有価証券報告書-第34期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
1 経営成績等の概要
(1)経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、国内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、景気下押し圧力に直面しました。昨年5月の政府の緊急事態宣言解除以降、経済活動が徐々に再開する中で、個人消費については持ち直しの動きが見られるものの、本年1月中旬より感染の再拡大が生じたことにより、11都府県にて緊急事態宣言が発令されるなど、景気回復の時期や程度等については依然として不確実性が高く、当面厳しい状況が続くと考えられます。
当社グループにおきましても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い鉄道事業をはじめとした各事業において、移動需要の減少及び個人消費の低迷による影響を受けております。このような状況のなか、当社グループは、基幹事業である鉄道における「安全」は最大の使命であるとの認識のもと、鉄道の安全への投資を着実に行うとともに、拠点地域の戦略的まちづくりの一環として昨年11月に「アミュプラザみやざき」を開業し、また、本年4月の熊本駅ビル開業に向けた準備を進めました。さらに、新型コロナウイルス感染症の収束を願って九州の元気を発信する「その日まで、ともにがんばろう」プロジェクトの展開や、本年3月の九州新幹線全線開業10周年を迎え、これまで支えていただいたみなさまへの感謝の気持ちと明るい未来を願った、一夜限り光を放ちながら走る「流れ星新幹線」の運行等、「地域を元気に」する取り組みも行いました。一方で、先行き不透明な経営環境の変化に備え、資金の積極的かつ前倒しでの調達、従業員の一時帰休を含めたコスト削減、投資計画の見直し等の必要な対策を講じてまいりました。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比32.1%減の2,939億14百万円となりました。営業損失は228億73百万円(前期の営業利益は494億6百万円)、EBITDAは前期比93.8%減の46億39百万円、経常損失は193億23百万円(前期の経常利益は506億13百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は189億84百万円(前期の親会社株主に帰属する当期純利益は314億95百万円)となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(単位:百万円)
(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全を確保し、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を講じたうえで収入の確保に努めるとともに、投資の抑制及びコスト削減を進めました。
安全面では、車両の更新工事や老朽設備の取替等の安全投資を着実に実施しました。また、昨年4月より、列車巡視支援システム及び電車線路モニタリング装置を一部営業車両に搭載し、検査業務の効率化や設備の品質向上、係員の安全性向上に向けた取り組みを開始しました。
サービス面では、新型コロナウイルス感染症の感染防止に配慮しながら、お客さまの気持ちを汲み取り、積極的に行動を起こすことで快適にご利用いただけるよう努めました。また、列車内における無料公衆無線LANサービス「JR-KYUSHU FREE Wi-Fi」の導入拡大や、優先席へのヘルプマークの掲出等、お客さまに寄り添った多様なサービスの提供に取り組みました。
営業面では、昨年5月より指宿枕崎線郡元~喜入間において「スマートサポートステーション」を導入しました。また、ネット限定商品「みんなの九州きっぷ」の発売などを通じ、インターネット列車予約サービスのご利用拡大に努めたほか、「JRキューポアプリ」の入会・利用促進キャンペーン等を実施し、お客さまの利便性向上と鉄道事業並びに他事業の相互送客の促進を図りました。昨年10月には、新D&S列車「36ぷらす3」の運行を開始しました。
輸送面では、駅や車両における感染防止対策を講じつつ、交通ネットワークという社会インフラの維持に努める一方で、移動需要の減少を踏まえ運行本数の削減を行いました。また、安全を確保したうえでオペレーションの効率化を推進する取り組みの一環として、昨年12月より香椎線において自動列車運転装置の実証運転を開始しました。なお、昨年7月に発生した「令和2年7月豪雨」の影響により、久大本線及び肥薩線の鉄道施設に被害が生じ、一部区間において代行輸送を行っておりましたが、久大本線につきましては、復旧工事が完了し、本年3月1日より全線で運転を再開しました。また、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響により添田~夜明間で代行輸送を行っている日田彦山線においては、バス高速輸送システム(BRT)の導入による復旧について関係自治体と合意し、復旧に向けた準備を進めています。「平成28年熊本地震」の影響により不通となっていた豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、復旧工事が完了し、昨年8月8日に全線で運転を再開しました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によるお客さまのご利用状況の変化にあわせて、本年3月13日に新幹線、特急列車を中心に運行本数を削減するダイヤ見直しを実施しました。
船舶事業においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための水際対策として、日本政府から旅客運送停止要請を受け、昨年3月9日からの定期航路全便の運航休止を継続しました。一方、運航休止中の取り組みとして、本年3月から新型高速船「QUEEN BEETLE」での国内遊覧運航を開始しました。
