四半期報告書-第12期第3四半期(2023/07/01-2023/09/30)

【提出】
2023/11/10 12:32
【資料】
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【項目】
42項目
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当社は、グループのセグメントを構成するUI/UX事業について、加賀FEI株式会社と当該事業の譲渡に向けた基本合意書を2023年2月10日に締結いたしました。その後、同年5月11日開催の取締役会において、同年8月1日を効力発生日とする当該事業の譲渡について決議し、当該事業譲渡は予定通り同年8月1日に完了いたしました。今回の事業譲渡により、当社グループは、コンテンツ領域に注力し、更なる業容の拡大を目指せる環境が整いました。当該事業譲渡の詳細につきましては、5月11日付リリース「連結子会社(特定子会社)の異動(株式譲渡)及び連結子会社における会社分割(簡易吸収分割)に関するお知らせ」をご参照ください。
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
当連結会計年度におきましても、ソフトウエアIPを核とした経営に重点を置き、戦略的な開発投資を継続して行い、更なる企業価値の向上に注力しております。その結果、当社グループの当第3四半期連結累計期間の売上高は6,186,772千円(前年同期比11.6%増)、営業利益は924,839千円(同25.0%減)となりました。
また、経常利益につきましては、営業外収益として為替差益65,756千円を計上したこと及び営業外費用として自己株式取得に係る支払手数料36,210千円、子会社の増資に伴う株式交付費6,259千円を計上したこと等により、947,395千円(同29.3%減)となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益につきましては、前述のUI/UX事業の譲渡による特別損失892,517千円、法人税等△9,517千円を計上したこと等により、68,066千円(同92.2%減)となりました。
当社は、資本効率の一層の向上と経営環境に応じた機動的な資本政策の遂行及び株主還元の更なる充実を目的として、2022年8月からの2年間で総額30億円を目途に自己株式の取得を予定し、前連結会計年度に約10億円分の自己株式を取得いたしました。引き続き、当第3四半期連結累計期間においては1,499,960千円、1,884,600株(発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合 5.40%)の取得を実施し、さらに11月2日付にて開示しました「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」のとおり、追加で第4四半期に5億円分の自己株式の取得を予定し、併せて、同日に開示しました「配当予想の修正に関するお知らせ」のとおり、2023年12月期の配当金予想を従来の1株当たり9円から、1株当たり3円増配し、12円とすることといたしました。
なお、当連結会計年度から、従来のクリエイターサポート事業を、イラスト・マンガ・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の開発・提供を中心とした「コンテンツ制作ソリューション事業」とDC3ソリューション及び電子書籍配信ソリューションの開発・提供を中心とした「コンテンツ流通ソリューション事業」の2つのセグメントに区分しております。
また、2022年8月19日に開示いたしました「東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に向けた準備に関するお知らせ」に記載のとおり、現在、東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に向けた準備を進めております。
なお、2021年12月にWEBTOON Entertainmentと締結した資本提携契約に基づき、2023年9月25日付で、当社の株主であるLINE Digital Frontier株式会社及びイーブックイニシアティブジャパン株式会社より、大量保有報告書が提出されました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
<コンテンツ制作ソリューション事業>当第3四半期連結累計期間では、これまで継続してきましたイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資の成果として、2023年3月14日に「CLIP STUDIO PAINT」のバージョン2.0をリリースし提供を開始いたしました。「CLIP STUDIO PAINT」は、これまで、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収するWindows / macOS版の買い切り(無期限)モデルのみにおいて、提供開始より10年間にわたり、無償の機能アップデートの実施を継続してまいりました。バージョン2.0は、「CLIP STUDIO PAINT」の初めてのメジャーバージョンアップであり、最新の機能を利用するためには、買い切りモデルのユーザーもサブスクリプション契約をしていただく、または、新バージョンを優待購入いただく形態に変更いたしました。これにより、サブスクリプション契約の増加や、これまで獲得できなかった既存の買い切りモデルユーザーからの新バージョン購入による収益改善が見込まれ、より安定的、かつ継続的なサービス提供の実現が可能となりました。
