有価証券報告書-第31期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/22 15:00
【資料】
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【項目】
120項目
1 業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度における我が国の経済は、世界経済の着実な成長を受けて輸出や生産が増加基調にあるほか、雇用・所得環境の着実な改善を背景に個人消費が底堅さを増すなど、緩やかに拡大しました。また、一昨年4月に発生した「平成28年熊本地震」については、復旧・復興需要の本格化に加え、観光産業等もインバウンド需要をはじめ全体として持ち直すなど、回復基調が続きました。
このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2016-2018」のもと、「やさしくて力持ちの“総合的なまちづくり企業グループ”」を目指し、すべての事業において安全を基盤に、より一層のサービス向上に努め、各事業において積極的な事業展開による収益の拡大を図るとともに、より効率的な業務運営と徹底的なコスト削減を推進してきました。
この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比8.0%増の4,133億71百万円となりました。営業利益は前期比8.9%増の639億63百万円、EBITDAは前期比11.7%増の818億32百万円、経常利益は前期比10.7%増の670億45百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比12.6%増の504億10百万円となりました。
当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。なお、当社グループの収益力をより的確に表すと当社が考え、経営数値目標として掲げている連結EBITDAについても記載しております。
(単位:百万円)
セグメントの名称売上高営業利益EBITDA(注2)
当連結
会計年度
前期比
増減
前期比
増減率
当連結
会計年度
前期比
増減
前期比
増減率
当連結
会計年度
前期比
増減
前期比
増減率
運輸サービス183,7507,3424.2%29,2163,49613.6%34,3985,86120.5%
建設88,0018,67110.9%6,2713205.4%7,0722954.4%
駅ビル・不動産69,4191,9442.9%23,2055472.4%32,0428932.9%
流通・外食103,1802,7032.7%3,6501745.0%5,3361472.8%
その他67,4196,48110.6%2,410△131△5.2%3,96161218.3%
合計511,77127,1425.6%64,7544,4067.3%82,8117,81010.4%
調整額(注1)△98,3993,316-△791813-△978741-
連結数値413,37130,4598.0%63,9635,2208.9%81,8328,55111.7%

(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)
① 運輸サービスグループ
鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行うとともに、九州新幹線を基軸としたネットワークを最大限に活用し、お客さまの視点に立った営業施策を実施することにより収入確保に努めました。
安全面では、JR九州グループ全体の安全風土をつくるべく「俺の○○!私の○○!~一人ひとりの持ち場で、“氣”の満ちた最高の仕事をやり遂げる~」をスローガンとした安全創造運動を展開しました。また、異常時対応能力の向上を図るため、大規模地震想定訓練や総合脱線復旧訓練等を実施しました。安全投資では、老朽設備の取替を着実に実施するとともに、防災対策として豪雨対策や新幹線における脱線防止ガードの設置等に引き続き取り組みました。さらに、昨年11月より筑肥線九大学研都市駅において軽量型ホームドアの実証試験を開始しました。サービス面では、基本となる「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を当たり前に実践し、「笑顔」でお客さまをお迎えするとともに、お客さまの心に響く「あいさつ」を行う取り組みを進めました。
営業面では、九州新幹線を中心とした鉄道利用促進を図るべく、「九州新幹線2枚きっぷ」や新幹線定期券「新幹線エクセルパス」などの各種商品の販売促進に努めるとともに、「GO!GO!!キスマイクマモトオオイタ」キャンペーンを展開しました。「JR九州インターネット列車予約サービス」については、インターネット限定商品の拡充や乗換検索サイトとの連携、「JRキューポ」へのポイントプログラム統合などによる利便性の向上、「列車こそネット予約でしょ!」プロモーションによる販売促進を図りました。また、クルーズトレイン「ななつ星in九州」や昨年3月に運行開始した特急「かわせみ やませみ」を含む11のD&S(デザイン&ストーリー)列車をはじめ、九州の自然・食・温泉・歴史文化・沿線地域の方々によるおもてなしなど、九州ブランドの認知度向上と九州への誘客促進に取り組みました。地域の元気をつくる取り組みでもある「駅長おすすめのJR九州ウォーキング」については、地元の方々と連携した魅力あるコース設定に努め、多くのお客さまにご利用いただきました。さらに、海外からのお客さま向けの主力商品である「JR九州レールパス」についても、WEB販売システムの導入による直接販売及び指定席事前予約サービスを開始したほか、韓国、台湾、香港、中国、タイを中心としたそれぞれの国及び地域に適した情報発信や販売促進を図りました。
