有価証券報告書-第33期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
1 経営成績等の概要
(1)経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、良好な雇用・所得環境を背景に個人消費が底堅さを増すなど、緩やかに拡大しておりましたが、本年1月以降の世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の経済動向の不透明感が高まり、景気下押し圧力が強まっております。
このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2019-2021~次の『成長ステージ』に向けて~」のもと、3つの重点取り組みとして掲げる「更なる経営基盤強化」「主力事業の更なる収益力強化」「新たな領域における成長と進化」を推進するとともに、「ESG」「安全とサービス」「人づくり」の取り組みに注力してまいりました。
当社グループの業績は、第3四半期まで堅調に推移しておりましたが、その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛やイベントの中止等により、鉄道事業をはじめとした各事業において、移動需要の減少及び個人消費の低迷などの影響を受けております。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比1.8%減の4,326億44百万円となりました。営業利益は前期比22.7%減の494億6百万円、EBITDAは前期比12.1%減の750億90百万円、経常利益は前期比23.9%減の506億13百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比36.0%減の314億95百万円となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較について、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
(単位:百万円)
(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行うとともに、九州新幹線を基軸としたネットワークを最大限に活用し、お客さまの視点に立った営業施策を実施することにより収入確保に努めました。
安全面では、当社グループ全体の安全風土をつくるべく「もう一度、それ大丈夫?!-安全に敏感になろう-」をスローガンとした安全創造運動を展開しました。また安全投資では、車両の更新工事や老朽設備の取替等を着実に実施しました。自動列車運転装置の開発については、昨年12月より香椎線西戸崎~香椎間における終列車後の走行試験を開始しました。
サービス面では、基本となる「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を当たり前に実践し、「笑顔」と「あいさつ」でお客さまに快適にご利用いただけるよう取り組みを進めました。また、主要駅やD&S列車における無料公衆無線LANサービス「JR-KYUSHU FREE Wi-Fi」の導入拡大や、列車運行情報に関する「Twitter」配信について、日本語・英語に加えて韓国語・中国語による提供を開始する等、お客さまに寄り添った多様なサービスの提供に取り組みました。
営業面では、「新幹線」「近距離」「インバウンド」の主力分野の収益力向上に加えて、鉄道の魅力を活かしたまちづくりを推進しました。九州新幹線については、昨年5月より『Go! Waku Waku Trip with MICKEY』プロジェクトを展開し、利用促進を図りました。また、昨年7月より「熊本デスティネーションキャンペーン」及び、これにあわせた「熊本フォーリンラブ」観光キャンペーンを開催し、熊本エリアへの重点送客を図りました。「JR九州インターネット列車予約サービス」については、インターネット限定商品の充実やキャンペーンの実施等により、ネット利用へのシフトを推進しました。また、インバウンド需要を取り込むため、「JR九州レールパス」の専用予約サイト「JR KYUSHU RAIL PASS Online Booking」における直接販売及び指定席事前予約サービスのほか、昨年10月より中国最大規模のオンライン旅行会社Ctripと連携を開始する等、台湾、香港、中国、韓国を中心としたそれぞれの国及び地域に適した情報発信や販売促進を図りました。さらに、全日本空輸株式会社との観光振興強化に向けた連携や各種プロモーションにより、クルーズトレイン「ななつ星in九州」や11のD&S列車をはじめ、九州の自然・食・温泉・歴史文化・沿線地域の方々によるおもてなしなど、九州ブランドの認知度向上と九州への誘客促進に取り組みました。
輸送面では、「ラグビーワールドカップ2019」開催にあわせた臨時列車等、イベントや時季にあわせたきめ細かな輸送施策を展開し、各線区の需要動向に応じた効率的な輸送体系の構築に努めるとともに、九州新幹線を中心とした輸送ネットワークの更なる充実を図りました。なお、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響により、日田彦山線添田~夜明間において代行輸送を実施しています。また、「平成28年熊本地震」の影響により運転を見合わせている豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、国や関係自治体と連携・調整しながら、2020年度内の運転再開に向けて工事を進めています。
船舶事業においては、日韓関係の影響による旅行需要の落ち込みを受け、収支改善を図るために運航本数を見直す等コスト削減に努めました。
バス事業においては、九州新幹線と接続する高速バス「B&Sみやざき」などの高速バス路線において利用促進を図るとともに、一部路線の見直しにより収益確保に努めました。
