有価証券報告書-第71期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 15:00
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、時価下落による投資の減少やのれんの減損などにより、前連結会計年度末に比べ167億67百万円減少し、2,817億67百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、短期借入金の増加や返金負債の計上があったものの、買掛債務や繰延税金負債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ4億14百万円減少し、606億23百万円となりました。
当連結会計年度末の株主資本合計は、配当金の支払や自己株式の取得、年金債務調整勘定の減少などにより、前連結会計年度末に比べ162億18百万円減少し、2,164億94百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における株主資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.2%減少し、76.8%となりました。
b.経営成績
(単位:百万円)
2018年3月期
前期実績
2019年3月期
当期実績
前期比
増減額増減率
売上高195,725194,201△1,524△0.8%
売上原価92,03289,804△2,228△2.4%
売上利益103,693104,397+704+0.7%
販売費及び一般管理費92,70193,684+983+1.1%
補償金収入(費用の戻入)△708-+708-
A:のれん及びその他の無形固定資産減損損失2065,834+5,628-
営業利益11,4944,879△6,615△57.6%
その他の収益・費用2,7892,894+105+3.8%
B:有価証券・投資評価損益(純額)3△5,570△5,573-
税引前当期純利益14,2862,203△12,083△84.6%
当社株主に帰属する当期純利益9,745341△9,404△96.5%

参考情報 ①:Aを考慮しない営業利益11,70010,713△987△8.4%
参考情報 ②:AとBを考慮しない税引前当期純利益14,48913,607△882△6.1%

当連結会計年度の売上高は、1,942億1百万円、前期に比べ15億24百万円、0.8%の減少となりました。営業利益は、48億79百万円、前期に比べ66億15百万円、57.6%の減少、税引前当期純利益は、22億3百万円、前期に比べ120億83百万円、84.6%の減少となりました。
当社グループは米国会計基準を採用しており、のれん及びその他の無形固定資産の減損損失58億34百万円を、営業費用として計上する必要があります。これを受けて、営業利益は大きく減少する結果となりました。また、米国会計基準の改正に伴い、有価証券・投資評価損益を、当連結会計年度より、その他の収益・費用として計上することになりました。その結果、55億70百万円の評価損失を認識し、税引前当期純利益も同様に大きく減少しました。
以上の実績から、当社株主に帰属する当期純利益は3億41百万円、前期に比べ94億4百万円、96.5%の減少となりました。また、当連結会計年度の連結売上高営業利益率は2.5%、連結ROEは0.2%となりました。
上段、連結損益計算書の表に参考情報として、キャッシュの支出を伴わない、一連の減損損失と有価証券・投資評価損失を考慮しなかった場合の、実質ベースでの営業利益と税引前当期純利益の水準を記しました。いずれも前期に比べ、減少する結果となりましたが、期初の業績予想に掲げた、営業利益100億円、税引前当期純利益130億円を上回って終了しました。また、この結果から実質ベースでの連結売上高営業利益率は5.5%、連結ROEは4.2%の水準となりました。
当社グループは、中期経営計画の最終年度となった当連結会計年度において、次の中期経営計画の期間における成長軌道への回帰を実現すべく、事業効率を高める基盤整備の完了と、成長が期待できる事業領域への投資に取り組みました。㈱ワコールでは、組織再編を進めた卸売事業の経営効率とブランド価値を高めた小売事業の収益性を向上し、また、オムニチャネル戦略の一環として3DボディスキャナーやAI(人工知能)を活かした接客サービスの導入準備を完了しました。海外事業では、高成長が続くECチャネルに対応した事業体制を強化するとともに、中国や北米、ユーロ圏市場で「Wacoal」に次ぐ、第2の柱ブランドが育ちつつあり、グループブランドのプレゼンスを拡大することができました。一方、生産拠点の体制整備においては、大連やベトナムでは競争優位性ある商品の生産能力を高めることができたものの、タイの材料工場では構造改革に時間を要する結果となりました。
売上高については、EC販売が拡大した中国、改装工事が活況だった七彩が大きく伸びた一方、百貨店で苦戦した㈱ワコールの国内の卸売事業の伸び悩みと、市場変化への対応が遅れたルシアン、Ai(アイ)、ピーチ・ジョンら、国内連結子会社の減収が響きました。営業利益は、㈱ワコールが、過去最高水準の売上利益率の寄与により増益で終了し、海外も増収効果で増益となりましたが、ピーチ・ジョンに係るのれん及びその他の無形固定資産の減損損失を計上したことにより大幅な減益になりました。