輸送面では、きめ細かな輸送施策を展開し、各線区の需要動向に応じた効率的な輸送体系の構築に努めるとともに、九州新幹線を中心とした輸送ネットワークのさらなる充実を図ることで利用促進に努めました。なお、昨年7月に発生した「平成29年7月九州北部豪雨」及び9月に発生した「平成29年台風第18号」の影響により、久大本線、日田彦山線、日豊本線等の鉄道施設に被害が生じ、一部区間において代行輸送を実施していますが、日豊本線臼杵~佐伯間については、昨年12月に運転を再開しました。また、「平成28年熊本地震」の影響により運転を見合わせている豊肥本線肥後大津~阿蘇間については、昨年4月に設置した「豊肥本線復旧事務所」を中心に、国や関係自治体による砂防や治山、道路の復旧事業と調整しながら、早期復旧に向け取り組んでおります。
旅行業においては、強みである九州を中心とした鉄道利用国内旅行商品を展開したほか、インターネット販売商品の充実に取り組みました。また、高速船「ビートル」を利用した韓国商品や株式会社JTBとのアライアンス関係を活かした海外旅行商品の販売促進を図りました。
船舶事業においては、高速船「ビートル」のリニューアルを行い、質の高い輸送サービスの提供に取り組みました。
バス事業においては、九州新幹線と接続する高速バス「B&Sみやざき」について、「JR九州インターネット列車予約サービス」においてインターネット限定割引きっぷの設定を行い利便性の向上につなげたほか、他の高速バス路線においても期間限定の割引キャンペーンを展開するなど収益確保に努めました。
この結果、営業収益は前期比4.2%増の1,837億50百万円、営業利益は前期比13.6%増の292億16百万円、EBITDAは前期比20.5%増の343億98百万円となりました。
② 建設グループ
建設業においては、鉄道高架化工事、新幹線関連工事、マンション工事等を受注するとともに、工事の着実な遂行と経費の節減に努めました。
この結果、営業収益は前期比10.9%増の880億1百万円、営業利益は前期比5.4%増の62億71百万円、EBITDAは前期比4.4%増の70億72百万円となりました。
③ 駅ビル・不動産グループ
不動産賃貸業においては、本年3月に熊本駅高架下において「肥後よかモン市場」を開業したほか、各駅ビルにおいてリニューアルや積極的なイベント展開を行い収益拡大に努めるとともに、昨年9月に「六本松421」を開業し、地域と連携したにぎわいづくりによる魅力ある「マチナカ」開発を推進しました。また、昨年2月に「RJRプレシア博多」の入居を開始したほか、6月に「東十条マンション」を取得しました。このほか、昨年11月にタイ・バンコクにおいて「JR Kyushu Business Development (Thailand) Co., Ltd.」を設立するとともに、12月に同社がサービスアパートメントを取得し、同国における不動産事業に参入しました。
不動産販売業においては、「MJR赤坂タワー」等を売上に計上したほか、「MJRザ・ガーデン大江」や「MJRザ・ガーデン鹿児島中央」などの販売に取り組みました。
この結果、営業収益は前期比2.9%増の694億19百万円、営業利益は前期比2.4%増の232億5百万円、EBITDAは前期比2.9%増の320億42百万円となりました。
④ 流通・外食グループ
小売業及び飲食業においては、昨年7月にドラッグストアを東京に、8月にカフェを大阪に初出店したほか、12月に新業態となるとんかつ専門店を初出店するなど、新規出店を積極的に行いました。
農業においては、昨年9月に九州産の旬の野菜を販売する「八百屋の九ちゃん」を「六本松421」に出店し、収益拡大に努めました。
この結果、営業収益は前期比2.7%増の1,031億80百万円、営業利益は前期比5.0%増の36億50百万円、EBITDAは前期比2.8%増の53億36百万円となりました。
⑤ その他グループ
ホテル業においては、昨年6月に沖縄初進出となる「JR九州ホテル ブラッサム那覇」を開業するとともに、11月に「奥日田温泉 うめひびき」をグランドオープンするなど、エリア拡大及び収益拡大に努めました。
シニア事業においては、昨年9月に5施設目となる住宅型有料老人ホーム「SJR六本松」を開設し、お客さまに選ばれる施設を目指し、サービス向上に取り組みました。
このほか、昨年10月にキャタピラー九州株式会社の株式を取得し、建設機械販売・レンタル事業に参入しました。
この結果、営業収益は前期比10.6%増の674億19百万円、営業利益は前期比5.2%減の24億10百万円、EBITDAは前期比18.3%増の39億61百万円となりました。
(参考)当社の鉄道事業の営業実績
① 輸送実績
区分単位当事業年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前年同期比(%)
営業日数365100.0
営業キロ新幹線キロ288.9100.0
在来線1,984.1100.0
2,273.0100.0
客車走行キロ新幹線千キロ64,438110.9
在来線236,03298.6
300,470101.0
輸送人員定期千人215,928101.1
定期外121,248102.7
337,176101.7
輸送人キロ新幹線定期千人キロ195,45999.4
定期外1,809,278109.3
2,004,738108.2
在来線幹線定期3,500,866100.0
定期外3,034,026100.6
6,534,892100.3
地方
交通線
定期511,12298.7
定期外285,87994.2
797,00197.0
定期4,011,98899.8
定期外3,319,90599.9
7,331,89499.9
合計定期4,207,44899.8
定期外5,129,184103.1
9,336,633101.6
乗車効率新幹線%46.797.6
在来線28.8101.3
29.9100.6

(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。
乗車効率=輸送人キロ×100
