有価証券報告書-第72期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
当連結会計年度末における総資産は、時価下落による投資の減少などにより、前連結会計年度末に比して40億79百万円減少し、2,776億88百万円となりました。
負債の部は、会計基準の変更によりオペレーティングリース負債を計上したことや条件付取得対価に係る負債が増加したことにより、前連結会計年度末に比して76億17百万円増加し、682億40百万円となりました。
株主資本は、利益剰余金や為替換算調整勘定の減少などにより、前連結会計年度末に比して111億23百万円減少し、2,053億71百万円となりました。
以上の結果により、当連結会計年度末における株主資本比率は、前連結会計年度末に比して2.8%減少し、74.0%となりました。
b.経営成績
(単位:百万円)
当社グループは、当連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日)を初年度とする新しい中期経営計画をスタートさせ、「現実を直視し、将来需要を見極めた上で、果敢に改革を行い、成長にこだわる」という基本方針に沿って、各種施策を遂行しております。成長軌道への回帰と収益性改善を目指す㈱ワコールでは、3DボディスキャナーやAI(人工知能)を活用した接客システムを6店舗に導入するなど、イノベーションによるCX(顧客体験)の向上に取り組むとともに、リアル店舗とECの連携・融合に向けて顧客データベースをより効率的に活用できる環境の整備を進めました。海外事業では、課題として掲げるECでの成長機会の創出と競争力の強化に向けた取り組みを推進し、その一環として「LIVELY(ライブリー)」のブランド名称で女性用インナーウェア等の商品企画と小売販売を行っている米国の Intimates Online, Inc.(以下「IO社」)の発行済株式のすべてを2019年7月末に取得し、完全子会社化しました(買収により子会社となった「IO社」の業績については、第2四半期連結会計期間より連結対象としており、「ワコール事業(海外)」セグメントのワコールインターナショナル(米国)に含めて開示しております)。これらの諸施策を進めたものの、国内において2019年10月に実施された消費税増税後の個人消費の停滞に加え、第4四半期連結会計期間に発生した新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大による世界規模での経済活動の停滞の影響を受け、当社グループの経営環境は極めて厳しい状況となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は1,867億60百万円(前期比3.8%減)となりました。国内では、消費税増税後の需要低迷の長期化に加えて、感染症が拡大した3月以降の外出自粛に伴う来店客数の減少が営業活動に影響し、また、海外では、「IO社」の新規連結効果が寄与したものの、英米における百貨店の低迷、タイの材料会社の苦戦や円高による影響(△17億81百万円)に加えて、3月以降の主要都市のロックダウン措置による実質的な経済停止が響き、ともに減収となりました。
営業利益は66億32百万円(前期比35.9%増)となりました。国内は、㈱ワコールの卸売事業の減収影響やIT関連費用の増加、海外は、「IO社」の営業損失の取り込みや買収に係る一時費用の計上に加え、タイの材料会社の有形固定資産の減損損失(7億69百万円)などの計上が影響し、ともに減益となりました。この他、のれん及びその他の無形固定資産の減損損失について、当連結会計年度は4億73百万円を計上しましたが、前連結会計年度(58億34百万円)より損失額が減少したことから増益となりました。(上表「A」)
税引前当期純利益は43億59百万円(前期比97.9%増)となりました。有価証券・投資評価損益(純額)について、当連結会計年度・前連結会計年度ともに評価損の計上となりましたが、損失額が減少した結果、増益となりました。(上表「B」)
(当社は、米国会計基準を採用しており、当社及び連結子会社が保有する持分証券を公正価値で評価し、期初からの変動を「その他の収益・費用」で計上しております)
以上の結果、当社株主に帰属する当期純利益は34億72百万円となりました。また、当期の連結売上高営業利益率は3.6%、連結ROE(株主資本当社株主に帰属する当期純利益率)は1.6%となりました。なお、当該期間の為替換算レートは、1米ドル=108.74円(前期110.91円)、1英ポンド=138.24円(同145.68円)、1中国元=15.78円(同16.72円)です。
オペレーティング・セグメントの経営成績を示すと次のとおりであります。
(単位:百万円)
(単位:百万円)
(参考)主要子会社の売上高・営業利益(△損失)
(単位:百万円)
※外部売上高のみを記載しております。
(単位:百万円)
ワコール事業(国内)
当該セグメントの売上高は、前期に比べ3.3%の減少となりました。消費税増税前の駆け込み需要が寄与した上半期(4月~9月)は3.0%の増収でしたが、増税後の需要低迷の長期化に加え、感染症拡大による外出自粛等の影響を受けた下半期(10月~3月)は10.0%の減収となりました。営業利益は、ワコールの卸売事業の減収影響やリゾートウェアと下着の販売を行うAi(アイ)の営業損失などにより、8.6%の減少となりました。
<ワコール>ワコールの売上高は、前期に比べ3.1%の減少となりました。量販店チャネルを中心に展開するウイングブランドは、定番アイテムが好調に推移したほか、ノンワイヤーブラ「シンクロブラ」への積極的なプロモーション活動も奏功し、前期を上回りましたが、ワコールブランドは、「ナイトアップブラ」など一部商品は伸長したものの、消費税増税後の需要低迷により百貨店などの主力チャネルでの販売が伸び悩んだことに加え、感染症拡大に伴う来店客数の減少などが影響し、前期を下回る結果となりました。また、ナイトウェア(パジャマ)やスポーツアパレルなどインナーウェア以外の商品についても、主力チャネルでの販売が低迷した結果、前期を大幅に下回りました。一方、小売事業は感染症拡大により3月度は苦戦したものの、増税後の需要減退を最小限にとどめる商品施策と120万人に到達したショップ会員に対するマーケティング活動が奏功し、前期を上回りました。また、自社ECの売上については、マーケティングオートメーションを活用した顧客とのコミュニケーション強化により、高い成長を維持しました。
営業利益は、前期に比べ38.4%の減少となりました。卸売事業・小売事業ともに売上利益率の改善は継続したものの、オムニチャネル戦略の構築に係るIT関連費用の増加に加え、卸売事業における3月度の急激な売上減少が大きく影響しました。
ワコール事業(海外)
邦貨換算後の当該セグメントの売上高は、円高による影響(△17億81百万円)に加え、受注減少に伴うタイの材料会社の売上不振、3月中旬以降の感染症拡大による欧米の急激な売上減少により、前期に比べて4.8%の減少となりました。営業利益は、「IO社」の買収影響によるワコールインターナショナル(米国)の減益に加え、タイの材料会社の有形固定資産の減損損失を7億69百万円計上したことから、前期に比べ67.4%の減少となりました。
<ワコールインターナショナル(米国)>ワコールインターナショナル(米国)の現地通貨ベースの売上高は、新しく連結対象となった「IO社」の8月以降の売上高11.9百万ドル(約13億円)の取り込みが寄与したことから、前期に比べ5.9%の増加(邦貨換算ベースでは3.8%の増加)となりました。「Wacoal」や「b.tempt'd(ビーテンプティッド)」などのブランドを取り扱う米国ワコールは、自社・他社ともにECを通じた販売は好調に推移したものの、百貨店(実店舗)での販売が苦戦し、減収となりました。
現地通貨ベースの営業利益は、前期に比べ80.5%の減少(邦貨換算ベース80.9%の減少)となりました。セール販売比率の上昇に伴う売上利益率の低下並びに人件費や事務所の賃借料の増加によって米国ワコールが減益となったことに加え、「IO社」の営業損失11.5百万ドル(約12.5億円)の取り込みや、買収に係る一時的な費用計上が影響し、大幅な減益となりました。
<ワコールヨーロッパ>ワコールヨーロッパの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ3.0%の減少(邦貨換算ベースでは7.9%の減少)となりました。英国は百貨店チャネルの低迷により苦戦したものの、北米やフランス、その他の欧州圏での売上が伸長し、第3四半期までは前期を上回って推移しました。しかしながら、感染症拡大の影響を受けた3月度の売上が低迷した結果、減収に転じました。
現地通貨ベースの営業利益は、ブランドの認知拡大に向けた宣伝活動の強化、自社ECサイトの刷新費用の計上、スペインの百貨店との取引開始に伴う人件費の増加などにより、前期に比べ24.6%の減少(邦貨換算ベースでは28.4%の減少)となりました。
<中国ワコール>中国ワコールの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ1.1%の増加となりましたが、円高の影響により、邦貨換算ベースでは4.6%の減少となりました。「Wacoal」ブランドで実需期の販売プロモーションを積極的に展開したほか、新たな顧客層の開拓を目的に日本の「AMPHI」ブランドの販売を開始するなど、ECモール事業者との連携強化により、ECでの高い成長を維持しました。なお、中国ワコールは12月期決算のため、当期業績に対する感染症拡大の影響はありません。