新たなモビリティサービス(MaaS)の構築に向けては、他の交通事業者等との連携に取り組みました。具体的には、昨年5月に小田急電鉄株式会社と、同社が開発する共通データ基盤へのデータの連携及びサービスの検討に関する連携拡大に合意しました。また、第一交通産業株式会社と移動サービスの利便性向上に向けた業務提携契約を締結するとともに、昨年6月より提携を記念した「ネット列車予約×SUGOCAでタクシーに乗ろう」キャンペーンを実施しました。昨年10月には、西日本鉄道株式会社と輸送サービスの連携に関する覚書を締結、12月には由布院地区及び宮崎県における観光型MaaSの実証実験に向けた実行委員会を設立しました。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛等の影響により、第4四半期において当社の鉄道旅客運輸収入が大幅に減少しました。なお、感染拡大防止の観点から、九州新幹線や特急列車は3月20日以降、高速バスについては3月21日以降、それぞれ一部の便を運転休止しました。また、高速船については、日本及び韓国政府による水際対策の強化に伴い3月9日以降、全便を運航休止しました。
この結果、営業収益は前期比4.5%減の1,737億30百万円、営業利益は前期比27.6%減の198億48百万円、EBITDAは前期比13.9%減の295億63百万円となりました。
② 建設グループ
建設業においては、鉄道高架化工事、新幹線関連工事、マンション工事等を受注するとともに、工事の着実な遂行と経費の節減に努めました。
この結果、営業収益は前期比5.9%増の993億85百万円、営業利益は前期比4.6%増の65億80百万円、EBITDAは前期比5.8%増の76億89百万円となりました。
③ 不動産・ホテルグループ
不動産賃貸業においては、昨年3月、小倉駅に開業した飲食エリア「小倉宿 駅から三十歩横丁」の積極的な営業活動を行うとともに、昨年春に「アミュプラザ博多」、昨年秋に「アミュプラザ鹿児島」のリニューアルを実施したほか、各駅ビルの駅前広場等を活用した積極的なイベント展開を行い収益拡大に努めました。
不動産販売業においては、分譲マンション「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」や「MJR姪浜駅南」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン上熊本駅前」や「MJRザ・ガーデン宮崎駅前」等の販売に取り組みました。
ホテル業においては、最上位ブランド「THE BLOSSOM」を創設し、昨年8月に「THE BLOSSOM HIBIYA」、9月に「THE BLOSSOM HAKATA Premier」を開業するとともに、既存ホテルのレベニューマネジメントを強化し、収益拡大に努めました。
また、昨年4月にガバナンスの強化、スケールメリットを活かした営業力強化や経営効率化及び人材育成力の向上を目的として、駅ビル会社及びホテル会社を統括する中間持株会社をそれぞれ設立しました。
しかしながら、第4四半期において、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛等の影響により、駅ビル及びホテルのご利用が落ち込みました。なお、感染拡大防止の観点から各駅ビルの営業時間短縮を実施しました。
この結果、営業収益は前期比0.8%増の907億79百万円、営業利益は前期比24.8%減の191億37百万円、EBITDAは前期比14.1%減の305億95百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業においては、ドラッグストアやコンビニエンスストアの新規出店を進めました。
飲食業においては、昨年4月にカフェを東京に初出店しエリア拡大を進めるとともに、8月にシナモンロール専門店を初出店するなど新業態店舗の開発に積極的に取り組みました。
しかしながら、第4四半期において、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛等の影響により、駅構内を中心に、コンビニエンスストア及び飲食店舗等のご利用が落ち込みました。
この結果、営業収益は前期比0.6%増の1,046億57百万円、営業利益は前期比17.2%減の28億25百万円、EBITDAは前期比11.8%減の44億79百万円となりました。
⑤ その他グループ
建設機械販売・レンタル事業においては、積極的な営業活動を行い収益確保に努めました。
この結果、営業収益は前期比0.7%減の721億91百万円、営業利益は前期比3.8%増の22億84百万円、EBITDAは前期比3.6%増の43億39百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
② 収入実績
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収による増等により前連結会計年度に比べ189億94百万円増加し、604億68百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ23億24百万円増加し、769億43百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、配当金の支払等により前連結会計年度に比べ22億75百万円減少し、33億69百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ130億47百万円減少し、238億17百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