客車走行キロ × 客車平均定員

② 収入実績
区分単位当事業年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前年同期比(%)
旅客運輸収入新幹線定期百万円2,67499.7
定期外51,480108.5
54,154108.0
在来線定期29,665100.6
定期外67,339100.7
97,005100.7
合計定期32,339100.5
定期外118,820103.9
151,159103.2
荷物収入090.8
合計151,159103.2
鉄道線路使用料収入596110.0
運輸雑収19,544108.9
収入合計171,300103.8

(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収による増等により前連結会計年度に比べ591億9百万円増加し、876億89百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、前年度に金銭の信託を売却したこと等により前連結会計年度に比べ500億12百万円増加し、683億79百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、配当金の支払等により前連結会計年度に比べ85億4百万円増加し、91億97百万円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ101億16百万円増加し、643億79百万円となりました。
(3)生産、受注及び販売の状況
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。
このため、生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
2 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。
(2)経営成績の分析
① 営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ8.0%増加し、4,133億71百万円となりました。これは、鉄道旅客運輸収入の増加やキャタピラー九州の連結子会社化等によるものです。
② 営業費
営業費は、前連結会計年度に比べ7.8%増加し、3,494億8百万円となりました。
運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ7.5%増加し、2,535億18百万円となりました。これは、キャタピラー九州の連結子会社化等によるものです。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ8.6%増加し、958億89百万円となりました。これは
キャタピラー九州の連結子会社化やホテル等の開業に伴う費用の増加等によるものです。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ8.9%増加し、639億63百万円となりました。
なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の15.3%に対し、当連結会計年度は15.5%となりました。
④ 営業外損益
営業外収益は、前連結会計年度に比べ30.4%増加し、39億10百万円となりました。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ29.6%減少し、8億27百万円となりました。これは前連結会計年度に計上した上場関連費用の減等によるものです。
⑤ 経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ10.7%増加し、670億45百万円となりました。
なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の15.8%に対し、当連結会計年度は16.2%となりました。
⑥ 特別損益
特別利益は、前連結会計年度に比べ45.5%減少し、166億72百万円となりました。
特別損失は、前連結会計年度に比べ46.9%減少し、188億83百万円となりました。これは、「平成29年7月九州北部豪雨」や「平成29年台風第18号」の災害による損失計上があったものの、前連結会計年度に計上した「平成28年熊本地震」に係る損失の減少等によるものです。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ12.6%増加し、504億10百万円となりました。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ10.8%増加し、7,495億73百万円となりました。流動資産は、仕掛品の増等により前連結会計年度末に比べ4.1%増加し、2,067億36百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の取得等により前連結会計年度末に比べ13.5%増加し、5,428億36百万円となりました。
一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ11.6%増加し、3,663億72百万円となりました。流動負債は、未払金の増等により前連結会計年度末に比べ22.1%増加し、1,647億25百万円となりました。固定負債は、災害損失引当金の増等により前連結会計年度末に比べ4.3%増加し、2,016億47百万円となりました。
また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ10.0%増加し、3,832億1百万円となりました。これは、利益剰余金の増加等によるものです。
(4)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。