現地通貨ベースの営業利益は、7.1%の増加(邦貨換算ベースでは1.1%の増加)となりました。広告宣伝費の増加や倉庫移転に伴う一時的な費用の計上はありましたが、利益率の低いブランドの売上構成比率の低下による売上利益率の改善や、不採算店舗からの撤退に伴う人件費や賃借料の削減が寄与し、増益となりました。
ピーチ・ジョン事業
当該セグメントの売上高は、前期並みとなりました。事業効率の改善を目的にカタログ発刊を休止した影響から通販事業は減収となりましたが、不採算店の一部撤退を実施した国内の店舗事業については、定番商品が堅調に推移したことに加え、セール販売が好調に推移したこともあり、増収となりました。
営業損益は、営業損失3億51百万円(前期は58億59百万円の営業損失)となりました。国内は、売上利益率の改善に加えて販管費の削減などが寄与し、営業黒字となりました。しかしながら、中国事業の営業損失に加え、無形固定資産(商標権)の減損損失(1億91百万円)を計上したことから、営業損失となりました。
その他
当該セグメントの売上高は、前期に比べ6.9%の減少、営業損益は、営業損失2億92百万円(前期は1億68百万円の営業損失)となりました。
<ルシアン>ルシアンの売上高は、量販店や専門店向けのプライベートブランド商品の販売が前期を上回ったものの、素材事業の減収影響により、前期に比べ8.3%の減少となりました。営業損益は、アパレル事業等の撤退に伴う一時的な費用を計上したことから、営業損失となりました。
<七彩>七彩の売上高は、前期にあった百貨店などの大型改装工事の反動により、前期に比べ7.4%の減少となりました。営業利益は、減収の影響により、前期に比べ22.7%の減少となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比し22億28百万円減少し、279億5百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益29億68百万円に減価償却費や繰延税金などによる調整を加えた金額に対して、資産及び負債の増減などによる調整を行った結果、133億25百万円の収入(前期に比し2億95百万円の収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、新規子会社の取得(取得した現金との純額)や有形及び無形固定資産の取得による支出などがあったものの、持分証券の売却及び償還収入や定期預金の減少などにより、25億69百万円の収入(前期は24億74百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少や自己株式の取得、配当金の支払などにより、174億71百万円の支出(前期に比し65億99百万円の支出増)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、 ピーチ・ジョン事業については、すべて販売会社のため該当事項はありません。また、その他のセグメントについては、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。
(注) 生産実績の金額は製造原価によっております。また、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
その他のうち㈱七彩の一般住宅及び店舗内装工事部門については受注生産形態をとっております。
当連結会計年度におけるその他の受注実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、当連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日)を初年度とする新しい中期経営計画をスタートさせ、「現実を直視し、将来需要を見極めた上で、果敢に改革を行い、成長にこだわる」という基本方針に沿って、各種施策を遂行してきました。成長軌道への回帰と収益性改善を目指す㈱ワコールでは、3DボディスキャナーやAI(人工知能)を活用した接客システムを6店舗に導入するなど、イノベーションによるCX(顧客体験)の向上に取り組むとともに、リアル店舗とECの連携・融合に向けて顧客データベースをより効率的に活用できる環境の整備を進めました。海外事業では、課題として掲げるECでの成長機会の創出と競争力の強化に向けた取り組みを推進し、その一環として「LIVELY(ライブリー)」のブランド名称で女性用インナーウェア等の商品企画と小売販売を行っている米国の Intimates Online, Inc.(以下「IO社」)の発行済株式のすべてを2019年7月末に取得し、完全子会社化しました。
これらの諸施策を進めたものの、国内において2019年10月に実施された消費税増税後の個人消費が停滞したことに加え、第4四半期連結会計期間に発生した新型コロナウイルス感染症拡大による世界規模での影響を受け、当社グループの経営環境は極めて厳しい状況となりました。
中期経営計画期間の初年度となる当連結会計年度の経営成果と課題に関する認識は次のとおりです。
ワコール事業(国内)における経営成果は、小売事業・WEB事業において、会員データを効率的に運用できる仕組みを構築したことにより、安定成長を実現できたことです。一方、主力事業である卸売事業の直近2年間の平均成長率はマイナス4%となり、他事業の成長ではカバーできない状況が続いております。卸売事業については、3D計測機などを活用した新しい接客システムを導入した他、顧客データの整備を進めましたが、運用面に課題を残しております。さらに、売上の低下の一方で、固定費率が高止まっている状態にあるため、経費コントロールの実行は喫緊の課題であると認識しております。
ワコール事業(海外)における経営成果は、ミレニアル世代の新しい顧客獲得に向けて「LIVELY」ブランドを展開するIO社を買収し、ブランド・ポートフォリオを拡充したことです。また、中核の課題として掲げるEC事業については、各国で力強く成長することができました。課題は、欧米を中心に低迷が続く実店舗ビジネスへの対応です。ECの成長スピードを高め、実店舗のマイナスをカバーできるようにしていくことが求められます。他方、受注減少が続くタイの材料会社においては、生産の安定化と新製品の開発力の向上が欠かせない課題と認識しております。
ピーチ・ジョン事業、その他における経営成果は、事業構造の効率化に向けて、ピーチ・ジョンでは不採算店舗の閉店やカタログ発刊の休止を実行したほか、ルシアンにおいて不採算事業からの撤退を判断したことです。課題については、いずれのセグメントともに営業損失を計上したことに他なりません。収益性の改善に向けた施策を継続してまいります。
新型コロナウイルス感染症の影響に関する認識、及び今後の方針は次のとおりです。
新型コロナウイルス感染症の影響についての認識は、「当社グループの経営にとって、感染症の影響は極めて高く、悪影響を与える」ということです。感染症の拡大に伴う店舗の営業停止や外出制限ないし自粛要請などの措置は徐々に解除となり、さまざまな国や地域の経済活動が元に戻りつつあり、明るい兆しは見え始めてはいますが、ショッピングを楽しめる日々が戻るには、相応の時間が掛かると考えております。また、雇用や所得環境の悪化による個人消費の低迷への懸念もあり、万が一、再び感染症の拡大が起きれば、消費活動はさらに低迷する恐れがあります。
また、感染症による影響として、最も大きいことは、「流通チャネル」や「消費価値」、「購買行動」の急速な変化です。デジタル変革の推進や、消費者発想型のビジネス重視など、進むべき大きな方向性に変わりはありませんが、消費者の価値観や流通の変化については、冷静に見極めていきます。
次に、再成長に向けて定めた方針についてご説明いたします。時間軸で、3つの方針を定めております。
基本方針について
すべての基本方針は、「お客さま・従業員・お取引先の健康・安全を最優先として対応すること」です。私たちは、お客さまと非常に近い距離でフィッティングなどのサービスを展開してきましたが、このようなサービスの維持と、従業員・お客さまの健康・安全の配慮やバランスは重要課題です。
短期的な方針について
第一に、「事業領域全般にわたり、これまでの施策や支出計画の大胆な見直しを実行すること」を掲げております。従来の事業活動をゼロベースで見直し、広告宣伝費などの経費削減、一歩踏み込んだ働き方改革の推進、出張削減に努めるほか、新規投資の実施時期についても見直しを実施します。
次に、感染症の長期化に備えて「手元流動性の強化に努めること」を掲げており、すでに金融機関からの借入枠を拡大し、グループ各社の手元流動性の確保に動いております。また感染症による販売不振に伴って、一時的に在庫は過剰になることを想定しておりますが、秋冬物商品や次の春夏物商品の生産調整をすべての子会社で実施することで、在庫水準を2020年3月期末水準まで低下させる計画です。
中長期的な方針について
ここ数年の売上の低下に伴って、当社グループの経費水準は、非常に高い地点まで上昇しており、当連結会計年度では50%を超過しております。コストストラクチャー構造の見直しは喫緊の課題であり、事業にあったコスト構造の在り方について点検します。同時に、すべての事業で将来需要を見極め、「きっぱりやめること」、「未来に向けて新たに始めること」、「続けるが軌道修正すること」を明確にしてまいります。