ピーチ・ジョンについては、過去にも数度に亘り、のれん等の減損損失を計上しておりますが、当連結会計年度は、事業基盤の整備を完了する中期経営計画の最終年度だったことから、課題を先送りせず一歩踏み込んで「ピーチ・ジョン」ブランドの将来性を検証し、のれんと商標権の公正価値の再評価を行いました。この結果、56億39百万円の減損損失を計上するに至りました。
「ピーチ・ジョン」ブランドは、ファッション性の高い日本発のブランドとして中国や東アジアのインフルエンサーの認知度も高く、競合と比較しても高いブランドエクイティーがあります。国内でも全国に支持層を抱え、知名度も非常に高く、ワコールグループの中でトレンドを創造する貴重なブランドのひとつであることには変わりありません。将来的にはアジア市場で「クール・ジャパン」のひとつに数えられる可能性も秘めております。現在のブランド価値をベースに、消費者の意識と時流の変化を捉えながら、これまでとは異なる大胆な挑戦を実行することで、再生に取り組んでいきたいと考えております。
(当連結会計年度の主要な為替換算レートは、1米ドル=110.91円(前期110.85円)、1英ポンド=145.68円(同147.03円)、1中国元=16.72円(同16.63円)です。)
オペレーティング・セグメントの経営成績を示すと次のとおりであります。
(単位:百万円)
2018年3月期2019年3月期前期比
前期実績構成比当期実績構成比増減額増減率
売上高合計195,725100.0%194,201100.0%△1,524△0.8%
ワコール事業(国内)116,08559.3%113,40058.4%△2,685△2.3%
ワコール事業(海外)51,88826.5%53,10027.3%+1,212+2.3%
ピーチ・ジョン事業10,7955.5%10,4915.4%△304△2.8%
その他16,9578.7%17,2108.9%+253+1.5%

(単位:百万円)
2018年3月期2019年3月期前期比
前期実績売上比当期実績売上比増減額増減率
営業利益(△損失)11,4945.9%4,8792.5%△6,615△57.6%
ワコール事業(国内)6,8455.9%6,3255.6%△520△7.6%
ワコール事業(海外)3,8527.4%4,5818.6%+729+18.9%
ピーチ・ジョン事業4414.1%△5,859-△6,300-
その他3562.1%△168-△524-

ワコール事業(国内)
当該セグメントの売上高は、前期に比べ2%の減少となりました。㈱ワコールの卸売事業は、「ワコール」「ウイング」ブランドともに快適性と造形性を両立する高付加価値商品の開発により、主力アイテムのブラジャーが堅調に推移しました。しかしながら、百貨店を中心に展開するナイトウェアやマタニティ、ジュニア向けインナーウェアの苦戦と、「CW-X(シーダブリュ-エックス)」ブランドの不振が響き、減収となりました。小売事業は、ワイヤレスブラジャー「BRAGENIC(ブラジェニック)」が年間を通じて大きく伸長し全体をけん引しましたが、収益性改善に向けてセール販売を縮小したことに加え、購入ポイントが貯まる顧客のロイヤリティプログラムにおけるポイントの有効期間延長等に伴い、売上高の減少として計上する金額が拡大したことから、微増収にとどまりました。㈱Ai(アイ)は主力の水着事業が最需要期である夏場に苦戦した結果、前期を18%下回りました。
営業利益は、前期に比べ8%の減少となりました。㈱ワコールは売上利益率の改善が寄与し営業増益で終了したものの、前期に子会社工場用地の退去に伴う一時的な補償金収入を計上した反動が影響しました。
ワコール事業(海外)
邦貨換算後の当該セグメントの売上高は、前期に比べ2%の増加となりました。現地通貨ベースの売上高については、前期に比べてワコールインターナショナル(米国)は1%の減収、ワコールヨーロッパは2%の増収、中国ワコールは10%の増収となりました。米国は、自社・他社ECを通じた販売が好調でしたが、百貨店(実店舗)での店頭販売の苦戦と、一部百貨店の経営破たんによる閉店などが影響しました。ヨーロッパは、英国百貨店の経営悪化による在庫調整等の影響があったものの、豊満体型女性向けブランド「elomi(エロミ)」の好調と相まってEC販売が大きく伸長しました。中国は、顧客データマーケティングの強化と物流体制の増強を行い、他社ECでの成長を加速しました。また、需要期の販促強化が奏功した百貨店も順調に推移しました。
邦貨換算後の営業利益は19%の増加となりました。中国は増収効果に併せて、在庫効率の向上やEC売上比率の高まりによる売上利益率の改善が寄与しました。また、英国での希望小売価格の見直しや不採算直営店の閉鎖に加えて、ベトナム工場の生産性向上や、タイの材料工場に係る資産売却益と前期に計上した一時的なのれんの減損損失の反動もあり、増益となりました。
ピーチ・ジョン事業
当該セグメントの売上高は、前期に比べ3%減少しました。市場動向の変化に対応する商品開発とチャネル開拓に努めたものの、国内店舗事業の来店数拡大につながらず、また自社ECも振るいませんでした。一方、2017年5月に営業を開始した台湾では、イベントやブログを活かしたブランド認知の拡大により、当期は34%の増収となりました。