なお、当社グループの重要な会計上の見積りである固定資産の減損会計、繰延税金資産の回収可能性については、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、新型コロナウイルス感染拡大の影響が翌連結会計年度の一定期間まで続くとの仮定のもと、会計上の見積りを行っております。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は不確定要素が多いことから、将来キャッシュ・フローの金額や課税所得の発生時期、金額が変動した場合、固定資産の減損会計や繰延税金資産の回収可能性の会計上の見積りに影響を与える可能性があります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等による鉄道旅客運輸収入の減などにより、前連結会計年度に比べ1.8%減の4,326億44百万円となり、10期ぶりの減収となりました。
運輸サービスセグメントは、前連結会計年度に比べ4.5%減少し、1,737億30百万円となりました。これは、当社の鉄道旅客運輸収入が、新幹線及び在来線における新型コロナウイルスの感染拡大の影響等により、前連結会計年度に比べ2.7%減の1,473億81百万円となったこと等によるものです。
新幹線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ4.0%減の19億50百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ2.9%増の28億17百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ5.2%減の495億7百万円となり、全体では前連結会計年度に比べ4.8%減の523億25百万円となりました。
在来線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ2.0%減の71億8百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ0.2%増の297億79百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ2.3%減の652億76百万円、全体では前連結会計年度に比べ1.5%減の950億55百万円となりました。
建設セグメントは、前連結会計年度に比べ5.9%増加し、993億85百万円となりました。これは、九州新幹線西九州ルートの関連工事の増などによるものです。
不動産・ホテルセグメントは、前連結会計年度に比べ0.8%増加し、907億79百万円となりました。これは、「THE BLOSSOM HIBIYA」や「THE BLOSSOM HAKATA Premier」の開業などによるものです。
流通・外食セグメントは、前連結会計年度に比べ0.6%増加し、1,046億57百万円となりました。これは、店舗数増に伴うファーストフード店舗の収入増などによるものです。
その他セグメントは、前連結会計年度に比べ0.7%減少し、721億91百万円となりました。これは、リース・割賦事業の譲渡などによるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ1.8%増加し、3,832億38百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ0.1%増加し、2,734億円となりました。これは、建設業の売上増等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ6.2%増加し、1,098億38百万円となりました。これは当社の税制特例措置廃止による租税公課の増加や減価償却費の増加等によるものです。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ22.7%減少し、494億6百万円となりました。
なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の14.5%に対し、当連結会計年度は11.4%となりました。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ25.0%減少し、28億63百万円となりました。これは、当社の長期資金運用益の減等によるものです。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ42.3%増加し、16億55百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。
⑤ 経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ23.9%減少し、506億13百万円となりました。
なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の15.1%に対し、当連結会計年度は11.7%となりました。
⑥ 特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ54億21百万円悪化し、75億22百万円の損失となりました。これは、建造中の新型高速船「QUEEN BEETLE」の減損損失等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ36.0%減少し、314億95百万円となりました。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ3.4%増加し、8,285億90百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ11.2%減少し、1,612億93百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ7.7%増加し、6,672億97百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ7.8%増加し、4,102億91百万円となりました。