次に、成長に向けた取り組みとして、国内外ともにデジタル・トランスフォーメーションの取り組みを加速させ、顧客とのつながりを深めるとともに、事業運営の効率化に努めます。国内においては、「深く、広く、長く」をキーワードに取り組みを進める「オムニチャネル戦略」を継続して強化します。購買行動の変化を丁寧に見極め、軌道修正は適宜行いますが、デジタル変革は成長に向けて欠かせないものと認識しております。リアル店舗とECの連携や融合の推進、顧客データベースの効率的な運用方法の確立、新しい生活様式への対応に向けた3D計測機やAIなどの接客システム運用の軌道修正など、顧客の変化に対応したサービスや価値提供を行い、再成長を実現します。また、海外においても、国内同様、「顧客体験型」の発想に基づいて、各事業を徹底的に点検するとともに、EC事業の強化に努めてまいります。
さらに「お客さまとのタッチポイントの見直しと再整備」を実行します。国内では、低迷が続く百貨店のビジネスモデル転換を見据えた対応の検討を行います。卸売ビジネスから、自主運営型ビジネス、いわゆる定借ビジネスへの切り替えも選択肢の1つではありますが、重視していることは、効率的な人員配置や店舗損益の管理手法も含めて、「収益重視の店舗運営体制」を構築することです。
中長期的な方針の最後の項目は、『「新しい生活様式」で顧客が待ち望む、商品やサービスの開発』『新たな接客や販売スタイルへの対応力強化』です。顧客の価値観が変化するとともに、流通チャネルも大きく変わる可能性があります。また、所得の低下により、価格の受容性が一段下がる可能性も否めません。各国で展開するブランド・ポートフォリオをもう一度点検し、新しい価値観に応じたウェイトの組み換えを実行してまいります。また、密接した接客スタイルに変わる新しい接客方法の検討やテストマーケティングを実施します。パンデミックの経験を通して、世界中の女性の「美しい」という価値判断がどこに向かうのか、注意して見守り、冷静に方向性を判断します。
財務戦略による資本効率の向上、株主還元への取り組みに関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
当連結会計年度を初年度とする新しい中期経営計画においては、最終年度となる2022年3月期末の株主資本を2,000億円-2,100億円に低減すると同時に、ROEの水準を6%以上に高める目標としております。当連結会計年度は、消費税増税による個人消費の停滞の長期化、並びに新型コロナウイルス感染症の拡大影響によって売上が低迷したことに加え、ECでの成長機会の創出と競争力の強化を目的に買収した米国のIO社の営業損失を取り込んだほか、有価証券・投資評価損益において評価損を38億円計上したことが影響し、当社株主に帰属する当期純利益は34.7億円となり、ROEは1.6%と前連結会計年度に続いて低い結果となりました。なお、のれん及びその他の無形固定資産の減損損失や有価証券・投資評価損益を考慮しない実質的な当期純利益は、およそ31億円の減少となりました。企業体としての「収益力」が急速に低下していることは事実であり、収益性の回復は重要な課題として認識しております。
当社は、株主の皆さまへの利益配分に関して、収益力向上のための積極的な投資によって企業価値を高め、1株当たり当期純利益の増加を図るとともに、連結業績を考慮しつつ安定的な配当を実施させていただくことを基本方針としております。内部留保金については、企業価値向上の観点から、国内事業における顧客接点の拡大や、海外事業拡大のための積極的な投資に加えて、競争力の維持や成長力強化のための戦略的投資に活用し、将来の収益向上を通して、株主の皆さまへの還元を図らせていただきたいと考えております。また、自己株式の取得についても、フリー・キャッシュ・フローレベルや市場環境を勘案しながら機動的に行い、資本効率の向上と株主の皆さまへの還元を図ります。
当連結会計年度は、国内におけるオムニチャネルサービスの基盤となるIT整備をはじめ、米国のEC強化に向けてIO社の買収を実行するなど、将来の成長に向けた投資を積極的に行いました。他方、株主の皆さまへの還元については、配当支払額49億円、自己株式の取得77億円、合わせて126億円とさせていただきました。なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、4月末を期限に予定していました自社株買いの取得を中止いたしましたが、総還元性向については年間で100%以上を維持しております。
なお、現時点で資本政策や株主還元の基本方針について変更はありませんが、この先、感染症拡大の影響により、業績や資金需要の動向を見極め、必要な場合は基本方針の見直しも検討してまいります。
②資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金の流動性は、主に営業活動による純現金収入によります。営業活動による純現金収入により、外部からの多額の借入や、その他の資金調達手段に頼らずに、大部分の運転資金の確保や設備投資、配当金の支払が可能となっております。ただし、金融機関に借入枠は設けており、2020年3月31日現在の借入枠の合計は322億59百万円、借入枠を設けている借入金の残高は34億49百万円となっており、主な残高の内訳としてはWACOAL EUROPE LTD.が9億85百万円、ワコールサービス㈱が23億79百万円、㈱七彩が85百万円となっております。
これらの借入枠の期限は、ほとんどが自動的に更新されるものであり、現状更新を妨げるような事象は発生していないと考えております。仮にいずれかの子会社において借入が不可能になったとしても、グループの各社から資金を供給することが可能であると考えております。また、資金需要について大きな季節変動はありません。
また、子会社からの親会社への配当に係る規制は特に無いと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症は、当社グループの事業活動にも影響を与えており、営業活動による純現金収入が短期的に大きく減少することが考えられます。そのため、当社は2020年4月以降に新たに金融機関に追加の借入枠を設け、手元資金を確保しております。予定していた営業活動による資金支出については、ゼロベースで見直すことで削減するとともに、投資についても実施時期の見直し等を図ることで、資金の流動性を確保していきます。
a.設備投資
「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載しております。
b.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に検証等を行っております。新型コロナウイルス感染症による見積りへの影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 E 見積りの使用」に記載しております。
a.収益認識
当社グループは製品の支配が顧客に移転し、履行義務が充足された時点で収益を認識しております。収益は、取引価格から値引、リベート等を控除した金額で算定しております。また、将来に予測される返品については、過年度の実績等を考慮して予想される返品を見積り、収益から控除しております。
b.貸倒引当金
当社グループは、売掛債権等について貸し倒れの可能性を予測する必要があります。これらの債権の回収可能性を検討するにあたっては、各相手先の業績、債権残高、財政状況等を考慮して個別に信用リスクを判断する等、重要な判断が必要であります。相手先の財政状態が悪化した場合は貸倒引当金を積み増すことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
c.たな卸資産の評価損
当社グループは、原材料については先入先出法による低価法で、製品・商品及び仕掛品については総平均法による低価法で評価しております。たな卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売費用を控除して算出されます。たな卸資産の評価は、たな卸資産が低価法に基づき正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施されております。当社グループは、必要と判断された場合、たな卸資産の簿価と実現可能価額との差額をたな卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売費用、マークダウン率やたな卸資産の分類等は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄するたな卸資産についても考慮しております。当社グループのたな卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
d.繰延税金資産
当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得の達成の可否により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産計上額に対して金額的に重要な評価性引当金を計上する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性を見込めない場合には、回収不能と見込まれる金額に対して評価性引当金が計上され、損益に悪影響を与える可能性があります。