営業利益は、国内の減収影響と、競合の攻勢による中国事業の伸び率鈍化に加えて、販売員確保に関わる人件費や物流費の上昇のほか、本社オフィスの移転に伴う一時的な費用発生を受けて2億20百万円の営業損失となりました。加えて、のれん及びその他の無形固定資産の減損損失(56億39百万円)を計上しました。
その他
当該セグメントの売上高は、前期に比べ2%の増加となりました。ルシアンの売上高は、主力のインナーウェア事業が量販店PBの採用品番数の縮小を受けて苦戦したほか、マテリアル事業、アート・ホビー事業、アパレル事業ともに振るわず、前期を10%下回りました。一方、七彩の売上高は、大手百貨店の本店改装に加えて新規の内装工事が獲得できたため、前期に比べ工事事業が大きく伸長し、併せて物販事業も大きく拡大した結果、14%の増加となりました。
営業利益は、七彩が工事事業比率の高まりにより売上利益率は低下したものの、増収効果から増益となりました。しかしながら、ルシアンの営業損失を補うには至らず、当該セグメントの合計は営業損失となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比し6億46百万円増加し、301億33百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益3億95百万円に減価償却費や繰延税額などによる調整を加えた金額に対して、資産及び負債の増減などによる調整を行った結果、136億20百万円の収入(前期に比し18億73百万円の収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、持分証券の売却などによる収入があったものの、有形及び無形固定資産の取得などにより、24億74百万円の支出(前期に比し48億88百万円の支出減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払及び自己株式の取得などにより、108億72百万円の支出(前期に比し14億31百万円の支出減)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、 ピーチ・ジョン事業については、すべて販売会社のため該当事項はありません。また、その他のセグメントについては、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。
オペレーティング・セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
ワコール事業(国内)42,81397.5
ワコール事業(海外)16,873105.1
合計59,68699.6

(注) 生産実績の金額は製造原価によっております。また、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
その他のうち㈱七彩の一般住宅及び店舗内装工事部門については受注生産形態をとっております。
当連結会計年度におけるその他の受注実績を示すと、次のとおりであります。
オペレーティング・セグメント
の名称
受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
その他6,237112.741878.0

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
オペレーティング・セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
ワコール事業(国内)113,40097.7
ワコール事業(海外)53,100102.3
ピーチ・ジョン事業10,49197.2
その他17,210101.5
合計194,20199.2

(注)1.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
a.収益認識
当社グループは製品の支配が顧客に移転し、履行義務が充足された時点で収益を認識しております。収益は、取引価格から値引、リベート等を控除した金額で算定しております。また、将来に予測される返品については、過年度の実績等を考慮して予想される返品を見積り、収益から控除しております。
b.貸倒引当金
当社グループは、売掛債権等について貸し倒れの可能性を予測する必要があります。これらの債権の回収可能性を検討するにあたっては、各相手先の業績、債権残高、財政状況等を考慮して個別に信用リスクを判断する等、重要な判断が必要であります。相手先の財政状態が悪化した場合は貸倒引当金を積み増すことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
c.たな卸資産の評価損
