有価証券報告書-第32期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
1 経営成績等の概要
(1)経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、輸出・生産の面では海外経済の減速の影響を受けるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に個人消費が底堅さを増すなど、緩やかに拡大しました。
このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2016-2018」のもと、「やさしくて力持ちの“総合的なまちづくり企業グループ”」を目指し、すべての事業において安全を基盤に、より一層のサービス向上に努め、各事業において積極的な事業展開による収益の拡大を図るとともに、より効率的な業務運営と徹底的なコスト削減を推進してきました。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比6.5%増の4,403億58百万円となりました。営業利益は前期比0.1%減の638億85百万円、EBITDAは前期比4.4%増の854億2百万円、経常利益は前期比0.8%減の665億39百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比2.3%減の492億40百万円となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。なお、当社グループの収益力をより的確に表すと当社が考え、経営数値目標として掲げている連結EBITDAについても記載しております。
(単位:百万円)
(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行うとともに、九州新幹線を基軸としたネットワークを最大限に活用し、お客さまの視点に立った営業施策を実施することにより収入確保に努めました。
安全面では、JR九州グループ全体の安全風土をつくるべく「それ、大丈夫?!これ、大丈夫?!」をスローガンとした安全創造運動を展開しました。また安全投資では、車両の新製・更新工事や老朽設備の取替等を着実に実施しました。
サービス面では、基本となる「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を当たり前に実践し、「笑顔」と「あいさつ」でお客さまをお迎えできるよう取り組みを進めました。
営業面では、九州新幹線を中心とした鉄道利用促進を図るべく、「九州新幹線2枚きっぷ」や新幹線定期券「新幹線エクセルパス」などの各種商品の販売促進に努めるとともに、NHK大河ドラマ「西郷どん」にあわせた「答えは、鹿児島にある。」プロモーションを展開しました。「JR九州インターネット列車予約サービス」については、インターネット限定商品の充実や「ネット予約チャンス!JRキューポチャンス!」プロモーションのほか、法人会員様向けの「JR九州インターネット列車予約ビジネス」の開始など、利用促進に取り組みました。また、昨年3月より新ルートにて運行を開始したクルーズトレイン「ななつ星in九州」や11のD&S(デザイン&ストーリー)列車をはじめ、九州の自然・食・温泉・歴史文化・沿線地域の方々によるおもてなしなど、九州ブランドの認知度向上と九州への誘客促進に努めました。地域の元気をつくる取り組みでもある「駅長おすすめのJR九州ウォーキング」については、地元の方々と連携した魅力あるコース設定に努め、多くのお客さまにご利用いただきました。さらに、海外からのお客さま向けの主力商品である「JR九州レールパス」についても、専用予約サイト「JR KYUSHU RAIL PASS Online Booking」における直接販売及び指定席事前予約サービスのほか、韓国、台湾、香港、中国を中心としたそれぞれの国及び地域に応じた情報発信や販売促進を図りました。
輸送面では、きめ細かな輸送施策を展開し、各線区の需要動向に応じた効率的な輸送体系の構築に努めるとともに、九州新幹線を中心とした輸送ネットワークの更なる充実を図ることで利用促進に努めました。一方、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響により久大本線及び日田彦山線の一部区間において、「平成30年7月豪雨」の影響により筑豊本線の一部区間において、それぞれ代行輸送を実施しました。なお、久大本線については昨年7月より、筑豊本線については本年3月より運転を再開しております。また、「平成28年熊本地震」の影響により運転を見合わせている豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、「豊肥本線復旧事務所」を中心に、国や関係自治体による砂防や治山、道路の復旧事業と調整しながら、早期復旧に向けて取り組んでおります。
船舶事業においては、昨年7月より高速船「ビートル」の一部の便で福岡~対馬間を国内航路としてご利用いただける国内初の混乗便の運航を開始し、高速船利用の旅行需要拡大を図りました。
バス事業においては、九州新幹線と接続する高速バス「B&Sみやざき」などの高速バス路線において期間限定の割引キャンペーンを展開するとともに、一部路線の見直しにより収支改善を図りました。
この結果、営業収益は前期比0.7%増の1,850億47百万円、営業利益は前期比6.0%減の274億68百万円、EBITDAは前期比0.3%増の344億91百万円となりました。
② 建設グループ
建設業においては、新幹線関連工事、鉄道高架化工事、マンション工事等を受注するとともに、工事の着実な遂行と経費の節減に努めました。
この結果、営業収益は前期比4.3%増の917億51百万円、営業利益は前期比4.1%増の65億26百万円、EBITDAは前期比6.1%増の75億2百万円となりました。
③ 駅ビル・不動産グループ
不動産賃貸業においては、昨年3月に開業した高架下商業施設「肥後よかモン市場」における熊本駅のにぎわいづくりに取り組みました。また、「アミュプラザ小倉」及び「アミュプラザ長崎」のリニューアルを実施したほか、各駅ビルにおいて駅前広場等を活用した積極的なイベント展開を行い収益拡大に努めました。
不動産販売業においては、分譲マンション「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」や「MJR大分駅前ザ・レジデンス」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン上熊本駅前」等の販売に取り組みました。