流動負債は、1年内返済予定の長期借入金の増等により前連結会計年度末に比べ16.2%増加し、2,002億48百万円となりました。固定負債は、長期借入金の減はあったものの、社債の発行等により前連結会計年度末に比べ0.8%増加し、2,100億43百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ0.6%減少し、4,182億98百万円となりました。これは、配当金の支払や自己株式の取得及び消却等によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ130億47百万円減少し、238億17百万円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収による増等により前連結会計年度に比べ189億94百万円増加し、604億68百万円となりました。
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ23億24百万円増加し、769億43百万円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、配当金の支払等により前連結会計年度に比べ22億75百万円減少し、33億69百万円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 財務政策
当社グループの資金需要の主なものは設備投資資金及び運転資金です。
資金調達の方針については、「JR九州グループ中期経営計画 2019-2021」において、「フリーキャッシュ・フローの不足を補うため借入余力を活用」するとしており、既存債務の返済資金や設備投資資金のうち、当社グループのキャッシュ・フローで不足する部分を調達しております。その調達手段は、主に社債の発行や金融機関からの借入であり、市場や金利の動向を総合的に勘案しながら決定しております。
当社グループはキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。
当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2029年及び2039年とする2本の無担保普通社債を総額200億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付を取得しております。
また、短期資金の需要に対応するため、当社グループは主要な取引銀行に当座借越枠を設定しております。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業キャッシュ・フローが大幅に減少していることから、手元流動性の確保及び資金調達手段の多様化のため、当社は2020年5月に主要な取引銀行に1,200億円のコミットメントラインを設定し、コマーシャルペーパーについて、株式会社格付投資情報センターよりa-1+の短期格付を取得しております。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(1)経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、良好な雇用・所得環境を背景に個人消費が底堅さを増すなど、緩やかに拡大しておりましたが、本年1月以降の世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の経済動向の不透明感が高まり、景気下押し圧力が強まっております。
このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2019-2021~次の『成長ステージ』に向けて~」のもと、3つの重点取り組みとして掲げる「更なる経営基盤強化」「主力事業の更なる収益力強化」「新たな領域における成長と進化」を推進するとともに、「ESG」「安全とサービス」「人づくり」の取り組みに注力してまいりました。
当社グループの業績は、第3四半期まで堅調に推移しておりましたが、その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛やイベントの中止等により、鉄道事業をはじめとした各事業において、移動需要の減少及び個人消費の低迷などの影響を受けております。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比1.8%減の4,326億44百万円となりました。営業利益は前期比22.7%減の494億6百万円、EBITDAは前期比12.1%減の750億90百万円、経常利益は前期比23.9%減の506億13百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比36.0%減の314億95百万円となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較について、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しております。
(単位:百万円)
セグメントの名称 | 売上高 | 営業利益 | EBITDA(注2) | ||||||
当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | |
運輸サービス | 173,730 | △8,132 | △4.5% | 19,848 | △7,584 | △27.6% | 29,563 | △4,788 | △13.9% |
建設 | 99,385 | 5,568 | 5.9% | 6,580 | 290 | 4.6% | 7,689 | 423 | 5.8% |
不動産・ホテル | 90,779 | 685 | 0.8% | 19,137 | △6,298 | △24.8% | 30,595 | △5,036 | △14.1% |
