訂正有価証券報告書-第11期(2022/01/01-2022/12/31)
(経営成績等の状況の概要)
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しており、当連結会計年度におきましても、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、戦略的な開発投資を継続して行い、企業価値の向上に注力しております。
9月1日には、グループの中長期的な成長の実現を目的に、より機動的なクリエイターサポート事業の経営体制構築を目指し、アートスパークホールディングスとセルシスを合併し、社名を株式会社セルシスとして活動を始めております。
4月には、株式会社ワコムと資本業務提携契約を締結しました。これまでのパートナーシップの関係をより深め、クリエイターの皆様に新しい価値や体験を提供してまいります。
12月には、新たに設立した子会社である株式会社&DC3から、あらゆるデジタルデータを唯一無二の“モノ”として扱うことで、WEB3時代の新しいデジタルコンテンツ流通を実現する基盤ソリューション「DC3」の提供開始を発表いたしました。
また、8月より、資本効率の一層の向上と経営環境に応じた機動的な資本政策を遂行することを目的として、2024年8月までの2年間で総額30億円を目途に自己株式を取得する方針のもと、約10億円分の自己株式の取得を実施いたしました。
さらに、8月には、今後の当社グループの中長期的な成長と企業価値のさらなる向上を実現していくため、東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に向けた準備を行う旨の決議をいたしました。
当社グループの当連結会計年度の売上高は7,543,175千円(前年同期比9.5%増)、営業利益は1,465,781千円(前年同期比6.3%増)となりました。
経常利益につきましては、助成金収入45,269千円、為替差益130,540千円を計上したこと、株式交付費7,790千円、貸倒引当金繰入額8,355千円等により、1,605,351千円の経常利益(前年同期比13.1%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、第1四半期連結累計期間で事務所移転に伴う固定資産除却損及び賃貸借契約解約損を60,215千円計上したこと、法人税等493,622千円を計上したことにより、1,047,911千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比14.3%減)となりました。
なお、子会社のカンデラが展開するUI/UX事業は、2022年後半以降の市場回復・拡大をにらみ、開発投資を積極的に行っておりましたが、当事業の主要な顧客である自動車関連分野は、前期に引き続き、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続いております。このような事業環境を踏まえたうえで、当社グループにおけるUI/UX事業の役割及び位置づけの抜本的な見直しを行った結果、加賀FEI株式会社と、当社UI/UX事業の譲渡に向けた基本合意書を締結いたしました。
事業別セグメントにつきましては、以下のとおりであります。
<クリエイターサポート事業>当連結会計年度においても継続して、イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資を行いながら、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、プロモーション活動(中国本土を除く)を実施しております。
「CLIP STUDIO PAINT」は、2022年12月現在では累計出荷本数が2,500万本(前年同月比54.4%増)を超え、そのうち75%以上が日本語以外の海外に向けた出荷となっております。また、同月のサブスクリプション契約数は12月末では72.2万契約(前年同月比51.0%増)となり、ARR(当社がサブスクリプションから年間ベースで得られると期待できる金額)は2,545,000千円(前年同月比43.9%増)となりました。
注力しているサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、廉価な価格で利用開始の敷居を下げる反面、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収する買い切りモデルに比べ、短期的には収益効果が低くなります。しかしながら、継続して利用頂くことで中長期においては安定した収益が期待できるため、引き続きサブスクリプションモデルでのライセンス提供に注力してまいります。
なお、クリエイターサポート事業は、売上の過半数が日本国外からとなっており、為替の影響を受けていますが、サブスクリプション契約の年払いモデルにおいては、売上を12か月に分割して計上しており、短期的な売上への影響は小さくなります。また、主にドル建てで費用が発生する、クラウドサーバーインフラコストや、日本国外に出稿するWEB広告のコスト等も発生していることから、為替変動の損益に対する影響額は公示されている為替レートがダイレクトに反映されることとはなりません。
