡大に向けた施策を積極的に展開してまいります。
以上の結果、売上高は1,790,369千円(前年同期比102.1%増)、営業損失はのれん償却分等350,700千円を含め、436,225千円(前年同期は67,423千円の営業損失)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ732,266千円減少し、1,880,448千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、988,658千円(前連結会計年度は1,007,074千円の獲得)となりました。これは主として、売上債権の増加額5,237千円や法人税等の支払額155,796千円等があったものの、税金等調整前当期純利益232,475千円の計上や減価償却費の計上681,265千円、のれん償却額228,399千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,425,091千円(前連結会計年度は550,631千円の使用)となりました。これは主として、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出508,056千円、有形固定資産の取得による支出207,099千円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得に伴う支出1,777,691千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、728,621千円(前連結会計年度は250,865千円の使用)となりました。これは主として、短期借入金の返済による支出1,550,000千円や長期借入金の返済による支出43,124千円等があったものの短期借入による収入1,500,000千円や株式の発行による収入855,215千円等があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、1,880,448千円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 金額は、当期製造費用によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 受注実績
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
(4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.調整額△26,374千円は、主に内部取引の消去によるものであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、たな卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,456,601千円増加し5,811,162千円となりました。この主な要因は、現金及び預金が794,839千円、仕掛品が88,426千円減少した一方で、オーストリアの現地法人Candera GmbHの全株式を取得し子会社化したことに伴い、のれんが1,294,262千円、顧客関連資産が117,341千円、技術資産が434,822千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて404,600千円増加し1,282,364千円となりました。この主な要因は、短期借入金が50,000千円、未払金が65,528千円減少した一方で未払費用が129,009千円、前受金が159,786千円、役員退職慰労引当金が40,000千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,052,000千円増加し4,528,797千円となりました。この主な要因は、株式の発行等により資本金が427,687千円、資本剰余金が427,687千円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が207,489千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、77.8%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの計画の達成状況は以下の通りです。
当連結会計年度における連結売上高は計画比207,272千円増(4.0%増)となりました。また、連結営業利益は計画比14,043千円増(5.5%減)となりました。これは、売上高はクリエイターサポート事業における海外での販売が好調に推移しましたが、子会社の買収に伴うのれん等の費用が確定した結果、当初よりのれんの等が約205,000千円増加し、その結果のれん等の償却費も約31,000円増加したことによるものであります。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては新株予約権の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,880,448千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
当連結会計年度におきましては、連結売上高は目標5,174,000千円に対して5,381,272千円の実績となり、目標に対して207,272千円上回りました。また、連結営業利益は目標256,000千円に対して241,957千円の実績となり、目標に対して14,043千円下回りましたが、要因として、当初見込んでいた海外子会社の買収により発生したのれん等の費用が205,000千円増加したことにより、当期の償却費も31,000千円増加したものであり、当社グループ全体としては順調に推移しております。
今後も当指標を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。
(1) 業績
当期の経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、消費増税や気候変動の影響等により企業の景況感が一部停滞しましたが、各種政策の効果もあり個人消費や設備投資が上向き、景気は緩やかな回復基調となりました。一方で、米中貿易摩擦の長期化による国際経済の不確実性や英国のEU離脱問題、中東地域の不安定な地政学リスクが与える影響の懸念等もあり、景気の先行きは依然不透明な状態が続きました。
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
当連結会計年度におきましては、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、開発リソースの戦略的配置等、経営効率向上に注力しております。
その結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、Candera GmbHの子会社化もあり5,381,272千円(前年同期比42.0%増)となりましたが、Candera GmbHののれん償却費等350,700千円が発生したことにより、営業利益は241,957千円(前年同期比35.5%減)となりました。