不動産賃貸業 | 55,253 | 1,353 | 2.5% | 16,787 | △3,906 | △18.9% | 26,126 | △3,385 | △11.5% |
不動産販売業 | 18,921 | △850 | △4.3% | 1,566 | △826 | △34.6% | 1,576 | △828 | △34.5% |
ホテル業 | 16,604 | 182 | 1.1% | 783 | △1,564 | △66.6% | 2,891 | △822 | △22.1% |
流通・外食 | 104,657 | 607 | 0.6% | 2,825 | △587 | △17.2% | 4,479 | △601 | △11.8% |
その他 | 72,191 | △507 | △0.7% | 2,284 | 83 | 3.8% | 4,339 | 150 | 3.6% |
合計 | 540,746 | △1,778 | △0.3% | 50,676 | △14,096 | △21.8% | 76,667 | △9,852 | △11.4% |
調整額(注1) | △108,101 | △5,935 | - | △1,270 | △382 | - | △1,577 | △458 | - |
連結数値 | 432,644 | △7,713 | △1.8% | 49,406 | △14,479 | △22.7% | 75,090 | △10,311 | △12.1% |
(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行うとともに、九州新幹線を基軸としたネットワークを最大限に活用し、お客さまの視点に立った営業施策を実施することにより収入確保に努めました。
安全面では、当社グループ全体の安全風土をつくるべく「もう一度、それ大丈夫?!-安全に敏感になろう-」をスローガンとした安全創造運動を展開しました。また安全投資では、車両の更新工事や老朽設備の取替等を着実に実施しました。自動列車運転装置の開発については、昨年12月より香椎線西戸崎~香椎間における終列車後の走行試験を開始しました。
サービス面では、基本となる「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を当たり前に実践し、「笑顔」と「あいさつ」でお客さまに快適にご利用いただけるよう取り組みを進めました。また、主要駅やD&S列車における無料公衆無線LANサービス「JR-KYUSHU FREE Wi-Fi」の導入拡大や、列車運行情報に関する「Twitter」配信について、日本語・英語に加えて韓国語・中国語による提供を開始する等、お客さまに寄り添った多様なサービスの提供に取り組みました。
営業面では、「新幹線」「近距離」「インバウンド」の主力分野の収益力向上に加えて、鉄道の魅力を活かしたまちづくりを推進しました。九州新幹線については、昨年5月より『Go! Waku Waku Trip with MICKEY』プロジェクトを展開し、利用促進を図りました。また、昨年7月より「熊本デスティネーションキャンペーン」及び、これにあわせた「熊本フォーリンラブ」観光キャンペーンを開催し、熊本エリアへの重点送客を図りました。「JR九州インターネット列車予約サービス」については、インターネット限定商品の充実やキャンペーンの実施等により、ネット利用へのシフトを推進しました。また、インバウンド需要を取り込むため、「JR九州レールパス」の専用予約サイト「JR KYUSHU RAIL PASS Online Booking」における直接販売及び指定席事前予約サービスのほか、昨年10月より中国最大規模のオンライン旅行会社Ctripと連携を開始する等、台湾、香港、中国、韓国を中心としたそれぞれの国及び地域に適した情報発信や販売促進を図りました。さらに、全日本空輸株式会社との観光振興強化に向けた連携や各種プロモーションにより、クルーズトレイン「ななつ星in九州」や11のD&S列車をはじめ、九州の自然・食・温泉・歴史文化・沿線地域の方々によるおもてなしなど、九州ブランドの認知度向上と九州への誘客促進に取り組みました。
輸送面では、「ラグビーワールドカップ2019」開催にあわせた臨時列車等、イベントや時季にあわせたきめ細かな輸送施策を展開し、各線区の需要動向に応じた効率的な輸送体系の構築に努めるとともに、九州新幹線を中心とした輸送ネットワークの更なる充実を図りました。なお、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響により、日田彦山線添田~夜明間において代行輸送を実施しています。また、「平成28年熊本地震」の影響により運転を見合わせている豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、国や関係自治体と連携・調整しながら、2020年度内の運転再開に向けて工事を進めています。
船舶事業においては、日韓関係の影響による旅行需要の落ち込みを受け、収支改善を図るために運航本数を見直す等コスト削減に努めました。
バス事業においては、九州新幹線と接続する高速バス「B&Sみやざき」などの高速バス路線において利用促進を図るとともに、一部路線の見直しにより収益確保に努めました。
新たなモビリティサービス(MaaS)の構築に向けては、他の交通事業者等との連携に取り組みました。具体的には、昨年5月に小田急電鉄株式会社と、同社が開発する共通データ基盤へのデータの連携及びサービスの検討に関する連携拡大に合意しました。また、第一交通産業株式会社と移動サービスの利便性向上に向けた業務提携契約を締結するとともに、昨年6月より提携を記念した「ネット列車予約×SUGOCAでタクシーに乗ろう」キャンペーンを実施しました。昨年10月には、西日本鉄道株式会社と輸送サービスの連携に関する覚書を締結、12月には由布院地区及び宮崎県における観光型MaaSの実証実験に向けた実行委員会を設立しました。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛等の影響により、第4四半期において当社の鉄道旅客運輸収入が大幅に減少しました。なお、感染拡大防止の観点から、九州新幹線や特急列車は3月20日以降、高速バスについては3月21日以降、それぞれ一部の便を運転休止しました。また、高速船については、日本及び韓国政府による水際対策の強化に伴い3月9日以降、全便を運航休止しました。