「CLIP STUDIO PAINT」は、Windows/macOS買い切り(無期限)版の提供において、2012年の販売から約10年間に無償で80回を超える機能アップデートを続けて参りましたが、2023年以降の収益改善を目的に「CLIP STUDIO PAINT」を、2023年3月に有償でのメジャーアップデート及び、年払いのサブスクリプションを必要とする提供・販売方法に変更する旨の顧客への告知を2022年8月に実施いたしました。これにより、従来通り常に最新の機能を利用するためには、サブスクリプション契約をしていただく形となり、サブスクリプション契約の増加や、これまで獲得できてこなかった既存の買い切りモデルユーザーからの新バージョン購入による収益改善が期待でき、より安定した継続的なサービス提供を実現します。
本件告知の結果、現行バージョンの買い控えによる売上減の影響により、買い切り版のツール販売のみが一時的に減少しましたが、2023年3月リリース予定の「CLIP STUDIO PAINT」の最新バージョンを、購入者に無償で提供するキャンペーン等を10月から実施し、12月には広告宣伝、販売促進を推進したことで解消いたしました。なお、8月の告知以降、買い切り版以外の出荷本数及びサブスクリプション契約数、ARRは堅調に推移しております。
また、ワコムやサムスンのペン付きデバイスと「CLIP STUDIO PAINT」による、グローバルを対象としたコラボレーションに積極的に取り組みました。対象デバイスにバンドルされた「CLIP STUDIO PAINT」は、無償期間が終了後は月額契約を行うことで利用が継続できる形で提供されており、将来のサブスクリプション契約の増加が期待できます。
さらに、12月より、中国のクリエイターに向けて「CLIP STUDIO PAINT for iPad」の中国語版を提供開始しました。中国に向けた「CLIP STUDIO PAINT」ブランドでのセルシスからの直接のアプリ提供は今回が初めてになり、今後も対応するデバイスを広げながら中国における利用拡大を目指してまいります。
この他、WEB3及びメタバースを見据えた、新たなコンテンツ流通をサポートするソリューションの開発を、11月1日付で株式会社CLIPソリューションズから社名変更を行った、当社100%子会社である株式会社&DC3を中心に取り組んでおります。同社は、12月に、あらゆるデジタルデータを唯一無二の“モノ”として扱うことで、WEB3時代の新しいデジタルコンテンツ流通を実現する基盤ソリューション「DC3」を発表しました。引き続き、来期以降の収益向上のため、成長投資を行ってまいります。
以上の結果、売上高は6,355,732千円(前年同期比9.4%増)、営業利益は1,965,652千円(前年同期比10.6%増)となりました。
子会社のカンデラが展開するUI/UX事業では、自動車(四輪・二輪)関連分野を筆頭に、車載向けソフトウェア開発プラットフォーム「CGI Studio」及び、UIオーサリングソフトウェア「UI Conductor」を中心とする自社IP製品の開発に注力しております。
当事業の主要な顧客である自動車関連分野は、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等について、期初では2022年後半より回復が期待されていたものの改善はみられず、期を通じて厳しい事業環境が続きました。
当連結会計年度では、液晶デバイスの普及により、自動車関連に限らず今後市場拡大が見込まれる産業・民生機器等の幅広い分野で利用可能になることを目指した先行研究開発投資を行い、10月に次世代HMIソリューション「Candera Studio」を発表いたしました。「Candera Studio」は、自動車関連に限らず、液晶デバイスの普及により今後市場拡大が見込まれる、産業・民生機器等の幅広い分野での採用を目指しており、2023年度の正式リリースを予定しております。
なお、UI/UX事業については、2022年下期から役割及び位置づけの抜本的な見直しの結果、セルシスグループ内で事業を継続するメリットは少ないと判断し、カンデラの製品の販売代理店であり、製品の主要顧客に対して柔軟なソリューション提供を行うことが可能になることで、事業拡大の期待ができることを目的に、加賀FEI株式会社への譲渡の協議を進めております。
以上の結果、売上高は1,187,443千円(前年同期比10.9%増)、営業損失は545,628千円(前年同期は498,019千円の営業損失)となりました。なお、2021年12月期第1四半期累計期間において、連結子会社であった株式会社エイチアイの全株式を売却したことにより、前第2四半期連結会計期間以降につきましては、同社の数値は連結計算書類に含まれておりません。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,051,561千円増加し、6,744,840千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,548,469千円(前連結会計年度は1,972,356千円の獲得)となりました。これは主として、賃貸借契約解約による支払額48,947千円や法人税等の支払額732,820千円等の資金の減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益1,541,533千円の計上や減価償却費の計上851,928千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,032,758千円(前連結会計年度は473,506千円の使用)となりました。これは主として、敷金の回収による収入25,819千円等の資金の増加要因があったものの、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出960,622千円、有形固定資産の取得による支出86,356千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、490,542千円(前連結会計年度は1,283,902千円の獲得)となりました。これは主として、配当金の支払額102,662千円や自己株式の取得による支出1,000,018千円等があったものの、株式の発行による収入1,593,832千円等があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、6,744,840千円となりました。