バス事業においては、感染拡大防止の取り組みを通してお客さまに安心してご乗車いただける環境づくりに努めつつ、ご利用状況に応じた運行休止や減便を行いました。
新たなモビリティサービス(MaaS)の分野においては、第一交通産業株式会社及び西日本鉄道株式会社との連携を軸に、持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けた取り組みを推進しました。昨年3月に開始した日豊本線下曽根駅における西鉄バスとの連携をモデルに、北九州市内の駅で、列車とバスの接続の改善や、バス車内で列車の発車時刻を表示する取り組みを拡大するなど、利便性の向上に努めました。また、国土交通省の「令和2年度日本版MaaS推進・支援事業」に選定された宮崎県におけるMaaS実証実験を昨年11月から実施し、バス、タクシー、カーシェア、シェアサイクルなど多様な交通モードの連携によるシームレスな交通サービスの実現や、「アミュプラザみやざき」等の商業施設及び観光施設と連携した来街促進と中心市街地の回遊性向上を目指した取り組みを推進しました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、鉄道、船舶、バスの各事業において大幅な減収となったことにより、営業収益は前期比45.1%減の952億94百万円、営業損失は376億29百万円(前期の営業利益は198億48百万円)、EBITDAは△265億7百万円(前期のEBITDAは295億63百万円)となりました。
② 建設グループ
建設業においては、鉄道の専門技術を活かし、鉄道に係る土木・軌道・建築工事やメンテナンス事業、車両機械設備工事業を通して鉄道事業の安全・安定輸送に貢献しました。鉄道工事については、昨年度に引き続き、西九州新幹線や北陸新幹線関連工事を、その他の工事については、本年4月開業の「アミュプラザくまもと」等の熊本駅周辺開発の工事の着実な遂行に努めました。
さらに、鉄道高架化工事、新幹線関連工事、マンション工事等、官公庁工事や民間工事の受注やコスト削減に努めました。
この結果、営業収益は前期比2.9%減の965億23百万円、営業利益は前期比6.2%増の69億90百万円、EBITDAは前期比4.6%増の80億41百万円となりました。
③ 不動産・ホテルグループ
不動産賃貸業においては、お客さまに安心してご利用いただける環境づくりに努めるとともに、昨年11月に「アミュプラザみやざき」を開業しました。また、昨年5月より賃貸マンション「RJRプレシア天神サウス」、本年2月より「RJRプレシア熊本駅前」等の入居を開始しました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う駅ビルの休館及び営業時間短縮、出店テナント支援を目的とした賃料減免等の影響により、減収となりました。
不動産販売業においては、モデルルームの一時休業や感染防止対策を講じつつ、分譲マンション「MJR堺筋本町タワー」、「MJR千早ブランシエラ」や「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン下大利」、「MJRザ・ガーデン香椎」等の販売に取り組みました。
ホテル業においては、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、国内16施設中8施設で休館を実施しましたが、営業再開後は国や各地方自治体の観光支援策の活用、テレワークプランの造成等、限られた需要の取り込みを図りました。しかしながら、移動の自粛やイベントの中止、インバウンド需要の消滅等の影響により、大幅な減収となりました。
この結果、営業収益は前期比11.7%減の801億27百万円、営業利益は前期比48.2%減の99億13百万円、EBITDAは前期比27.4%減の222億25百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業においては、コンビニエンスストアの新規出店やリニューアルを進めたほか、昨年11月には、「アミュプラザみやざき」に「東急ハンズ宮崎店」を出店するなど、落ち込む需要の歯止めに注力しました。また、昨年5月にJR九州ドラッグイレブン株式会社の株式の一部を株式会社ツルハホールディングスへ譲渡しました。これに伴い、同社を第1四半期連結会計期間末より連結の範囲から除外するとともに、持分法適用の範囲に含めております。
飲食業においては、昨年7月に福岡市地下鉄姪浜駅に「めいのはまMarché(マルシェ)」を、昨年9月にピザ専門店とチキン専門店のコラボ店舗や高級食パン専門店を、昨年11月に「アミュプラザみやざき」に牛たん専門店をオープンするなど新規出店を進めました。また、博多駅のホームの店舗をポップアップショップとして活用するなど新たな取り組みを始めました。一方で、不採算店舗の閉店など一層の経営効率化にも努めました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、駅構内店舗や既存の飲食店舗が大幅な減収となった結果、営業収益は前期比50.8%減の514億88百万円、営業損失は25億75百万円(前期の営業利益は28億25百万円)、EBITDAは△11億80百万円(前期のEBITDAは44億79百万円)となりました。
⑤ その他グループ
建設機械販売・レンタル事業においては、積極的な営業活動を行い収益の確保に努めました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、営業収益は前期比11.8%減の636億41百万円、営業利益は前期比23.3%減の17億51百万円、EBITDAは前期比14.6%減の37億7百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
② 収入実績
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、鉄道旅客運輸収入の減等により、103億61百万円となりました。(前連結会計年度は604億68百万円の収入)