この結果、営業収益は前期比4.5%減の1,737億30百万円、営業利益は前期比27.6%減の198億48百万円、EBITDAは前期比13.9%減の295億63百万円となりました。
② 建設グループ
建設業においては、鉄道高架化工事、新幹線関連工事、マンション工事等を受注するとともに、工事の着実な遂行と経費の節減に努めました。
この結果、営業収益は前期比5.9%増の993億85百万円、営業利益は前期比4.6%増の65億80百万円、EBITDAは前期比5.8%増の76億89百万円となりました。
③ 不動産・ホテルグループ
不動産賃貸業においては、昨年3月、小倉駅に開業した飲食エリア「小倉宿 駅から三十歩横丁」の積極的な営業活動を行うとともに、昨年春に「アミュプラザ博多」、昨年秋に「アミュプラザ鹿児島」のリニューアルを実施したほか、各駅ビルの駅前広場等を活用した積極的なイベント展開を行い収益拡大に努めました。
不動産販売業においては、分譲マンション「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」や「MJR姪浜駅南」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン上熊本駅前」や「MJRザ・ガーデン宮崎駅前」等の販売に取り組みました。
ホテル業においては、最上位ブランド「THE BLOSSOM」を創設し、昨年8月に「THE BLOSSOM HIBIYA」、9月に「THE BLOSSOM HAKATA Premier」を開業するとともに、既存ホテルのレベニューマネジメントを強化し、収益拡大に努めました。
また、昨年4月にガバナンスの強化、スケールメリットを活かした営業力強化や経営効率化及び人材育成力の向上を目的として、駅ビル会社及びホテル会社を統括する中間持株会社をそれぞれ設立しました。
しかしながら、第4四半期において、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛等の影響により、駅ビル及びホテルのご利用が落ち込みました。なお、感染拡大防止の観点から各駅ビルの営業時間短縮を実施しました。
この結果、営業収益は前期比0.8%増の907億79百万円、営業利益は前期比24.8%減の191億37百万円、EBITDAは前期比14.1%減の305億95百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業においては、ドラッグストアやコンビニエンスストアの新規出店を進めました。
飲食業においては、昨年4月にカフェを東京に初出店しエリア拡大を進めるとともに、8月にシナモンロール専門店を初出店するなど新業態店舗の開発に積極的に取り組みました。
しかしながら、第4四半期において、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛等の影響により、駅構内を中心に、コンビニエンスストア及び飲食店舗等のご利用が落ち込みました。
この結果、営業収益は前期比0.6%増の1,046億57百万円、営業利益は前期比17.2%減の28億25百万円、EBITDAは前期比11.8%減の44億79百万円となりました。
⑤ その他グループ
建設機械販売・レンタル事業においては、積極的な営業活動を行い収益確保に努めました。
この結果、営業収益は前期比0.7%減の721億91百万円、営業利益は前期比3.8%増の22億84百万円、EBITDAは前期比3.6%増の43億39百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||||
前年同期比(%) | ||||||
営業日数 | 日 | 366 | 100.3 | |||
営業キロ | 新幹線 | キロ | 288.9 | 100.0 | ||
在来線 | 〃 | 1,984.1 | 100.0 | |||
計 | 〃 | 2,273.0 | 100.0 | |||
客車走行キロ | 新幹線 | 千キロ | 62,968 | 100.2 | ||
在来線 | 〃 | 224,556 | 100.3 | |||
計 | 〃 | 287,524 | 100.2 | |||
輸送人員 | 定期 | 千人 | 218,865 | 100.6 | ||
定期外 | 〃 | 118,732 | 98.0 | |||
計 | 〃 | 337,598 | 99.7 | |||
輸送人キロ | 新幹線 | 定期 | 千人キロ | 204,831 | 102.6 | |
定期外 | 〃 | 1,745,522 | 95.2 | |||
計 | 〃 | 1,950,353 | 96.0 | |||
在来線 | 幹線 | 定期 | 〃 | 3,505,119 | 99.9 | |
定期外 | 〃 | 2,821,856 | 95.7 | |||
計 | 〃 | 6,326,976 | 98.0 | |||
地方 交通線 | 定期 | 〃 | 501,616 | 99.1 | ||
定期外 | 〃 | 280,157 | 96.4 | |||
計 | 〃 | 781,773 | 98.1 | |||
計 | 定期 | 〃 | 4,006,736 | 99.8 | ||
定期外 | 〃 | 3,102,014 | 95.8 | |||
計 | 〃 | 7,108,750 | 98.0 | |||
合計 | 定期 | 〃 | 4,211,567 | 99.9 | ||