(3) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、当期製造費用によっております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
③ 受注実績
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.調整額12,500千円は、主に内部取引の調整によるものであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、棚卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,812,292千円増加し10,156,963千円となりました。この主な要因は、償却により技術資産が102,311千円、敷金及び保証金が36,089千円減少した一方で、現金及び預金が1,055,164千円、未収入金が412,682千円、ソフトウエアが294,713千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて163,684千円増加し1,932,168千円となりました。この主な要因は、未払法人税等が150,937千円、役員退職慰労引当金が24,428千円減少した一方で未払金が60,958千円、前受金が147,016千円、退職給付に係る負債が42,906千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,648,608千円増加し8,224,794千円となりました。この主な要因は、自己株式の取得1,000,018千円による純資産の減少があった一方で親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が954,186千円、新株の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ800,814千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、80.3%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの売上計画、営業利益の達成状況は以下のとおりです。
当連結会計年度における連結売上高は、期初では7,727,000千円、連結営業利益では1,942,000千円の計画を見込んでおりました。
計画に対し連結売上高では7,543,175千円(達成率97.6%)となり、連結営業利益は1,465,781千円(達成率75.5%)となりました。
その他、営業利益の状況、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては新株予約権の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は6,744,840千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
連結会計年度におきましては、連結売上高は目標7,727,000千円に対して7,543,175千円の実績となり、目標に対して183,825千円下回りました。また、連結営業利益は目標1,942,000千円に対して1,465,781千円の実績となり、目標に対して476,219千円下回りました。クリエイターサポート事業において、2023年3月を実施予定とする「CLIP STUDIO PAINT」のバージョンアップを告知したことにより、現行バージョンの買い控えによる売上減の影響により、第3四半期において、買い切り版のツール販売のみが一時的に減少しましたが、2023年3月リリース予定の「CLIP STUDIO PAINT」の最新バージョンを、購入者に無償で提供するキャンペーン等を10月から実施し、12月には広告宣伝、販売促進を推進したことで解消いたしました。一方UI/UX事業では、前事業年度に続き、自動車関連分野は、新型コロナウイルス感染症に端を発した、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続きました。期首予想では、自動車業界における持ち直しを織り込みUI/UX事業の業績を目論んでおりましたが、実績は厳しいものとなり下回りました。
また、営業利益につきましては、クリエイターサポート事業における、第3四半期の売上減に対応するため、販促費を投入したこと、UI/UX事業の売上未達成によるところにより、計画値を下回りました。
今後も当指標を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しており、当連結会計年度におきましても、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、戦略的な開発投資を継続して行い、企業価値の向上に注力しております。