e.有価証券・投資の評価損
有価証券・投資のうち負債証券については、公正価値が帳簿価額を下回り、かつ、公正価値の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、負債証券の公正価値の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は公正価値の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思、などを含めた基準により四半期毎に判断しております。
また、持分証券については、公正価値により測定し、未実現の保有損益は純損益に計上しております。
当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や、予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、有価証券・投資の評価額に影響を受ける可能性があります。
なお、2020年3月31日現在、当社グループが保有する負債証券のいくつかの銘柄については未実現損失が発生しております。これらの銘柄については、下落期間や入手可能な発行体の業績等をもとに一時的な下落であると判断し、評価損は計上しておりません。
2020年3月31日現在、重要な影響を与える未実現損失は発生しておりません。
f.長期性資産の減損
当社グループが保有する長期性資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象や状況の変化が生じた場合には、将来の予想キャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として計上しております。
2020年3月期において、固定資産の減損の判定をした結果、公正価値が帳簿価額を下回っていると判断されたため、A Tech社の建物、機械装置・車両運搬具及び工具器具備品をそれぞれ減損しております。この結果生じた減損損失769百万円については、2020年3月期のワコール事業(海外)の営業費用に含めております。
g.のれん及びその他の無形固定資産の減損
耐用年数が確定できないのれん及びその他の無形固定資産については、少なくとも1年に一回、又は事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化、リスク調整後割引率の変動等、減損の判定が必要となる兆候が発生した場合に減損の判定を行っており、報告単位の公正価値の評価にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。のれんやその他の無形固定資産を含む報告単位の公正価値を評価し、公正価値が報告単位の帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その下回る額について減損損失として計上することになります。のれん及びその他の無形固定資産の帳簿価額の回復可能性がないと判断された場合、のれんの公正価値の決定において、評価機関は観察不能なインプットを含む現在価値法を採用しております。商標権の公正価値の決定においては、評価機関は観察不能なインプットを含むロイヤルティ免除法を採用しております。
2020年3月31日時点における評価の結果、のれん、商標権及びソフトウェアの減損をそれぞれ217百万円、191百万円及び65百万円認識しております。
h.退職金及び退職年金
当社グループは従業員の大多数を対象とするいくつかの退職金制度を有しており、㈱ワコール及び一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しております。前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。当社グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。具体的には割引率は2020年3月31日時点における、国債のうち満期までの期間が予想される将来の給付支払の時期までの期間と同じ銘柄の利回りを基礎としております。当連結会計年度末における割引率は0.5%であります。
当社グループは、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより長期期待運用収益率を設定しております。かかる長期期待運用収益率は、株式及び社債等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づいております。前連結会計年度及び当連結会計年度末における、年金資産の長期運用利回りは、ともに2.5%であります。長期期待運用収益率は持分証券26.0%、負債証券54.0%、生保一般勘定18.0%及び短期資金2.0%の資産構成を前提として算定しております。
これらの基礎率は退職給付債務及び費用に重要な影響を及ぼします。割引率及び長期期待運用収益率をそれぞれ0.5%変更した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。
その他の年金制度は、退職一時金の支給か一定の条件での年金支給のどちらかとなりますが、従業員が定年に達する前に退職する場合は、通常、一括で支給されます。
i.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 F 会計処理基準 (16)新会計基準」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
当連結会計年度末における総資産は、時価下落による投資の減少などにより、前連結会計年度末に比して40億79百万円減少し、2,776億88百万円となりました。
負債の部は、会計基準の変更によりオペレーティングリース負債を計上したことや条件付取得対価に係る負債が増加したことにより、前連結会計年度末に比して76億17百万円増加し、682億40百万円となりました。
株主資本は、利益剰余金や為替換算調整勘定の減少などにより、前連結会計年度末に比して111億23百万円減少し、2,053億71百万円となりました。
以上の結果により、当連結会計年度末における株主資本比率は、前連結会計年度末に比して2.8%減少し、74.0%となりました。
b.経営成績
(単位:百万円)
| 2019年3月期 実績 | 2020年3月期 実績 | 前期比 | ||
| 増減額 | 増減率 | |||
| 売上高 | 194,201 | 186,760 | △7,441 | △3.8% |
| 売上原価 | 89,804 | 84,959 | △4,845 | △5.4% |
| 売上利益 | 104,397 | 101,801 | △2,596 | △2.5% |
| 販売費及び一般管理費 | 93,517 | 93,927 | +410 | +0.4% |
| 有形固定資産減損損失 | 167 | 769 | +602 | +360.5% |
| A:のれん及びその他の無形固定資産減損損失 | 5,834 | 473 | △5,361 | △91.9% |
| 営業利益 | 4,879 | 6,632 | +1,753 | +35.9% |
| その他の収益・費用 | 2,894 | 1,487 | △1,407 | △48.6% |
| B:有価証券・投資評価損益(純額) | △5,570 | △3,760 | +1,810 | - |
| 税引前当期純利益 | 2,203 | 4,359 | +2,156 | +97.9% |
| 当社株主に帰属する当期純利益 | 341 | 3,472 | +3,131 | +918.2% |
| 参考情報 ①:Aを考慮しない営業利益 | 10,713 | 7,105 | △3,608 | △33.7% |
| 参考情報 ②:AとBを考慮しない税引前当期純利益 | 13,607 | 8,592 | △5,015 | △36.9% |
当社グループは、当連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日)を初年度とする新しい中期経営計画をスタートさせ、「現実を直視し、将来需要を見極めた上で、果敢に改革を行い、成長にこだわる」という基本方針に沿って、各種施策を遂行しております。成長軌道への回帰と収益性改善を目指す㈱ワコールでは、3DボディスキャナーやAI(人工知能)を活用した接客システムを6店舗に導入するなど、イノベーションによるCX(顧客体験)の向上に取り組むとともに、リアル店舗とECの連携・融合に向けて顧客データベースをより効率的に活用できる環境の整備を進めました。海外事業では、課題として掲げるECでの成長機会の創出と競争力の強化に向けた取り組みを推進し、その一環として「LIVELY(ライブリー)」のブランド名称で女性用インナーウェア等の商品企画と小売販売を行っている米国の Intimates Online, Inc.(以下「IO社」)の発行済株式のすべてを2019年7月末に取得し、完全子会社化しました(買収により子会社となった「IO社」の業績については、第2四半期連結会計期間より連結対象としており、「ワコール事業(海外)」セグメントのワコールインターナショナル(米国)に含めて開示しております)。これらの諸施策を進めたものの、国内において2019年10月に実施された消費税増税後の個人消費の停滞に加え、第4四半期連結会計期間に発生した新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大による世界規模での経済活動の停滞の影響を受け、当社グループの経営環境は極めて厳しい状況となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は1,867億60百万円(前期比3.8%減)となりました。国内では、消費税増税後の需要低迷の長期化に加えて、感染症が拡大した3月以降の外出自粛に伴う来店客数の減少が営業活動に影響し、また、海外では、「IO社」の新規連結効果が寄与したものの、英米における百貨店の低迷、タイの材料会社の苦戦や円高による影響(△17億81百万円)に加えて、3月以降の主要都市のロックダウン措置による実質的な経済停止が響き、ともに減収となりました。