定期外 | 〃 | 4,847,536 | 95.6 | |||
計 | 〃 | 9,059,103 | 97.6 | |||
乗車効率 | 新幹線 | % | 46.6 | 96.3 | ||
在来線 | 〃 | 29.2 | 97.3 | |||
計 | 〃 | 30.0 | 96.9 |
(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
乗車効率 | = | 輸送人キロ | × | 100 |
客車走行キロ × 客車平均定員 |
② 収入実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |||
前年同期比(%) | |||||
旅客運輸収入 | 新幹線 | 定期 | 百万円 | 2,817 | 102.9 |
定期外 | 〃 | 49,507 | 94.8 | ||
計 | 〃 | 52,325 | 95.2 | ||
在来線 | 定期 | 〃 | 29,779 | 100.2 | |
定期外 | 〃 | 65,276 | 97.7 | ||
計 | 〃 | 95,055 | 98.5 | ||
合計 | 定期 | 〃 | 32,596 | 100.4 | |
定期外 | 〃 | 114,784 | 96.4 | ||
計 | 〃 | 147,381 | 97.3 | ||
荷物収入 | 〃 | 0 | 87.0 | ||
合計 | 〃 | 147,381 | 97.3 | ||
鉄道線路使用料収入 | 〃 | 575 | 105.3 | ||
運輸雑収 | 〃 | 17,247 | 85.5 | ||
収入合計 | 〃 | 165,204 | 95.9 |
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収による増等により前連結会計年度に比べ189億94百万円増加し、604億68百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ23億24百万円増加し、769億43百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、配当金の支払等により前連結会計年度に比べ22億75百万円減少し、33億69百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ130億47百万円減少し、238億17百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
なお、当社グループの重要な会計上の見積りである固定資産の減損会計、繰延税金資産の回収可能性については、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、新型コロナウイルス感染拡大の影響が翌連結会計年度の一定期間まで続くとの仮定のもと、会計上の見積りを行っております。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は不確定要素が多いことから、将来キャッシュ・フローの金額や課税所得の発生時期、金額が変動した場合、固定資産の減損会計や繰延税金資産の回収可能性の会計上の見積りに影響を与える可能性があります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等による鉄道旅客運輸収入の減などにより、前連結会計年度に比べ1.8%減の4,326億44百万円となり、10期ぶりの減収となりました。
運輸サービスセグメントは、前連結会計年度に比べ4.5%減少し、1,737億30百万円となりました。これは、当社の鉄道旅客運輸収入が、新幹線及び在来線における新型コロナウイルスの感染拡大の影響等により、前連結会計年度に比べ2.7%減の1,473億81百万円となったこと等によるものです。
新幹線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ4.0%減の19億50百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ2.9%増の28億17百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ5.2%減の495億7百万円となり、全体では前連結会計年度に比べ4.8%減の523億25百万円となりました。
在来線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ2.0%減の71億8百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ0.2%増の297億79百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ2.3%減の652億76百万円、全体では前連結会計年度に比べ1.5%減の950億55百万円となりました。
建設セグメントは、前連結会計年度に比べ5.9%増加し、993億85百万円となりました。これは、九州新幹線西九州ルートの関連工事の増などによるものです。
不動産・ホテルセグメントは、前連結会計年度に比べ0.8%増加し、907億79百万円となりました。これは、「THE BLOSSOM HIBIYA」や「THE BLOSSOM HAKATA Premier」の開業などによるものです。
流通・外食セグメントは、前連結会計年度に比べ0.6%増加し、1,046億57百万円となりました。これは、店舗数増に伴うファーストフード店舗の収入増などによるものです。