この結果、営業収益は前期比4.7%増の726億92百万円、営業利益は前期比2.5%増の237億84百万円、EBITDAは前期比3.4%増の331億29百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業においては、ドラッグストアやコンビニエンスストアの新規出店を進めました。
飲食業においては、昨年10月にカフェを広島地区に初出店するなどエリア拡大を進めるとともに、駅構内等における新業態店舗の開発に取り組みました。
この結果、営業収益は前期比0.8%増の1,040億50百万円、営業利益は前期比6.5%減の34億12百万円、EBITDAは前期比4.8%減の50億81百万円となりました。
⑤ その他グループ
ホテル業においては、昨年12月に「JR九州ステーションホテル小倉」のリニューアルを実施したほか、既存ホテルのレベニューマネジメントを強化し、収益拡大に努めました。
シニア事業においては、住宅型有料老人ホーム「SJR高取」で訪問看護サービスの提供を開始するとともに、お客さまに選ばれる施設を目指し、サービス向上に取り組みました。
建設機械販売・レンタル事業においては、情報通信技術(ICT)を活用した建設機械の展示会を行うなど新規受注獲得を図りました。
この結果、営業収益は前期比33.3%増の898億85百万円、営業利益は前期比48.1%増の35億69百万円、EBITDAは前期比59.1%増の63億3百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
② 収入実績
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収に関する減等により前連結会計年度に比べ462億15百万円減少し、414億73百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ62億39百万円増加し、746億19百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、社債の発行等により前連結会計年度に比べ148億42百万円増加し、56億44百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ275億14百万円減少し、368億65百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ6.5%増加し、4,403億58百万円となりました。これは、キャタピラー九州の連結子会社化等によるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ7.7%増加し、3,764億73百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ7.7%増加し、2,730億1百万円となりました。これは、キャタピラー九州の連結子会社化や当社の減価償却費の増加等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ7.9%増加し、1,034億71百万円となりました。これはキャタピラー九州の連結子会社化等によるものです。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ0.1%減少し、638億85百万円となりました。
なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の15.5%に対し、当連結会計年度は14.5%となりました。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ2.4%減少し、38億17百万円となりました。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ40.5%増加し、11億63百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。
⑤ 経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ0.8%減少し、665億39百万円となりました。
なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の16.2%に対し、当連結会計年度は15.1%となりました。
⑥ 特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ1億10百万円改善し、21億1百万円の損失となりました。これは「平成30年7月豪雨」の災害による損失計上があったものの、前連結会計年度の「平成29年7月九州北部豪雨」や「平成29年台風18号」に係る損失の減少等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ2.3%減少し、492億40百万円となりました。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ7.0%増加し、8,014億83百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ9.4%減少し、1,816億27百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ12.9%増加し、6,198億55百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ4.0%増加し、3,807億39百万円となりました。流動負債は、短期借入金や未払金の増等により前連結会計年度末に比べ4.6%増加し、1,723億14百万円となりました。固定負債は、社債の発行等により前連結会計年度末に比べ3.5%増加し、2,084億25百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ9.8%増加し、4,207億43百万円となりました。これは、利益剰余金の増加等によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ275億14百万円減少し、368億65百万円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収に関する減等により前連結会計年度に比べ462億15百万円減少し、414億73百万円となりました。
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ62億39百万円増加し、746億19百万円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、社債の発行等により前連結会計年度に比べ148億42百万円増加し、56億44百万円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 財務政策