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出の減等により前連結会計年度に比べ230億31百万円減少し、539億12百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、長期借入金及び社債の発行等により前連結会計年度に比べ1,025億円増加し、1,058億70百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ412億1百万円増加し、650億19百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた見積りや仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響による鉄道旅客運輸収入の減などにより、前連結会計年度に比べ32.1%減の2,939億14百万円となり、2期連続の減収となりました。
運輸サービスセグメントは、前連結会計年度に比べ45.1%減少し、952億94百万円となりました。これは、当社の鉄道旅客運輸収入が、新幹線及び在来線における新型コロナウイルス感染症の影響により、前連結会計年度に比べ48.2%減の763億25百万円となったこと等によるものです。
新幹線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ55.5%減の8億68百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ12.5%減の24億64百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ59.5%減の200億27百万円となり、全体では前連結会計年度に比べ57.0%減の224億92百万円となりました。
在来線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ33.9%減の46億96百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ20.0%減の238億21百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ54.0%減の300億11百万円、全体では前連結会計年度に比べ43.4%減の538億33百万円となりました。
建設セグメントは、前連結会計年度に比べ2.9%減少し、965億23百万円となりました。これは、工事の減によるものです。
不動産・ホテルセグメントは、前連結会計年度に比べ11.7%減少し、801億27百万円となりました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響によるホテル売上高や賃料収入の減などによるものです。
流通・外食セグメントは、前連結会計年度に比べ50.8%減少し、514億88百万円となりました。これは、JR九州ドラッグイレブン株式会社(現:株式会社ドラッグイレブン)の株式の一部譲渡や新型コロナウイルス感染症の影響に伴う個人消費の低迷によるものです。
その他セグメントは、前連結会計年度に比べ11.8%減少し、636億41百万円となりました。これは、建設資材の売上高減やリース・割賦事業の譲渡などによるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ17.3%減少し、3,167億88百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ17.7%減少し、2,250億37百万円となりました。これは、JR九州ドラッグイレブン株式会社(現:株式会社ドラッグイレブン)の株式の一部譲渡等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ16.5%減少し、917億50百万円となりました。これは、JR九州ドラッグイレブン株式会社(現:株式会社ドラッグイレブン)の株式の一部譲渡等によるものです。
③ 営業利益
営業損失は、228億73百万円となりました(前連結会計年度は営業利益494億6百万円)。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ115.3%増加し、61億63百万円となりました。これは、雇用調整助成金の受入等によるものです。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ57.8%増加し、26億12百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。
⑤ 経常利益
経常損失は、193億23百万円となりました(前連結会計年度は経常利益506億13百万円)。
⑥ 特別損益
特別利益は、前連結会計年度に比べ12.2%減少し、302億65百万円となりました。これは、工事負担金等受入額の減等によるものです。
特別損失は、前連結会計年度に比べ20.9%減少し、332億8百万円となりました。これは、固定資産圧縮損の減等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純損失は、189億84百万円となりました(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益314億95百万円)。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ7.6%増加し、8,913億79百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ24.6%増加し、2,009億6百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ3.5%増加し、6,904億72百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ20.9%増加し、4,959億71百万円となりました。