また、バージョン2.0が2023年3月14日のリリース以来ご好評をいただいていることに加え、新規ユーザーの獲得を目的とした全世界に向けた販売促進キャンペーンを実施したこと等により当四半期連結会計期間における「CLIP STUDIO PAINT」の出荷本数は過去最高の増加数となりました。今回のメジャーバージョンアップでは、マーケットにおける認知度の向上効果により、売上高及び利用者数の底上げが実現できたことから、今後も、定期的なメジャーバージョンアップを実施する予定です。
また、従来の日本語版・英語版・中国語(繁体字)版・韓国語版・フランス語版・スペイン語版・ドイツ語版の7言語に加え、新たに2022年12月より追加した中国語(簡体字)版、2023年3月14日リリースのバージョン2.0ではポルトガル語版・タイ語版・インドネシア語版の合計4言語を追加し、全11言語での提供を開始したことにより、海外ユーザーの増加が期待できます。特に中国本土については、各種プロモーションの効果もあり、サブスクリプション契約数が順調に増加傾向で推移しておりAppStoreにおける国別売上高構成比では上位10位以内となる等今後大きな成長が見込まれます。
この他、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、全世界に向けたプロモーション活動を継続的に実施しております。
「CLIP STUDIO PAINT」は、2023年5月末に累計出荷本数が3,000万本を越え、2023年9月末現在の累計出荷本数は3,385万本(前年同月比45.2%増)となりました。また、日本語以外の海外に向けた出荷が約80%と増加傾向で推移していることに加え2023年8月度は月ごとの増加数が101万本を超え過去最高となりました。
また、2023年9月のサブスクリプション契約数は91.8万契約(同38.9%増)となり、ARR(当社がサブスクリプションから年間ベースで得られると期待できる金額)は2,956,000千円(同24.5%増)となり10月末には3,000,000千円を超える見込みで、クリエイターをサポートする創作活動応援サイト「CLIP STUDIO」のクリエイターの会員数は全世界で791万人(同22.4%増)となり10月末には800万人を超えております。それぞれの詳細につきましては、毎月開示しております「月次事業進捗レポート」をご参照ください。
なお、2023年4月10日に開示いたしました「セキュリティ強化に伴うCLIP STUDIO PAINTサブスクリプションモデルの決済システム変更のお知らせ」のとおり、セキュリティ強化を目的としたサブスクリプション契約の決済に用いている決済システムの変更を行っております。これに伴い、「月次事業進捗レポート」のARR等に影響が生じ、直前四半期連結会計期間において減少しましたが、当四半期連結会計期間において再び増加傾向で推移しており2023年9月のARRは過去最高となりました。
当社が注力しているサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、廉価で利用開始の敷居を下げる反面、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収する買い切りモデルに比べ、短期的には収益効果が低くなります。しかしながら、継続してご利用頂くことで中・長期においては安定した収益が期待できるため、引き続きサブスクリプションモデル契約の増加を目指してまいります。なお、サブスクリプション契約は、上記決済システムの変更により一時的に減少したものの、再び増加に転じ2023年9月には90万契約を超えました。
「CLIP STUDIO PAINT」は2023年7月に、ユーザー層の拡大を目的に同年6月のスマートフォン版に加えタブレット版のアップデートを行いました。新たに直感的に使いやすいインターフェースを追加することにより、新しいユーザーが「CLIP STUDIO PAINT」を初めて使ったときから、迷うことなく自然な操作感を感じることができるシンプルかつ直感的なインターフェースの提供を実現しました。これにより、従来、他社の無料アプリやシンプルな機能のアプリがターゲットにしていた、若年層やエントリーユーザーまで「CLIP STUDIO PAINT」のユーザー層を広げ、サブスクリプション契約の更なる増加が期待できます。
この他、2023年7月にフランスのパリで開催された日本文化に特化したイベント「Japan Expo 2023」に出展、また、2023年9月には韓国の富川(ブチョン)で開催された韓国最大のマンガイベントの「第26回 富川国際漫画フェスティバル(BICOF)」に韓国ワコム社とコラボして共同出展する等、各種イベントに出展・協賛し「CLIP STUDIO PAINT」の海外における認知度やユーザー層の拡大に向けた取り組みに注力しております。