9月1日には、グループの中長期的な成長の実現を目的に、より機動的なクリエイターサポート事業の経営体制構築を目指し、アートスパークホールディングスとセルシスを合併し、社名を株式会社セルシスとして活動を始めております。
4月には、株式会社ワコムと資本業務提携契約を締結しました。これまでのパートナーシップの関係をより深め、クリエイターの皆様に新しい価値や体験を提供してまいります。
12月には、新たに設立した子会社である株式会社&DC3から、あらゆるデジタルデータを唯一無二の“モノ”として扱うことで、WEB3時代の新しいデジタルコンテンツ流通を実現する基盤ソリューション「DC3」の提供開始を発表いたしました。
また、8月より、資本効率の一層の向上と経営環境に応じた機動的な資本政策を遂行することを目的として、2024年8月までの2年間で総額30億円を目途に自己株式を取得する方針のもと、約10億円分の自己株式の取得を実施いたしました。
さらに、8月には、今後の当社グループの中長期的な成長と企業価値のさらなる向上を実現していくため、東京証券取引所プライム市場への市場区分変更申請に向けた準備を行う旨の決議をいたしました。
当社グループの当連結会計年度の売上高は7,543,175千円(前年同期比9.5%増)、営業利益は1,465,781千円(前年同期比6.3%増)となりました。
経常利益につきましては、助成金収入45,269千円、為替差益130,540千円を計上したこと、株式交付費7,790千円、貸倒引当金繰入額8,355千円等により、1,605,351千円の経常利益(前年同期比13.1%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、第1四半期連結累計期間で事務所移転に伴う固定資産除却損及び賃貸借契約解約損を60,215千円計上したこと、法人税等493,622千円を計上したことにより、1,047,911千円の親会社株主に帰属する当期純利益(前年同期比14.3%減)となりました。
なお、子会社のカンデラが展開するUI/UX事業は、2022年後半以降の市場回復・拡大をにらみ、開発投資を積極的に行っておりましたが、当事業の主要な顧客である自動車関連分野は、前期に引き続き、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続いております。このような事業環境を踏まえたうえで、当社グループにおけるUI/UX事業の役割及び位置づけの抜本的な見直しを行った結果、加賀FEI株式会社と、当社UI/UX事業の譲渡に向けた基本合意書を締結いたしました。
事業別セグメントにつきましては、以下のとおりであります。
<クリエイターサポート事業>当連結会計年度においても継続して、イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資を行いながら、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、プロモーション活動(中国本土を除く)を実施しております。
「CLIP STUDIO PAINT」は、2022年12月現在では累計出荷本数が2,500万本(前年同月比54.4%増)を超え、そのうち75%以上が日本語以外の海外に向けた出荷となっております。また、同月のサブスクリプション契約数は12月末では72.2万契約(前年同月比51.0%増)となり、ARR(当社がサブスクリプションから年間ベースで得られると期待できる金額)は2,545,000千円(前年同月比43.9%増)となりました。
注力しているサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、廉価な価格で利用開始の敷居を下げる反面、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収する買い切りモデルに比べ、短期的には収益効果が低くなります。しかしながら、継続して利用頂くことで中長期においては安定した収益が期待できるため、引き続きサブスクリプションモデルでのライセンス提供に注力してまいります。
なお、クリエイターサポート事業は、売上の過半数が日本国外からとなっており、為替の影響を受けていますが、サブスクリプション契約の年払いモデルにおいては、売上を12か月に分割して計上しており、短期的な売上への影響は小さくなります。また、主にドル建てで費用が発生する、クラウドサーバーインフラコストや、日本国外に出稿するWEB広告のコスト等も発生していることから、為替変動の損益に対する影響額は公示されている為替レートがダイレクトに反映されることとはなりません。
「CLIP STUDIO PAINT」は、Windows/macOS買い切り(無期限)版の提供において、2012年の販売から約10年間に無償で80回を超える機能アップデートを続けて参りましたが、2023年以降の収益改善を目的に「CLIP STUDIO PAINT」を、2023年3月に有償でのメジャーアップデート及び、年払いのサブスクリプションを必要とする提供・販売方法に変更する旨の顧客への告知を2022年8月に実施いたしました。これにより、従来通り常に最新の機能を利用するためには、サブスクリプション契約をしていただく形となり、サブスクリプション契約の増加や、これまで獲得できてこなかった既存の買い切りモデルユーザーからの新バージョン購入による収益改善が期待でき、より安定した継続的なサービス提供を実現します。
本件告知の結果、現行バージョンの買い控えによる売上減の影響により、買い切り版のツール販売のみが一時的に減少しましたが、2023年3月リリース予定の「CLIP STUDIO PAINT」の最新バージョンを、購入者に無償で提供するキャンペーン等を10月から実施し、12月には広告宣伝、販売促進を推進したことで解消いたしました。なお、8月の告知以降、買い切り版以外の出荷本数及びサブスクリプション契約数、ARRは堅調に推移しております。