流動負債は、1年内返済予定の長期借入金の減等により前連結会計年度末に比べ27.7%減少し、1,446億81百万円となりました。固定負債は、社債の発行や長期借入金の増等により前連結会計年度末に比べ67.2%増加し、3,512億90百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ5.5%減少し、3,954億8百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純損失や配当金の支払等による利益剰余金の減等によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ412億1百万円増加し、650億19百万円となりました。
営業活動の結果支出した資金は、鉄道旅客運輸収入の減等により、103億61百万円となりました。(前年同期は604億68百万円の収入)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出の減等により前年同期に比べ230億31百万円減少し、539億12百万円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、長期借入金及び社債の発行等により前年同期に比べ1,025億円増加し、1,058億70百万円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 財務政策
資金調達の方針については、「JR九州グループ中期経営計画2019-2021~次の『成長ステージ』に向けて~」において、「フリーキャッシュ・フローの不足を補うため借入余力を活用」するとしており、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち、当社グループのキャッシュ・フローで不足する部分を調達しております。その調達手段は、主に社債の発行や金融機関からの借入であり、市場や金利の動向を総合的に勘案しながら決定しております。
当社グループはキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。
当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2023年から2040年とする3本の無担保普通社債を総額400億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付を取得しております。
当社グループは、資金の流動性確保のため、主要な取引銀行に当座借越枠を設定しております。また、コマーシャル・ペーパーについて、当社は株式会社格付投資情報センターよりa-1+の短期(CP)格付を取得しております。なお、当連結会計年度末における当座借越残高及びコマーシャル・ペーパーの発行残高はありません。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。
(1)経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、国内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、景気下押し圧力に直面しました。昨年5月の政府の緊急事態宣言解除以降、経済活動が徐々に再開する中で、個人消費については持ち直しの動きが見られるものの、本年1月中旬より感染の再拡大が生じたことにより、11都府県にて緊急事態宣言が発令されるなど、景気回復の時期や程度等については依然として不確実性が高く、当面厳しい状況が続くと考えられます。
当社グループにおきましても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い鉄道事業をはじめとした各事業において、移動需要の減少及び個人消費の低迷による影響を受けております。このような状況のなか、当社グループは、基幹事業である鉄道における「安全」は最大の使命であるとの認識のもと、鉄道の安全への投資を着実に行うとともに、拠点地域の戦略的まちづくりの一環として昨年11月に「アミュプラザみやざき」を開業し、また、本年4月の熊本駅ビル開業に向けた準備を進めました。さらに、新型コロナウイルス感染症の収束を願って九州の元気を発信する「その日まで、ともにがんばろう」プロジェクトの展開や、本年3月の九州新幹線全線開業10周年を迎え、これまで支えていただいたみなさまへの感謝の気持ちと明るい未来を願った、一夜限り光を放ちながら走る「流れ星新幹線」の運行等、「地域を元気に」する取り組みも行いました。一方で、先行き不透明な経営環境の変化に備え、資金の積極的かつ前倒しでの調達、従業員の一時帰休を含めたコスト削減、投資計画の見直し等の必要な対策を講じてまいりました。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比32.1%減の2,939億14百万円となりました。営業損失は228億73百万円(前期の営業利益は494億6百万円)、EBITDAは前期比93.8%減の46億39百万円、経常損失は193億23百万円(前期の経常利益は506億13百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は189億84百万円(前期の親会社株主に帰属する当期純利益は314億95百万円)となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(単位:百万円)
セグメントの名称 | 営業収益 | 営業利益又は営業損失(△) | EBITDA(注2) | ||||||
当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | |
運輸サービス | 95,294 | △78,436 | △45.1% | △37,629 | △57,477 | - | △26,507 | △56,071 | - |
建設 | 96,523 | △2,861 | △2.9% | 6,990 | 410 | 6.2% | 8,041 | 351 | 4.6% |
不動産・ホテル | 80,127 | △10,652 | △11.7% | 9,913 | △9,224 | △48.2% | 22,225 | △8,369 | △27.4% |
不動産賃貸業 | 49,761 | △5,492 | △9.9% | 12,072 | △4,721 | △28.1% | 22,009 | △4,122 | △15.8% |
不動産販売業 | 23,560 | 4,638 | 24.5% | 2,640 | 1,074 | 68.6% | 2,652 | 1,076 | 68.3% |
ホテル業 | 6,806 | △9,798 | △59.0% | △4,799 | △5,577 | - | △2,437 | △5,323 | - |
流通・外食 | 51,488 | △53,169 | △50.8% | △2,575 | △5,400 | - | △1,180 | △5,659 | - |
その他 | 63,641 | △8,550 | △11.8% | 1,751 | △533 | △23.3% | 3,707 | △632 | △14.6% |
合計 | 387,075 | △153,670 | △28.4% | △21,548 | △72,225 | - | 6,286 | △70,381 | △91.8% |
調整額(注1) | △93,161 | 14,940 | - | △1,325 | △54 | - | △1,647 | △70 | - |
連結数値 | 293,914 | △138,730 | △32.1% | △22,873 | △72,279 | - | 4,639 | △70,451 | △93.8% |
(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全を確保し、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を講じたうえで収入の確保に努めるとともに、投資の抑制及びコスト削減を進めました。
安全面では、車両の更新工事や老朽設備の取替等の安全投資を着実に実施しました。また、昨年4月より、列車巡視支援システム及び電車線路モニタリング装置を一部営業車両に搭載し、検査業務の効率化や設備の品質向上、係員の安全性向上に向けた取り組みを開始しました。
サービス面では、新型コロナウイルス感染症の感染防止に配慮しながら、お客さまの気持ちを汲み取り、積極的に行動を起こすことで快適にご利用いただけるよう努めました。また、列車内における無料公衆無線LANサービス「JR-KYUSHU FREE Wi-Fi」の導入拡大や、優先席へのヘルプマークの掲出等、お客さまに寄り添った多様なサービスの提供に取り組みました。
営業面では、昨年5月より指宿枕崎線郡元~喜入間において「スマートサポートステーション」を導入しました。また、ネット限定商品「みんなの九州きっぷ」の発売などを通じ、インターネット列車予約サービスのご利用拡大に努めたほか、「JRキューポアプリ」の入会・利用促進キャンペーン等を実施し、お客さまの利便性向上と鉄道事業並びに他事業の相互送客の促進を図りました。昨年10月には、新D&S列車「36ぷらす3」の運行を開始しました。
輸送面では、駅や車両における感染防止対策を講じつつ、交通ネットワークという社会インフラの維持に努める一方で、移動需要の減少を踏まえ運行本数の削減を行いました。また、安全を確保したうえでオペレーションの効率化を推進する取り組みの一環として、昨年12月より香椎線において自動列車運転装置の実証運転を開始しました。なお、昨年7月に発生した「令和2年7月豪雨」の影響により、久大本線及び肥薩線の鉄道施設に被害が生じ、一部区間において代行輸送を行っておりましたが、久大本線につきましては、復旧工事が完了し、本年3月1日より全線で運転を再開しました。また、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響により添田~夜明間で代行輸送を行っている日田彦山線においては、バス高速輸送システム(BRT)の導入による復旧について関係自治体と合意し、復旧に向けた準備を進めています。「平成28年熊本地震」の影響により不通となっていた豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、復旧工事が完了し、昨年8月8日に全線で運転を再開しました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によるお客さまのご利用状況の変化にあわせて、本年3月13日に新幹線、特急列車を中心に運行本数を削減するダイヤ見直しを実施しました。
船舶事業においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための水際対策として、日本政府から旅客運送停止要請を受け、昨年3月9日からの定期航路全便の運航休止を継続しました。一方、運航休止中の取り組みとして、本年3月から新型高速船「QUEEN BEETLE」での国内遊覧運航を開始しました。
バス事業においては、感染拡大防止の取り組みを通してお客さまに安心してご乗車いただける環境づくりに努めつつ、ご利用状況に応じた運行休止や減便を行いました。