また、9月には当社のAI領域への開発投資強化を目的に、AI技術の実用化領域で業界をリードするax株式会社と戦略的パートナーシップ契約を締結し、開発能力を拡充いたしました。
以上の結果、売上高は4,360,518千円(前年同期比11.9%増)、営業利益は1,545,067千円(同5.0%増)となりました。
<コンテンツ流通ソリューション事業>コンテンツ流通ソリューション事業は、株式会社&DC3を中心に取り組んでおります。
2022年12月に発表した「DC3」ソリューションにおいては、2023年9月にコンテンツ流通基盤ソリューション「DC3」、DC3コンテンツ管理サービス「DC3マイルーム」及びDC3事業者向けサービス「DC3事業者コンソール」それぞれのプレビュー版を、また、DC3プレイヤー「Hive3Dモデルプレイヤー」・「Hiveリフロープレイヤー」及び「Hiveイメージプレイヤー」・「Hiveイメージブックプレイヤー」等をリリースいたしました。詳細につきましてはそれぞれのリリース(https://www.and-dc3.com/news/)をご参照ください。
さらに、基盤となるプログラム「DC3モジュール」の品質強化、「DC3マイルーム」における3D表現の向上、サービス事業者がDC3上で円滑にビジネスを行うための機能群の強化等、ソリューション品質向上に向けた開発投資を継続して行っております。
併せて、各事業者の「DC3」ソリューション理解に向けた提案営業活動を推進し、DC3ソリューションを利用する予定の複数の事業者との利用契約が進んでおります。兼松グランクス株式会社においては、DC3コンテンツを取り扱うマーケットプレイス「mitekore」を今秋リリースすることが、また、株式会社虎の穴グループのクリエイターとファンを結ぶ新しい月額制ファンクラブプラットフォーム「クリエイティア」においてDC3の導入が決定する等、2023年内にDC3ソリューションを利用したサービスが複数オープンする見込みとなっています。引き続き、デジタルコンテンツビジネスの新たな可能性の開拓を推進してまいります。
なお、当連結会計年度において、「DC3」ソリューションは、利用促進を目的に無償での提供を行っております。
電子書籍ソリューションにおいては、電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」を始めとする、電子書籍オーサリングソフトウェア等、様々なデバイス・プラットフォームに対応した電子書籍の制作・流通・再生にまつわるソリューションの提供を行っております。
当四半期連結会計期間において、株式会社ドリコムのWEBマガジンサイト「DREコミックス」及び株式会社モバイルブック・ジェーピーと株式会社イマジネイション・プラスが共同運営する絵本読み放題アプリ「えほんのはこ」で「CLIP STUDIO READER」が採用されました。
以上の結果、売上高は759,303千円(前年同期比6.2%増)、営業損益は537,699千円の営業損失(前年同期は43,241千円の営業利益)となりました。
UI/UX事業は、前述のとおり、2023年8月1日付で加賀FEI株式会社への譲渡が完了しました。
当社の連結子会社でありましたCandera GmbHの全株式を加賀FEI株式会社へ譲渡したことにより、同社を連結の範囲から除外しております。
以上の結果、売上高は1,066,950千円(前年同期比14.4%増)、営業損失は82,527千円(前年同期は307,816千円の営業損失)となりました。
(2)財政状態の分析
(資産の部)
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,585,716千円減少し8,571,246千円となりました。この主な要因は、ソフトウエア仮勘定が35,816千円、投資有価証券が27,005千円、繰延税金資産が38,113千円増加したものの、自社株買いの実施等により現金及び預金が653,669千円、未収入金が547,648千円、UI/UX事業の譲渡によりソフトウエアが315,056千円、技術資産が127,889千円減少したこと等によるものであります。
(負債の部)
当第3四半期連結会計期間末の負債は、前連結会計年度末と比べて33,407千円増加し1,965,575千円となりました。この主な要因は、未払費用が87,818千円、未払法人税等が67,202千円減少した一方で、買掛金が62,449千円、前受金が113,013千円、賞与引当金が41,251千円、役員退職慰労引当金が34,725千円増加したこと等によるものであります。
(純資産の部)
当第3四半期連結会計期間末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,619,123千円減少し6,605,671千円となりました。主な要因は、自社株買いにより自己株式が1,500,073千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、75.3%となりました。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について、重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の計上はありません。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。