当社グループは、原材料については先入先出法による低価法で、製品・商品及び仕掛品については総平均法による低価法で評価しております。たな卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売費用を控除して算出されます。たな卸資産の評価は、たな卸資産が低価法に基づき正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施されております。当社グループは、必要と判断された場合、たな卸資産の簿価と実現可能価額との差額をたな卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売費用、マークダウン率やたな卸資産の分類等は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄するたな卸資産についても考慮しております。当社グループのたな卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
d.繰延税金資産
当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得の達成の可否により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産計上額に対して金額的に重要な評価性引当金を計上する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性を見込めない場合には、回収不能と見込まれる金額に対して評価性引当金が計上され、損益に悪影響を与える可能性があります。
e.有価証券・投資の評価損
有価証券・投資のうち負債証券については、公正価値が帳簿価額を下回り、かつ、公正価値の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、負債証券の公正価値の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は公正価値の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思、などを含めた基準により四半期毎に判断しております。
また、持分証券については、公正価値により測定し、未実現の保有損益は純損益に計上しております。
当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や、予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、有価証券・投資の評価額に影響を受ける可能性があります。
なお、2019年3月31日現在、当社グループが保有する負債証券のいくつかの銘柄については未実現損失が発生しております。これらの銘柄については、下落期間や入手可能な発行体の業績等をもとに一時的な下落であると判断し、評価損は計上しておりません。
2019年3月31日現在、重要な影響を与える未実現損失は発生しておりません。
f.長期性資産の減損
当社グループが保有する長期性資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象や状況の変化が生じた場合には、将来の予想キャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として計上しております。
2019年3月期において、固定資産の減損の判定をした結果、公正価値が帳簿価額を下回っていると判断されたため、G Tech社の帳簿価額105百万円の機械装置を減損しております。また、㈱Aiの帳簿価額43百万円の建物を、帳簿価額19百万円の工具器具備品を、それぞれ減損しております。この結果生じた減損損失167百万円については、2019年3月期のワコール事業(国内)及びワコール事業(海外)の営業費用に含めております。
g.のれん及びその他の無形固定資産の減損
耐用年数が確定できないのれん及びその他の無形固定資産については、少なくとも1年に一回、又は事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化、リスク調整後割引率の変動等、減損の判定が必要となる兆候が発生した場合に減損の判定を行っており、報告単位の公正価値の評価にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。のれんやその他の無形固定資産を含む報告単位の公正価値を評価し、公正価値が報告単位の帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その下回る額について減損損失として計上することになります。のれん及びその他の無形固定資産の帳簿価額の回復可能性がないと判断された場合、のれんの公正価値の決定において、評価機関は観察不能なインプットを含む現在価値法を採用しております。商標権の公正価値の決定においては、評価機関は観察不能なインプットを含むロイヤルティ免除法を採用しております。
2019年3月31日時点における評価の結果、のれん、商標権及びソフトウェアの減損をそれぞれ4,325百万円、1,314百万円及び195百万円認識しております。
h.退職金及び退職年金