新たなモビリティサービス(MaaS)の分野においては、第一交通産業株式会社及び西日本鉄道株式会社との連携を軸に、持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けた取り組みを推進しました。昨年3月に開始した日豊本線下曽根駅における西鉄バスとの連携をモデルに、北九州市内の駅で、列車とバスの接続の改善や、バス車内で列車の発車時刻を表示する取り組みを拡大するなど、利便性の向上に努めました。また、国土交通省の「令和2年度日本版MaaS推進・支援事業」に選定された宮崎県におけるMaaS実証実験を昨年11月から実施し、バス、タクシー、カーシェア、シェアサイクルなど多様な交通モードの連携によるシームレスな交通サービスの実現や、「アミュプラザみやざき」等の商業施設及び観光施設と連携した来街促進と中心市街地の回遊性向上を目指した取り組みを推進しました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、鉄道、船舶、バスの各事業において大幅な減収となったことにより、営業収益は前期比45.1%減の952億94百万円、営業損失は376億29百万円(前期の営業利益は198億48百万円)、EBITDAは△265億7百万円(前期のEBITDAは295億63百万円)となりました。
② 建設グループ
建設業においては、鉄道の専門技術を活かし、鉄道に係る土木・軌道・建築工事やメンテナンス事業、車両機械設備工事業を通して鉄道事業の安全・安定輸送に貢献しました。鉄道工事については、昨年度に引き続き、西九州新幹線や北陸新幹線関連工事を、その他の工事については、本年4月開業の「アミュプラザくまもと」等の熊本駅周辺開発の工事の着実な遂行に努めました。
さらに、鉄道高架化工事、新幹線関連工事、マンション工事等、官公庁工事や民間工事の受注やコスト削減に努めました。
この結果、営業収益は前期比2.9%減の965億23百万円、営業利益は前期比6.2%増の69億90百万円、EBITDAは前期比4.6%増の80億41百万円となりました。
③ 不動産・ホテルグループ
不動産賃貸業においては、お客さまに安心してご利用いただける環境づくりに努めるとともに、昨年11月に「アミュプラザみやざき」を開業しました。また、昨年5月より賃貸マンション「RJRプレシア天神サウス」、本年2月より「RJRプレシア熊本駅前」等の入居を開始しました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う駅ビルの休館及び営業時間短縮、出店テナント支援を目的とした賃料減免等の影響により、減収となりました。
不動産販売業においては、モデルルームの一時休業や感染防止対策を講じつつ、分譲マンション「MJR堺筋本町タワー」、「MJR千早ブランシエラ」や「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン下大利」、「MJRザ・ガーデン香椎」等の販売に取り組みました。
ホテル業においては、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、国内16施設中8施設で休館を実施しましたが、営業再開後は国や各地方自治体の観光支援策の活用、テレワークプランの造成等、限られた需要の取り込みを図りました。しかしながら、移動の自粛やイベントの中止、インバウンド需要の消滅等の影響により、大幅な減収となりました。
この結果、営業収益は前期比11.7%減の801億27百万円、営業利益は前期比48.2%減の99億13百万円、EBITDAは前期比27.4%減の222億25百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業においては、コンビニエンスストアの新規出店やリニューアルを進めたほか、昨年11月には、「アミュプラザみやざき」に「東急ハンズ宮崎店」を出店するなど、落ち込む需要の歯止めに注力しました。また、昨年5月にJR九州ドラッグイレブン株式会社の株式の一部を株式会社ツルハホールディングスへ譲渡しました。これに伴い、同社を第1四半期連結会計期間末より連結の範囲から除外するとともに、持分法適用の範囲に含めております。
飲食業においては、昨年7月に福岡市地下鉄姪浜駅に「めいのはまMarché(マルシェ)」を、昨年9月にピザ専門店とチキン専門店のコラボ店舗や高級食パン専門店を、昨年11月に「アミュプラザみやざき」に牛たん専門店をオープンするなど新規出店を進めました。また、博多駅のホームの店舗をポップアップショップとして活用するなど新たな取り組みを始めました。一方で、不採算店舗の閉店など一層の経営効率化にも努めました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、駅構内店舗や既存の飲食店舗が大幅な減収となった結果、営業収益は前期比50.8%減の514億88百万円、営業損失は25億75百万円(前期の営業利益は28億25百万円)、EBITDAは△11億80百万円(前期のEBITDAは44億79百万円)となりました。
⑤ その他グループ
建設機械販売・レンタル事業においては、積極的な営業活動を行い収益の確保に努めました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、営業収益は前期比11.8%減の636億41百万円、営業利益は前期比23.3%減の17億51百万円、EBITDAは前期比14.6%減の37億7百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||||
前年同期比(%) | ||||||
営業日数 | 日 | 365 | 99.7 | |||
営業キロ | 新幹線 | キロ | 288.9 | 100.0 | ||
在来線 | 〃 | 1,984.1 | 100.0 | |||
計 | 〃 | 2,273.0 | 100.0 | |||
客車走行キロ | 新幹線 | 千キロ | 57,820 | 91.8 | ||
在来線 | 〃 | 209,801 | 93.4 | |||
計 | 〃 | 267,621 | 93.1 | |||
輸送人員 | 定期 | 千人 | 183,129 | 83.7 | ||
定期外 | 〃 | 67,920 | 57.2 | |||
計 | 〃 | 251,050 | 74.4 | |||