また、経常利益につきましては、支払利息4,910千円、為替差損2,906千円を計上したこと等により、230,167千円の経常利益(前年同期比35.6%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、顧客関連資産等の償却費に係る法人税等調整額が発生したこと等により、241,469千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比27.7%減)となりました。
事業別セグメントにつきましては、以下のとおりであります。
<クリエイターサポート事業>当連結会計年度においては、子会社株式会社セルシス(以下「セルシス」という)が提供するマンガ・イラスト・アニメ制作ソフトウェア「CLIP STUDIO PAINT」シリーズのiPad対応等により、2012年発売開始からの全世界における累計出荷本数が600万本を超えました。
また、「CLIP STUDIO PAINT」シリーズが「BCN AWARD 2019」 のグラフィックソフト部門において、年間販売台数1位のベンダーとして表彰されました。セルシスの同部門での受賞は、2年ぶり4度目となりました。
この他、創作ノウハウを共有できるサービス「CLIP STUDIO TIPS」のリニューアルにあわせて、従来日本語で400種ほど提供していた創作をサポートする「使い方コンテンツ」を、英語、中国語(繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の6言語での翻訳を完了して提供を開始する等、海外向けサービスの充実を図っております。
この様なワールドワイドに向けた施策により、セルシスが主催した国際コミック・マンガスクールコンテストにおいては、「贈りもの」をテーマにしたイラスト、マンガ作品を全世界から広く募集し、67の国・地域の639校からの参加校登録と合計1,400点を超える力のこもったイラスト、マンガが集まりました。
ワールドワイドに向けた施策は、電子書籍ソリューション「CLIP STUDIO READER」でも行いました。近年、影響力を増しつつあるWEBTOON作品(スマートフォンやパソコンでの閲覧向けに描かれた縦長画像形式の作品)の配信に対応し、国内電子書籍市場でトップクラスの利用者数を誇る電子書籍配信サービス「めちゃコミック」を運営する株式会社アムタスのサービス等にも採用されております。また、株式会社講談社のコミックが「CLIP STUDIO READER」の縦スクロール・コマ表示での配信を開始しました。
「CLIP STUDIO PAINT」の最新バージョンでは、機械学習(AI)の技術を活用した「ポーズスキャナー」を搭載しました。これにより、ポーズスキャナーを使用して写真に写っている人物のポーズを読み取り、3Dデッサン人形や 3Dキャラクター素材に適用することが可能となりました。今後も、機械学習を活用した機能の強化に積極的に取り組んでまいります。
また、全世界のクリエイター向けペンタブレット分野で定評のある株式会社ワコムとグローバルでのパートナーシップを強化し、イラスト、マンガ、ファインアートに適した「Wacom Cintiq」シリーズの2機種に、「CLIP STUDIO PAINT PRO 12か月ライセンス版」をバンドル提供するキャンペーンを開始しました。
さらに、「CLIP STUDIO PAINT」のすべての機能を搭載し、Windows / macOS / iPad 版と同じ機能が利用できる、iPhone版の「CLIP STUDIO PAINT」を全世界同時にリリースしました。新たに開発したスマートフォンに最適化したUIを搭載し、本格的なグラフィックコンテンツの制作環境を、iPhone上で実現しており、App Store 無料App エンターテインメントカテゴリランキングで、初登場1位を獲得しました。iPhone版は、既に2007年にリリースされ、App Store エンターテインメントカテゴリトップセールスランキングで1位を継続しているiPad版と同様に、サブスクリプションモデルの課金システムを採用しており、サービスの継続性を担保しながら収益化を図ってまいります。
今後も、創作から流通・閲覧に関わる全ての分野で、クリエイター向けの施策に積極的に取り組み、業容拡大に努めてまいります。
以上の結果、売上高は3,617,277千円(前年同期比22.3%増)、営業利益は692,569千円(前年同期比46.7%増)となりました。
当連結会計年度では、UI/UX事業における開発力と販売力の強化を目的として、2019年1月、オーストリアの現地法人Candera GmbHの全株式を取得し子会社化いたしました。
Candera GmbHは、独自の技術で開発し、欧州の大手自動車メーカーを中心に多数の採用実績がある製品「CGI Studio」を中心に顧客に提供しており、HMI開発及び組込みソフトウェアの分野におけるソフトウェアサービスの提供とCGI Studioの環境で、自動車のメータークラスター周辺、ヘッド・アップ・ディスプレイ(HuD)やカーナビゲーションを始めとしたIVI SYSTEM等を開発されるお客様をサポートしてまいります。
なお、Candera GmbHの日本及びアジア地区における営業、開発及びサポートを目的とした子会社「株式会社カンデラジャパン」を2019年6月に設立し、当連結会計年度から活動を開始しております。
さらに、Candera GmbHは、アメリカにおける高級車の販売数増加と、自動車HMI機能に対する顧客のニーズの高まりや、家電、RV車、農業部門等の業種における需要傾向を受け、北アメリカのデトロイト地域に、Candera America Inc.(アートスパークホールディングス株式会社の孫会社)を2019年12月に設立いたしました。これにより、欧州・日本・北米といった、世界の主要な自動車開発地域に拠点を設け、グローバルに活動を行う基盤が整いました。
製品では、Candera GmbHが2019年10月に「CGI Studio」の最新バージョン3.8を公開しております。
なお、ドイツ大手トラックメーカーMANグループのMAN CitE Truckのプロジェクトパートナーに選ばれ、MAN Truckのフルデジタルのメイン制御パネルに「CGI Studio」が実装されております。
イベントでは、ドイツのベルリンで開催された「CAR HMI Europe」や、フランスのサン=カンタン・アン・イブリーヌで開催された、自動車関連業界においてアプリケーションを使用するテクノロジープロバイダーや業者向けのイベント「Automotive Connection 2019」に出展、中国の上海で開催された「第2回中国自動車HMIとインテリジェント コックピットサミット」に協賛・出展し、包括的HMIソリューション「CLUSTER + IVI SYSTEM」を始め、Cypress社製ハードウェアに「CGI Studio」を組込んだメータークラスターや、「CGI Studio」を組込んだAndroidOS上で作動するカーナビゲーションのデモ展示を行い、自動車及び組込みHMI設計の最新技術を紹介しました。
さらに、東京ビッグサイトにて開催された「第12回 オートモーティブワールド」に出展し、自社開発製品「Candera Link」のデモを初公開しました。「Candera Link」は、プラットフォームに依存しないデータとサービスを、複数のクライアント(IVI SYSTEM、CLUSTER、AR HuD、スマートフォン等)で共有することを可能にする、リモート・レンダリング・サービスです。
この他では、「exbeans UI Conductor」が、プリンター分野において、セイコーエプソン株式会社のプリンターへの搭載台数が累計で600万台を超えました。