営業利益は66億32百万円(前期比35.9%増)となりました。国内は、㈱ワコールの卸売事業の減収影響やIT関連費用の増加、海外は、「IO社」の営業損失の取り込みや買収に係る一時費用の計上に加え、タイの材料会社の有形固定資産の減損損失(7億69百万円)などの計上が影響し、ともに減益となりました。この他、のれん及びその他の無形固定資産の減損損失について、当連結会計年度は4億73百万円を計上しましたが、前連結会計年度(58億34百万円)より損失額が減少したことから増益となりました。(上表「A」)
税引前当期純利益は43億59百万円(前期比97.9%増)となりました。有価証券・投資評価損益(純額)について、当連結会計年度・前連結会計年度ともに評価損の計上となりましたが、損失額が減少した結果、増益となりました。(上表「B」)
(当社は、米国会計基準を採用しており、当社及び連結子会社が保有する持分証券を公正価値で評価し、期初からの変動を「その他の収益・費用」で計上しております)
以上の結果、当社株主に帰属する当期純利益は34億72百万円となりました。また、当期の連結売上高営業利益率は3.6%、連結ROE(株主資本当社株主に帰属する当期純利益率)は1.6%となりました。なお、当該期間の為替換算レートは、1米ドル=108.74円(前期110.91円)、1英ポンド=138.24円(同145.68円)、1中国元=15.78円(同16.72円)です。
オペレーティング・セグメントの経営成績を示すと次のとおりであります。
(単位:百万円)
| 2019年3月期 | 2020年3月期 | 前期比 | |||||
| 実績 | 構成比 | 実績 | 構成比 | 増減額 | 増減率 | ||
| 売上高合計 | 194,201 | 100.0% | 186,760 | 100.0% | △7,441 | △3.8% | |
| ワコール事業(国内) | 113,400 | 58.4% | 109,709 | 58.7% | △3,691 | △3.3% | |
| ワコール事業(海外) | 53,100 | 27.3% | 50,552 | 27.1% | △2,548 | △4.8% | |
| ピーチ・ジョン事業 | 10,491 | 5.4% | 10,480 | 5.6% | △11 | △0.1% | |
| その他 | 17,210 | 8.9% | 16,019 | 8.6% | △1,191 | △6.9% | |
(単位:百万円)
| 2019年3月期 | 2020年3月期 | 前期比 | |||||
| 実績 | 売上比 | 実績 | 売上比 | 増減額 | 増減率 | ||
| 営業利益(△損失) | 4,879 | 2.5% | 6,632 | 3.6% | +1,753 | +35.9% | |
| ワコール事業(国内) | 6,325 | 5.6% | 5,782 | 5.3% | △543 | △8.6% | |
| ワコール事業(海外) | 4,581 | 8.6% | 1,493 | 3.0% | △3,088 | △67.4% | |
| ピーチ・ジョン事業 | △5,859 | - | △351 | - | +5,508 | - | |
| その他 | △168 | - | △292 | - | △124 | - | |
(参考)主要子会社の売上高・営業利益(△損失)
(単位:百万円)
| 売上高 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 前期比 | ||||
| 実績 | 構成比 | 実績 | 構成比 | 増減額 | 増減率 | ||
| ワコール | 102,356 | 52.7% | 99,224 | 53.1% | △3,132 | △3.1% | |
| Ai | 4,181 | 2.2% | 3,597 | 1.9% | △584 | △14.0% | |
| ワコールインターナショナル(米国) | 18,486 | 9.5% | 19,194 | 10.3% | +708 | +3.8% | |
| ワコールヨーロッパ | 14,106 | 7.3% | 12,988 | 7.0% | △1,118 | △7.9% | |
| 中国ワコール | 11,617 | 6.0% | 11,081 | 5.9% | △536 | △4.6% | |
| ピーチ・ジョン | 10,491 | 5.4% | 10,480 | 5.6% | △11 | △0.1% | |
| ルシアン | 6,284 | 3.2% | 5,760 | 3.1% | △524 | △8.3% | |
| 七彩 | 9,414 | 4.8% | 8,717 | 4.7% | △697 | △7.4% | |
※外部売上高のみを記載しております。
(単位:百万円)
| 営業利益(△損失) | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 前期比 | ||||
| 実績 | 売上比 | 実績 | 売上比 | 増減額 | 増減率 | ||
| ワコール | 5,099 | 5.0% | 3,140 | 3.2% | △1,959 | △38.4% | |
| Ai | △321 | - | △269 | - | +52 | - | |
| ワコールインターナショナル(米国) | 2,095 | 11.3% | 401 | 2.1% | △1,694 | △80.9% | |
| ワコールヨーロッパ | 1,407 | 10.0% | 1,007 | 7.8% | △400 | △28.4% | |
| 中国ワコール | 913 | 7.9% | 923 | 8.3% | +10 | +1.1% | |
| ピーチ・ジョン | △5,859 | - | △351 | - | +5,508 | - | |
| ルシアン | △375 | - | △478 | - | △103 | - | |
| 七彩 | 282 | 3.0% | 218 | 2.5% | △64 | △22.7% | |
ワコール事業(国内)
当該セグメントの売上高は、前期に比べ3.3%の減少となりました。消費税増税前の駆け込み需要が寄与した上半期(4月~9月)は3.0%の増収でしたが、増税後の需要低迷の長期化に加え、感染症拡大による外出自粛等の影響を受けた下半期(10月~3月)は10.0%の減収となりました。営業利益は、ワコールの卸売事業の減収影響やリゾートウェアと下着の販売を行うAi(アイ)の営業損失などにより、8.6%の減少となりました。
<ワコール>ワコールの売上高は、前期に比べ3.1%の減少となりました。量販店チャネルを中心に展開するウイングブランドは、定番アイテムが好調に推移したほか、ノンワイヤーブラ「シンクロブラ」への積極的なプロモーション活動も奏功し、前期を上回りましたが、ワコールブランドは、「ナイトアップブラ」など一部商品は伸長したものの、消費税増税後の需要低迷により百貨店などの主力チャネルでの販売が伸び悩んだことに加え、感染症拡大に伴う来店客数の減少などが影響し、前期を下回る結果となりました。また、ナイトウェア(パジャマ)やスポーツアパレルなどインナーウェア以外の商品についても、主力チャネルでの販売が低迷した結果、前期を大幅に下回りました。一方、小売事業は感染症拡大により3月度は苦戦したものの、増税後の需要減退を最小限にとどめる商品施策と120万人に到達したショップ会員に対するマーケティング活動が奏功し、前期を上回りました。また、自社ECの売上については、マーケティングオートメーションを活用した顧客とのコミュニケーション強化により、高い成長を維持しました。
営業利益は、前期に比べ38.4%の減少となりました。卸売事業・小売事業ともに売上利益率の改善は継続したものの、オムニチャネル戦略の構築に係るIT関連費用の増加に加え、卸売事業における3月度の急激な売上減少が大きく影響しました。
ワコール事業(海外)
邦貨換算後の当該セグメントの売上高は、円高による影響(△17億81百万円)に加え、受注減少に伴うタイの材料会社の売上不振、3月中旬以降の感染症拡大による欧米の急激な売上減少により、前期に比べて4.8%の減少となりました。営業利益は、「IO社」の買収影響によるワコールインターナショナル(米国)の減益に加え、タイの材料会社の有形固定資産の減損損失を7億69百万円計上したことから、前期に比べ67.4%の減少となりました。