輸送人キロ | 新幹線 | 定期 | 千人キロ | 177,647 | 86.7 | |
定期外 | 〃 | 690,696 | 39.6 | |||
計 | 〃 | 868,343 | 44.5 | |||
在来線 | 幹線 | 定期 | 〃 | 2,863,739 | 81.7 | |
定期外 | 〃 | 1,280,869 | 45.4 | |||
計 | 〃 | 4,144,608 | 65.5 | |||
地方 交通線 | 定期 | 〃 | 424,724 | 84.7 | ||
定期外 | 〃 | 127,042 | 45.3 | |||
計 | 〃 | 551,767 | 70.6 | |||
計 | 定期 | 〃 | 3,288,464 | 82.1 | ||
定期外 | 〃 | 1,407,912 | 45.4 | |||
計 | 〃 | 4,696,376 | 66.1 | |||
合計 | 定期 | 〃 | 3,466,111 | 82.3 | ||
定期外 | 〃 | 2,098,608 | 43.3 | |||
計 | 〃 | 5,564,720 | 61.4 | |||
乗車効率 | 新幹線 | % | 22.6 | 48.6 | ||
在来線 | 〃 | 20.6 | 70.6 | |||
計 | 〃 | 19.8 | 65.9 |
(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
乗車効率 | = | 輸送人キロ | × | 100 |
客車走行キロ × 客車平均定員 |
② 収入実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |||
前年同期比(%) | |||||
旅客運輸収入 | 新幹線 | 定期 | 百万円 | 2,464 | 87.5 |
定期外 | 〃 | 20,027 | 40.5 | ||
計 | 〃 | 22,492 | 43.0 | ||
在来線 | 定期 | 〃 | 23,821 | 80.0 | |
定期外 | 〃 | 30,011 | 46.0 | ||
計 | 〃 | 53,833 | 56.6 | ||
合計 | 定期 | 〃 | 26,285 | 80.6 | |
定期外 | 〃 | 50,039 | 43.6 | ||
計 | 〃 | 76,325 | 51.8 | ||
荷物収入 | 〃 | 0 | 93.7 | ||
合計 | 〃 | 76,325 | 51.8 | ||
鉄道線路使用料収入 | 〃 | 500 | 87.0 | ||
運輸雑収 | 〃 | 12,947 | 75.1 | ||
収入合計 | 〃 | 89,773 | 54.3 |
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、鉄道旅客運輸収入の減等により、103億61百万円となりました。(前連結会計年度は604億68百万円の収入)
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出の減等により前連結会計年度に比べ230億31百万円減少し、539億12百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、長期借入金及び社債の発行等により前連結会計年度に比べ1,025億円増加し、1,058億70百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ412億1百万円増加し、650億19百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた見積りや仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響による鉄道旅客運輸収入の減などにより、前連結会計年度に比べ32.1%減の2,939億14百万円となり、2期連続の減収となりました。
運輸サービスセグメントは、前連結会計年度に比べ45.1%減少し、952億94百万円となりました。これは、当社の鉄道旅客運輸収入が、新幹線及び在来線における新型コロナウイルス感染症の影響により、前連結会計年度に比べ48.2%減の763億25百万円となったこと等によるものです。
新幹線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ55.5%減の8億68百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ12.5%減の24億64百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ59.5%減の200億27百万円となり、全体では前連結会計年度に比べ57.0%減の224億92百万円となりました。
在来線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ33.9%減の46億96百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ20.0%減の238億21百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ54.0%減の300億11百万円、全体では前連結会計年度に比べ43.4%減の538億33百万円となりました。
建設セグメントは、前連結会計年度に比べ2.9%減少し、965億23百万円となりました。これは、工事の減によるものです。
不動産・ホテルセグメントは、前連結会計年度に比べ11.7%減少し、801億27百万円となりました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響によるホテル売上高や賃料収入の減などによるものです。
流通・外食セグメントは、前連結会計年度に比べ50.8%減少し、514億88百万円となりました。これは、JR九州ドラッグイレブン株式会社(現:株式会社ドラッグイレブン)の株式の一部譲渡や新型コロナウイルス感染症の影響に伴う個人消費の低迷によるものです。