また、ワコムやサムスンのペン付きデバイスと「CLIP STUDIO PAINT」による、グローバルを対象としたコラボレーションに積極的に取り組みました。対象デバイスにバンドルされた「CLIP STUDIO PAINT」は、無償期間が終了後は月額契約を行うことで利用が継続できる形で提供されており、将来のサブスクリプション契約の増加が期待できます。
さらに、12月より、中国のクリエイターに向けて「CLIP STUDIO PAINT for iPad」の中国語版を提供開始しました。中国に向けた「CLIP STUDIO PAINT」ブランドでのセルシスからの直接のアプリ提供は今回が初めてになり、今後も対応するデバイスを広げながら中国における利用拡大を目指してまいります。
この他、WEB3及びメタバースを見据えた、新たなコンテンツ流通をサポートするソリューションの開発を、11月1日付で株式会社CLIPソリューションズから社名変更を行った、当社100%子会社である株式会社&DC3を中心に取り組んでおります。同社は、12月に、あらゆるデジタルデータを唯一無二の“モノ”として扱うことで、WEB3時代の新しいデジタルコンテンツ流通を実現する基盤ソリューション「DC3」を発表しました。引き続き、来期以降の収益向上のため、成長投資を行ってまいります。
以上の結果、売上高は6,355,732千円(前年同期比9.4%増)、営業利益は1,965,652千円(前年同期比10.6%増)となりました。
当事業の主要な顧客である自動車関連分野は、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等について、期初では2022年後半より回復が期待されていたものの改善はみられず、期を通じて厳しい事業環境が続きました。
当連結会計年度では、液晶デバイスの普及により、自動車関連に限らず今後市場拡大が見込まれる産業・民生機器等の幅広い分野で利用可能になることを目指した先行研究開発投資を行い、10月に次世代HMIソリューション「Candera Studio」を発表いたしました。「Candera Studio」は、自動車関連に限らず、液晶デバイスの普及により今後市場拡大が見込まれる、産業・民生機器等の幅広い分野での採用を目指しており、2023年度の正式リリースを予定しております。
なお、UI/UX事業については、2022年下期から役割及び位置づけの抜本的な見直しの結果、セルシスグループ内で事業を継続するメリットは少ないと判断し、カンデラの製品の販売代理店であり、製品の主要顧客に対して柔軟なソリューション提供を行うことが可能になることで、事業拡大の期待ができることを目的に、加賀FEI株式会社への譲渡の協議を進めております。
以上の結果、売上高は1,187,443千円(前年同期比10.9%増)、営業損失は545,628千円(前年同期は498,019千円の営業損失)となりました。なお、2021年12月期第1四半期累計期間において、連結子会社であった株式会社エイチアイの全株式を売却したことにより、前第2四半期連結会計期間以降につきましては、同社の数値は連結計算書類に含まれておりません。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,051,561千円増加し、6,744,840千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、1,548,469千円(前連結会計年度は1,972,356千円の獲得)となりました。これは主として、賃貸借契約解約による支払額48,947千円や法人税等の支払額732,820千円等の資金の減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益1,541,533千円の計上や減価償却費の計上851,928千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,032,758千円(前連結会計年度は473,506千円の使用)となりました。これは主として、敷金の回収による収入25,819千円等の資金の増加要因があったものの、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出960,622千円、有形固定資産の取得による支出86,356千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、490,542千円(前連結会計年度は1,283,902千円の獲得)となりました。これは主として、配当金の支払額102,662千円や自己株式の取得による支出1,000,018千円等があったものの、株式の発行による収入1,593,832千円等があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、6,744,840千円となりました。
(3) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
クリエイターサポート事業 | 2,992,715 | 110.3 |
UI/UX事業 | 1,015,030 | 101.6 |
合計 | 4,007,746 | 108.0 |
(注) 金額は、当期製造費用によっております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 仕入高(千円) | 前年同期比(%) |