<ワコールインターナショナル(米国)>ワコールインターナショナル(米国)の現地通貨ベースの売上高は、新しく連結対象となった「IO社」の8月以降の売上高11.9百万ドル(約13億円)の取り込みが寄与したことから、前期に比べ5.9%の増加(邦貨換算ベースでは3.8%の増加)となりました。「Wacoal」や「b.tempt'd(ビーテンプティッド)」などのブランドを取り扱う米国ワコールは、自社・他社ともにECを通じた販売は好調に推移したものの、百貨店(実店舗)での販売が苦戦し、減収となりました。
現地通貨ベースの営業利益は、前期に比べ80.5%の減少(邦貨換算ベース80.9%の減少)となりました。セール販売比率の上昇に伴う売上利益率の低下並びに人件費や事務所の賃借料の増加によって米国ワコールが減益となったことに加え、「IO社」の営業損失11.5百万ドル(約12.5億円)の取り込みや、買収に係る一時的な費用計上が影響し、大幅な減益となりました。
<ワコールヨーロッパ>ワコールヨーロッパの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ3.0%の減少(邦貨換算ベースでは7.9%の減少)となりました。英国は百貨店チャネルの低迷により苦戦したものの、北米やフランス、その他の欧州圏での売上が伸長し、第3四半期までは前期を上回って推移しました。しかしながら、感染症拡大の影響を受けた3月度の売上が低迷した結果、減収に転じました。
現地通貨ベースの営業利益は、ブランドの認知拡大に向けた宣伝活動の強化、自社ECサイトの刷新費用の計上、スペインの百貨店との取引開始に伴う人件費の増加などにより、前期に比べ24.6%の減少(邦貨換算ベースでは28.4%の減少)となりました。
<中国ワコール>中国ワコールの現地通貨ベースの売上高は、前期に比べ1.1%の増加となりましたが、円高の影響により、邦貨換算ベースでは4.6%の減少となりました。「Wacoal」ブランドで実需期の販売プロモーションを積極的に展開したほか、新たな顧客層の開拓を目的に日本の「AMPHI」ブランドの販売を開始するなど、ECモール事業者との連携強化により、ECでの高い成長を維持しました。なお、中国ワコールは12月期決算のため、当期業績に対する感染症拡大の影響はありません。
現地通貨ベースの営業利益は、7.1%の増加(邦貨換算ベースでは1.1%の増加)となりました。広告宣伝費の増加や倉庫移転に伴う一時的な費用の計上はありましたが、利益率の低いブランドの売上構成比率の低下による売上利益率の改善や、不採算店舗からの撤退に伴う人件費や賃借料の削減が寄与し、増益となりました。
ピーチ・ジョン事業
当該セグメントの売上高は、前期並みとなりました。事業効率の改善を目的にカタログ発刊を休止した影響から通販事業は減収となりましたが、不採算店の一部撤退を実施した国内の店舗事業については、定番商品が堅調に推移したことに加え、セール販売が好調に推移したこともあり、増収となりました。
営業損益は、営業損失3億51百万円(前期は58億59百万円の営業損失)となりました。国内は、売上利益率の改善に加えて販管費の削減などが寄与し、営業黒字となりました。しかしながら、中国事業の営業損失に加え、無形固定資産(商標権)の減損損失(1億91百万円)を計上したことから、営業損失となりました。
その他
当該セグメントの売上高は、前期に比べ6.9%の減少、営業損益は、営業損失2億92百万円(前期は1億68百万円の営業損失)となりました。
<ルシアン>ルシアンの売上高は、量販店や専門店向けのプライベートブランド商品の販売が前期を上回ったものの、素材事業の減収影響により、前期に比べ8.3%の減少となりました。営業損益は、アパレル事業等の撤退に伴う一時的な費用を計上したことから、営業損失となりました。
<七彩>七彩の売上高は、前期にあった百貨店などの大型改装工事の反動により、前期に比べ7.4%の減少となりました。営業利益は、減収の影響により、前期に比べ22.7%の減少となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比し22億28百万円減少し、279億5百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益29億68百万円に減価償却費や繰延税金などによる調整を加えた金額に対して、資産及び負債の増減などによる調整を行った結果、133億25百万円の収入(前期に比し2億95百万円の収入減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、新規子会社の取得(取得した現金との純額)や有形及び無形固定資産の取得による支出などがあったものの、持分証券の売却及び償還収入や定期預金の減少などにより、25億69百万円の収入(前期は24億74百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少や自己株式の取得、配当金の支払などにより、174億71百万円の支出(前期に比し65億99百万円の支出増)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、 ピーチ・ジョン事業については、すべて販売会社のため該当事項はありません。また、その他のセグメントについては、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。
| オペレーティング・セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| ワコール事業(国内) | 42,178 | 98.5 |
| ワコール事業(海外) | 14,959 | 88.7 |
| 合計 | 57,137 | 95.7 |
(注) 生産実績の金額は製造原価によっております。また、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
その他のうち㈱七彩の一般住宅及び店舗内装工事部門については受注生産形態をとっております。
当連結会計年度におけるその他の受注実績を示すと、次のとおりであります。
| オペレーティング・セグメント の名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
| その他 | 5,924 | 95.0 | 268 | 64.1 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をオペレーティング・セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| オペレーティング・セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| ワコール事業(国内) | 109,709 | 96.7 |
| ワコール事業(海外) | 50,552 | 95.2 |
| ピーチ・ジョン事業 | 10,480 | 99.9 |
| その他 | 16,019 | 93.1 |
| 合計 | 186,760 | 96.2 |
(注)1.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、当連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日)を初年度とする新しい中期経営計画をスタートさせ、「現実を直視し、将来需要を見極めた上で、果敢に改革を行い、成長にこだわる」という基本方針に沿って、各種施策を遂行してきました。成長軌道への回帰と収益性改善を目指す㈱ワコールでは、3DボディスキャナーやAI(人工知能)を活用した接客システムを6店舗に導入するなど、イノベーションによるCX(顧客体験)の向上に取り組むとともに、リアル店舗とECの連携・融合に向けて顧客データベースをより効率的に活用できる環境の整備を進めました。海外事業では、課題として掲げるECでの成長機会の創出と競争力の強化に向けた取り組みを推進し、その一環として「LIVELY(ライブリー)」のブランド名称で女性用インナーウェア等の商品企画と小売販売を行っている米国の Intimates Online, Inc.(以下「IO社」)の発行済株式のすべてを2019年7月末に取得し、完全子会社化しました。
これらの諸施策を進めたものの、国内において2019年10月に実施された消費税増税後の個人消費が停滞したことに加え、第4四半期連結会計期間に発生した新型コロナウイルス感染症拡大による世界規模での影響を受け、当社グループの経営環境は極めて厳しい状況となりました。
中期経営計画期間の初年度となる当連結会計年度の経営成果と課題に関する認識は次のとおりです。
ワコール事業(国内)における経営成果は、小売事業・WEB事業において、会員データを効率的に運用できる仕組みを構築したことにより、安定成長を実現できたことです。一方、主力事業である卸売事業の直近2年間の平均成長率はマイナス4%となり、他事業の成長ではカバーできない状況が続いております。卸売事業については、3D計測機などを活用した新しい接客システムを導入した他、顧客データの整備を進めましたが、運用面に課題を残しております。さらに、売上の低下の一方で、固定費率が高止まっている状態にあるため、経費コントロールの実行は喫緊の課題であると認識しております。
ワコール事業(海外)における経営成果は、ミレニアル世代の新しい顧客獲得に向けて「LIVELY」ブランドを展開するIO社を買収し、ブランド・ポートフォリオを拡充したことです。また、中核の課題として掲げるEC事業については、各国で力強く成長することができました。課題は、欧米を中心に低迷が続く実店舗ビジネスへの対応です。ECの成長スピードを高め、実店舗のマイナスをカバーできるようにしていくことが求められます。他方、受注減少が続くタイの材料会社においては、生産の安定化と新製品の開発力の向上が欠かせない課題と認識しております。