その他セグメントは、前連結会計年度に比べ11.8%減少し、636億41百万円となりました。これは、建設資材の売上高減やリース・割賦事業の譲渡などによるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ17.3%減少し、3,167億88百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ17.7%減少し、2,250億37百万円となりました。これは、JR九州ドラッグイレブン株式会社(現:株式会社ドラッグイレブン)の株式の一部譲渡等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ16.5%減少し、917億50百万円となりました。これは、JR九州ドラッグイレブン株式会社(現:株式会社ドラッグイレブン)の株式の一部譲渡等によるものです。
③ 営業利益
営業損失は、228億73百万円となりました(前連結会計年度は営業利益494億6百万円)。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ115.3%増加し、61億63百万円となりました。これは、雇用調整助成金の受入等によるものです。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ57.8%増加し、26億12百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。
⑤ 経常利益
経常損失は、193億23百万円となりました(前連結会計年度は経常利益506億13百万円)。
⑥ 特別損益
特別利益は、前連結会計年度に比べ12.2%減少し、302億65百万円となりました。これは、工事負担金等受入額の減等によるものです。
特別損失は、前連結会計年度に比べ20.9%減少し、332億8百万円となりました。これは、固定資産圧縮損の減等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純損失は、189億84百万円となりました(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益314億95百万円)。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ7.6%増加し、8,913億79百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ24.6%増加し、2,009億6百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ3.5%増加し、6,904億72百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ20.9%増加し、4,959億71百万円となりました。流動負債は、1年内返済予定の長期借入金の減等により前連結会計年度末に比べ27.7%減少し、1,446億81百万円となりました。固定負債は、社債の発行や長期借入金の増等により前連結会計年度末に比べ67.2%増加し、3,512億90百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ5.5%減少し、3,954億8百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純損失や配当金の支払等による利益剰余金の減等によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ412億1百万円増加し、650億19百万円となりました。
営業活動の結果支出した資金は、鉄道旅客運輸収入の減等により、103億61百万円となりました。(前年同期は604億68百万円の収入)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出の減等により前年同期に比べ230億31百万円減少し、539億12百万円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、長期借入金及び社債の発行等により前年同期に比べ1,025億円増加し、1,058億70百万円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 財務政策
資金調達の方針については、「JR九州グループ中期経営計画2019-2021~次の『成長ステージ』に向けて~」において、「フリーキャッシュ・フローの不足を補うため借入余力を活用」するとしており、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち、当社グループのキャッシュ・フローで不足する部分を調達しております。その調達手段は、主に社債の発行や金融機関からの借入であり、市場や金利の動向を総合的に勘案しながら決定しております。
当社グループはキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。
当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2023年から2040年とする3本の無担保普通社債を総額400億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付を取得しております。
当社グループは、資金の流動性確保のため、主要な取引銀行に当座借越枠を設定しております。また、コマーシャル・ペーパーについて、当社は株式会社格付投資情報センターよりa-1+の短期(CP)格付を取得しております。なお、当連結会計年度末における当座借越残高及びコマーシャル・ペーパーの発行残高はありません。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。