当社グループは従業員の大多数を対象とするいくつかの退職金制度を有しており、㈱ワコール及び一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しております。前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。当社グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。具体的には割引率は2019年3月31日時点における、国債のうち満期までの期間が予想される将来の給付支払の時期までの期間と同じ銘柄の利回りを基礎としております。当連結会計年度末における割引率は0.5%であります。
当社グループは、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより長期期待運用収益率を設定しております。かかる長期期待運用収益率は、株式及び社債等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づいております。前連結会計年度及び当連結会計年度末における、年金資産の長期運用利回りは、ともに2.5%であります。長期期待運用収益率は持分証券26.0%、負債証券54.0%、生保一般勘定18.0%及び短期資金2.0%の資産構成を前提として算定しております。
これらの基礎率は退職給付債務及び費用に重要な影響を及ぼします。割引率及び長期期待運用収益率をそれぞれ0.5%変更した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。
退職給付費用への影響額退職給付債務への影響額
割引率:0.5%減少170百万円の増加2,005百万円の増加
割引率:0.5%増加177百万円の減少1,954百万円の減少
長期期待運用収益率:0.5%減少148百万円の増加-
長期期待運用収益率:0.5%増加151百万円の減少-

その他の年金制度は、退職一時金の支給か一定の条件での年金支給のどちらかとなりますが、従業員が定年に達する前に退職する場合は、通常、一括で支給されます。
i.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 F 会計処理基準 (16)新会計基準」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度を最終年度とした中期経営計画期間3カ年の経営成果と課題に関する認識は次のとおりです。
国内事業における経営成果は、㈱ワコールにおいて、卸売偏重の事業モデルからの脱却と再構築が進んだこと、また、デジタル技術を活用した次世代型の接客サービスの導入準備が完了できたことです。一方、課題は、「ピーチ・ジョン」ブランドの商品競争力が相対的に低下し顧客の離反が続いていること、加えて、ルシアンの量販店向けPB(プライベート・ブランド)、Aiのファッション水着、CW-Xのスポーツタイツなど、主戦市場での競争環境が変化したにもかかわらず、対応が遅れ優位性が低下している現状が挙げられます。
新しい中期経営計画期間における対応の方向として、デジタル技術で進化させた顧客サービスの提供によって競合が追随できない流通チャネル政策を実行すること、また、ブランドや商品構成の削減・最適化に努めると同時に、バリューチェーンの構造改革・連携を伴った、グループ規模あるいは業務提携での組織の生産性最大化を追求することの2つを推し進めていく必要があると考えております。
海外事業における経営成果は、地域特性に合ったブランドポートフォリオ政策を進めた結果、欧米においては「elomi(エロミ)」が、中国においては「ピーチ・ジョン」が、「Wacoal」に次ぐ第2の柱ブランドとして育ったことに加えて、積極的なECチャネルの販路開拓を推し進め、成長力の加速を実現できたことです。米国、ヨーロッパ、中国の3つの地域では2割から3割の売上がEC販売によるものへと変貌しております。一方、課題は、まず、主要国では日本国内と同様に百貨店、専門店チャネルの衰退が続く局面にあること、次に、タイの材料工場の供給体制の構築が、当初の予定より立ち遅れているため整備を急ぐ必要があること、さらには、品質、コスト、技術力の面で、ミャンマー・縫製工場の競争力を高めていかなければならないことであります。
次の中期経営期間における対応方向として、デジタル化が加速する市場変化に機敏な対応を図り、ひいては、さらに成長スピードを加速することができる事業体制を強化して行く必要があります。同時に、小規模にとどまっている国や地域における事業拡大に向けて、成長投資と事業基盤の整備を進めるとともに、競争優位性を高めたサプライチェーン網をASEANに確立して行かねばならないと考えております。
このほか、当社グループは、経済的な価値向上を求めるだけでなく、事業を取り巻く社会とともに、持続可能な発展を実現する責任を果たすことによって、社会的な価値についても高みを目指す必要があると考えております。2017年10月にはCSR調達ガイドラインを制定し、製造委託先と協働を行いながら、人権や労働慣行などの遵守状況を把握・是正・向上するといった、CSR調達の一連のサイクルを確立し、運用を開始しました。また、個別ダイアログなどを通して、ステークホルダー視点から、当社に対する期待や重要度の高い社会課題を抽出し、当社事業にとっての重要性に照らした上で、本業CSRとしての重要課題(マテリアリティ)を確定しました。一方、時流の変化とともに、新しい課題も生まれて来ております。広告表現によるSNS上での炎上リスクや、顧客情報のデジタル化を進める裏腹で高まる情報漏洩リスクを軽減、回避しなければなりません。また、地球環境との共生を図る脱プラや商品廃棄の削減に対する取り組みを強めて行く必要があります。