その他セグメントは、前連結会計年度に比べ0.7%減少し、721億91百万円となりました。これは、リース・割賦事業の譲渡などによるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ1.8%増加し、3,832億38百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ0.1%増加し、2,734億円となりました。これは、建設業の売上増等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ6.2%増加し、1,098億38百万円となりました。これは当社の税制特例措置廃止による租税公課の増加や減価償却費の増加等によるものです。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ22.7%減少し、494億6百万円となりました。
なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の14.5%に対し、当連結会計年度は11.4%となりました。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ25.0%減少し、28億63百万円となりました。これは、当社の長期資金運用益の減等によるものです。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ42.3%増加し、16億55百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。
⑤ 経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ23.9%減少し、506億13百万円となりました。
なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の15.1%に対し、当連結会計年度は11.7%となりました。
⑥ 特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ54億21百万円悪化し、75億22百万円の損失となりました。これは、建造中の新型高速船「QUEEN BEETLE」の減損損失等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ36.0%減少し、314億95百万円となりました。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ3.4%増加し、8,285億90百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ11.2%減少し、1,612億93百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ7.7%増加し、6,672億97百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ7.8%増加し、4,102億91百万円となりました。流動負債は、1年内返済予定の長期借入金の増等により前連結会計年度末に比べ16.2%増加し、2,002億48百万円となりました。固定負債は、長期借入金の減はあったものの、社債の発行等により前連結会計年度末に比べ0.8%増加し、2,100億43百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ0.6%減少し、4,182億98百万円となりました。これは、配当金の支払や自己株式の取得及び消却等によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ130億47百万円減少し、238億17百万円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収による増等により前連結会計年度に比べ189億94百万円増加し、604億68百万円となりました。
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ23億24百万円増加し、769億43百万円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、配当金の支払等により前連結会計年度に比べ22億75百万円減少し、33億69百万円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 財務政策
当社グループの資金需要の主なものは設備投資資金及び運転資金です。
資金調達の方針については、「JR九州グループ中期経営計画 2019-2021」において、「フリーキャッシュ・フローの不足を補うため借入余力を活用」するとしており、既存債務の返済資金や設備投資資金のうち、当社グループのキャッシュ・フローで不足する部分を調達しております。その調達手段は、主に社債の発行や金融機関からの借入であり、市場や金利の動向を総合的に勘案しながら決定しております。
当社グループはキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。
当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2029年及び2039年とする2本の無担保普通社債を総額200億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付を取得しております。
また、短期資金の需要に対応するため、当社グループは主要な取引銀行に当座借越枠を設定しております。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業キャッシュ・フローが大幅に減少していることから、手元流動性の確保及び資金調達手段の多様化のため、当社は2020年5月に主要な取引銀行に1,200億円のコミットメントラインを設定し、コマーシャルペーパーについて、株式会社格付投資情報センターよりa-1+の短期格付を取得しております。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。