クリエイターサポート事業 | 131,054 | 145.2 |
UI/UX事業 | ― | ― |
合計 | 131,054 | 145.2 |
(注) 金額は、仕入価格によっております。
③ 受注実績
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
クリエイターサポート事業 | 6,355,732 | 109.4 |
UI/UX事業 | 1,187,443 | 110.9 |
合計 | 7,543,175 | 109.5 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.調整額12,500千円は、主に内部取引の調整によるものであります。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
株式会社アムタス | 827,656 | 12.0 | 665,017 | 8.8 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、棚卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて1,812,292千円増加し10,156,963千円となりました。この主な要因は、償却により技術資産が102,311千円、敷金及び保証金が36,089千円減少した一方で、現金及び預金が1,055,164千円、未収入金が412,682千円、ソフトウエアが294,713千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて163,684千円増加し1,932,168千円となりました。この主な要因は、未払法人税等が150,937千円、役員退職慰労引当金が24,428千円減少した一方で未払金が60,958千円、前受金が147,016千円、退職給付に係る負債が42,906千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,648,608千円増加し8,224,794千円となりました。この主な要因は、自己株式の取得1,000,018千円による純資産の減少があった一方で親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が954,186千円、新株の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ800,814千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、80.3%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの売上計画、営業利益の達成状況は以下のとおりです。
指標 | 計画数値 | 実績 | 計画比 | |
連結売上高 | 期首 | 7,727,000千円 | 7,543,175千円 | △183,825千円 |
連結営業利益 | 期首 | 1,942,000千円 | 1,465,781千円 | △476,219千円 |
当連結会計年度における連結売上高は、期初では7,727,000千円、連結営業利益では1,942,000千円の計画を見込んでおりました。
計画に対し連結売上高では7,543,175千円(達成率97.6%)となり、連結営業利益は1,465,781千円(達成率75.5%)となりました。
その他、営業利益の状況、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本とし、場合によっては新株予約権の発行等を行うなど、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は6,744,840千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
連結会計年度におきましては、連結売上高は目標7,727,000千円に対して7,543,175千円の実績となり、目標に対して183,825千円下回りました。また、連結営業利益は目標1,942,000千円に対して1,465,781千円の実績となり、目標に対して476,219千円下回りました。クリエイターサポート事業において、2023年3月を実施予定とする「CLIP STUDIO PAINT」のバージョンアップを告知したことにより、現行バージョンの買い控えによる売上減の影響により、第3四半期において、買い切り版のツール販売のみが一時的に減少しましたが、2023年3月リリース予定の「CLIP STUDIO PAINT」の最新バージョンを、購入者に無償で提供するキャンペーン等を10月から実施し、12月には広告宣伝、販売促進を推進したことで解消いたしました。一方UI/UX事業では、前事業年度に続き、自動車関連分野は、新型コロナウイルス感染症に端を発した、新車開発の遅れによるモデルチェンジサイクルの長期化や、半導体不足等による生産台数の減少等を受け、厳しい事業環境が続きました。期首予想では、自動車業界における持ち直しを織り込みUI/UX事業の業績を目論んでおりましたが、実績は厳しいものとなり下回りました。
また、営業利益につきましては、クリエイターサポート事業における、第3四半期の売上減に対応するため、販促費を投入したこと、UI/UX事業の売上未達成によるところにより、計画値を下回りました。
今後も当指標を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。