さらに、コーポレート・ガバナンスを高める透明性の高い体制の確立に努めました。2018年3月期には買収防衛策の非継続(廃止)を決定したことに加えて、改訂コーポレート・ガバナンス・コードの施行に合わせて、当社のコーポレート・ガバナンス・ガイドラインも適切に改訂を行い、政策保有株式の縮減の方針や役員指名・報酬等に関する諮問委員会の整備を行いました。一方、課題として、企業価値向上に資する中長期ビジョンや、経済的、社会的価値を高める両方の側面を合わせたKPI、サクセションプラン等について、質・量ともに適切な開示を進めて行く必要性を認識しております。政策保有株式の縮減についても、同様に目標等の適切な開示を行いながら、踏み込んで進めて行く考えです。
多様性を活かした活力ある企業風土の実現に向けて、テレワーク制度をはじめ、自己研鑽時や家族帯同時の休職制度の導入など、「働きやすさ」の視点で環境整備を進めて来ました。今後は、中核クラスのキャリア採用を開始するなど、一層多様な人材によるインクルージョン組織体制を整備し、新しい価値を結果として生み出すなど、成果重視の「働きがい」環境を高めて行くことが課題です。
財務戦略による資本効率の向上、株主還元への取り組みに関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
当連結会計年度が最終年度となった中期経営計画においては、2016年3月期末の実績を踏まえ、当連結会計年度末に株主資本を2,200億円に低減すると同時に、連結ROEの水準を5%以上に高める目標としました。しかしながら、当連結会計年度は、無形固定資産の減損損失と有価証券・投資評価損失の影響から、当社株主に帰属する当期純利益は3億41百万円で終了し、連結ROEは0.2%水準と大変低い結果となりました。一方、キャッシュの支出を伴わない、この2つの損失影響を考慮せず、当社株主に帰属する当期純利益を実質ベースで算出した場合、96億36百万円となります。この結果、実質ベースでの連結ROEは4.2%水準となりますが、目標には及びませんでした。
当社は、株主の皆さまへの利益配分に関して、収益力向上のための積極的な投資によって企業価値を高め、1株当たり当社株主に帰属する当期純利益の増加を図るとともに、連結業績を考慮しつつ安定的な配当を実施させていただくことを基本方針としております。内部留保金については、企業価値向上の観点から、国内事業における顧客接点の拡大や、海外事業拡大のための積極的な投資に加えて、競争力の維持や成長力強化のための戦略的投資に活用し、将来の収益向上を通して、株主の皆さまへの還元を図らせていただきたいと考えております。また、自己株式の取得についても、フリー・キャッシュ・フローレベルや市場環境を勘案しながら機動的に行い、資本効率の向上と株主の皆さまへの還元を図ります。当連結会計年度は、国内におけるオムニチャネルサービスの基盤となるIT整備をはじめ、海外における企画・設計業務の管理システムの導入や工場設備の増強など、57億83百万円の設備投資を実施しました。株主の皆さまへの還元については、配当支払額48億11百万円、自己株式の取得69億19百万円、合わせて117億30百万円とさせていただきました。
引き続き、効果的な成長投資を最優先することで、将来的な事業収益の改善につなげていきたいと考えております。中長期的なROE水準の上昇を見据えて、積極的な資本政策と株主還元を実施していきます。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金の流動性は、主に営業活動による純現金収入によります。営業活動による純現金収入により、外部からの多額の借入や、その他の資金調達手段に頼らずに、大部分の運転資金の確保や設備投資、配当金の支払が可能となっております。ただし、金融機関に信用枠は設けており、2019年3月31日現在の信用枠の合計は313億36百万円、信用枠を設けている借入金の残高は82億53百万円となっており、主な残高の内訳としては当社が40億円、WACOAL EUROPE LTD.が15億5百万円、ワコールサービス㈱が26億11百万円、㈱七彩が1億37百万円となっております。
これらの信用枠の期限は、ほとんどが自動的に更新されるものであり、現状更新を妨げるような事象は発生していないと考えております。仮にいずれかの子会社において借入が不可能になったとしても、グループの各社から資金を供給することが可能であると考えております。また、資金需要について大きな季節変動はありません。
また、子会社からの親会社への配当に係る規制は特に無いと考えております。現状の事業運営に必要な運転資金は長期、短期とも十分であると考えております。
a.設備投資
「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載しております。
b.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

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