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのキャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債発行や銀行等金融機関からの借入等、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。
当社グループは、当連結会計年度に国内において償還期限を2029年から2049年の間とする2本の無担保普通社債を総額200億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付けを取得しております。
また、キャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(1)経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、輸出・生産の面では海外経済の減速の影響を受けるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に個人消費が底堅さを増すなど、緩やかに拡大しました。
このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2016-2018」のもと、「やさしくて力持ちの“総合的なまちづくり企業グループ”」を目指し、すべての事業において安全を基盤に、より一層のサービス向上に努め、各事業において積極的な事業展開による収益の拡大を図るとともに、より効率的な業務運営と徹底的なコスト削減を推進してきました。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比6.5%増の4,403億58百万円となりました。営業利益は前期比0.1%減の638億85百万円、EBITDAは前期比4.4%増の854億2百万円、経常利益は前期比0.8%減の665億39百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比2.3%減の492億40百万円となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。なお、当社グループの収益力をより的確に表すと当社が考え、経営数値目標として掲げている連結EBITDAについても記載しております。
(単位:百万円)
セグメントの名称 | 売上高 | 営業利益 | EBITDA(注2) | ||||||
当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | 当連結 会計年度 | 前期比 増減 | 前期比 増減率 | |
運輸サービス | 185,047 | 1,297 | 0.7% | 27,468 | △1,747 | △6.0% | 34,491 | 92 | 0.3% |
建設 | 91,751 | 3,750 | 4.3% | 6,526 | 254 | 4.1% | 7,502 | 430 | 6.1% |
駅ビル・不動産 | 72,692 | 3,272 | 4.7% | 23,784 | 578 | 2.5% | 33,129 | 1,086 | 3.4% |
流通・外食 | 104,050 | 869 | 0.8% | 3,412 | △237 | △6.5% | 5,081 | △255 | △4.8% |
その他 | 89,885 | 22,466 | 33.3% | 3,569 | 1,158 | 48.1% | 6,303 | 2,342 | 59.1% |
合計 | 543,428 | 31,657 | 6.2% | 64,760 | 5 | 0.0% | 86,508 | 3,696 | 4.5% |
調整額(注1) | △103,069 | △4,670 | ― | △875 | △83 | ― | △1,106 | △127 | ― |
連結数値 | 440,358 | 26,986 | 6.5% | 63,885 | △77 | △0.1% | 85,402 | 3,569 | 4.4% |
(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行うとともに、九州新幹線を基軸としたネットワークを最大限に活用し、お客さまの視点に立った営業施策を実施することにより収入確保に努めました。
安全面では、JR九州グループ全体の安全風土をつくるべく「それ、大丈夫?!これ、大丈夫?!」をスローガンとした安全創造運動を展開しました。また安全投資では、車両の新製・更新工事や老朽設備の取替等を着実に実施しました。
サービス面では、基本となる「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を当たり前に実践し、「笑顔」と「あいさつ」でお客さまをお迎えできるよう取り組みを進めました。
営業面では、九州新幹線を中心とした鉄道利用促進を図るべく、「九州新幹線2枚きっぷ」や新幹線定期券「新幹線エクセルパス」などの各種商品の販売促進に努めるとともに、NHK大河ドラマ「西郷どん」にあわせた「答えは、鹿児島にある。」プロモーションを展開しました。「JR九州インターネット列車予約サービス」については、インターネット限定商品の充実や「ネット予約チャンス!JRキューポチャンス!」プロモーションのほか、法人会員様向けの「JR九州インターネット列車予約ビジネス」の開始など、利用促進に取り組みました。また、昨年3月より新ルートにて運行を開始したクルーズトレイン「ななつ星in九州」や11のD&S(デザイン&ストーリー)列車をはじめ、九州の自然・食・温泉・歴史文化・沿線地域の方々によるおもてなしなど、九州ブランドの認知度向上と九州への誘客促進に努めました。地域の元気をつくる取り組みでもある「駅長おすすめのJR九州ウォーキング」については、地元の方々と連携した魅力あるコース設定に努め、多くのお客さまにご利用いただきました。さらに、海外からのお客さま向けの主力商品である「JR九州レールパス」についても、専用予約サイト「JR KYUSHU RAIL PASS Online Booking」における直接販売及び指定席事前予約サービスのほか、韓国、台湾、香港、中国を中心としたそれぞれの国及び地域に応じた情報発信や販売促進を図りました。