ピーチ・ジョン事業、その他における経営成果は、事業構造の効率化に向けて、ピーチ・ジョンでは不採算店舗の閉店やカタログ発刊の休止を実行したほか、ルシアンにおいて不採算事業からの撤退を判断したことです。課題については、いずれのセグメントともに営業損失を計上したことに他なりません。収益性の改善に向けた施策を継続してまいります。
新型コロナウイルス感染症の影響に関する認識、及び今後の方針は次のとおりです。
新型コロナウイルス感染症の影響についての認識は、「当社グループの経営にとって、感染症の影響は極めて高く、悪影響を与える」ということです。感染症の拡大に伴う店舗の営業停止や外出制限ないし自粛要請などの措置は徐々に解除となり、さまざまな国や地域の経済活動が元に戻りつつあり、明るい兆しは見え始めてはいますが、ショッピングを楽しめる日々が戻るには、相応の時間が掛かると考えております。また、雇用や所得環境の悪化による個人消費の低迷への懸念もあり、万が一、再び感染症の拡大が起きれば、消費活動はさらに低迷する恐れがあります。
また、感染症による影響として、最も大きいことは、「流通チャネル」や「消費価値」、「購買行動」の急速な変化です。デジタル変革の推進や、消費者発想型のビジネス重視など、進むべき大きな方向性に変わりはありませんが、消費者の価値観や流通の変化については、冷静に見極めていきます。
次に、再成長に向けて定めた方針についてご説明いたします。時間軸で、3つの方針を定めております。
基本方針について
すべての基本方針は、「お客さま・従業員・お取引先の健康・安全を最優先として対応すること」です。私たちは、お客さまと非常に近い距離でフィッティングなどのサービスを展開してきましたが、このようなサービスの維持と、従業員・お客さまの健康・安全の配慮やバランスは重要課題です。
短期的な方針について
第一に、「事業領域全般にわたり、これまでの施策や支出計画の大胆な見直しを実行すること」を掲げております。従来の事業活動をゼロベースで見直し、広告宣伝費などの経費削減、一歩踏み込んだ働き方改革の推進、出張削減に努めるほか、新規投資の実施時期についても見直しを実施します。
次に、感染症の長期化に備えて「手元流動性の強化に努めること」を掲げており、すでに金融機関からの借入枠を拡大し、グループ各社の手元流動性の確保に動いております。また感染症による販売不振に伴って、一時的に在庫は過剰になることを想定しておりますが、秋冬物商品や次の春夏物商品の生産調整をすべての子会社で実施することで、在庫水準を2020年3月期末水準まで低下させる計画です。
中長期的な方針について
ここ数年の売上の低下に伴って、当社グループの経費水準は、非常に高い地点まで上昇しており、当連結会計年度では50%を超過しております。コストストラクチャー構造の見直しは喫緊の課題であり、事業にあったコスト構造の在り方について点検します。同時に、すべての事業で将来需要を見極め、「きっぱりやめること」、「未来に向けて新たに始めること」、「続けるが軌道修正すること」を明確にしてまいります。
次に、成長に向けた取り組みとして、国内外ともにデジタル・トランスフォーメーションの取り組みを加速させ、顧客とのつながりを深めるとともに、事業運営の効率化に努めます。国内においては、「深く、広く、長く」をキーワードに取り組みを進める「オムニチャネル戦略」を継続して強化します。購買行動の変化を丁寧に見極め、軌道修正は適宜行いますが、デジタル変革は成長に向けて欠かせないものと認識しております。リアル店舗とECの連携や融合の推進、顧客データベースの効率的な運用方法の確立、新しい生活様式への対応に向けた3D計測機やAIなどの接客システム運用の軌道修正など、顧客の変化に対応したサービスや価値提供を行い、再成長を実現します。また、海外においても、国内同様、「顧客体験型」の発想に基づいて、各事業を徹底的に点検するとともに、EC事業の強化に努めてまいります。
さらに「お客さまとのタッチポイントの見直しと再整備」を実行します。国内では、低迷が続く百貨店のビジネスモデル転換を見据えた対応の検討を行います。卸売ビジネスから、自主運営型ビジネス、いわゆる定借ビジネスへの切り替えも選択肢の1つではありますが、重視していることは、効率的な人員配置や店舗損益の管理手法も含めて、「収益重視の店舗運営体制」を構築することです。
中長期的な方針の最後の項目は、『「新しい生活様式」で顧客が待ち望む、商品やサービスの開発』『新たな接客や販売スタイルへの対応力強化』です。顧客の価値観が変化するとともに、流通チャネルも大きく変わる可能性があります。また、所得の低下により、価格の受容性が一段下がる可能性も否めません。各国で展開するブランド・ポートフォリオをもう一度点検し、新しい価値観に応じたウェイトの組み換えを実行してまいります。また、密接した接客スタイルに変わる新しい接客方法の検討やテストマーケティングを実施します。パンデミックの経験を通して、世界中の女性の「美しい」という価値判断がどこに向かうのか、注意して見守り、冷静に方向性を判断します。
財務戦略による資本効率の向上、株主還元への取り組みに関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
当連結会計年度を初年度とする新しい中期経営計画においては、最終年度となる2022年3月期末の株主資本を2,000億円-2,100億円に低減すると同時に、ROEの水準を6%以上に高める目標としております。当連結会計年度は、消費税増税による個人消費の停滞の長期化、並びに新型コロナウイルス感染症の拡大影響によって売上が低迷したことに加え、ECでの成長機会の創出と競争力の強化を目的に買収した米国のIO社の営業損失を取り込んだほか、有価証券・投資評価損益において評価損を38億円計上したことが影響し、当社株主に帰属する当期純利益は34.7億円となり、ROEは1.6%と前連結会計年度に続いて低い結果となりました。なお、のれん及びその他の無形固定資産の減損損失や有価証券・投資評価損益を考慮しない実質的な当期純利益は、およそ31億円の減少となりました。企業体としての「収益力」が急速に低下していることは事実であり、収益性の回復は重要な課題として認識しております。
当社は、株主の皆さまへの利益配分に関して、収益力向上のための積極的な投資によって企業価値を高め、1株当たり当期純利益の増加を図るとともに、連結業績を考慮しつつ安定的な配当を実施させていただくことを基本方針としております。内部留保金については、企業価値向上の観点から、国内事業における顧客接点の拡大や、海外事業拡大のための積極的な投資に加えて、競争力の維持や成長力強化のための戦略的投資に活用し、将来の収益向上を通して、株主の皆さまへの還元を図らせていただきたいと考えております。また、自己株式の取得についても、フリー・キャッシュ・フローレベルや市場環境を勘案しながら機動的に行い、資本効率の向上と株主の皆さまへの還元を図ります。
当連結会計年度は、国内におけるオムニチャネルサービスの基盤となるIT整備をはじめ、米国のEC強化に向けてIO社の買収を実行するなど、将来の成長に向けた投資を積極的に行いました。他方、株主の皆さまへの還元については、配当支払額49億円、自己株式の取得77億円、合わせて126億円とさせていただきました。なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、4月末を期限に予定していました自社株買いの取得を中止いたしましたが、総還元性向については年間で100%以上を維持しております。
なお、現時点で資本政策や株主還元の基本方針について変更はありませんが、この先、感染症拡大の影響により、業績や資金需要の動向を見極め、必要な場合は基本方針の見直しも検討してまいります。
②資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金の流動性は、主に営業活動による純現金収入によります。営業活動による純現金収入により、外部からの多額の借入や、その他の資金調達手段に頼らずに、大部分の運転資金の確保や設備投資、配当金の支払が可能となっております。ただし、金融機関に借入枠は設けており、2020年3月31日現在の借入枠の合計は322億59百万円、借入枠を設けている借入金の残高は34億49百万円となっており、主な残高の内訳としてはWACOAL EUROPE LTD.が9億85百万円、ワコールサービス㈱が23億79百万円、㈱七彩が85百万円となっております。
これらの借入枠の期限は、ほとんどが自動的に更新されるものであり、現状更新を妨げるような事象は発生していないと考えております。仮にいずれかの子会社において借入が不可能になったとしても、グループの各社から資金を供給することが可能であると考えております。また、資金需要について大きな季節変動はありません。
また、子会社からの親会社への配当に係る規制は特に無いと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症は、当社グループの事業活動にも影響を与えており、営業活動による純現金収入が短期的に大きく減少することが考えられます。そのため、当社は2020年4月以降に新たに金融機関に追加の借入枠を設け、手元資金を確保しております。予定していた営業活動による資金支出については、ゼロベースで見直すことで削減するとともに、投資についても実施時期の見直し等を図ることで、資金の流動性を確保していきます。