また、2015年8月より大手OEMの車載機器向けサービスソフトウェアに採用されている当社製品は、北米市場を中心とした出荷台数が累計で430万台を超えております。今後も UI/UX事業の業容拡大に向けた施策を積極的に展開してまいります。
以上の結果、売上高は1,790,369千円(前年同期比102.1%増)、営業損失はのれん償却分等350,700千円を含め、436,225千円(前年同期は67,423千円の営業損失)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ732,266千円減少し、1,880,448千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、988,658千円(前連結会計年度は1,007,074千円の獲得)となりました。これは主として、売上債権の増加額5,237千円や法人税等の支払額155,796千円等があったものの、税金等調整前当期純利益232,475千円の計上や減価償却費の計上681,265千円、のれん償却額228,399千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,425,091千円(前連結会計年度は550,631千円の使用)となりました。これは主として、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出508,056千円、有形固定資産の取得による支出207,099千円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得に伴う支出1,777,691千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、728,621千円(前連結会計年度は250,865千円の使用)となりました。これは主として、短期借入金の返済による支出1,550,000千円や長期借入金の返済による支出43,124千円等があったものの短期借入による収入1,500,000千円や株式の発行による収入855,215千円等があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、1,880,448千円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
クリエイターサポート事業 | 1,982,575 | 109.7 |
UI/UX事業 | 1,146,025 | 140.0 |
合計 | 3,128,601 | 119.1 |
(注)1. 金額は、当期製造費用によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 仕入高(千円) | 前年同期比(%) |
クリエイターサポート事業 | 103,726 | 73.1 |
UI/UX事業 | ― | ― |
合計 | 103,726 | 73.1 |
(注)1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 受注実績
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
(4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
クリエイターサポート事業 | 3,617,277 | 122.3 |
UI/UX事業 | 1,790,369 | 202.1 |
調整額 | △26,374 | ― |
合計 | 5,381,272 | 142.0 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.調整額△26,374千円は、主に内部取引の消去によるものであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
株式会社アムタス | 616,315 | 16.3 | 690,484 | 12.8 |
4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、たな卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,456,601千円増加し5,811,162千円となりました。この主な要因は、現金及び預金が794,839千円、仕掛品が88,426千円減少した一方で、オーストリアの現地法人Candera GmbHの全株式を取得し子会社化したことに伴い、のれんが1,294,262千円、顧客関連資産が117,341千円、技術資産が434,822千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて404,600千円増加し1,282,364千円となりました。この主な要因は、短期借入金が50,000千円、未払金が65,528千円減少した一方で未払費用が129,009千円、前受金が159,786千円、役員退職慰労引当金が40,000千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,052,000千円増加し4,528,797千円となりました。この主な要因は、株式の発行等により資本金が427,687千円、資本剰余金が427,687千円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が207,489千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、77.8%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの計画の達成状況は以下の通りです。
指標 | 計画数値 | 実績 | 計画比 |
連結売上高 | 5,174,000千円 | 5,381,272千円 | 207,272千円増 (4.0%増) |
連結営業利益 | 256,000千円 | 241,957千円 | 14,043千円減 (5.5%減) |
当連結会計年度における連結売上高は計画比207,272千円増(4.0%増)となりました。また、連結営業利益は計画比14,043千円増(5.5%減)となりました。これは、売上高はクリエイターサポート事業における海外での販売が好調に推移しましたが、子会社の買収に伴うのれん等の費用が確定した結果、当初よりのれんの等が約205,000千円増加し、その結果のれん等の償却費も約31,000円増加したことによるものであります。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては新株予約権の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,880,448千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
当連結会計年度におきましては、連結売上高は目標5,174,000千円に対して5,381,272千円の実績となり、目標に対して207,272千円上回りました。また、連結営業利益は目標256,000千円に対して241,957千円の実績となり、目標に対して14,043千円下回りましたが、要因として、当初見込んでいた海外子会社の買収により発生したのれん等の費用が205,000千円増加したことにより、当期の償却費も31,000千円増加したものであり、当社グループ全体としては順調に推移しております。
今後も当指標を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。