輸送面では、きめ細かな輸送施策を展開し、各線区の需要動向に応じた効率的な輸送体系の構築に努めるとともに、九州新幹線を中心とした輸送ネットワークの更なる充実を図ることで利用促進に努めました。一方、「平成29年7月九州北部豪雨」の影響により久大本線及び日田彦山線の一部区間において、「平成30年7月豪雨」の影響により筑豊本線の一部区間において、それぞれ代行輸送を実施しました。なお、久大本線については昨年7月より、筑豊本線については本年3月より運転を再開しております。また、「平成28年熊本地震」の影響により運転を見合わせている豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、「豊肥本線復旧事務所」を中心に、国や関係自治体による砂防や治山、道路の復旧事業と調整しながら、早期復旧に向けて取り組んでおります。
船舶事業においては、昨年7月より高速船「ビートル」の一部の便で福岡~対馬間を国内航路としてご利用いただける国内初の混乗便の運航を開始し、高速船利用の旅行需要拡大を図りました。
バス事業においては、九州新幹線と接続する高速バス「B&Sみやざき」などの高速バス路線において期間限定の割引キャンペーンを展開するとともに、一部路線の見直しにより収支改善を図りました。
この結果、営業収益は前期比0.7%増の1,850億47百万円、営業利益は前期比6.0%減の274億68百万円、EBITDAは前期比0.3%増の344億91百万円となりました。
② 建設グループ
建設業においては、新幹線関連工事、鉄道高架化工事、マンション工事等を受注するとともに、工事の着実な遂行と経費の節減に努めました。
この結果、営業収益は前期比4.3%増の917億51百万円、営業利益は前期比4.1%増の65億26百万円、EBITDAは前期比6.1%増の75億2百万円となりました。
③ 駅ビル・不動産グループ
不動産賃貸業においては、昨年3月に開業した高架下商業施設「肥後よかモン市場」における熊本駅のにぎわいづくりに取り組みました。また、「アミュプラザ小倉」及び「アミュプラザ長崎」のリニューアルを実施したほか、各駅ビルにおいて駅前広場等を活用した積極的なイベント展開を行い収益拡大に努めました。
不動産販売業においては、分譲マンション「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」や「MJR大分駅前ザ・レジデンス」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン上熊本駅前」等の販売に取り組みました。
この結果、営業収益は前期比4.7%増の726億92百万円、営業利益は前期比2.5%増の237億84百万円、EBITDAは前期比3.4%増の331億29百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業においては、ドラッグストアやコンビニエンスストアの新規出店を進めました。
飲食業においては、昨年10月にカフェを広島地区に初出店するなどエリア拡大を進めるとともに、駅構内等における新業態店舗の開発に取り組みました。
この結果、営業収益は前期比0.8%増の1,040億50百万円、営業利益は前期比6.5%減の34億12百万円、EBITDAは前期比4.8%減の50億81百万円となりました。
⑤ その他グループ
ホテル業においては、昨年12月に「JR九州ステーションホテル小倉」のリニューアルを実施したほか、既存ホテルのレベニューマネジメントを強化し、収益拡大に努めました。
シニア事業においては、住宅型有料老人ホーム「SJR高取」で訪問看護サービスの提供を開始するとともに、お客さまに選ばれる施設を目指し、サービス向上に取り組みました。
建設機械販売・レンタル事業においては、情報通信技術(ICT)を活用した建設機械の展示会を行うなど新規受注獲得を図りました。
この結果、営業収益は前期比33.3%増の898億85百万円、営業利益は前期比48.1%増の35億69百万円、EBITDAは前期比59.1%増の63億3百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||||
前年同期比(%) | ||||||
営業日数 | 日 | 365 | 100.0 | |||
営業キロ | 新幹線 | キロ | 288.9 | 100.0 | ||
在来線 | 〃 | 1,984.1 | 100.0 | |||
計 | 〃 | 2,273.0 | 100.0 | |||
客車走行キロ | 新幹線 | 千キロ | 62,854 | 97.5 | ||
在来線 | 〃 | 223,965 | 94.9 | |||
計 | 〃 | 286,819 | 95.5 | |||
輸送人員 | 定期 | 千人 | 217,568 | 100.8 | ||
定期外 | 〃 | 121,101 | 99.9 | |||
計 | 〃 | 338,670 | 100.4 | |||
輸送人キロ | 新幹線 | 定期 | 千人キロ | 199,648 | 102.1 | |
定期外 | 〃 | 1,832,889 | 101.3 | |||
計 | 〃 | 2,032,538 | 101.4 | |||
在来線 | 幹線 | 定期 | 〃 | 3,508,844 | 100.2 | |
定期外 | 〃 | 2,947,112 | 97.1 | |||
計 | 〃 | 6,455,957 | 98.8 | |||
地方 交通線 | 定期 | 〃 | 506,235 | 99.0 | ||
定期外 | 〃 | 290,673 | 101.7 | |||
計 | 〃 | 796,908 | 99.9 | |||
計 | 定期 | 〃 | 4,015,080 | 100.1 | ||
定期外 | 〃 | 3,237,785 | 97.5 | |||
計 | 〃 | 7,252,865 | 98.9 | |||
合計 | 定期 | 〃 | 4,214,729 | 100.2 | ||
定期外 | 〃 | 5,070,674 | 98.9 | |||
計 | 〃 | 9,285,404 | 99.5 | |||
乗車効率 | 新幹線 | % | 48.4 | 103.8 | ||
在来線 | 〃 | 30.0 | 104.0 | |||
計 | 〃 | 31.0 | 103.8 |
(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
乗車効率 | = | 輸送人キロ | × | 100 |
客車走行キロ × 客車平均定員 |
② 収入実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |||
前年同期比(%) | |||||
旅客運輸収入 | 新幹線 | 定期 | 百万円 | 2,738 | 102.4 |
定期外 | 〃 | 52,201 | 101.4 | ||
計 | 〃 | 54,940 | 101.5 | ||
在来線 | 定期 | 〃 | 29,727 | 100.2 | |
定期外 | 〃 | 66,814 | 99.2 | ||
計 | 〃 | 96,541 | 99.5 | ||