a.設備投資
「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載しております。
b.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等不確実性が大きく、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に検証等を行っております。新型コロナウイルス感染症による見積りへの影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 E 見積りの使用」に記載しております。
a.収益認識
当社グループは製品の支配が顧客に移転し、履行義務が充足された時点で収益を認識しております。収益は、取引価格から値引、リベート等を控除した金額で算定しております。また、将来に予測される返品については、過年度の実績等を考慮して予想される返品を見積り、収益から控除しております。
b.貸倒引当金
当社グループは、売掛債権等について貸し倒れの可能性を予測する必要があります。これらの債権の回収可能性を検討するにあたっては、各相手先の業績、債権残高、財政状況等を考慮して個別に信用リスクを判断する等、重要な判断が必要であります。相手先の財政状態が悪化した場合は貸倒引当金を積み増すことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
c.たな卸資産の評価損
当社グループは、原材料については先入先出法による低価法で、製品・商品及び仕掛品については総平均法による低価法で評価しております。たな卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売費用を控除して算出されます。たな卸資産の評価は、たな卸資産が低価法に基づき正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施されております。当社グループは、必要と判断された場合、たな卸資産の簿価と実現可能価額との差額をたな卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売費用、マークダウン率やたな卸資産の分類等は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄するたな卸資産についても考慮しております。当社グループのたな卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
d.繰延税金資産
当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得の達成の可否により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産計上額に対して金額的に重要な評価性引当金を計上する可能性があります。繰延税金資産の回収可能性を見込めない場合には、回収不能と見込まれる金額に対して評価性引当金が計上され、損益に悪影響を与える可能性があります。
e.有価証券・投資の評価損
有価証券・投資のうち負債証券については、公正価値が帳簿価額を下回り、かつ、公正価値の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、負債証券の公正価値の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は公正価値の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思、などを含めた基準により四半期毎に判断しております。
また、持分証券については、公正価値により測定し、未実現の保有損益は純損益に計上しております。
当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や、予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、有価証券・投資の評価額に影響を受ける可能性があります。
なお、2020年3月31日現在、当社グループが保有する負債証券のいくつかの銘柄については未実現損失が発生しております。これらの銘柄については、下落期間や入手可能な発行体の業績等をもとに一時的な下落であると判断し、評価損は計上しておりません。
2020年3月31日現在、重要な影響を与える未実現損失は発生しておりません。
f.長期性資産の減損
当社グループが保有する長期性資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象や状況の変化が生じた場合には、将来の予想キャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として計上しております。
2020年3月期において、固定資産の減損の判定をした結果、公正価値が帳簿価額を下回っていると判断されたため、A Tech社の建物、機械装置・車両運搬具及び工具器具備品をそれぞれ減損しております。この結果生じた減損損失769百万円については、2020年3月期のワコール事業(海外)の営業費用に含めております。
g.のれん及びその他の無形固定資産の減損
耐用年数が確定できないのれん及びその他の無形固定資産については、少なくとも1年に一回、又は事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化、リスク調整後割引率の変動等、減損の判定が必要となる兆候が発生した場合に減損の判定を行っており、報告単位の公正価値の評価にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。のれんやその他の無形固定資産を含む報告単位の公正価値を評価し、公正価値が報告単位の帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その下回る額について減損損失として計上することになります。のれん及びその他の無形固定資産の帳簿価額の回復可能性がないと判断された場合、のれんの公正価値の決定において、評価機関は観察不能なインプットを含む現在価値法を採用しております。商標権の公正価値の決定においては、評価機関は観察不能なインプットを含むロイヤルティ免除法を採用しております。
2020年3月31日時点における評価の結果、のれん、商標権及びソフトウェアの減損をそれぞれ217百万円、191百万円及び65百万円認識しております。
h.退職金及び退職年金
当社グループは従業員の大多数を対象とするいくつかの退職金制度を有しており、㈱ワコール及び一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しております。前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。当社グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、前払年金費用、退職給付に係る負債及び退職給付費用に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。具体的には割引率は2020年3月31日時点における、国債のうち満期までの期間が予想される将来の給付支払の時期までの期間と同じ銘柄の利回りを基礎としております。当連結会計年度末における割引率は0.5%であります。
当社グループは、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより長期期待運用収益率を設定しております。かかる長期期待運用収益率は、株式及び社債等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づいております。前連結会計年度及び当連結会計年度末における、年金資産の長期運用利回りは、ともに2.5%であります。長期期待運用収益率は持分証券26.0%、負債証券54.0%、生保一般勘定18.0%及び短期資金2.0%の資産構成を前提として算定しております。
これらの基礎率は退職給付債務及び費用に重要な影響を及ぼします。割引率及び長期期待運用収益率をそれぞれ0.5%変更した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。
| 退職給付費用への影響額 | 退職給付債務への影響額 | |
| 割引率:0.5%減少 | 274百万円の増加 | 2,008百万円の増加 |
| 割引率:0.5%増加 | 228百万円の減少 | 1,826百万円の減少 |
| 長期期待運用収益率:0.5%減少 | 140百万円の増加 | - |
| 長期期待運用収益率:0.5%増加 | 142百万円の減少 | - |
その他の年金制度は、退職一時金の支給か一定の条件での年金支給のどちらかとなりますが、従業員が定年に達する前に退職する場合は、通常、一括で支給されます。
i.新会計基準
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記 1 連結会計方針 F 会計処理基準 (16)新会計基準」に記載しております。