合計 | 定期 | 〃 | 32,466 | 100.4 | |
定期外 | 〃 | 119,015 | 100.2 | ||
計 | 〃 | 151,482 | 100.2 | ||
荷物収入 | 〃 | 0 | 99.6 | ||
合計 | 〃 | 151,482 | 100.2 | ||
鉄道線路使用料収入 | 〃 | 546 | 91.6 | ||
運輸雑収 | 〃 | 20,181 | 103.3 | ||
収入合計 | 〃 | 172,209 | 100.5 |
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収に関する減等により前連結会計年度に比べ462億15百万円減少し、414億73百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ62億39百万円増加し、746億19百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、社債の発行等により前連結会計年度に比べ148億42百万円増加し、56億44百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ275億14百万円減少し、368億65百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ6.5%増加し、4,403億58百万円となりました。これは、キャタピラー九州の連結子会社化等によるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ7.7%増加し、3,764億73百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ7.7%増加し、2,730億1百万円となりました。これは、キャタピラー九州の連結子会社化や当社の減価償却費の増加等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ7.9%増加し、1,034億71百万円となりました。これはキャタピラー九州の連結子会社化等によるものです。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ0.1%減少し、638億85百万円となりました。
なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の15.5%に対し、当連結会計年度は14.5%となりました。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ2.4%減少し、38億17百万円となりました。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ40.5%増加し、11億63百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。
⑤ 経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ0.8%減少し、665億39百万円となりました。
なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の16.2%に対し、当連結会計年度は15.1%となりました。
⑥ 特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ1億10百万円改善し、21億1百万円の損失となりました。これは「平成30年7月豪雨」の災害による損失計上があったものの、前連結会計年度の「平成29年7月九州北部豪雨」や「平成29年台風18号」に係る損失の減少等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ2.3%減少し、492億40百万円となりました。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ7.0%増加し、8,014億83百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ9.4%減少し、1,816億27百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ12.9%増加し、6,198億55百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ4.0%増加し、3,807億39百万円となりました。流動負債は、短期借入金や未払金の増等により前連結会計年度末に比べ4.6%増加し、1,723億14百万円となりました。固定負債は、社債の発行等により前連結会計年度末に比べ3.5%増加し、2,084億25百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ9.8%増加し、4,207億43百万円となりました。これは、利益剰余金の増加等によるものです。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ275億14百万円減少し、368億65百万円となりました。
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収に関する減等により前連結会計年度に比べ462億15百万円減少し、414億73百万円となりました。
投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得等により前連結会計年度に比べ62億39百万円増加し、746億19百万円となりました。
財務活動の結果得られた資金は、社債の発行等により前連結会計年度に比べ148億42百万円増加し、56億44百万円となりました。
② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
③ 財務政策
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのキャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債発行や銀行等金融機関からの借入等、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。
当社グループは、当連結会計年度に国内において償還期限を2029年から2049年の間とする2本の無担保普通社債を総額200億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付けを取得しております。
また、キャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。